2017年09月17日

【この世界の片隅に】

この世界の片隅に.jpg

2016年 日本
監督: 片渕須直
出演: 
のん:北條(浦野)すず
細谷佳正:北條周作
尾身美詞:黒村径子
稲葉菜月:黒村晴美
牛山茂:北條円太郎
新谷真弓:北條サン
小野大輔:水原哲
岩井七世:白木リン
潘めぐみ:浦野すみ

<映画.com>
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第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞したこうの史代の同名コミックを、「マイマイ新子と千年の魔法」の片渕須直監督がアニメ映画化。第2次世界大戦下の広島・呉を舞台に、大切なものを失いながらも前向きに生きようとするヒロインと、彼女を取り巻く人々の日常を生き生きと描く。昭和19年、故郷の広島市江波から20キロ離れた呉に18歳で嫁いできた女性すずは、戦争によって様々なものが欠乏する中で、家族の毎日の食卓を作るために工夫を凝らしていた。しかし戦争が進むにつれ、日本海軍の拠点である呉は空襲の標的となり、すずの身近なものも次々と失われていく。それでもなお、前を向いて日々の暮らしを営み続けるすずだったが……。能年玲奈から改名したのんが主人公すず役でアニメ映画の声優に初挑戦した。公開後は口コミやSNSで評判が広まり、15週連続で興行ランキングのトップ10入り。第90回キネマ旬報トップテンで「となりのトトロ」以来となるアニメーション作品での1位を獲得するなど高く評価され、第40回日本アカデミー賞でも最優秀アニメーション作品賞を受賞。国外でもフランスのアヌシー国際アニメーション映画祭の長編コンペティション部門で審査員賞を受賞した。
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物語は昭和8年から始まる。主人公の浦野すずは、広島で3人兄弟の真ん中、浦野家の長女として生まれ育つ。天真爛漫でのんびりした性格のすず。それは時代と地域との背景によくマッチしている気がする。街に出て迷子になり人さらいの怪人に会ったり、座敷わらしに出会ったりというエピソードが描かれるが、それが物語でどういう位置付けなのかはよくわからない。

すずは絵を描くことが大好き。されど貧しい家計で、筆箱の中のたった一本残った持てないくらい短い鉛筆を大事に使う様子が、父から聞いた子供の頃のエピソードと重なる。日本全国、同じような光景が見られたのかもしれない。そんなすずも18歳になると嫁入りの話が来る。相手は呉の北條家の長男で、海軍で働く周作。いつの間にかすずを見初めての申し入れであった。これも時代を彩るエピソードである。

祝言を挙げ、嫁いだすず。幸い病弱な姑は穏やかで、すずは嫁姑の苦労は少ない。その代り小姑である周作の姉径子の当たりはきつく、すずは慣れない中、頭にハゲができたりする。夫の死後、実家に帰ってきた径子には長女晴美がおり、すずは一緒に遊んだり、絵を描いたりと楽しく過ごす。

こんなすずの日常がのんびりと描かれていく。そんな物語は、時代を表すエピソードが個人的には興味を引く。砂糖壺を水の中に流してしまったすずは、姑に金をもらい呉の闇市へ行く。時代は既に配給が始まっている。日中戦争の最中であるが、すずの日常に戦争の影は物資の不足ぐらい。闇市も既にあったようである。帰り道には道に迷い、どうやらそこは遊郭なのだが、うぶなすずはそれに気がつかない。

昭和20年になると、いよいよ軍事基地がある呉にも空襲が頻発し、北條家でも防空壕を掘る。義父も空襲で大ケガをして町の病院に入院すると、すずの生活にも戦争が及んでくる。晴美は軍港の艦船を指さし、名前をいい当てたりして無邪気である。そして義父の見舞いに行った帰り道、米軍の空襲に遭遇し、悲劇が起こる・・・

戦時下を描いたアニメというと、『火垂るの墓』が思い起こされる。子供が小さい時に観てしまったため、個人的には衝撃が大きかった映画だが、この映画はそれほどの内容ではない。それでも戦時下の暮らしが垣間見れて興味深い。のんびりしたすずの性格の心地良さもあるかもしれない。実に日本的なアニメ映画である。

