2018年05月14日

【ゲノムハザード ある天才科学者の5日間】My Cinema File 1920

ゲノムハザード ある天才科学者の5日間.jpg

原題: Genome Hazard
2013年 韓国・日本
監督: キム・ソンス
出演: 
西島秀俊:石神武人
キム・ヒョジン: カン・ジウォン
真木よう子: 美由紀
浜田学:伊吹
中村ゆり: ハン・ユリ
パク・トンハ
イ・ギョンヨン
伊武雅刀

<シネマトゥデイ>
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意欲的に海外の監督作品にも出演している西島秀俊が、『美しき野獣』のキム・ソンス監督と手を組んだサスペンスアクション。司城志朗原作のミステリー小説「ゲノムハザード」を映画化し、妻の死と奪われた記憶の謎を追う主人公が体験する驚きのてん末を描き出す。共演は、キム・ヒョジンと真木よう子。パワフルな展開はもとより、複雑に絡み合う謎が一気に氷解する衝撃のてん末に言葉を失う。
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何となく予告を観て面白そうだと思えたこの映画。主演は西島秀俊だし、その判断は間違っていなかったとは思うが、なかなか期待通りにはいかなかった映画である。

主人公の石神武人は、とあるデザイン会社でイラストレーターをしている。去年、会社の公募展で入賞したおかげで就職でき、それから美由紀と出会って結婚し、結婚してまだ1か月の新婚。その日は石神の誕生日であり、石神は妻からの誕生日プレゼントを受け取る。そこにはジョニー・エースのCDと、ルービック・キューブのキーホルダーが入っていて、なぜか韓国語のメッセージカードがある。そしてなぜか石神は何の予備知識もないはずなのにそこに書かれたメッセージ『再び巡って来た誕生日、あなたも帰って来ることができたのに 妻より』が読めてしまう。

その夜、石神が帰宅すると、部屋のドアは施錠されておらず、電気がつかない。部屋には多数のロウソクが立てられており、そこでなんと妻の美由紀の死体を発見する。驚く間もなく家の電話に美由紀から電話がかかってくる。美由紀は母の調子が悪いので実家に来ていると告げ、今晩は帰れないと続ける。さらに今度は警視庁・捜査一課を名乗る男2人組が、近くで事件が発生したと言い、突然部屋に入ってくる。

部屋に乗り込んできた男たちだが、奇怪なことに美由紀の死体と血痕が消えている。混乱する石神を男2人は連行していくが、警視庁捜査一課と名乗っていたその2人は、車中で石神に「オ・ジヌ」という男について聞いてくる。当然、石神には心当たりがない。すると男は突然石神に銃を突きつける。警察ではないと気づいた石神は、車中で揉み合いになり、すきを見て逃げ出す。そして韓国の女性報道局プロデューサーのカン・ジウォンの運転する車にはねられる。

こうして偶然遭遇した石神とジウォン。ジウォンは動揺するものの、言動の怪しい石神の言葉に興味を持ち、行動を共にするようになる。非常に面白い出だしに期待感は高まる。死んだ妻の実家へ行くと、旧姓は久保田の筈なのに、表札は西原となっており、家人には怪訝に思われるし、これは「東野圭吾も真っ青」な展開だと感じる。ただ、この期待感は後半に向かって萎んでいく。

確かにしゃべれないはずの韓国語が理解できて、いつの間にか利き腕すら変わっていて、一体何が起こったのかとストーリーにぐいぐい引きずり込まれる。しかし、謎解きはどうも稚拙。ジウォンは、とりあえず日本語を話すものの、どうもセリフが棒読みに聞こえてしっくりとこないし、警察を名乗って襲撃してきた謎の男たちとその雇主の行動もいまいちリアリティに欠けるように思えてしまう。

石神を追う謎の男たち。それに加えて石神自身に本人にもわからない謎がある。無理に韓国と一緒に映画を創らなくても良さそうだと思うが、その無理がセリフなどに違和感をもたらし、映画の魅力を削いでいく。そして結局、どこかで見たような既視感のある真相。残念ながら後半はただただつまらない展開を我慢して観続けることになる。せっかく西島秀俊が頑張っていたのに、どうもその孤軍奮闘は報われず終い。

