2018年06月15日

【ミッション・ワイルド】My Cinema File 1934

ミッション・ワイルド.jpg

原題: The Homesman
2014年 アメリカ
監督: トミー・リー・ジョーンズ
出演: 
トミー・リー・ジョーンズ: ジョージ・ブリッグス
ヒラリー・スワンク:メリー・ビー・カディ
メリル・ストリープ:アーサ・カーター
グレイス・ガマー:アラベラ・サワーズ
ミランダ・オットー:セオリーン・ベルナップ
ソニア・リヒター:グロー・スヴェンソン
ジョー・ハーヴェイ・アレン:ポルヘマス夫人
ヘイリー・スタインフェルド:ハッチンソン
ジョン・リスゴー:アルフレッド・ダウド

<映画.com>
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名優トミー・リー・ジョーンズが「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」以来9年ぶりにメガホンをとって自ら主演・脚本を手がけた西部劇。19世紀アメリカ。開拓地ネブラスカの小さな集落で暮らす独身女性メリーは、精神を病んだ3人の女性をアイオワの教会まで連れて行く役目「ホームズマン」に志願する。その直後、メリーは木に吊るされ処刑寸前だった悪党ブリッグスに遭遇し、旅に同行することを条件に彼を助け出す。約400マイルの長い旅に出た彼らを、過酷な気候や凶暴な先住民、危険な盗賊たちなど、さまざまな試練が待ち受けており……。共演にもヒラリー・スワンク、メリル・ストリープら豪華キャストが集結。京都ヒストリカ国際映画祭2016で「ホームズマン」の邦題で上映された。
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舞台は19世紀のアメリカ・ネブラスカ。まだ州ではなく、準州の時代。とある小さな集落でメアリー・ビー・カディは独り農作業をこなしながら暮らしている。自立し、しっかりした生活ぶりであるが、31歳と言う年齢から伴侶を得たいと願っている。隣家のギッフェンが訪ねてきて夕食を共にする。その席でメアリーは大胆にも結婚を持ちかける。しかしギッフェンはこれを拒絶する。メアリーが「高圧的」と言うのがその理由。気まずくなったギッフェンは慌てて帰り、残されたメアリーは1人取り残される・・・

一方、その冬は厳しく、あちこちで悲劇が起きる。アラベラ・サワーズはジフテリアで3人の子供を一気に失い、セオリーン・ベルナップは飢餓から生まれたばかりの我が子を便所に捨てる。グロー・スヴェンソンは母親を失うが、その時の夫の態度と悲しみに耐えきれず、3人の女たちは正気を失う。その事態に神父のダウドは、3人のケアができるアイオワの教会へ送ることを考える。問題は誰が連れていくか。

現代ならいざ知らず、開拓時代の西部は移動と言っても楽ではない。その上気がふれた女3人を連れての旅に、3人の夫たちはしり込みする。3人の女性をアイオワの教会まで連れて行く役目を映画では「ホームズマン」と称し、これが原題となっている。そしてメアリーはこれに立候補し、くじ引きの結果、その役目を引き当てる。

旅の準備をするメアリー。馬車は3人を閉じ込め、拘束までできる特別仕様のものが用意される。そして3人の女性をそれぞれの家に迎えに行く道中、メアリーは不法侵入で捕まり、木に吊るされた男ブリッグスを見つける。旅の同行を条件に、メアリーはブリッグスを助ける。こうして始まった、メアリーとブリッグスの400マイルにわたる長い旅。目の前には大西部が広がる。

西部劇と言えば、「ガンファイト・牧場・移動」というキーワードが思い浮かぶが、この映画は「移動モノ」と言える。「移動モノ」となると、『赤い河』のように牛を運ぶか『3時10分、決断の時』のように犯罪者を運ぶというパターンになりがちかと思うが、ここでは女3人。しかも狂人というオマケつき。移動の途中も食事をさせ、体を洗ってやり、トイレの面倒もみたりと世話が焼ける。さらに、先住民との遭遇や女とみるとレイプ目的のならず者もいたりする。そんな困難な旅が描かれていく。

