2017年05月20日

デッドプール

デッドプール.jpg

原題: Deadpool
2016年 アメリカ
監督: ティム・ミラー
出演: 
ライアン・レイノルズ:ウェイド・ウィルソン / デッドプール
モリーナ・バッカリン:ヴァネッサ
エド・スクライン:フランシス・フリーマン / エイジャックス
T・J・ミラー:ウィーゼル
ジーナ・カラーノ:エンジェル・ダスト
レスリー・アガムズ:ブラインド・アル
ブリアナ・ヒルデブランド:ネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッド
ステファン・カピチッチ:コロッサス

<シネマトゥデイ>
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『[リミット]』などのライアン・レイノルズを主演に迎え、マーベルコミックスの破天荒ヒーローを実写映画化したアクション。人体改造により人並み外れた治癒能力と不死身の体を手にした主人公が、ジョークを口にしつつ暴れまくる姿を描く。共演は『トランスポーター イグニション』などのエド・スクライン。現実世界とフィクションの境を越えて、観る者を自分の世界に引き込む風雲児の活躍に胸が高鳴る。
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 マーベルコミックスのヒーローモノであるが、何とこれは『X−MEN』シリーズのスピンアウトだという。なんでも『ウルヴァリン:X−MEN ZERO』に登場したらしいが、まったく記憶にない。このシリーズはいろいろなミュータントが登場するから、よほどのファンでない限り覚えているのは難しいだろう。

 とは言え、正確に言えばこのヒーローはミュータントと言えるのかどうかは微妙。もともとは、ニューヨークに暮らす元軍人のウェイド・ウィルソン。行きつけの酒場で娼婦のヴァネッサと出会い、二人の運命は交差する。一緒に住み、二人で楽しい日々を過ごし、やがて結婚の約束をする。ところがある日、ウェイドは突然意識を失い病院に運ばれる。検査の結果、末期がんと診断される。

 絶望的な気分のウェイドの前に現れたのは、怪しげな男。がんを治療することができるという。ヴァネッサとの生活を考えたウェイドはこの誘いに乗り、怪しげな施設へ連れていかれる。そこに現れたのは、フランシスという名のミュータントの男。細胞を変異させ、ミュータントへと変身する薬品を投与することにより、がんを治療し新たな能力を覚醒させるのだという。

 ミュータントの細胞を覚醒させるための実験により、ウェイドはミュータントとなるが、がんは治癒したもののその容姿は醜く変異してしまう。ウェイドに現れた能力は、一言で言えばウルヴァリン並みの不死身の肉体。撃たれても死なず、手を切り落としても復元してしまう。しかし、醜い姿にされたことを恨み、そしてまたそれを治療できると言う言葉を信じ、ウェイドはフランシスを追う・・・

 こうして、ウェイドとフランシスの対立を軸に物語は進む。『X−MEN』シリーズとは言うものの、プロフェッサーもウルヴァリンも主要メンバーは誰も登場しない。唯一、恵まれし子らの学園とそこに住むX−MENのコロッサスとネガソニック・ティーンエイジ・ウォーヘッドが現れるのみ。何とも寂しい限りである。

 デッドプールの持ち味はと言うと、その不死身の能力ととにかくよくしゃべることだろう。このキャラクターを演じるのは、ライアン・レイノルズ。キャスティングの妙と言えるのだろうが、適役という感じがする。ライアン・レイノルズと言えば、DCコミックの『グリーン・ランタン』でも主人公を演じていたし、どこか「ヒーロー的」なのかもしれないと思ってみる。

 対する敵役は、エド・スクライン。『トランスポーター イグニション』の新主人公だ。本作品では悪役だが、この人はむしろ悪役の方が合っている気がする。一見、ポール・ベタニーを彷彿としてしまうが、何となくネチネチしたイメージを持つのは私だけだろうか。
今後、『X−MEN』シリーズとどう絡んでくるのかはわからないが、絡んでくるなら面白いという気もする。

 いずれにせよ、面白かったし、これはこれで『ウルヴァリン』シリーズのようにシリーズ化されてもいいのではないかと思う。つくづく、マーベルの映画路線は奥が深いと感じさせる一作である・・・


