2012年05月20日

ノルウェーの森

ノルウェーの森.jpg


2010年 日本
監督: トラン・アン・ユン
原作: 村上春樹
出演: 松山ケンイチ/菊地凛子/水原希子/高良健吾/霧島れいか/玉山鉄二

<STORY>********************************************************************************************************
親友・キズキを自殺で失ったワタナべは、東京で大学生活を送り始める。
ある日、ワタナベは偶然にキズキの恋人だった直子と出会い、毎週直子と東京の街を散歩するようになる。
しかし、直子の20歳の誕生日、精神的に不安定になった直子と夜を共にする。
それ以来、ワタナベは直子と連絡がとれなくなってしまう。
さらに喪失感が深まり心を病んだ直子は、京都の療養施設に入所していたのだ。
直子に会いたくても会えない状況の中で、ワタナベは大学で出会った不思議な魅力を持つ女の子・緑にも惹かれていく。
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村上春樹原作小説の映画化。
機会があれば一度読んでみようと思いながら、ずるずると月日を過ごし、先に映画を観る事になった。
若者のあてどなく揺れ動く心が、共感を持って伝わってくる気がする物語である。

舞台は1960年代。
高校生のワタナベは、親友キズキとその幼馴染みであり恋人でもある直子と楽しい日々を過ごしている。
ところが、キズキが突然自殺してしまう。

東京で大学生活を送り始めたワタナベ。
周囲は学園紛争で騒然としているが、ワタナベは一人読書の世界に没頭している。
そして偶然直子と再会する。
直子はキズキの自殺によって心を病んでいたが、ワタナベとの再会で少しずつ回復に向かう。
しかし20歳の誕生日、初めてワタナベと結ばれた夜、何気ないワタナベの一言で直子はワタナベの下を去ってしまう。

寮で一緒のプレイボーイの先輩とともに女の子と遊んだり、緑という女の子と知り合い親しくなっていき、心の病から療養施設に入った直子にも会いに行き、ワタナベの生活は女の子が常に入れ替わり占めていく。
ただの女好きに見えるが、ワタナベはそれぞれと真剣に生きている感じがする。
たぶん、そうなのであろう。
そんな若者の心理がよく伝わってくる。

主演は松山ケンイチ。
「カムイ外伝」のカムイの印象が残っているが、ここでは物静かな青年として登場。
役柄とイメージはよくあっている感じを受けた。
一方相手役は菊地凛子。
「バベル」で話題となった女優さんだが、この2作を観てみるとどことなく心に影を持った役柄のイメージが出来てしまいそうな気がする。
個人的にはこれがデビュー作となる水原希子に興味を引かれた。
今後は本格的にスクリーンに登場するのであろうか?

諸行無常、万物は流転する。
ワタナベを取り巻く環境も、女の子たちとの関係も、ワタナベの意思とは無関係に否応なしに変化していく。
揺れ動く若者の心。
誰もがいつか通ってくる道。

あてどない未来。
目の前の道はどこに続いていくのか。
映画の舞台となった60年代後半から、半世紀近くの月日が経過している。
その後、ワタナベはどんな人生を送ったのだろう。
ちょっと想像してみたくなった映画である・・・


評価:★★☆☆☆
    
     

      
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2012年05月19日

雷桜

雷桜.jpg

2010年 日本
監督: 廣木隆一
出演: 岡田将生/蒼井優/小出恵介/柄本明/時任三郎

<STORY>********************************************************************************************************
徳川将軍・家斉の十七男に生まれた斉道。
母を亡くし親の愛情を知らずに育った彼は、心に病を抱えていた。
療養を兼ねて家臣の瀬田助次郎の故郷・瀬田村を訪れた彼は、天狗が住むと言われる瀬田山で、女の天狗と出会う。
その正体は、幼い頃に誘拐され、山奥で育てられていた瀬田助次郎の妹・遊だった。
世間を知らず奔放な遊に、斉道は惹かれていく。
雷に打たれた銀杏の上から銀杏が芽を出した巨木・雷桜の前で、二人は恋に落ちる…。
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なかなかひどい映画だった。
取りあえず時代劇という形をとっているが、時代考証はむちゃくちゃ。
映画は作りモノののお話。
だから多少リアリティに欠けるとしても、「それはそれ」で楽しむ事が必要だと思うが、この映画のリアリティのなさには耐えられなかった。