穏やかでのんびりした性格のすずが、そのままであれば何の波乱もない人生を歩んでいたのかもしれないのに、否応無しに戦争に巻き込まれて行く。そして好きだった絵も描けなくなってしまう。体ばかりか心にまで傷を負うすず。広島の実家では妹だけがかろうじて生き残るが、すでに原爆症の症状が出ている。直接的には何も訴えないものの、静かなる反戦の声が聞こえてきそうな物語。

世界のほんの片隅でひっそり生きていたはずのすずだが、物語の中では世界の中心。おそらくみんなそんな「片隅」に生きているのだと思う。静かに心に染み入る映画である・・・


評価:★★☆☆☆




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2017年09月16日

【LOGAN ローガン】

LOGAN ローガン.jpg

原題: Logan
2017年 アメリカ
監督: ジェームズ・マンゴールド
出演: 
ヒュー・ジャックマン:ローガン/ウルヴァリン
パトリック・スチュワート:チャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX
ボイド・ホルブルック:ドナルド・ピアース
スティーブン・マーチャント:キャリバン
ダフネ・キーン:ローラ
リチャード・E・グラント:ドクター・ライス
エリック・ラ・サール:ウィル・マンソン
エリゼ・ニール:キャスリン・マンソン
エリザベス・ロドリゲス:ガブリエラ
クインシー・フォース:ネイト・マンソン

<シネマトゥデイ>
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『X-MEN』シリーズのウルヴァリンが、傷つきながらもミュータント存亡の危機を救おうと突き進む姿を描くアクション大作。超金属の爪と超人的な治癒能力を持つ不老不死のヒーロー、ウルヴァリンが老いて傷跡残る体で、ミュータントの未来の鍵を握る少女を守るべく戦う姿を活写する。主演をシリーズ同様ヒュー・ジャックマンが務め、監督を『ウルヴァリン:SAMURAI』などのジェームズ・マンゴールドが担当。能力を失ったウルヴァリンの衝撃の姿と壮絶なバトルに注目。
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『X-MEN』シリーズのスピンオフとして、『ウルヴァリン:X−MEN ZERO』『ウルヴァリン:SAMURAI』に続く第3弾。19世紀にカナダで生まれたローガン(ウルヴァリン)であるが、時代を経て時に2029年となっている。そんな彼の現在の仕事はリムジンの運転手。

冒頭、車内で仮眠をしているローガンは、物音で目が覚める。それは車の部品を盗もうとしていた男たちの立てていた物音。ローガンはやめるように言うものの、数を頼みに動じない車両強盗。いきなりローガンを銃撃する。これに対しローガンは、鉄の爪であっという間に3人を殺害する。ところが、不死身のはずのローガンの様子がおかしい。負傷した傷は昔のようには治らず、咳も酷い。

そんなローガンが暮らしているのは、メキシコ国境近くの廃工場。そこではなんと年老いたプロフェッサーXことチャールズの介護をミュータント仲間のキャリバンと共にしている。チャールズもいまや認知症を患い、薬の投与が不可欠な状態となっている。そしていったん発作が起きると、その能力が暴走し周囲にいる人間を麻痺させてしまう事態になってしまう。ローガンも目を離せないわけである。

ある日、ローガンは見知らぬ女性から助けを求められるが、ローガンはこれを無視する。そしてその後、ピアースという男がローガンを訪ねてくると、その女性を見つけたら連絡するようにと告げていく。何やらきな臭い臭いが漂う。その女性は諦めず、今度は迎車の依頼を装ってローガンを呼び出すと、ローラという名の少女を連れていて、カナダ国境まで送るように依頼する。5万ドルの報酬を提示され、チャールズの薬代もあって、ローガンはこれを引き受ける・・・

時にミュータントの数が減少している世界。もうミュータントの子供が生まれなくなって久しい。そんな時、ローガンの前に連れてこられた少女ローラは、手から鉄の爪を出し、そしてどうやらトカゲのしっぽ並みの自然治癒能力をも有している。実に興味深い展開である。そしてこれまで無敵を誇っていたローガンが、体に打たれたアダマンチウムの副作用で弱々しくなっている。それでも正体不明の敵は遠慮なく襲ってくる。