メアリーがなぜそんな困難な「ホームズマン」を引き受けたのか。そこには強烈な「現状打破」への思いがあったような気がする。土地もあり十分自立し食べていけるのに、足りないのは伴侶。強烈な孤独感が居ても立ってもいられない思いにさせたように思う。そしてついにはろくでもない男であるはずのブリッグスにも求婚する。その結末は、衝撃的であり、あまりにも哀れである。

意外なストーリー展開は、製作にリック・ベッソンが入っているゆえんなのだろうか。ボスのCMイメージとは異なり、ちょっと情けない老人役がハマるトミー・リー・ジョーンズは監督も務める。最後の彼の行動と無情な川の流れが何とも言えない味わいを醸し出す。バンバン撃ち合う西部劇もいいけれど、こういう人間ドラマもいいなと思わされる。それにしても結婚したくてもできない、自らプロポーズしても受けてもらえない、そんなメアリー役は、決して美人とは言えないヒラリー・スワンクだからこそ説得力が出ている。

深い味わいの人間ドラマの西部劇である・・・


評価:★★★☆☆






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2018年06月09日

【ルーム】My Cinema File 1932

ルーム.jpg

原題: Room
2015年 アイルランド・カナダ
監督: レニー・アブラハムソン
出演: 
ブリー・ラーソン:ジョイ
ジェイコブ・トレンブレイ:ジャック
ジョアン・アレン:ナンシー
ショーン・ブリジャース:オールド・ニック
ウィリアム・H・メイシー:ロバート
トム・マッカムス:レオ

<映画.com>
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アイルランド出身の作家エマ・ドナヒューのベストセラー小説「部屋」を映画化。監禁された女性と、そこで生まれ育った息子が、長らく断絶されていた外界へと脱出し、社会へ適応していく過程で生じる葛藤や苦悩を描いたドラマ。第88回アカデミー賞で作品賞ほか4部門にノミネートされ、息子とともに生きようとする母を熱演した「ショート・ターム」のブリー・ラーソンが、主演女優賞を初ノミネートで受賞した。監督は「FRANK フランク」のレニー・アブラハムソン。7年前から施錠された部屋に監禁されているジョイと、彼女がそこで出産し、外の世界を知らずに育った5歳の息子ジャック。部屋しか知らない息子に外の世界を教えるため、自らの奪われた人生を取り戻すため、ジョイは全てをかけて脱出するが……。
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子供が5歳の誕生日を迎えて物語は始まる。男の子はジャック。ママと一緒に部屋の中で体操をし、TVを見て、ケーキを焼き、親子2人の楽しい時間を過ごす。しかし、実はジャックにとってこの「部屋」が全世界。なんとママは高校生の時にある男に誘拐され、以来この部屋で監禁されているのである。当然、ジャックもその男との間にできた子供。生まれた時からジャックはこの部屋から外に出たことがない・・・

この実に衝撃的なイントロが、この映画に俄然興味を抱かせてくれる。イントロ部分だけでこれだけ衝撃的な映画も個人的にはあまりない。そして5歳になったジャックに対し、ママはこれまでにしたことのない話をする。部屋の外にはテレビとは違う「リアル」が広がっていると。生まれてから部屋を出たことがないジャックには、外に別の世界があるなどという話を理解できない。ママの説明にようやくアニメとリアルの違いを理解できる程度である。

2人の生活を支えているのは、誘拐男。週に一度やってきては、食料を置き、ママ(名前はジョイ)を抱いて帰っていく。その間、ジャックはクローゼットの中で寝ている。ジャックを隠すことが、ジョイの男へのささやかな抵抗のようである。誘拐されて以来、ジョイも脱出を試みてきたようであるが、すべて無駄に終わっている。ドアは暗証番号でロックされており、部屋の中で男をたとえ倒せても外へは出られない(しかも扉は2つある)。男もなかなか賢い。