それにしても改めて「記憶とはその人自身」だと思わされる。ここではウイルスを介して記憶が媒介されるというもので、石神とオ・ジヌの関係もそれによっている。荒唐無稽なストーリーだが、それはそれで構わないのだが、味付けがイマイチだっということだろう。せっかくの韓国映画のテイストも生かされることなく、西島秀俊の孤軍奮闘も報われることなく、残念な結果の映画である・・・


評価:★☆☆☆☆






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2018年05月12日

【オリエント急行殺人事件】My Cinema File 1919

オリエント急行殺人事件.jpg

原題: Murder on the Orient Express
2017年 アメリカ
監督: ケネス・ブラナー
出演: 
ケネス・ブラナー:エルキュール・ポアロ
ジョニー・デップ:エドワード・ラチェット
ミシェル・ファイファー:キャロライン・ハバード
ジュディ・デンチ:ドラゴミロフ公爵夫人
ペネロペ・クルス:ピラール・エストラバドス
デイジー・リドリー:メアリ・デブナム
ウィレム・デフォー:ゲアハルト・ハードマン
ジョシュ・ギャッド:ヘクター・マックィーン
デレク・ジャコビ:エドワード・マスターマン
レスリー・オドム・Jr.:ドクター・アーバスノット
マーワン・ケンザリ:ピエール・ミシェル
オリビア・コールマン:ヒルデガルデ・シュミット

<映画.com>
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1974年にも映画化されたアガサ・クリスティの名作ミステリーをケネス・ブラナーの製作・監督・主演、ジョニー・デップ、ミシェル・ファイファーら豪華キャストの共演で新たに映画化。トルコ発フランス行きの寝台列車オリエント急行で、富豪ラチェットが刺殺された。教授、執事、伯爵、伯爵夫人、秘書、家庭教師、宣教師、未亡人、セールスマン、メイド、医者、公爵夫人という目的地以外は共通点のない乗客たちと車掌をあわせた13人が、殺人事件の容疑者となってしまう。そして、この列車に乗り合わせていた世界一の探偵エルキュール・ポアロは、列車内という動く密室で起こった事件の解決に挑む。主人公の名探偵ポアロ役をブラナー、事件の被害者ラチェット役をデップ、未亡人役をファイファーが演じるほか、教授役にウィレム・デフォー、家庭教師役にデイジー・リドリー、公爵夫人役にジュディ・デンチ、宣教師役にペネロペ・クルスが配されている。
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『オリエント急行殺人事件』と言えば、アガサ・クリスティの代表作としてあまりにも有名であるが、実は映画化されたものはおろか、原作すら読んだことはない。リメイクされたことをいい機会に、観てみようと思った次第である。

時は1935年。ところはシリア。ある事件が起こり、それを1人の男が推理して解決する。独特のカイゼル髭をはやし、食べるゆで卵にも強いこだわりを持つのは、主人公の探偵エルキュール・ポアロ。演じるのはケネス・ブラナー。これまでの映画とは役柄とはいえちょっと雰囲気が違う。あいさつ代わりに事件を解決し、帰国のためトルコのイスタンブールからオリエント急行に乗り込む。

豪華な列車には様々な人々が乗り込んでいる。ジョニー・デップ演じる資産家のラチェットには秘書のマックィーンと執事のベドウズが寄り添う。ハンガリー外交官のアンドレニイ伯爵と妻のエレナ、相変わらずの貫禄のジュディ・デンチ演じるロシア人のドラゴミノフ公爵夫人とメイドのシュミット、スウェーデン人宣教師のグレタ、ミシェル・ファイファーは米国人女性ハバード夫人として登場する。英国人教師のメアリー、英国軍人のアーバスノット大佐、米国人の私立探偵ハードマンを演じるのはウィレム・デフォー、イタリア人セールスマンのフォスカレリ、特別車両に鉄道会社重役のビアンキとギリシャ人医師、さらには宣教師としてペネロペ・クルスまでもが登場する。何と豪華な出演陣。

2日目の夜、列車がセルビアのベルグラードを発ってユーゴスラビア領に入ったところで事件が起こる。列車が深い雪だまりに線路を塞がれて立ち往生するが、翌朝ラチェットがベッドで殺されているのが発見される。胸を12か所刺され、ポケットの時計は1:15で止まっている。ハバード夫人が、昨夜自分の部屋に忍び込んでいた謎の男が犯人だと主張する。