年老いて見る影もないチャールズ。かつての力が衰えてしまったローガン。物語には終焉の雰囲気も漂う。そしてローガンと同じ能力を持つ少女ローラ。おそらくそれまでまともな教育を受けたことのないローラは、人を殺すことに微塵の躊躇も見せないが、ホテルで観ていた名作西部劇『シェーン』で何かを学んでいく。シェーンは、母子を守るために敵を倒したが、だからといって正当化される殺人はないと語る。

これまで常に相手を倒してきていたローガンだが、これでスピンオフ三部作も終焉ということなのだろう。そしてチャールズやそのほかのメンバーも2029年の世界から退場していくとなれば、時間軸的にはこのシリーズも終わりなのかもしれない。ちょっと寂しい終わり方なのであるが、このシリーズはやっぱり面白い。スピンオフはともかく、本体の方は存続してほしいと思うところである。

スピンオフの最終作として、満足したい一作である・・・


評価:★★☆☆☆




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2017年09月15日

【シン・ゴジラ】

シン・ゴジラ.jpg

2016年 日本
監督: 庵野秀明
出演: 
長谷川博己:矢口蘭堂(内閣官房副長官・政務担当)
竹野内豊:赤坂秀樹(内閣総理大臣補佐官・国家安全保障担当)
石原さとみ:カヨコ・アン・パタースン(米国大統領特使)
高良健吾:志村祐介(内閣官房副長官秘書官[防衛省])
大杉漣大:河内清次(内閣総理大臣)
柄本明:東竜太(内閣官房長官)
余貴美子:花森麗子(防衛大臣)
市川実日子:尾頭ヒロミ(環境省自然環境局野生生物課長補佐)
國村隼:財前正夫(統合幕僚長)
平泉成:里見祐介(農林水産大臣)
松尾諭:泉修一(保守第一党政調副会長)

<映画.com>
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「ゴジラ FINAL WARS」(2004)以来12年ぶりに東宝が製作したオリジナルの「ゴジラ」映画。総監督・脚本は「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」の庵野秀明が務め、『のぼうの城』「進撃の巨人 ATTACK ON TITAN」の樋口真嗣が監督、同じく「のぼうの城」「進撃の巨人」などで特撮監督を務めた尾上克郎が准監督。14年のハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』に登場したゴジラを上回る、体長118.5メートルという史上最大のゴジラをフルCGでスクリーンに描き出し、リピーターが続出するなど社会現象とも呼べる大ヒットを記録。興行収入は81.5億円に上り、第40回日本アカデミー賞では作品賞、監督賞ほか7部門で最優秀賞を受賞した。ある時、東京湾アクアトンネルで崩落事故が発生。首相官邸で開かれた緊急会議では、地震や海底火山の噴火など事故原因をめぐって議論が紛糾する。そんな中、内閣官房副長官の矢口蘭堂は、海底に正体不明の巨大生物が生息し、それが事故の原因ではないかと推測するが……。矢口役の長谷川博己、内閣総理大臣補佐官・赤坂秀樹役の竹野内豊、米国大統領特使カヨコ・アン・パタースン役の石原さとみをメインに総勢328人のキャストが出演し、狂言師の野村萬斎がゴジラのモーションキャプチャーアクターとして参加した。
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「ゴジラ」映画は、近年いろいろと創られているイメージがある。それはハリウッド版『GODZILLA ゴジラ』の登場で、「ついにそこまできたか」と思ったものであるが、本家がさらに追撃してきたのがこの作品。しかし、この映画はいままでの「ゴジラ」ものとはちょっと趣が異なっていた。

東京湾羽田沖で大量の水蒸気が噴出する。また、同時に海底を通る東京湾アクアラインでもトンネル崩落事故が発生する。政府は原因を海底火山か熱水噴出孔の発生と見て対応を進める。しかし、主人公の矢口蘭堂内閣官房副長官は、ネット上の一般人による配信動画や目撃報告から、巨大生物に起因している可能性を主張するが、突拍子もない意見は受け入れられない。