しかし、ジャックが5歳になったこともあり、ジョイはジャックを脱出させて助けを呼ぶ方法を考える。理解できない話に混乱するジャックを説き伏せ、ジャックが病死したと男に思わせる。その方法はあまりに危うく、男がジャック(の死体)を庭に埋めようとしていたら、すべてはオジャンだっただろう。そして奇跡的にジャックは脱出に成功する。さらに保護した婦人警官がジャックの言葉を丁寧に汲み取り、ジョイもとうとう開放される・・・

この映画の面白いところは、ここで終わらないこと。高校生の娘が突然失踪し、そして突然子連れで帰ってくる。しかも長期間監禁されてというオマケ付で。両親は既に離婚していて、ジョイは別のパートナーと暮らす母親のもとへと戻る。しかし、父は誘拐犯の血が流れた自分の孫に目を向けられず、再会の喜びも束の間、ギクシャク感に包まれる。この映画、実はジョイが無事に自由を取り戻した後半の方が重みがある。

何年振りかで自分の部屋に戻るジョイ。すべては「あの日」以来、そのままである。高校時代仲の良かったチアリーダーの仲間たちは、今頃幸せに暮らしていると思うと、今さらながらわが身の不幸が身に染みる。監禁されている間は、「脱出」という目標があったのだろうが、それが達成されると、改めて失われた日々が重みを持ってくる。映画は実話かと思いきや、フィクションであるという。似たような実在の事件があったらしいが、フィクションであったとしても、その内容はなかなかヘビーである。

単なるエンターテイメントにとどまらず、深く考えさせられる映画である・・・

 
評価:★★★☆☆






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2018年06月08日

【バリー・シール アメリカをはめた男】My Cinema File 1931

バリー・シール アメリカをはめた男.jpg

原題: American Made
2017年 アメリカ
監督: ダグ・リーマン
出演: 
トム・クルーズ:バリー・シール
ドーナル・グリーソン:シェイファー
サラ・ライト:ルーシー
E・ロジャー・ミッチェル: クレイグ・マッコール捜査官
ジェシー・プレモンス: ダウニング保安官
ローラ・カーク: ジュディ・ダウニング
アレハンドロ・エッダ:ホルヘ・オチョア
ベニート・マルティネス: ジェームズ・ランゲル
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ:JB
ジェイマ・メイズ: デイナ・シボタ
マウリシオ・メヒア:パブロ・エスコバル

<シネマトゥデイ>
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航空会社のパイロットからCIAのエージェントに転身し、麻薬の運び屋としても暗躍した実在の人物バリー・シールの半生を、トム・クルーズ主演で映画化。『エクス・マキナ』などのドーナル・グリーソン、『21オーバー 最初の二日酔い』などのサラ・ライトらが共演。『オール・ユー・ニード・イズ・キル』でトムとタッグを組んだダグ・リーマンがメガホンを取る。トムが全て自分でこなしたフライトシーンに注目。
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バリー・シールは、実在の人物。大手航空会社TWAでパイロットとして働くが、若くして機長に昇進する腕前。しかし、裏で検査が緩い立場を利用して密輸に手を染めており、もともとそういう山っ気のある人物だったようである。そんな山っ気と腕前を見込まれたのか、ある日シールはCIAのシェイファーから極秘の偵察任務のスカウトを受ける。TWAのパイロットという安定した立場を捨てることに妻は当然反対するが、シールは妻に内緒でオファーを受ける。

CIAが用意した小さな航空会社に転職したことにし、航空レーダーを避けるように超低空飛行で通り抜けて、中米や近隣諸国を秘密裏に偵察飛行する。その成果はCIAにも評価される。やがて、シールはパナマの独裁者マヌエル・ノリエガの知古を得ることになる。CIAの目を盗み、メデジン・カルテルの指示でコカインをルイジアナ州に密輸する仕事も請け負うようになる。その事実はCIAも知るところとなるが、シールの代わりになるような人材もおらず、敢えて黙殺する。