そもそも日本の時代劇で、将軍の血を引く若殿と市井の一市民との身分違いの恋などというものはなかなか相容れない。
空想ではあり得るだろうが、日本の歴史を理解していれば抵抗感の方が強くなる。
なのに一緒に乗馬デートして(しかもお伴も連れず)、互いに笑顔で微笑みあったりしているシーンには、「いい加減にしろよ」と思ってしまった。

ストーリーを盛り上げるためのチャンバラシーンも、お伴も連れていないお殿様と女一人を囲む十数人。
現れた助けが一人。
そして展開される学芸会レベルのチャンバラ劇。
何度途中で観るのをやめようと思った事か。

主演はV6の岡田将生。
「瞬 またたき」の印象が残っていて決して悪くない。
相手の蒼井優は、日本映画ではもうお馴染み。
低レベルな内容は、出演者の責任ではない。
土台となっているストーリーにあるだろう。

もちろん観た感想は十人十色。
こういう時代背景を無視した時代劇でも違和感のない人もいるだろう。
取りあえずちょんまげ姿をしているが、内容は現代のドラマと置き換えてもそん色はない。
たぶん原作者は、今も昔も違うのは服装だけだと思っているのだろう。

ラスト近くのシーンで、お殿様の行列に女は馬で割り込むのであるが、常識的には無礼討ちになるところだ。
馬に跨った女をその場に残し、行列は歩き始める。
こういう時代劇を観たら、知らない若者たちはそういうものだと思ってしまうだろう。
いくら他愛ないお話と言えど、ここまでくると寛大な気持ちも失せてしまう。

つくづく観て損したと思わせられた映画である。


評価:☆☆☆☆☆
     
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2012年05月14日

愛の流刑地

愛の流刑地.jpg

2006年 日本
監督: 鶴橋康夫
原作: 渡辺淳一
出演: 豊川悦司/寺島しのぶ/長谷川京子/仲村トオル/佐藤浩市/陣内孝則

<STORY>********************************************************************************************************
ベストセラー作家、村尾菊治は長年のスランプに悩まされていた。
妻と別居して10年以上経ち、今は大学の講師で生計を立てていた。
ある日、雑誌記者の魚住から京都に呼び出され、冬香を紹介される。
一目で恋に落ちた二人。村尾は冬香と数時間の逢瀬のために京都へと通った。
夫と子供を持つ従順な女である冬香は、最初はためらうが、村尾との逢瀬を楽しむようになる。
やがて冬香の行動は徐々におかしくなり…。
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原作は日経新聞に連載されていた小説。
渡辺淳一の本領を発揮したエロチックなストーリーが随分話題となっていたのを覚えている。
そんな原作の映画化作品。

冒頭から主人公である小説家村尾と人妻冬香の大胆なベッドシーン。
ご丁寧にボカシ入りである。
原作に少しでも近付こうという意欲の表れなのだろう、そしてまた話題作りもあったと思う。
実際、かなり大胆に頑張っている。

演じるのは豊川悦司と寺島しのぶ。
寺島しのぶはそんなに美人というわけではないのだが、「キャタピラー」でも大胆な騎上位を見せてくれていたし、「東京タワー」でも不倫に溺れる人妻として登場していた。
そんな役回りイメージが定着しているのだろうか。
この映画でもベッドでの大胆な演技を披露している。

一方ストーリーはかなりの骨太。
愛する女性をベッドの中で絞殺してしまうという事件が中心にあるのだが、なぜそうしたのかが重要なテーマ。
単なる殺人なのか、それとも深い事情があるのか。
警察にも検事にも弁護士にも、身内も誰にもわからない。
当事者だけが知り得るところ。
そんな心理描写を、もっとわからない鑑賞者に伝えようとする。
原作は読んでいないのだが、映画では伝わりにくかったところだ。

主演の二人以外にも名だたる出演者が登場する。
浅田美代子、本田博太郎、余貴美子、高島礼子、津川雅彦、富司純子(寺島しのぶの実母)・・・
入り代わり立ち替わり登場する名だたる役者陣。
注目される裁判の行方。
そして最後まで観ていくと、「愛の流刑地」というタイトルの深い意味がよくわかる。
実に絶妙なタイトルだと感心する。