評価:★★☆☆☆






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2017年05月19日

ブラック・スキャンダル

ブラック・スキャンダル.jpg

原題: Black Mass
2015年 アメリカ
監督: スコット・クーパー
出演: 
ジョニー・デップ:ジェームズ・"ホワイティ"・バルジャー
ジョエル・エドガートン:ジョン・コノリー
ベネディクト・カンバーバッチ:ビリー・バルジャー
ロリー・コクレーン:スティーヴン・フレミ
ケヴィン・ベーコン:チャールズ・マグワイア
ジェシー・プレモンス:ケヴィン・ウィークス
ピーター・サースガード:ブライアン・ハロラン

<シネマトゥデイ>
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ジョニー・デップが主演を務めた実録クライムドラマ。実在するアイリッシュ・マフィアのボス、ジェームズ・“ホワイティ”・バルジャーが裏社会でのし上がっていく姿を追う。メガホンを取るのは、『ファーナス/訣別の朝』などのスコット・クーパー。『エクソダス:神と王』などのジョエル・エドガートン、『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』などのベネディクト・カンバーバッチらが共演する。さまざまな思惑が渦を巻く人間模様に加え、圧倒的存在感を放ちながらホワイティを演じるジョニーにも目を奪われる。
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 この映画は、実在の犯罪者を描いた実話だという。
冒頭、「俺は密告屋ではない」と念押ししてから男が話し始める。相手はFBIの捜査官。男の名はケヴィン。話の内容は、ケヴィンが使えていたマフィアのボスのことらしい。そして話の流れから、時は1970年代のサウスボストンへと飛ぶ。地元の人たちは「サウシー」と呼ぶ地域。ケヴィンは、あるバーで用心棒として働いている。

 アイリッシュ・マフィアのボスとして同地一帯を牛耳るのはジェームズ・“ホワイティ”・バルジャー。既にアルカトラズ刑務所にも服役歴のある人物。そんな人物に、ケヴィンは見込まれ、その下で働くようになる。そしてアンギウロファミリーの男を連れ出すと、ケヴインはバルジャーとともにこれを殴り殺す。

 やがてバルジャーにFBI捜査官のジョン・コナリーが接触を図ってくる。彼は、元々バルジャーとは幼馴染み。イタリア系マフィアであるアンギウロファミリーを駆逐しようという目的では、FBIとバルジャーは利害が一致しており、コナリーとバルジャーは手を握る。バルジャーの弟ビリーは、地元選出の上院議員であり、この後バルジャーは、FBIにアンギウロファミリーの情報を流してこれを逮捕させると、街に君臨していくこととなる・・・

 アンギロウファミリーを壊滅させた手柄により、コナリーはFBIの中でも出世していくが、バルジャーとの蜜月関係は続けていく。その間、バルジャーは我が道を行く有様。ありとあらゆる犯罪を牛耳り、邪魔者は次々と消して行く。一方で、母親には優しい息子として接する。しかし、恋人との間にできた息子は病気で失う悲運にも見舞われる。

 それにしてもFBI捜査官のコナリーは、バルジャーとの蜜月関係では危険な橋を渡って行く。バルジャーに不利な密告をしようとした男の情報をバルジャーに流す。当然ながらバルジャーは男を衆人環視の駐車場で射殺する。コナリーの妻は、高級品を身につけるようになった夫に何度も警告するが、コナリーは聞く耳を持たない。2人の関係は、当然ながらFBIの内規違反レベルを超えて行く。

 「毒を以て毒を制する」という言葉がある。コナリーがバルジャーに接近して行ったのは、本当に毒を持って制しようとしたのか、そしてそのままミイラ取りになってしまったのか、それとも幼馴染みと互いの立場を利用して自由に私腹を肥やそうとしたのかはわからない。しかし、当然組織内での内規違反がいつまでも問題にならないはずはない。事実、相棒のモリスは一緒に囲んだ食卓でバルジャーに脅され、その危険性に気づいてマスコミに情報をリークする。