さっそく調査したポアロは、ラチェット宛ての脅迫状の燃えカスから、ラチェットの正体が5年前アメリカで起きた幼児誘拐殺人事件の犯人カセッティであることを突き止める。それは3歳の富豪の息子デイジーが誘拐されて殺害された事件で、主犯のカセッティは身代金を奪って外国へ逃亡し行方不明となっていたのである。デイジーの母ソニアは当時妊娠していたのが、事件のショックで早産し母子共に亡くなり、父親のアームストロング大佐は拳銃自殺していた。さらには誘拐の共犯と疑われたメイドも窓から身を投げて自殺するという事件であった。

こうした前提条件が整ったところで、名探偵ポアロが捜査をしていく。昔ながらの伝統的な探偵モノのパターンである。犯行時刻と思われる1:15頃には、乗客全員にアリバイがある。列車は人気のない雪の山間部で立ち往生しており、列車は一種の密室状態。ポアロに言われるまでもなく、犯人は外部犯か乗客の誰かかという内部犯。果たして犯人は誰だろうかとストーリーを知らない自分はポアロとともに推理する。

そして明らかになる犯人。そしてその動機。何とも言えない事情が背景に隠されている。バックに流れる悲し気な音楽とともに明らかになる真実に胸が熱くなる。なぜ、アガサ・クリスティの名前が『オリエント急行殺人事件』とともに有名になったのか、その理由がよくわかる。そして明らかになった真実の前に、名探偵ポアロの下した結論は、心が温かくなるもの。

豪華出演陣も見ものであるが、深く心に残るストーリーはそれにふさわしいものである。なぜ何度も映画化・ドラマ化されるのかがよくわかる。こうなると、やはり豪華出演陣で固めた1974年版も観比べてみたいと思う。
映画好きなら、観ておきたい一作である・・・


評価:★★★☆☆






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2018年05月11日

【ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命】My Cinema File 1918

ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命.jpg

原題: Jackie
2016年 アメリカ・チリ・フランス
監督: パブロ・ラライン
出演: 
ナタリー・ポートマン:ジャクリーン(ジャッキー)・ケネディ
ピーター・サースガード:ロバート(ボビー)・F・ケネディ
グレタ・ガーウィグ:ナンシー・タッカーマン
ビリー・クラダップ:ジャーナリスト
ジョン・ハート:神父
リチャード・E・グラント:ウィリアム(ビル)・ウォルトン
キャスパー・フィリップソン:ジョン(ジャック)・F・ケネディ
ジョン・キャロル・リンチ:リンドン・ジョンソン

<シネマトゥデイ>
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第73回ベネチア国際映画祭最優秀脚本賞に輝いた、ジョン・F・ケネディ元大統領の妻ジャクリーン・ケネディの実録劇。ファーストレディであった彼女が過ごした、ケネディ大統領の暗殺から葬儀までの4日間を活写する。監督は『NO ノー』などのパブロ・ラライン。『ブラック・スワン』などのナタリー・ポートマンがジャクリーンを力演し、その脇をピーター・サースガードやグレタ・ガーウィグらが固める。アメリカ大統領史の事件を妻の視点で描く物語に、ナタリーがまとう1960年代のファッションが彩りを添えている。
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大統領暗殺という事件は、考えてみればやっぱり大変な事態である。1963年11月、ケネディ大統領が暗殺された衝撃は、当時生まれていなかった身としては想像するしかないが、それはそれは大きなものであったであろう。当然、映画の題材にもなるわけで、これまでもいろいろと映画化されている。何といっても事件の秘められた謎を追った『JFK』は、これもまた別の意味で衝撃的であったし、事件の周辺の人々を描いた『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』も記憶に新しい。この映画は、大統領夫人であったジャクリーン・ケネディを描いた作品である。

冒頭、ライフ誌のジャーナリストがジャクリーン・ケネディの屋敷にやって来る。その目的はもちろん取材。大統領暗殺事件からまだ数日しか経っていない。そんな状況でインタビューを受けるジャッキーことジャクリーンは強い女性だったのであろうか。さらに記事の内容についても、自分が内容に関与することを条件にしたりする。ジャッキーが、落ち着いた様子で出来事を語り始める形で映画は進んでいく。