やがて巨大な尻尾部分がテレビ報道されたため、政府は巨大生物説を採用せざるを得なくなる。出現した巨大生物は、多摩川河口から東京都大田区内の呑川を這いずるように遡上し、蒲田で上陸、さらに周辺の建物を破壊しながら進んでいく。政府はこの事態に対し、自衛隊に害獣駆除を目的とした出動を要請する。

今回のゴジラの登場は、当初ゴジラとは似ていなく、しかも歩行せずに這う形で移動するので、てっきりゴジラと戦う怪獣なのかと思っていたら、実は進化の途中でこれがのちになじみのあるゴジラへと進化して行くのだとわかる。このあたりは、なぜゴジラが誕生したのかという理由の説明にもなっていて、ストーリーをしっかり作っているという感じがする。

観ていくうちに、いつもの「ゴジラ映画」としての違和感を覚えていく。というのも、描かれていくのは、矢口内閣官房副長官を中心とした官僚、政治家の行動で、ゴジラはその材料を提供しているに過ぎないからである。予期せぬ緊急事態の発生に政府はどのように行動するのか、各官僚の報告の様子、政治家の反応がそれぞれ興味深い。

こうした事態に対し、場合によっては立法手続きも必要となる。巨大生物を駆除するとなり、自衛隊に出動を要請するが、場所は東京の市街地の中であり逃げ遅れた市民がいる可能性もある。そうした中で攻撃命令は簡単に下せない。総理大臣も大きな判断を求められるわけで、こうした緊迫したやり取りが面白い。

ゴジラの進化が最終形になると、自衛隊だけでは手に負えず、米軍の出動となる。米国より大統領次席補佐官および大統領特使が極秘裏に来日し、独自に取得していた情報をもたらす。被害地域で微量の放射線量の増加が確認され、ゴジラが放射線源だと判明する。米軍のF35が攻撃を開始するが、ゴジラの反撃にあって全滅する。口から炎を吐き、背びれから熱線を発し、飛来するものをすべて破壊してしまう。このあたりはゴジラ映画を踏襲している。

事態は国連安全保障理事会にまで上げられ、そこで重大な決定がなされる。米国と日本との一見対等ながらいまだに「占領政策」が続いている問題も描かれ、ゴジラ映画という範疇には当てはまらない。どちらかというと、国家の緊急事態を扱ったパニック映画という意味合いが強い。そしてそこからは、我が国の政府組織の姿が見て取れて興味深い。そこにはリアリティがあるのである。

ゴジラ映画でありながら、主役をゴジラではなく政府官僚ら人間においたところがこの映画のミソであろう。映像の迫力もさることながら、人間ドラマがこの映画の魅力だろうと思う。そういう意味で、単なる「怪獣映画」に分類したくない、実に面白い一作である・・・


評価:★★★☆☆





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2017年09月10日

【ゴースト・イン・ザ・シェル】

ゴースト・イン・ザ・シェル.jpg

原題: Ghost in the Shell
2017年 アメリカ
監督: ルパート・サンダース
出演: 
スカーレット・ヨハンソン:ミラ・キリアン少佐
ピルウ・アスベック:バトー
ビートたけし:荒巻
ジュリエット・ビノシュ:オウレイ博士
マイケル・カルメン・ピット:クゼ
チン・ハン:トグサ
ダヌシア・サマル:ラドリヤ
ラザルス・ラトゥーエル:イシカワ
泉原豊:サイトー
タワンダ・マニモ:ボーマ
ピーター・フェルディナンド:カッター
アナマリア・マリンカ:ダーリン
桃井かおり:草薙素子の母

<シネマトゥデイ>
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『スノーホワイト』などのルパート・サンダーズが監督を務め、士郎正宗のSF漫画「攻殻機動隊」を、スカーレット・ヨハンソンやビートたけしらを迎えて実写映画化。近未来を舞台に、脳以外は全身義体の少佐が指揮する捜査組織公安9課の活躍を描く。『イングリッシュ・ペイシェント』などのジュリエット・ビノシュや『シルク』などのマイケル・ピットらが共演。敵と対峙する公安9課を、どのように描くのかに注目。
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『攻殻機動隊』のハリウッド実写版とあって、興味津々で観た映画。主演がスカーレット・ヨハンソンというところも魅力的である。