法廷でそれまでに展開される「殺人罪」か「嘱託殺人」かの議論。
法廷で「誰も本当の冬香をわかっていない」という村尾の主張。
そしてラストで宣告される判決。
ベッドシーンだけに気を取られていると、見落としてしまうかもしれないが、この判決にも作者の意図が隠されている気がする。

なかなか深いストーリーだと思わせられる映画である。


評価:★★☆☆☆
    
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2012年05月13日

MAD探偵 7人の容疑者

MAD探偵 7人の容疑者.jpg

原題: 神探、英題:Mad Detective
2007年 香港
監督: ジョニー・トー/ワイ・カーファイ
出演: ラウ・チンワン/アンディ・オン/ラム・カートン/ケリー・リン/ラウ・カムリン

<STORY>********************************************************************************************************
5年前、西九龍署・刑事課へ配属された新人のホー刑事は、そこで奇妙な犯罪検証を行う先輩のバン刑事に出会う。
我が身を殺人被害者と同じ状況に置くことで、奇妙にもバンは真犯人を突き止めていた。
時は流れて現在。
数々の奇行が原因で刑事をクビになったバンのマンションへ、かつての後輩ホー刑事が現れる。
バンの洞察力に畏敬の念を抱いていた彼は、暗礁に乗り上げた失踪事件解決の糸口をつかもうと、意見を求めにやって来たのだった…。
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犯人または被害者と同じ状況に身を置く事で、犯人を特定してしまうという特殊能力をもった刑事バン。
しかし、天才とキチガイは紙一重という例えの通り、刑事としてはあるまじき奇行が元で刑事を退職する。
配属初日にその能力を見ていた刑事ホーは、自身が壁に当たった難事件解決のヒントを求めてバンに会いに来る。
しかし、そこで会ったバンは、見えない妻と話をしていた。

一人の刑事が容疑者を追跡中に森の中で行方不明となる。
ホーはバンを連れて捜査に当たる。
バンは相手を見ると、その人格が見える。
失踪した刑事と一緒にいた相棒コウを見た時、バンはコウに7人の人格を見る。

そして事件現場を訪れたホーとバンだが、死体がどこかに埋まっていると考えるバンは、自ら土の中に埋まろうとする。
代わりに土の中に入ったホーは、バンに埋められ、そのまま放置されてしまう。
バンはやがて脳裏に事件の概要を思い浮かべていく。

MAD探偵というタイトルは何を意味しているのかと思ったら、人の中に潜む本当の姿を人格として見る事ができ、同じ体験をする事によって犯人を突き止めるという能力をもった刑事の話であった。
監督は、香港系バイオレンス・アクションのジョニー・トーなのだが、この映画は少し今までとと系統が違う。
単なるドンパチだけではなく、心理的な要素も多分に入っている。

主人公のバンは、その特殊能力をフルに使って事件を追うのだが、一方でそれは狂気と紙一重。
傍らには常に別れた妻の幻影がいる。
そして、再び刑事のように事件に首を突っ込む事に反対する。
しかしそれは考えてみると、バンのもう一つの人格なのかもしれない。

狂っているから特殊能力が身についたのか、特殊能力ゆえに狂ってしまったのか。
ラストでのホー刑事の人格の変化がなかなかいい味を出していた。
香港映画らしい味わいの映画である。


評価:★★☆☆☆

ジョニー・トー監督作品
「エレクション」
「エレクション 死の報復」
「冷たい雨に撃て、約束の銃弾を」
「エグザイル・絆」





   
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2012年05月12日

トロッコ

トロッコ.jpg

2009年 日本=台湾
監督: 川口浩史
出演: 尾野真千子/原田賢人/大前喬一/ホン・リウ/チャン・ハン

<STORY>********************************************************************************************************
父を亡くした年の夏、敦(あつし)と凱(とき)の兄弟は母に連れられて、初めて父の故郷である台湾の小さな村を訪れ、祖父母に温かく迎えられる。
敦は亡き父が大切にしていた古い写真にトロッコと写る少年が遥か昔の幼い祖父の姿だと知る。
山林を走るトロッコに乗れば日本へ行けると信じていたと懐かしそうに語る祖父。
ある日、母に置き去りにされるのではないかと不安を募らせた敦は凱を連れてトロッコに乗り込む。
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冒頭、寝ている二人の男の子の兄弟。
傍らで母はどこからかかかってきた電話に、「明日から主人の実家に帰る」と伝えている。
そして翌日の車中。
子供と共に座る母は骨壷を抱えている。
印象的なスタート。