さらにシールは、ニカラグアの親米反政府組織コントラに武器を密輸する任務も請け負うことになる。そしてコントラが本気で革命を起こす気がないと確信したシールは、その武器をカルテルに横流しする。拡大する「任務」は、シール1人では手に負えずパイロットを雇い、その数だけセスナ機を抱える立派な「会社」に成長する。税金は当然かからず、儲けは増え続ける一方であり、シールは札束の保管に苦労するようになる。

生活は豪華になっていき、やがて妻もシールがTWAを辞めたことを知るが、溢れる札束に抗議の言葉も消失する。もしも、シールが堅実な人物であったなら、ほどほどの利益で安全策を取っていたかもしれない(もっとも堅実な人物だったらそもそもこんなことはしなかっただろうが・・・)。とどまるところを知らない暴走は、やがて行きつくところに行き着く。まもなく、シールは地元警察とDEAとFBIとATFに取り囲まれる。いずれの組織にとってもシールは、「重要犯罪人」だったのである。

やっていることが次々にうまくいき、吐いて捨ててもなお余るくらいの札束を手にし、ある意味シールには才能があったのであろう。惜しむらくはそれを正しい方向に使わなかったことである。せめてCIAの仕事だけで満足していたのなら、世間でも経験できない経験をし、国家にも貢献できたであろう。そして待っていたのは、犯罪者にふさわしい末路。

主演はトム・クルーズ。この人が演じると、実際のバリー・シールがどうであったかはわからないが、明るくノリのいい好人物になってしまう。スリリングな行動はお手のもの。明るいノリでピンチを次々に克服していく。イーサン・ハントのような派手なアクションはさすがにないが、明るくテンポの良い展開は心地よい。まさに「トム・クルーズの世界」が体現される。

「自分だったらどうするだろう」
そんなことを夢想しながら、トム・クルーズの世界を堪能したい映画である・・・


評価:★★☆☆☆









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2018年06月04日

【アウトランダー】My Cinema File 1930

アウトランダー.jpg

原題: Outlander
2008年 アメリカ
監督: ハワード・マケイン
出演: 
ジム・カヴィーゼル:ケイナン
ソフィア・マイルズ:フレイヤ
ジョン・ハート:ロスガー
ジャック・ヒューストン:ウルフリック
ロン・パールマン:ガナー

<映画.com>
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「パッション」のジム・カビーゼル主演によるSFファンタジー。とある惑星から飛び立った宇宙船が、8世紀の地球・ノルウェーに不時着した。唯一の生存者である乗組員ケイナンがバイキングに捕らわれる一方、宇宙船に潜んでいた殺戮生命体「モアウェン」が次々と人間たちを襲いはじめる。バイキングの族長の命を救ったことで信頼を得たケイナンは、彼らと力をあわせてモアウェンを倒すべく立ちあがる。共演に『トリスタンとイゾルデ』のソフィア・マイルズ。
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 冒頭、宇宙空間で何があったのか宇宙船が地球へと落下していく。墜落した地は、ノルウェーの海。宇宙船に乗っていたケイナンは、目がさめると仲間は息絶えており、これを葬る。海の底に沈んだ宇宙船から、ケイナンはシステムの一部を陸まで持ち出し、言語を習得する。そして銃を手に取り、森へと向かう。
  
 ところで、ケイナンが不時着した世界は西暦709年の世界。なぜタイムスリップしたのか、説明は全くなく不親切。まもなくケイナンはある村へとやってくるが、焼き尽くされた村には誰一人といない。そして森の中でケイナンは、ヴァイキングの一族・ウルフリックに襲われ、気を失いウルフリックの村へと連れて行かれる。

 この村の王はロスガー。ウルフリックはその後継者候補であるが、ロスガーの娘・フレイヤは気が強く、ウルフリックと結婚する気はない。それどころか、今日も父と剣の腕を磨く有様。ウルフリックにしてもまだ考え方に未熟さもあり、王の器はまだ備わっていない。そんな村で、ケイナンは捕虜として扱われる。焼き尽くされていた村はライバルのガナーの村であったことから、ガナーの復讐が予想される。