冒頭、1人の女性が死の間際にあり、かろうじて脳を取り出し義体に組み込まれる。そして彼女は復活し、公安9課に配属される。脳以外は全て義体化されたミラ・キリアン少佐は、ある会合を監視している。そして何者かが会合参加者を襲撃する。芸者型のロボットが登場し、ミラがたちまちのうちに襲撃者を一掃する。ツカミとしては期待値を上回る。

公安9課が追うのはハンカ・ロボティックス社の推し進めるサイバー技術の破壊をもくろんだテロ事件。科学者たちが次々と襲われていく。少佐は同僚のバトーらと共に捜査にあたるが、やがて一連の事件を起こしているのは「クゼ」という男だとわかる。破壊した芸者ロボットに「ダイブ」し、危うく命を落としそうになりながらも、少佐はあるナイトクラブを突き止める。

そこはヤクザが仕切る場所。少佐はたちまちヤクザに目をつけられ、バトーとともに大乱闘。ここでの少佐の電脳アクションがまたいい。そしてクゼが潜んでいる部屋を突き止めるが、逆にトラップにかかり、2人は吹き飛ばされる。バトーをかばった少佐は爆風を受けて「壊れる」がすぐに「修理」される。生身のバトーは両目を失い、トレードマークのゴーグルの義眼になる。

『攻殻機動隊』の実写版と言っても、ストーリーや設定は微妙に違う。何より少佐の名前はミラ・キリアンで草薙素子ではない(その違いの理由は後々明かされる)。ストーリーも微妙に異なる。まあ、あまり同じと考えずに、これはこれで観るのがいいのだろう。

それでも相棒のバトーはちゃんと出ているし、上司の荒巻を演じるのはビートたけしだ。見所は多々ある。荒巻と少佐の会話は、日本語と英語。荒巻が巻き舌の日本語で話し、少佐がそれに英語で答える。来るべき近未来はこんな様相なのかもしれないと、ふと思う。ゴミ収集車に襲撃されるエピソードもしっかり描かれている。

ゴミ収集車のエピソードでは、襲撃者は見事に脳をハッキングされ、記憶を移植されている。結婚したことなどない男なのに、家族の話をしている。記憶とは何なのか。脳だけが生身の体ですべて義体となったら、人と呼べるのか。まったく違う記憶を植えられたらどうなるのか。来るべきAI社会に向けて、人間とは何を持って人間と定義すべきなのか。エンターテイメントながら哲学的な問いかけがなされるのは、オリジナルと変わっていない。

アニメ版とはまた違う趣。今やどんなものでも映像表現できるので、下手なアニメよりも迫力が違う。これはこれで、十分に堪能できる。
満足できる一作である・・・


評価:★★★☆☆





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2017年09月09日

【パシフィック・ウォー】

パシフィック・ウォー.jpg

原題: USS Indianapolis: Men of Courage
2015年 アメリカ
監督: マリオ・ヴァン・ピーブルズ
出演: 
ニコラス・ケイジ:チャールズ・B・マクベイ3世大佐
トム・サイズモア:マクウォーター
トーマス・ジェーン:エイドリアン・マークス大尉
マット・ランター:バマ
ジェームズ・レマー:エイドリアン・パーネル提督
ブライアン・プレスリー:ワックスマン
竹内豊:橋本以行
ジョニー・ワクター:コナー
アダム・スコット・ミラー:ダントニオ
コディ・ウォーカー:ウェスト
コラード・ハリス:スタンディッシュ大尉

<Movie Walker解説>
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ニコラス・ケイジが、太平洋戦争で米軍の巡洋艦を率いて戦った艦長に扮した戦争映画。太平洋戦争末期、米軍の巡洋艦インディアナポリスのマクベイ艦長は、極秘任務を指示される。それは、長い戦争に終止符を打つために開発された原子爆弾の輸送だった……。共演は「プライベート・ライアン」のトム・サイズモア、「ミスト」のトーマス・ジェーン。『ワイルド・スピード SKY MISSION』で故ポール・ウォーカーの代役を務めた弟コディ・ウォーカーが、本格的なスクリーンデビューを飾った。監督は『レッド・スカイ』のマリオ・ヴァン・ピーブルズ。
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実話をベースとした戦争映画である。
時に太平洋戦争末期の1945年。アメリカは日本との戦争を終結させるため原子爆弾の使用を決断、巡洋艦インディアナポリスに原子爆弾をテニアン島の基地へ運搬するという極秘任務を与える。通常、巡洋艦は対潜戦闘が不得意であり、駆逐艦の護衛を受けて行動するものであるが、極秘任務と船速の違いから、単独での行動を命じられる。チャールズ・B・マクベイ3世艦長の指揮のもと、艦は無事テニアン島に到着し任務を遂行する。