 あまりにも簡単に人を殺すバルジャー。仲間のスティーブの義理の娘さえその目の前で絞殺してしまう。忠実だった手下が裏切って行くのも、いずれは自分もという感覚だったのだろうか。北朝鮮の高官が脱北するのと同じ理屈かもしれない。そしてバルジャーは仲間の裏切りもあって逃亡生活へと移る。ラストではテロップで逮捕に至る経緯が説明されるも、逮捕時の年齢は82歳。なんとも言えない。

 ジョニー・デップもティム・バートンの映画ではなく、こうしたシリアスな映画だと持ち味を一層発揮するように思える。おでこが禿げ上がった冷酷な男の迫力は、さすがである。実話の持つ力も一層増幅されるというもの。なかなかの映画である・・・


評価:★★☆☆☆





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2017年05月16日

ウォールフラワー

ウォール・フラワー.jpg

原題: The Perks of Being a Wallflower
2015年 アメリカ
監督・原作: スティーブン・チョボスキー
出演: 
ローガン・ラーマン:チャーリー
エマ・ワトソン:サム
エズラ・ミラー:パトリック
メイ・ホイットマン:メアリー・エリザベス
ポール・ラッド:アンダーソン先生
ニーナ・ドブレフ:キャンディス
ジョニー・シモンズ:ブラッド
エリン・ウィルヘルミ:アリス
ケイト・ウォルシュ:チャーリーの母親
ディラン・マクダーモット:チャーリーの父親
メラニー・リンスキー:ヘレン叔母さん
ジョーン・キューザック:バートン医師

<シネマトゥデイ>
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『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』のローガン・ラーマン、『ハリー・ポッター』シリーズのエマ・ワトソン、『少年は残酷な弓を射る』のエズラ・ミラー共演の青春作。原作者のスティーヴン・チョボスキーが監督を務め、自身の小説「ウォールフラワー」を基に、思春期の青年の揺れ動く心情を繊細なタッチで映し出す。困難を乗り越え成長する少年の心象風景が観る者の心を強く揺さぶる。
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 主人公のチャーリーは、高校に入学するも周りに溶け込めず、友人もいない。何やら事情があって入院していたようで、ランチも1人で本を読みながら取っている。そんな彼に目をかけて接してくれるのは、国語のアンダーソン先生だけ。読書が好きなチャーリーは、それゆえに先生との交流があるのである。

 そんなある日、チャーリーは学校のアメフトの試合を観戦に行く。例によって1人。ふと気が付くと近くに同じ授業を受けている上級生のパトリックを見かけ、勇気を振り絞って声を掛ける。するとパトリックは気さくに話をし、さらにそこに義妹のサムも現れる。試合後、自然に2人に誘われて店へ行く。パトリックとサムは、互いの親の再婚で家族になった義理の兄妹。それにしてもアメリカの高校生は、上級生と下級生の間の壁はなきが如しなのであろうか、同級生のような関係である。

 これを機にチャーリーの交友関係は広がっていく。パーティーでは、タイトルの通り“壁の花”となっているチャーリーだが、派手に踊るサムとパトリックに刺激され、不器用ながらダンスに加わる。さらにはパトリックとアメフト選手ブラッドのキスを目撃し、パトリックがゲイであることを知る。毎日接するのは家族のみという孤独な生活を脱し、仲間たちとの交流に喜びを感じるチャーリー。その嬉しそうな表情が何とも言えない。帰り道、トラックの荷台で腕を広げて、カセットの音楽を聴きながら風を浴びるサム。さしづめ、『タイタニック』といったところだろうか。時代が時代だから、お好みの音楽をチョイスしてテープを作っているのだが、何とも懐かしい光景である。

 チャーリーは、精神的なトラブルを抱えているが、その原因となったのは、幼い頃かわいがってくれた叔母の事故死。クリスマスの誕生日が近付くと、それを思い出して不安定になる。観ている方としては、チャーリーにはサムと付き合えばと思うのだが、サムには大学生の恋人がいる。それでも二人は良い雰囲気になり、チャーリーはサムとファースト・キスを交わす。観ているだけで微笑ましい。