やがて母子が到着したのは台湾。
ここで亡くなった夫=子供たちの父親は台湾人であった事がわかる。
緑に囲まれた田舎の村。
迎えに出てきたおじいちゃんは、息子の骨壷を杖で叩く。
台湾では子が先立つ事は大罪なのだから、叩いて迎え入れるのだという。

おじいちゃんは戦前の生まれ。
日本統治時代を経験しており、日本語が話せる。
二人の孫に日本への思いを語る。
こうしたシーンは台湾ならではだろう。
韓国映画では絶対にあり得ない。

兄弟のうち兄が大事に持っていた古い写真。
トロッコを押す少年が写っている。
そして村には戦前、木を切って運び出すためのトロッコが敷設され、今もなお残っている。
明治神宮の鳥居も、ここから切り出された台湾ヒノキだと自慢げに語る祖父。
そのトロッコがタイトルの所以。

静かな映画だが、多くの示唆に富む。
本当は第一線で働きたいという思いを抱いてきた母。
子供のいない同世代の女性を羨ましく思う時もあると吐露。
年老いた両親を田舎に残している事に罪悪感を感じている義弟。
台北で同居しようと申し出るが、祖父が首を縦に振らない。
そして日本統治時代の在りし日を懐かしむ祖父。

日本と台湾。
父と子。
母と子。
いろいろな切り口で眺める事のできる映画。

面白い映画かどうかと言われると答えが難しい。
そう問われれば、深く味わい深い映画であると答える事になるだろう。
自分なりのものを感じてみるといいかもしれない映画である。


評価:★★★☆☆
    


     
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2012年05月06日

魔法使いの弟子

魔法使いの弟子.jpg

原題: The Sorcerer's Apprentice
2010年 アメリカ
監督: ジョン・タートルトーブ
出演: ニコラス・ケイジ/ジェイ・バルチェル/アルフレッド・モリーナ/テリーサ・パーマー/モニカ・ベルッチ

<STORY>********************************************************************************************************
物理オタクの大学生・デイヴの前に、魔法使い・バルサザールが現れる。
彼は善なる魔法使い・マーリンの弟子で、デイヴのことをマーリンの後継者となる能力を持っていると言う。
バルサザールはデイヴに魔法を教えるが、なかなか上手くいかない。
しかしその頃、邪悪なる魔法使い・モルガナを甦らせるようとする勢力があった。
デイヴはバルサザールと共に悪の魔法使いに立ち向かうことを決意するが…。
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ニコラス・ケイジ主演のSFファンタジー映画である。
しかしながらニコラス・ケイジという役者さんも、本当に数多くの映画に出演している。
まあ出演作品には外れがないからまず観てしまうというのも、出演作品を観る機会が多い理由でもある。
まさに好循環なのかもしれない。

大昔の時代。
善なる魔法使いマーリンと、悪の魔法使いモルガナが対立。
マーリンには3人の弟子がいたが、マーリンはその一人ホルヴァートの裏切りでモルガナに殺されてしまう。
もう一人の弟子ヴェロニカは、自らの身と一緒にモルガナを人形の中に閉じ込める。
残された弟子バルサザールは、マーリンの選ばれし後継者こそがモルガナを滅ぼす事ができるとして、長い年月にわたり後継者を探す事になる。

現代のニューヨーク。
10歳のデイヴの前に表れたバルサザール。
ようやく選ばれし後継者に出会ったとわかった瞬間、復活したホルヴァートとの戦いとなり、ともに10年間人を閉じ込める壺に封じ込められてしまう。

そして10年後、デイヴは物理オタクの大学生。
そんな彼の前に、壺の中から10年振りに出てきたホルヴァートとバルサザールが現れる。
一方で、デイブは10年振りにベッキーと再会し、恋心が再び動き出す。

一見何の取柄もない主人公が、恋人ともに事件に巻き込まれ、思いもかけない活躍を強いられるというパターンはよくありがちだ。
「イーグル・アイ」もそうだったし、修行を通じて力をつけ、悪に立ち向かうというパターンは、「スター・ウォーズ」シリーズを筆頭にしてたくさんある。
似たようなストーリーは仕方ないのだろう。
魔法使いという事であれば、「ハリー・ポッター」シリーズの方が、まだ様になっている感じがする。