艦は次の目的地へと出発する。極秘行動は続いていて、駆逐艦の護衛はない。そしてそんなインディアナポリス号を日本海軍の伊号第五十八潜水艦が発見する。橋本艦長は、すぐに魚雷攻撃を決断、見事インディアナポリス号に魚雷を命中させる。浸水が始まり、大混乱の艦内。もはや復旧は困難であり、マクベイ艦長は総員退艦を指示。やがて艦は『タイタニック』のように真っ二つに折れ、海中へと沈んでいく。

マクベイ艦長をはじめとして、クルーの8割はこの時点でまだ生き残っている。しかし、試練はこれで終わらない。『タイタニック』では北極海の冷たい海が生存者の命を奪っていった。それに対し、インディアナポリス号が沈没したのは南海の海。海水温は高いが、その代わりに生存者たちに襲いかかってきたのはサメ。飢えと喉の渇き、そして獰猛なサメの襲撃により、クルー達は次々と命を落としていく・・・

一見、地球上では万能である人間も、海で放流している時は実に無力である。波間に漂うだけで、サメには対抗できない。襲われないようにしているしかない。さらに上空を飛ぶ友軍機からは小さ過ぎて発見してもらえない。先の見えない恐怖と戦う際に必要なのは、やはり強靭な精神力だろうかと、ふと思う。

それにしても大戦末期にはほぼ壊滅状態にあった帝国海軍であるが、伊号潜水艦がアメリカの巡洋艦を撃沈していたと言う事実には驚かされた。伊号潜水艦には人間魚雷回天を搭載している。最初は商船を回天で狙うが、これを外してしまう。回天は発射したら命中しても外れても搭乗員は生きて戻れない。『出口のない海』で描かれていたことが脳裏をよぎる。艦長は家族の写真を見せてもらっていた搭乗員の顔を見ると、通常魚雷での攻撃を指示する。

この後、様々な思惑があって、マクベイ艦長は裁判にかけられる。この映画の主眼はどこだったのか。撃沈されて漂流しているところか、戦後のいわれなき裁判のことか。それが何となくはっきりせず、面白みを損ねたところのような気がする。
映画の中の解説では、当初インディアナポリス号には1,100名以上の乗組員がいたようである。それが沈没時には900人を割り、最終的に救助されたのは370人ほどだったというから、かなりの惨劇である。それがちょっと伝わってこなかった。
原題とはかけ離れた邦題も例によって映画の内容からは外れてピンボケしているし・・・

ニコラス・ケイジの熱演ではあったが、ちょっと残念だった戦争映画である・・・


評価:★★☆☆☆





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2017年09月08日

【ディバイナー 戦禍に光を求めて

ディバイナー 戦禍に光を求めて.jpg

原題: The Water Diviner
2014年 オーストラリア・アメリカ・トルコ
監督: ラッセル・クロウ
出演: 
ラッセル・クロウ: ジョシュア・コナー
オルガ・キュリレンコ:アイシェ
ジェイ・コートニー:シリル・ヒューズ中佐
ユルマズ・エルドガン:ハーサン少佐
セム・イルマズ: ジェマル軍曹
ライアン・コア:アーサー・コナー
ジェームズ・フレイザー:エドワード・コナー
ベン・オトゥール:ヘンリー・コナー
イザベル・ルーカス:ナタリア