 そんな若者たちの若者たちらしい様子と、チャーリーを見ていると忘れていたものを思い出すかのような感覚に陥っていく。それまで経験していなかったことを経験し、それには自分ひとりだったら絶対やらなかったようなことも含まれていて、事実チャーリーはドラッグまで経験する。一方、友人たちとの交流が増えれば予期せぬトラブルにも巻き込まれる。そうした諸々すべてが、「経験」なのである。

 誰もが通り過ぎる一時。後から振り返ってみれば、実に貴重な時代だったと気が付く。孤独だったチャーリーが、仲間たちと会って経験していく貴重な一時は、己の記憶と心の襞を刺激する。観ようかどうしようかと迷った映画だったが、観て良かったとつくづく思う。チャーリーの憧れるサムを演じるのは、『ハリー・ポッター』で成長していく姿を見てきたエマ・ワトソン。ここではもう少し成長して魅力的なティーンになっている。その存在もまたドラマに味わいをもたらしている。

 心に深く染み入ってくる映画である・・・


評価:★★★☆☆





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2017年05月14日

エージェント・ウルトラ

エージェント・ウルトラ.jpg

原題: American Ultra
2015年 アメリカ
監督: ニマ・ヌリザデ
出演: 
ジェシー・アイゼンバーグ:マイク・ハウエル
クリステン・スチュワート:フィービー・ラーソン
トファー・グレイス:エイドリアン・イェーツ
コニー・ブリットン:ヴィクトリア・ラセター
ウォルトン・ゴギンズ:ラファ
ジョン・レグイザモ:ローズ
ビル・プルマン:クルーガー

<シネマトゥデイ>
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『ソーシャル・ネットワーク』などのジェシー・アイゼンバーグ、『トワイライト』シリーズなどのクリステン・スチュワートが共演したアクション。CIAの洗脳プログラムによって工作員へと育成された青年が、巨大な陰謀と恋人に迫る危機に立ち向かう。メガホンを取るのは、『プロジェクトX』のニマ・ヌリザテ。『ロスト・ハイウェイ』などのビル・プルマン、『スパイダーマン3』などのトファー・グレイスらが脇を固める。ダメ青年から敏腕工作員へと瞬時に変貌する主人公の姿が痛快。
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 アメリカの片田舎でコンビニのバイトをしているマイク・ハウエルは、勤務中にレジでスーパーヒーローのサルを主人公にした自作漫画を描きながら、のらりくらりと日々を過ごしている。そんな彼が一念発起し、同棲相手のフィービーに最高のプロポーズをしようとハワイ旅行を計画する。しかし、出発直前になってパニック症候群の発作が起こり、飛行機に乗ることができなくなる。フィービーはそんな彼を責めることなく優しく見守る。

 一方、遠く離れたCIA本部では、マイクが地元を離れようとした動きを察知し、イェーツはこれを「処分」しようとする。それに対し、今や降格されたラセターが反対し、これを阻止しようとする。「あれはアメリカ政府の資産だ」として処分自由を宣言するイェーツと人道的観点から反対するラセター。権限では上のイェーツはラセターの反対を意にせず、エージェントを送り込む。

 イェーツに反感を持つラセターは密かに現地入りし、店番をするマイクに意味不明の言葉を囁く。マイクの中で何かが反応する。そして気が付くと、マイクの車に二人の男が何やら作業をしており、マイクが近付いていくとおもむろに銃を向けてマイクを撃とうとする。ここからの動きが素早い。今までのほほんと生きている若者だったマイクが、持っていたカップヌードルのお湯を相手にぶちまけると、スプーン1本で1人を刺殺し、あっという間にもう1人の銃を奪い取ってこれを射殺する。

 実はマイクは、CIAの極秘計画によって暗殺トレーニングを受けたエージェントだったという筋書き。思わず「トレッドストーン計画」かと思ってしまう。自分でもわけがわからないマイク。フィービーを呼んではオロオロするばかり。警察に連行されるも、そこにもさらにイェーツが送り込んだ殺人マシーン化したエージェントたちが襲いかかってくる。やがて、周囲一帯に感染が宣言され、マイクは感染者として手配されていることを知る・・・。