ファーストレディとなってまだ間もない頃。ジャッキーはまずホワイトハウスの大修復に着手する。ホワイトハウスの主になった者の常なのかもしれないが、自分好みの威厳ある空間へと生まれ変わらせるようである。ジャッキーはさらにこの様子を自らがホストとなってテレビ公開する。傍らでこれをサポートするのは、秘書で親友のナンシー。ファースト・レディもただ微笑んでいればいいだけではないようである。

そしてやはり何といっても、11月22日。ダラス空港に到着し、機内でスペイン語のスピーチの練習をしながら化粧を直すジャッキー。ちょっと緊張した面持ちで大統領と共にタラップを降りる。ザブルーダーフィルムで狙撃の瞬間は何度も観ているが、その時ジャッキーは、車の後部に飛び散った肉片を集め、撃たれた頭を必死に手で押さえる。夫の口元がとても綺麗だったと語るジャッキーのセリフが何とも言えない。

その日、ジャッキーはピンクのシャネルのスーツといういでたち。シークレットサービスがオープンカーに馬乗りになった状態で、車は病院へとスピードを上げる。病院へ搬送されたあとの経緯は、『パークランド ケネディ暗殺、真実の4日間』のシーンが脳裏に蘇る。その後、ジャッキーはエアフォースワンでジョンソン副大統領の宣誓に立ち会う。ピンクのシャネルは血だらけであり、ジャッキー自身もまた泣きながら顔についた血を拭く。何とも言えない迫力である。

そして着替えるように進言したスタッフに対し、それを敢然と拒否する。「彼らがしたことを見せてやる」と語るジャッキーの姿に強さを感じるが、「彼ら」が誰を意味しているのか映画ではわからなかった。事件の背景について、なんらか意図したかったのであれば、もう少しそれを描いて欲しかったと思う。そしてワシントンに着くと、司法長官のロバート・ケネディに葬儀については同じように暗殺されたリンカーン大統領の葬式に倣うと告げる。

 映画は葬儀を終えて、冒頭のインタヴューまでを描いたものであるが、個人的にはその後も興味のあるところである。なぜ、事件からそれほど期間も経たない(5年後)うちに、大富豪と再婚したのか(映画では経済的な意味合いも漂わせていた)。もう少し前後の幅が欲しかったと個人的には思う。それにしてもすぐにホワイトハウスからの退去を求められ、ジャッキーがホワイトハウスを去ろうとする後ろでジョンソン大統領夫人がホワイトハウスの内装変更を指示しているシーンはなんとも言えない。

ジャッキーを演じたのは、ナタリー・ポートマン。これは個人的には良かったところ(これだけでも観る価値はあった)。大作とはいかないが、じっくりと観れたのは良かったところである。
それにしても2039年にはすべて事件の全貌が明らかになるのであろうか。そちらの方も気になるケネディ大統領暗殺事件である・・・


評価:★★☆☆☆






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2018年05月08日

【クロッシング・ウォー 決断の瞬間】My Cinema File 1917

クロッシング・ウォー.jpg

原題: ZWISCHEN WELTEN
2014年 ドイツ
監督: フェオ・アラダグ
出演: 
ロナルト・ツェアフェルト:イェスパー
ムスフィン・アハマディ:タリク
サイダ・バルマキ:ナラ
アブドゥル・サラム・ユスフザイ:ハルーン
ブルクハルト・クラウスナー: ハール大佐

<映画.com>
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これが長編2作目となるドイツの女性監督フェオ・アラダグが、アフガニスタンの戦場において人間的な良心と軍人としての職務の間で葛藤する兵士の姿を描き、2014年・第64回ベルリン国際映画祭コンペティション部門にも出品された戦争ドラマ。撮影にはドイツ軍が協力し、実際にアフガニスタンで行われた。国際治安支援部隊に所属していた兄をアフガニスタンの戦場で失ったイェスパーは、それでも兄と同じ部隊に所属し、イスラム武装勢力タリバンから小さな村を守る任務に就いていた。英語通訳を務める現地人のタリクに村人たちとの間を取り持ってもらい、タリクとの間には友情も芽生えていくが、治安部隊に協力するタリクを裏切り者とみなしたタリバン兵が、タリクとその妹の命を狙ってくる。
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アフガン戦争は9.11を受けてアメリカが「テロとの戦い」を掲げて行った戦争であるが、実は様々な国がアメリカに歩調を合わせて参戦している。アフガニスタンにおけるカナダ軍の行動を描いたのが『ハイエナ・ロード』であったが、これはドイツ連邦軍の話。第2次世界大戦で敗戦国となったドイツ連邦軍は、1955年に発足し、以来侵略戦争を禁止されていたが、アメリカの掲げる大義名分の下、その歴史で初めて戦闘を体験したのがこのアフガン戦争であったらしい。我が国がアメリカによってアフガン戦争に引きずり込まれなかったのは第9条のおかげだろう。