<Movie Walker解説>
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ラッセル・クロウが戦争で行方不明になった3人の息子を捜す父親を演じ、初めて監督も務めた人間ドラマ。イギリスら連合国軍の一員として参戦し、多くのオーストラリア人が遠い異国トルコの地で戦った、第1次世界大戦のガリポリの戦いを、オーストラリアとトルコの双方の視点から忠実に描いている。
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史実をベースにしたという映画。物語は1915年、第一次世界大戦中のトルコから始まる。ヨーロッパ戦線と同じような塹壕に待機するトルコ軍。ハーサン少佐の指示で一斉に突撃を開始する。そして対峙していたオーストラリア、ニュージーランドの連合軍は敗退していく。この「ガリポリの戦い」は、実は世界初の大規模上陸作戦だったという。また、オーストラリアとニュージーランドにとって、この「ガリポリの戦い」は本格的な戦争として初めての参戦だったという。今でも上陸した日である4月25日は「ANZAC Day」として国民の祝日になっているそうである。そんな歴史的な戦いが背景として描かれる。

それから4年。主人公の農夫ジョシュア・コナーは、妻と2人でオーストラリアの荒野で暮らしている。ジョシュアは、ダウジングで地下の水脈を見つけるのを得意としている。原題はここから来ている。そのジョシュアは、ガリポリの戦いで三人の息子を失っている。その心労から妻のエリザは精神を病み、ついにはジョシュアが掘り当てた水場で入水自殺をしてしまう。たった一人取り残されたジョシュアは、妻との約束を思い出し、息子達を捜しにトルコへと向かう。

大戦は終わったものの、ギリシャ軍の侵攻などがありトルコ国内には混乱が残る。やっとの思いでイスタンブールに着いたジョシュアは、客引きの子供にある未亡人が経営する宿へ強引に案内される。 宿の女将アイシェは、ガリポリの戦いで夫を失っており、敵国人であったジョシュアを快く思わないが、しぶしぶ受け入れる。アイシェは、妻子ある男に第二夫人としてのプロポーズを受けている。

さっそく、ガリポリに渡ろうとするジョシュアだが、現地は戦没者の埋葬部隊が出動しており、管轄するイギリス軍からは許可が下りない。しかし、戦死した息子を探す姿に同情を受け、漁師によって現地へと密かに連れて行ってもらう。最初は追い返されようとしたジョシュアだが、イギリス軍のシリル中佐から現地に詳しいトルコ軍のハーサン少佐を紹介される。 ジョシュアは水脈を探し当てる要領で、なんと次男と三男の亡骸を探し当てる・・・

この映画は、ラッセル・クロウが主演しているが、何と監督も初めて手掛けているという。ガリポリの戦いというマイナーな事件を背景としていて、地味だなと思っていたのだが、どうやらラッセル・クロウがオーストラリア出身ということも製作の背景にはあるのだろう。戦死した息子の遺骨を探す旅なんて、考えただけでも絶望的な気分になる。

主人公のジョシュアは、おそらく人生で大きな争いごともなくそれまで平穏に暮らしてきたであろうことが何となく想像される人物。物静かで、真摯な姿は敵国人であったトルコ人の女将アイシェやハーサン少佐の心を惹きつけていく。アイシェも夫を失い、ハーサン少佐も大勢の部下を失い、そんな哀しみを心に持った人たちがドラマを織りなしていく。

事実をベースにしているとはいえ、そこはエンターテイメントである映画。ドラマチックな展開もありながら物語は進み、そして最後に小さな希望を残す。いつの世も戦争は悲劇ではあるが、登場人物たちに小さな明るさを残して映画は終わる。静かな、そしてしみじみとした味わいの映画である・・・


評価:★★☆☆☆




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2017年09月03日

【真夜中のカーボーイ】

真夜中のカーボーイ.jpg

原題: Midnight Cowboy
1969年 アメリカ
監督: ジョン・シュレシンジャー
出演: 
ジョン・ヴォイト:ジョー
ダスティン・ホフマン:ラッツォ
シルヴィア・マイルズ:キャス
ジョン・マクギヴァー:オダニエル
ブレンダ・ヴァッカロ:シャーリー
バーナード・ヒューズ:タウニー
ルース・ホワイト:サリー