 格闘技とは無縁だった風采の上がらぬ男が、突然コンバットファイトの達人となってしまう。こういうギャップはなかなか面白い。しかし、このマイクであるが、なかなか目覚めが悪く、何度も窮地に陥る。そのたびに「偶然」の作用で救われるのであるが、それもまた良しかもしれない。銃撃アクションだけでなく、マイクは身の回りのあらゆるものを武器に替えて襲い来るエージェントを撃退する。観ていてなかなか爽快である。

 そしてもう一つの見どころは、クリステン・スチュアートだろう。この人は、エマ・ワトソンと並んで個人的に注目の若手女優さんである。この映画では、ちょっと格闘アクションを披露してくれたりして、なかなか楽しませてくれる。見ているだけで満足できるし、これからどんな映画に出るのか、実に楽しみである。

 あまり期待はしていなかったものの、ストーリーも意外に面白く、ひろいものをした気分の映画である・・・


評価:★★★☆☆





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2017年05月13日

ニュー・シネマ・パラダイス 完全オリジナル版

ニュー・シネマ・パラダイス.jpg

原題: Nuovo Cinema Paradiso
1989年 イタリア・フランス
監督: ジュゼッペ・トルナトーレ
出演: 
フィリップ・ノワレ: アルフレード
サルヴァトーレ・カシオ: サルヴァトーレ・ディ・ヴィータ(少年期)
マルコ・レオナルディ: サルヴァトーレ・ディ・ヴィータ(青年期)
ジャック・ペラン: サルヴァトーレ・ディ・ヴィータ(中年期)
アニェーゼ・ナーノ: エレナ
アントネラ・アッティーリ: マリア(中年期)
レオポルド・トリエステ: 神父
エンツォ・カナヴェイル: スパッカフィーコ(パラダイス座支配人)
プペラ・マッジオ: マリア(壮年期)

<シネマトゥデイ>
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イタリアの名匠ジュゼッペ・トルナトーレによる、映画史に残る至高の名作。イタリアのシチリアを舞台に、少年と映写技師が映画を通して心を通わせていく様を、感動的な音楽と繊細な人物描写で描き出す。映画に魅了された少年トト役を、サルヴァトーレ・カシオが愛くるしい演技で演じきった。年齢を超えた友情や少年時代の夢など、世代や時代を超えた人々に愛される物語に、“映画の魔法”という名の感動が存分につまっている。
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 この映画は、以前観たことがあるのだが、『キネマの神様』で「人生最良の映画」とされていたこともあって、もう一度観てみたくなったもの。しかしよく考えてみると、以前観たのは「劇場公開版(123分)」であり、そのあと出た「完全オリジナル版(173分)」は観ていない。そう考えて、改めて観た次第。

 物語は、ある老婆が離れて暮らす息子に電話をかけるところから始まる。なんともう30年も故郷に戻ってきていないという。その息子サルヴァトーレは、ローマ在住の映画監督。サルヴァトーレは母からの伝言で「アルフレードが死んだ」ことを知り、少年時代のことを思い出す・・・

 サルヴァトーレが育ったのは、シチリア島の僻地の村。母と妹と戦争に行ったまま帰ってこない父がいる。「トト」と呼ばれているサルヴァトーレは、唯一の楽しみが村のたった一つの娯楽施設である映画館の映写室に出入りし、映写技師のアルフレードの仕事を見守ること。アルフレードに怒られてもめげずに通い、アルフレードが編集したフィルムの切れ端をこっそり拾っては持ち帰っては家で独りそれを眺めている。映画のワンシーンのセリフを言いながら・・・

 そしてアルフレードの手がける編集が面白い。村の神父が事前に一人試写を観て、キスシーンがあるとそこをカットさせる。当時の人たちが、ネットで無修正ポルノ見放題の現代に来たら何を思うであろうか。村の住人たちも実にのどかで、映画の世界に一喜一憂し、キスシーンがカットされると一斉にブーイングを浴びせる。映画をみんなで心から楽しんでいる様子が伝わってくる。映画に対する愛情がそこかしこに現れている。