そのドイツ連邦軍は、2013年10月に完全撤退を決行するまで、約11年に渡りアフガニスタンに駐留していたという。その間、実に54人もの戦死者を出したという。映画は、時にこうした事実を知るいいきっかけでもある。物語の主人公は、ドイツ連邦軍のイェスパー。実の兄も同じ軍人としてアフガニスタンに駐留していたが、自動車爆弾のテロによって戦死している。自らもこの地にやってきて、そしてある村の警備命令を受ける。

イェスパーは、通訳として雇った現地青年タリクを連れて現地へと赴く。実は、現地ではタリバンと反タリバン勢力とが対立している。村は自警団を組織しており、タリバンとの間には事あるごとに戦闘が起こっている。また、タリクは父が反タリバン活動をしていて殺されており、自分もまた身の危険を感じている。さらに妹も女ながらに大学に通っていることもあって批判の目を向けられている。

そんな状況で現地に着任したイェスパーの部隊。しかしやがて現地の自警団と司令部との板挟みに苦しむことになる。ある時、イェスパーの部隊はタリバンによる攻撃を受ける。あわやのところで自警団に助けられるが、今度は自警団がタリバンとの戦闘に赴く際、援軍を求められるも司令部の答えは否。「助けたのに助けてくれない」では信頼も築けない。さらにタリクは安全のために妹を村に連れてくるが、その途中でとうとう銃撃されてしまう・・・

必死に妹を抱えて村に戻って来たタリク。しかし、イェスパーからの受け入れ要請に軍の病院の答えはNO。現地人は受け入れないとの断りにイェスパーは自ら妹を強引に運びこもうとする。しかし、隊長が無許可で現地を離れることに、部下からも疑問が呈されるが、イェスパーの行動は人として無理もないところ。そしてこれが結果的に大きな問題となってしまう。

 自分がイェスパーの立場だったら、と考えると気が重くなる。現地の自警団や通訳のタリクらと心を通わせれば通わせるほど、理不尽に感じることが多くなる。司令部の意図はよくわからないが、どうにも「余計な事をするな」という雰囲気が滲み出ている。間に挟まれたイェスパーの苦悩は察するに余りある。さらにタリバンに怯える現地の人々。通訳のタリクをドイツに避難させようと試みるが、イェスパーの要請は無情にも却下される。現地人軽視の司令部の考え方が透けて見える。

そんなイェスパーの身に降りかかる悲劇。それをすべて彼の責任にするのは酷である。そしてさらに何とも言えないラストシーン。タリクらの思いは結局生きることはない。戦争映画とは言っても激しい戦闘シーンはそれほどではなく。イェスパーの苦悩がひたすら描かれるものとなっている。結局、ドイツもアメリカの手前やむなく参戦したものの、余計な面倒は負いたくないというのが基本スタンスだったのかもしれない。

イェスパーの苦悩に、大企業の中間管理職の苦悩を重ねてみたくなる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2018年05月05日

【マダム・イン・ニューヨーク】My Cinema File 1916

マダム・イン・ニューヨーク.jpg

原題: English Vinglish
2012年 インド
監督: ガウリ・シンデー
出演: 
シュリデヴィ・カプール:シャシ
アディル・フセイン:サティシュ
アミターブ・バッチャン:航空機の乗客
メディ・ネブー:ローラン
プリヤ・アーナンド:ラーダ
スラバー・デーシュパーンデー:サティシュの母
ナビカー・コーティヤー:サブナ
シバンシュ・コーティヤー:サガル
スジャーター・クマール:マヌ
ニールー・ソーディー:ミーラ