ハッピーエンドの展開がわかり切っているアメリカ映画ゆえに、いろいろと主人公に苦労はあってもストーリーがぶれる事はない。
何となくあちこちの映画をつなぎ合わせたような感じがするのは、避けられようもない。
見所と言えば結局、ニコラス・ケイジなのかもしれない。
観るべき価値としては、ニコラス・ケイジが出演しているという事だけだと言っても過言ではない。
そういう映画はどうなのだろうという気がしなくもないが、それはそれで一つの売りだから良いのだろう。
それを覚悟で観るにはいいかもしれない映画である。


評価:★★☆☆☆
                         



     
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2012年05月05日

小さな村の小さなダンサー

小さな村の小さなダンサー.JPG

原題: MAO'S LAST DANCER
2009年 オーストラリア
監督: ブルース・ベレスフォード
出演: ツァオ・チー/ジョアン・チェン/ブルース・グリーンウッド/アマンダ・シュール/カイル・マクラクラン

<STORY>********************************************************************************************************
1972年、中国山東省の小さな村に北京から視察団が来て、11歳の少年リー・ツンシンを北京の舞踏学校へ入学させる。
大好きな家族と引き離され、村の英雄として送り出されたリーを待っていたのは厳しいバレエの英才教育だった。
泣いてばかりの辛く心細い日々、チェン先生からこっそり古典バレエのビデオを見せてもらい、初めてバレエの美しさを知る。
やがて成長したリーにアメリカでの研修のチャンスが訪れる。
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実在の中国人バレエダンサー、リー・ツンシンの自伝を映画化した作品である。
中国の片田舎に生まれたリーは、北京からの視察団に見出され、舞踏学校への入学を許可される。
個人の意思などあったものではなく、原題に「毛沢東の最後のダンサー」とあるように、いわば毛沢東中国の国策として、生み出されたダンサーだったと言えるのである。

初めに思った疑問は、なぜ中国でバレエなのか、というところだ。
現在ならいざ知らず、当時の中国で西洋バレエが推奨されていたのが、感覚的にはよく理解できない。
残念ながら映画でもそのあたりはわからない。

有無を言わさず北京へと連れてこられたリー。
貧しい貧農家庭からすれば、願ってもないチャンス。
両親は精一杯の愛情を尽くし、我が子の未来を思って送りだす。
まだ親が恋しいリーは涙ながらに北京へと旅立つ。
何でもないシーンなのであるが、個人的にいろいろと想像したものが胸に広がる。

西洋バレエと言っても、中国は中国。
舞台表現でも革命的なものが求められ、反対するものは反革命分子として処分される。
そんな中で恩師チェンは、一本のバレエのビデオをリーに託す。
それまで落ちこぼれかけていたリーは、本物のバレエに触れ開眼。
その実力は、視察に来たアメリカのバレエ団の目にとまり、研修生としてヒューストンに行く事になる。

こうしてアメリカに渡ったリーであるが、カルチャー・ショックは激しい。
それはそうだろうと思う。
ちょうど1988年に北京へ行った事があるが、街全体が灰色の風景で、映画の中に出てくる中国の風景そのままだった。
アメリカとのギャップは激しいものがあっただろう。

西洋資本主義にかぶれるなと注意されてのアメリカでの生活。
父親が一年間かけて汗水たらして働いて得られるのが50ドル。
ところがホストファミリーのベンは、彼のために衣類などの購入で500ドルを一日で使う。
本国とじかに触れるアメリカとのギャップに戸惑いつつ、リーは本当にやりたい事を見出していく。

リーの活躍は、中国の成長でもある。
西洋資本主義を悪と決め付けていた中国も次第に態度を軟化させていく。
それが崩壊したソ連の社会主義との違いなのかもしれない。
物語は感動的な形で幕を閉じる。

現在、リー・ツンシンはオーストラリア在住なのだと言う。
自伝はオーストラリアでベストセラーになったというし、だからオーストラリア映画なのだろう。
バレエに興味はなくとも、十分に深い味わいを堪能できる映画である・・・


評価:★★★☆☆
 




    
posted by HH at 10:59 | 東京 晴れ | Comment(0) | TrackBack(0) | (た)行の映画