 そんなある時、アルフレードは小学校の試験を受けに来る。似たような大人たちがトトら「現役の」小学生と一緒に試験を受ける。問題が解けないアルフレードは、トトにカンニングを頼み、トトは映写室への出入り許可を条件にこれに応じる。微笑ましいやり取りである。こうしていつしかトトはアルフレードに映写機の操作を教わるようになる。そしてある日、当時使われていた発火しやすいフィルムが発火し、消火しようとしたアルフレードは失明の重傷を負い、映画館は焼け落ちる。

 残念がる村人たちだが、サッカーくじを当てた男がその金で映画館を再建する。新しい映画館は「新パラダイス座(Nuovo Cinema Paradiso〜原題〜)」としてオープンする。そして火傷で失明したアルフレードに代わり、トトが映写技師として働くことになる。新館長は寛大でキスシーンのカットもなくなり、村人たちもキスシーンにやんやの喝さいを送る。幸せ感が画面から零れ落ちてくる。

 映画は一転してトトの青年時代へと移る。映写機を手にし、あたりを撮影するトト。そんなある日、駅で美少女エレナを見かけ、一瞬で恋に落ちる。恋に悩むトトにアルフレードは王女と兵士の物語を聞かせる。この話がまたストーリーと絡み合ってくる。意中の女性を口説こうと思っている男なら是非参考にすべきであろう。このトトとエレナのシーンが「完全版」で追加されたところのようで、だからだろう、昔観た時と映画の印象が違う。

 そしてこの追加が個人的には味わい深いものがあった。誰にでも忘れられない異性はいるだろう。そんな相手との思い出が切ないものであるなら尚更であるが、このトトの青年時代のエピソードは心に刺さる。
「あの時何があったのか」
時が経って真実がわかるということもあるだろう。似たような経験をしている人なら、ちょっと感じ入ってしまうところかもしれない。そして長い物語はラストシーンへとつながる。

 全体的に「ノスタルジー」という一言に包まれていると言っても良い映画。そしてこのノスタルジーこそが、年を経れば経るほどに心に響くものである。映画はハリウッドだけのものではないと改めて思わされる。劇場版しか観ていない人は、是非この完全版を観ておきたいところだろう。残念ながら、「人生最良」とまではいかないが、間違いなく「個人映画史」に入れたい一作である・・・


評価:★★★★☆






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2017年05月12日

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち.jpg

原題: Miss Peregrine's Home for Peculiar Children
2016年 アメリカ
監督: ティム・バートン
出演: 
エイサ・バターフィールド:ジェイコブ・"ジェイク"・ポートマン
エヴァ・グリーン:アルマ・ルフェイ・ペレグリン
テレンス・スタンプ:エイブラハム・"エイブ"・ポートマン
エラ・パーネル:エマ・ブルーム
サミュエル・L・ジャクソン:バロン
ジュディ・デンチ:エスメラルダ・アヴォセット

<映画.com>
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『チャーリーとチョコレート工場』 『アリス・イン・ワンダーランド』のティム・バートン監督が、ランサム・リグズによる全米ベストセラー小説「ハヤブサが守る家」を映画化し、人とは異なる奇妙な能力を持った子どもたちが織りなす物語を描いたミステリアスファンタジー。周囲になじめない孤独な少年ジェイクは、唯一の理解者だった祖父の遺言に従い、森の奥にある古めかしい屋敷を見つける。そこには、美しくも厳格な女性ミス・ペレグリンの保護のもと、空中浮遊能力を持つ少女や透明人間の男の子、常に無口な双子といった、奇妙な子どもたちが暮らしていた。主人公ジェイク役は『ヒューゴの不思議な発明』で知られるエイサ・バターフィールド、ミス・ペレグリン役は『007 カジノ・ロワイヤル』 『ダーク・シャドウ』のエヴァ・グリーンが務めている。
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 ティム・バートン監督と言えば、これまでも“不思議系”の映画を数々と手掛けてきた監督だが、もう名前を聞くだけでその手の映画だろうとイメージしてしまう。そしてこの映画も、そんな期待通りの“不思議系”である。