<Movie Walker解説>
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英語が苦手でコンプレックスを抱いていたインド人主婦が、ニューヨークを訪れ、英会話学校に通い始めたことをきっかけに、1人の女性としての誇りを取り戻してゆく姿を描く。出演は「JUDAAI(ジュダーイ) 欲望の代償」のシュリデヴィ、『ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日』のアディル・フセイン。
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主人公はインドの料理上手な主婦シャシ。夫や子供達と不自由のない生活を送っているが、唯一つもどかしく思うのは英語が話せないこと。夫は仕事で英語を使い、娘も学校で英語を使う。趣味のお菓子作りでは評判を取り、売ってお金を稼ぐことはできるものの評価はされない。ある日、夫の代わりに娘の学校に三者面談に行くと、そこでの会話は英語。なんとか先生との会話をこなすも、娘はそんな母親を恥じシャシも気まずく思う。

そんな折、ニューヨークに住む姉から娘の結婚式の手伝いに来てくれと頼まれる。ニューヨーク行きに娘は大はしゃぎするが、シャシは手伝いのために一足先に1人ニューヨークに行くことになる。初めての場所で、しかも英語が喋れないシャシは不安で一杯になる。そんなシャシの不安を夫のサティーシュは分からない。不安なまま、シャシは一人飛行機に乗る。早速CAとの会話が通じない。

何度も練習した入国審査を無事に終えると、無事に姉と合流し、ニューヨークの生活が始まる。結婚式の準備やニューヨーク観光ではそれなりに過ごすものの、ある日、姪と一緒に大学へ行った時に1人街中に出て大変な目に逢う。テイクアウトの店に入るが、店員と言葉は通じず、なんとか注文はしたものの、他の客とぶつかってシャシは逃げ出してしまったのである。ベンチで打ちひしがれるシャシ。たまたま通りかかったバスに「4週間で英語を話せる」という英会話教室の広告を目にし、とっさにその電話番号を覚える。

思い立ったシャシは、手作りお菓子を売って貯めたお金をドルに変え、みんなに内緒で英会話学校に通うことにする。入学した初級クラスには、様々な国から来ている人たちが集まっている。その中には、テイクアウトの店でシャシを慰めてくれたフランス人のコック、ローランもいた。シャシは自己紹介でラドゥという菓子を作って売っている事を話すと、英語の先生から起業家だと誉められる。しかし夫にかかればラドゥ作りなど所詮主婦のお遊びである。

シャシとローランとの会話で、「男が料理をすればアートだが、女が料理すると義務」というセリフが出てくる。インドも日本同様女性の社会進出は遅れているのだろう、女は家庭で家事をしていればいいという雰囲気が随所に出てくる。しかし、子供は現代的に教育もきちんと受け、従って英語もできたりする。シャシの娘も例外ではなく、だから英語のできないシャシをバカにしてしまったりする。「学校で勉強は教えてもらえるけれど、思いやりはどうやったら教えられるか」というシャシのセリフは、とても大事なことを言っている。

シャシがみんなに内緒で英語を習い始めたのは、きっと「今さら英語の勉強なんて」という恥ずかしさがあったのだろう。熱心に通ううちに、シャシも少しずつ英語が話せるようになっていく。ローランとカフェに行き、娘と言い争いをして興奮したシャシは、いつの間にかウェイターに英語ですらすらとオーダーをしている。見ていて実に痛快である。そして授業の最後の日に5分間のスピーチの試験を受けて合格すれば卒業証書をもらえることになるが、なんとその日は結婚式の当日と重なってしまう・・・

インド映画といえばひたすら「歌と踊り」というイメージがあるが、この映画は従来のインド映画のイメージを一新。「普通の」映画になっている。コメディタッチで気軽に観られる映画でもある。シャシが英語を学んでいくにつれ、生き生きとしていくシャシの姿は実に晴れ晴れとしている。そして結婚式。シャシが密かに英語のレッスンをしていたことを知っている姪のラーダは、シャシにスピーチの指名をする。ラストのシャシのスピーチは実に感動的である。

主演のシュリデヴィ・カプールは、インドでは大女優なのだそうであるが、残念ながらすでにお亡くなりになっているのだという。美しい女優さんだけに惜しまれるところであるが、この映画が遺作なのだろうか。そういう意味でも後々にまで記憶に残るインド映画である・・・