<映画.com>
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「ダーリング」「遥か群衆を離れて」のジョン・シュレシンジャー監督による異色作品。虚飾の大都会ニューヨークの混沌から、必死に浮かび上がろうとする2人の若者の物語。ジェームズ・レオ・ハーリヒーの作品を、ウォルド・ソルトが脚色した。撮影はコマーシャル出身のアダム・ホレンダー、音楽はジョン・バリー、編集はヒュー・A・ロバートソンが担当。製作にはジェローム・ヘルマンが当たっている。出演は『卒業』でスターとなったダスティン・ホフマン、舞台出身のジョン・ヴォイト。共演はベテランのシルヴィア・マイルズ、ブロードウェイ女優ブレンダ・ヴァッカロ、「ニューヨーク泥棒結社」のジョン・マクギバー、バーナード・ヒューズなど。
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時折、過去の名作を鑑賞している。この映画も昔観た記憶があるのだが、もうすっかり忘れてしまっている。それはすなわち、「観ていない」のと同じ気もする。それも残念であるし、そう思って鑑賞に至る。

物語は、ジョー・バックが、カウボーイのいでたちを身にまとうところから始まる。それまでやっていたのであろう皿洗いの仕事を投げ出し、テキサスからニューヨークへと向かう。長距離バスでの移動は当時の常識なのか、あるいは彼にはお金がなかったのかと思い巡らす。そしてニューヨークへ出てきて何をするのかと思いきや、なんと金持ちの夫人達を相手にして金を稼ごうというもの。娼婦ならぬ男娼である。

なにせ、アンジョリのお父さんジョン・ボイトである(唇の厚さは父娘である)。大して二枚目だとは思えないのであるが、本人はいたって真剣。何人かに振られはしたものの、何とか最初の客を掴む。ところが、いざ20ドルを請求すると泣きが入り、タクシー代として逆に金をあげてしまう始末。そんな時、ジョーはラッツォと名乗る足の不自由な男と知り合う。

ラッツォは、ジョーのマネージャーをやるとして、まず顔役だと言う男を紹介する。しかしこれがとんだ食わせ物で、ジョーはだまされたとわかったものの後の祭り。やがて彼は金が尽きてホテルを追い出されてしまう。そしてなんとかラッツォを見つけ出したジョーであるが、ラッツォもまた文無しで、住んでいるのは取壊し予定のビルの廃屋のような一室であ流という始末。行くあてのないジョーは、やむなくそこに同居することにする。

改めてコンビを組んだジョーとラッツォは、ジョーを男娼として売り込みを始めるが、思うようにうまくいかない。そうこうするうちに、ラッツォは次第に不調を訴え衰弱していく。そしていつの間にか、ジョーはラッツォを養いながら辛うじて生計を立てていく。病院へ行こうと促すも、それを拒絶するラッツォは、フロリダに行く夢を語る・・・

地方から夢見て大都会ニューヨークへやって来る一人の男。テキサスの田舎で皿洗いして終わることを考えたら、その志や良しなのかもしれない。だが、何をするとなった時に「男娼」というのはいかがなものかと思う。それで生計が成り立つと考えていたジョーは、つくづくノー天気なのかもしれない。そしてそんな男と一緒に暮らし始める足の不自由な男ラッツォ。無骨な男と小柄でよくしゃべる男という組み合わせは、何となく雰囲気的に『スケアクロウ』を彷彿とさせる。もっとも時代的にはこちらの映画の方が先であるが・・・

『スケアクロウ』のアル・パチーノにあたるのがダスティン・ホフマン。当時既に『卒業』でメジャーになっていたと思うが、まだ若くて輝いているように見える。足が不自由という設定で、ぴっこを引きながら歩く。どことなく憎めない雰囲気で、田舎者のジョーは次第に彼を信用していく。先の見えない2人の暮らしは、いかにも不安定なのであるが、見えない未来に徒手空拳で対峙する、それが若さなのかもしれない。

観終えてみると、何となく覚えていたのはラストの結末ぐらいで、果たして本当に観たのかと自分自身怪しくなる。されど、時を経て改めて観てみると、何となく味わいのある映画である。「名画」と評価されるのもよくわかる。そういう過去の名作が他にもあるかもしれない。
そういう目で、過去の映画にも目を向けたいと思わされたのである・・・


評価:★★☆☆☆





posted by HH at 00:00 | 東京 ☀ | Comment(0) | ドラマ