 主人公は、フロリダ州に住むジェイク。両親と3人暮らしであるが、ある時近隣に住む祖父から電話を受ける。ただならぬ様子にすぐに駆け付けるが、家の中は荒らされ、祖父は目玉をくりぬかれて倒れている。そして一瞬目にした奇妙なモンスターの姿。祖父はそのまま死に際に謎の言葉を残して息絶える。小さい頃から祖父に不思議な話を聞かされて育ったジェイクは、ショックでしばらくカウンセリングを受ける。

 父親とともに祖父の遺品整理をしていたジェイクは、そこで幼い頃から聞かされていた「ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち」の写真やミス・ペレグリンから祖父の誕生日に送られた手紙を発見する。感じるものがあったジェイクは、父に頼み祖父に聞いたケインホルム島へ行く。そして地元の若者に教えられるまま向かった森の奥で、朽ち果てた屋敷を発見する・・・

 こうしてジェイクは、不思議な世界へと足を踏み入れる。そこはある種の「能力」を有している者にしか行くことのできない世界「ループ」であり、そこでは1943年の9月3日が永遠に繰り返されている。そしてそこにいるのは、ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち。ハヤブサに変身できるミス・ペレグリンをはじめ、怪力の少女、ふわふわと空中に浮いてしまう少女、あらゆるものに生命を吹き込む少年等々の異能力の持ち主。

 一方、祖父を殺したのはバロンという異能者に率いられたモンスター軍団。狙うは異能者の子供の目玉。こうしてジェイクは、祖父がかつて一緒に過ごしたというミス・ペレグリンと奇妙なこどもたちとバロンの陰謀に対峙することになる。この手のストーリーには、敵がいてみんなでピンチを切り抜けるというのが王道である。ジェイクもみんなそれぞれの異能を活かし、バロンと対決する。

 この異能なのであるが、その種類はみな違う。何となく観ていて既視感に覆われたのであるが、考えてみればこれは『X-MEN』シリーズと似通っているなということ。ただし、こちらの方が異能者がみんな子供ということもあって、戦いもかわいらしいものになっている。

 主人公のジェイクを演じるのは、『ヒューゴの不思議な発明』のエイサ・バターフィールド。『ヒューゴの不思議な発明』ではまだ幼い感じが残っていたが、さすがに成長している。『スーパーマン』のゾッド将軍のイメージがいまだ残るテレンス・スタンプももういいおじいちゃんである。

 祖父との幼い孫の交流。祖父の話す不思議な話に目をキラキラさせて聞き入る孫。父と子ではなく、祖父と孫という関係の持つ「深さ」もこの映画から感じるところである。我が家の子供たちにもこういう関係を持って欲しかったし、持たせてやれなかった後悔がちらりと脳裏をよぎる。

 エンターテイメントとして、純粋に楽しめる映画。ティム・バートンのこの手の作品はいつまでも観続けたいと改めて思わされる一作である・・・


評価:★★☆☆☆




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2017年05月11日

ザ・ブリザード

ザ・ブリザード.jpg

原題: The Finest Hours
2015年 アメリカ
監督: クレイグ・ギレスピー
出演: 
クリス・パイン:バーニー・ウェバー
ケイシー・アフレック:レイ・シーバート
ベン・フォスター:リチャード・リヴシー
エリック・バナ:ダニエル・クラフ
ホリデイ・グレインジャー:ミリアム・ペンティネン
ジョン・オーティス:ウォレス・クイリー
カイル・ガルナー:アンディ・フィッツジェラルド