評価:★★★☆☆






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2018年05月04日

【ハンズ・オブ・ストーン】My Cinema File 1915

ハンズ・オブ・ストーン.jpg

原題: Hands of Stone
2016年 アメリカ/パナマ
監督: ジョナサン・ヤクボウィッツ
出演: 
エドガー・ラミレス:ロベルト・デュラン
ロバート・デ・ニーロ:レイ・アーセル
アッシャー・レイモンド四世:シュガー・レイ・レナード
ルーベン・ブラデス: カルロス・エレータ
ペドロ・ペレス: プロモ・クイノネス
アナ・デ・アルマス:フェリシダード・イグレシアス
ジャーニー・スモレット=ベル:ジュアニータ・レオナルド
オスカル・ハエナダ:カフラン
エレン・バーキン:ステファニー・アーセル
ジョン・タトゥーロ:フランキー・カルボ

<シネマトゥデイ>
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4階級制覇を成し遂げたパナマの伝説的ボクサー、ロベルト・デュランの伝記ドラマ。彼のボクサー人生をはじめ、シュガー・レイ・レナードとの再戦で試合を放棄した「ノー・マス事件」の真相を描く。強烈なパンチから“石の拳”と称されたデュランを『カルロス』などのエドガー・ラミレス、トレーナーを名優ロバート・デ・ニーロ、レナードをグラミー賞アーティストでもあるアッシャーが演じる。
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ボクシングと言えば、ヘビー級の迫力ある戦いにどうしても目が行きがちである。映画のロッキーもヘビー級である。しかし、かつてミドル級が輝いた時代を記憶している。シュガー・レイ・レナード、トーマス・バーンズ、マービン・ハグラーそしてロベルト・デュランら強豪がひしめいていた時代である。この映画はその時代を担っていた1人ロベルト・デュランの自伝映画である。

物語はパナマのスラム街で始まる。幼い日にアメリカ人の父親に捨てられ、女手一つで育てられたロベルトは、盗みやストリート・ファイトに明け暮れて育つ。パナマ運河を支配するアメリカに対する反発が起こる世の中、ロベルトも父に捨てられたことから反米心を抱いている。そんなある日、ロベルトのストリートファイトをボクシングジムのトレーナーであるプロモ・クイノネスが偶然見かけ、その才能に惚れてロベルトにボクシングを教え始める。

もともとの才能とハングリー精神からロベルトは、デビューしてからKOの山を築く。マネージャーのカルロス・エレータは、ロベルトを世界王者するべく、世界王者を 18 人も排出した名トレーナーのレイ・アーセルに引き合わせる。レイはかつてボクシングがらみでマフィアと揉め、ボクシング関係でお金を稼ぐことをやめる約束をしており、無償でトレーナーを引き受ける。

ロベルトは、アメリカ人であるレイを毛嫌いしていたが、その指導を通じて次第に心を許すようになる。レイの指導によりその実力は開花し、無敗のままWBA世界ライト級王者ブキャナンに挑戦し、KOで新チャンピオンに輝く。私生活でも結婚し、子供を次々ともうけ、順風満帆の人生。そして時を同じくして圧倒的人気と実力を兼ね備えていたアメリカ人ボクサー、シュガー・レイ・レナードと対戦することになる。

公衆の面前でレナードの奥さんを侮辱するというやり方は褒められたものではないが、これも映画によると作戦で、頭にきたレナードはロベルトと打ち合いの試合となる。その結果、最後は判定でロベルトがそのタイトルを奪う。しかし勝って兜の尾を閉め忘れたロベルトは、パーティー三昧の日々と暴飲暴食から太ってしまう。虎視眈々とリマッチを狙うレナードは、高額のファイトマネーを餌にマネージャーのカルロスを篭絡し、まんまとロベルトをリングに上げる。短い準備期間に15 kgの減量から、圧倒的に不利な試合にロベルトは臨む・・・

ロベルト・デュランの名前は良く知っていたが、その人物像はまったく知らず、映画で描かれるロベルト・デュランの半生は興味深い。レナードとのリマッチは、ロベルトが途中で試合を放棄してしまう「ノー・マス(もうたくさんだ)」事件として有名らしいが、その経緯もよくわかる。どんなボクサーにも頂点から降りる時が来るが、ロベルト・デュランのその時はこの試合だったようである。

ロバート・デ・ニーロがデュランのトレーナーを演じ、渋く光る。キャリアの終盤には日本に来て異種格闘技戦をやっていたが、できれば現役時代の試合をリアルに観たかったと改めて思う。こうして1人のヒーローの人生を振り返るというのも、映画ならではなのだろう。個人的にはいずれマニー・パッキャオの映画を観てみたいものである。

 ボクシングファンなら是非とも観ておきたい映画である・・・


評価:★★☆☆☆






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2018年05月03日

【パイレーツ】My Cinema File 1914

パイレーツ.jpg

原題: Pirates
2014年 韓国
監督: イ・ソクフン
出演: 
キム・ナムギル:チャン・サジョン
ソン・イェジン:ヨウォル
イ・ギョンヨン:ソマ
ユ・ヘジン:チョルボン
パク・チョルミン:坊主
キム・テウ:モ・フンガプ
オ・ダルス:ハン・サンジル
ソルリ:フンミョ
イ・イギョン:チャムボク
シン・ジョングン:ヨンガプ

<シネマトゥデイ>
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高麗で朝鮮建国を前に国家の印章が消失した事実をヒントに、印章をめぐり海賊、山賊、開国派などがバトルを展開するアクションアドベンチャー。高麗の武家出身でありながら山賊の頭になった主人公を『美人図』などのキム・ナムギルが、海賊団の女親分を『私の頭の中の消しゴム』『四月の雪』などのソン・イェジンが演じる。海上で繰り広げられるアクションや、クジラなどの迫力ある映像に圧倒される。
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時は14世紀の朝鮮半島。サジョンは一介の兵士だが、王となる人の弱腰の意見に物申したため、成敗されそうになる。何とか仲間たちに救われ、そのまま逃げ込んだ山で山賊となる。一方、ヨウォルは海賊船の副船長。しかし、仲間思いのヨウォルに対し、船長は部下など単なる捨て駒としか見ていない。ある時船長は国との取引で部下を逮捕させようとする。これに反発したヨウォルは、船長と戦いその地位を奪う。ヨウォルは船長を殺さず海に落とす・・・

サジョンが支えていた男は新たな国の王となり、中国に部下を派遣し臣下の礼を取る。派遣された部下は、「朝鮮」という国名をもらいその国璽を受け取るが、その帰路、海で巨大なクジラに襲われ、何と国璽はそのクジラに飲み込まれてしまう。王にこの事実を話すと殺されると思った部下は、一計を案じて海賊の仕業と報告する。その一方で、部下は密かにヨウォルに接触すると、クジラの捕獲を依頼する。

ヨウォルは、仲間の家族らを守るためにもこれを受け、クジラの捕獲準備に入る。この情報を得たサジョンもまた金を稼ぐためにクジラ捕穫に便乗する事にする。また、ヨウォルに地位をおわれたソマは、生き残って新たな仲間たちを集め、海に出る。国王に取り入ったソマもまた国璽を飲み込んだクジラを追う。その船には、国王の配下でサジョンに恨みを持つ男が乗船している。こうしてサジョン+ヨウォル対ソマ+男という図式が出来上がる。

韓国版歴史海洋アドベンチャーといった感のある映画であるが、ガチガチのアクションではなく、随所にコメディタッチが溢れており、軽快なコメディアクション映画といったところである。史実として朝鮮建国に際し、10年ほど国璽が行方不明だったということがあったということで、それをヒントにしたフィクションらしい。ただ、建国にあたり中国に使者を派遣し、国名と国璽とを賜わっていたという事実は、各王朝が自らの正当性と中国からの庇護を求めていた朝鮮半島の歴史として興味深い。

個人的にはコメディ要素を封印して、ガチガチのアクション映画にしてしまった方が面白かったのではないかと思うが、それはあくまでも個人の趣味。あまり肩ひじ張らずに気軽に観られるところがある。同じコメディテイストの海賊映画である『パイレーツ・オブ・カリビアン』を意識したのかどうかはわからないが、スケール的にも内容的にも「比べるまでもない」と個人的には思う。

これはこれで単純に楽しみたい映画である・・・


評価:★★☆☆☆








posted by HH at 00:00 | 東京 ☔ | Comment(0) | 韓国映画