<映画.com>
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アメリカ沿岸警備隊史上もっとも偉大なミッションとして語り継がれる「SSペンドルトン号の救出劇」を、「スター・トレック」シリーズのクリス・パイン主演で映画化したパニックアクション大作。真冬の北大西洋を史上最大級のブリザードが襲い、巨大タンカーが遭難した。真っ二つに裂けたタンカーに取り残された32人の生存者を救出するため、バーニー船長率いる4人の沿岸警備隊が出動する。定員はたったの12名という木製の小型救助艇で荒れ狂う海へと乗り出したバーニーらは、タンカーが沈むまで約3時間という厳しい状況の中、決死の救出に挑む。救助艇の船長バーニーをパインが熱演し、『ミュンヘン』のエリック・バナ、『ゴーン・ベイビー・ゴーン』のケイシー・アフレックらが共演。「ラースと、その彼女」「ミリオンダラー・アーム」のクレイグ・ギレスピーがメガホンをとった。
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 実話をベースにした映画。時に1952年2月18日未明、超大型ブリザードが到来する。大西洋沖を航行中の大型タンカー、SSペンドルトン号では一等機関士のシーバートが船長に船速を落とすように交渉している。補修した箇所が危険だというのがその理由。しかし、船長はこれを許さず、タンカーは速度を落とすことなく航行を継続。あたりは雪混じりの強風と大きくうねる波。船体が不気味に軋む・・・

 やがて大きく上下したかと思うと、ついに亀裂から浸水が始まる。艦橋との連絡が取れず、シーバートは伝令を向かわせるが、その伝令が見たのは真っ二つに裂けた船体。船首側が離れて漂流していく様は、なかなかの迫力。船内では救命ボートでの脱出を主張するグループが出るが、タンカーの構造に精通するシーバートは、沈没を食い止め救助を待つのがいいと主張する。

 その頃、沿岸警備隊チャタム支局では、SSペンドルトン号遭難の知らせが入り、司令官クラフは、生存者救出に向かうよう一等水兵のバーニー・ウェバーに命じる。主人公のバーニーは、前年救助に失敗して死者を出している。この命令を受けてリヴシー、フィッツ、マスキーとともに救出に向かう。しかし、湾から出るのに荒れ狂う砂州を通過するのは自殺行為だとベテランの隊員たちはバーニーを止める。

 ここで登場する主人公のバーニーは、友人に背中を押されてようやく女性に声をかけられるような大人しいタイプの男。ベテランの隊員たちは、迷ったふりをして戻ってこいとバーニーに諭す。司令官のクラフは砂州の危険性を理解していない。バーニーは、苦悶の表情の内面の葛藤を語る。自分だったらどうするだう?司令官が明らかに現場を熟知していなくて、危険なミッションを命じられたら・・・現実にそうなったら、なかなか映画の主人公のような行動はとれないだろう。だが、実際のバーニーは、仲間とともに出航し、砂州に向かって救命艇を進める。

 荒れ狂う海に乗り出す救命艇は12人乗り。タンカーに残された船員たちはどう見てもそれ以上いる。救出できるのかと観ているこちらが心配になる。そして荒れ狂う砂州越えは、なかなかの迫力。翻弄される小型艇は波でコンパスを持っていかれる。いつひっくり返ってもおかしくない。ベテランのアドバイスはまさに的確である。そしてそんな砂州を前にしてもミッションを遂行しようとするバーニーと彼の判断を尊重してついて行く仲間たち。なかなか胸の熱くなるところである。

 一方で、半分になった船体をなんとか維持しようと奮闘するシーバート。こちらももう1人の主人公である。困難な状況下においても冷静な判断を下す。こういう時にいかに冷静に行動できるか。こういう時に、普段の心構えがモノを言うと思う。つくづく短絡的に行動するのではなく、「知恵と勇気」が必要だと思わされる。こうして行われた救出劇。なんとアメリカ沿岸警備隊史上最も困難なミッションだったと認定されたと言う。映画化したくなるのも頷けるし、その顛末は実に感動的である。

 救助した方とされた方と、共に困難な環境の中で諦めずに生への努力を続けたことが成功要因だったのであろう。胸のすくような感動的なドラマであるが、バーニーとシーバートという2人の主人公の行動が、ビジネスにおいても生きるヒントになると思う。実話の持つ力を迫力ある映像で肉付けした、映画の良さをまさに現したような映画である・・・


評価:★★★☆☆





posted by HH at 00:00 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 実話ドラマ