 拘束されたケイナンだが、村を全滅させたのはケイナンとともにこの時代に落下した怪物モアウェンだと見当がついている。そしてついにモアウェンによってロスガーの村も襲われる。ロスガーやウルフリックら戦士は、熊の仕業だと考え、森の中に退治に出かける。ここでロスガーを助けたケイナンは、偶然出くわした熊を討伐し、ロスガーと村人たちかの信頼を得る。こうして、村人たちはケイナンを受け入れる。

 しかし、危機が去ったわけではない。自分の村を襲い、妻子を殺されたと信じるガナーの一味が襲い来る。しかし、そのガナーも真犯人はモアウェンだと気付くことになる。そして人類は一致団結してモアウェンを倒すことになる。こうして、人類対モアウェンの戦いの火ぶたが切って落とされる。あまり期待せずに観始めたが、こういう展開にいつのまにか物語に引き込まれていく。

 残念なのは、冒頭から何の説明もなく始まったため、物語の背景がわからなかったことだ。ケイナンはたぶん、未来の人類なのだろうが、なぜタイムスリップして過去に戻ったのか(そもそもその理解で正しいのか)。なんでモアウェンが一緒に地球に落下したのか(宇宙船に忍び込んでいたのか、捕獲して搬送中だったのか)。SFの場合、きっちりと背景説明してくれないと、「?」マークを抱えたまま観るのは個人的に厳しいものがある。

 とは言え、ストーリー自体は面白く、バイキングの武器では到底太刀打ちできない相手に対し、ケイナンは未来人らしい戦いを仕掛けていく。タイトルの「アウトランダー」とは、「よそ者」の意味。そのアウトランダーの活躍が心地良い一作である・・・


評価:★★☆☆☆







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2018年06月01日

【二流小説家 シリアリスト】My Cinema File 1929

二流小説家 シリアリスト.jpg

2013年 日本
監督: 猪崎宣昭
出演: 
上川隆也:赤羽一兵
片瀬那奈:長谷川千夏
平山あや:鳥谷恵美
小池里奈:小林亜衣
黒谷友香:今野純子
賀来千香子:小林郁子
でんでん:後藤猛
高橋惠子:前田礼子
長嶋一茂:レポーター
戸田恵子:鏑木裕子
中村嘉葎雄:太田聖道
佐々木すみ江:工藤三重子
本田博太郎:三島忠志
伊武雅刀:町田邦夫
武田真治:呉井大悟

<Movie Walker解説>
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日本の海外ミステリランキングで史上初の三冠に輝いた、デイヴィッド・ゴードンのミステリー小説を日本を舞台に移し、上川隆也主演で映画化したミステリー。連続殺人犯の告白本を執筆することになった売れない小説家が次々と発生する殺人事件に巻き込まれ、自ら事件解決に奔走する姿が描かれる。片瀬那奈ら、女優陣の共演にも注目だ。
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 主人公は、売れない小説家の赤羽一兵。借家住まいで当然の如く独身。細々とポルノ小説を書いては糊口を凌いでいる。時折、大家の娘亜衣が来るのみである。そんなある日、赤羽は全く面識のない死刑囚の呉井大吾から“自分の告白本を書いて欲しい”という手紙をもらう。

 呉井は自称・写真家で、モデル募集と称して集めた4人の女性を各々の自宅で殺害。頭部を切断するという事件を引き起こしていた。そして生前の姿や切断後の写真を警察に送りつける等世間を挑発し、シリアル・フォト・キラーと騒がれ、逮捕後には死刑判決を受けていた。にもかかわらず、被害者の頭部はいまだ発見されていない。

 赤羽は呉井の弁護士・前田礼子に会いに行き、呉井の死刑が執行されるまで話の内容は一切公表しないという条件を出される。前田弁護士は、実は呉井の無罪を主張していた。さっそく赤羽は呉井と会うために収監先の刑務所を訪れる。現れた呉井は、やはりどこか狂気を秘めている。その呉井は、赤羽に条件を出す。それは呉井の熱狂的な女性信者と自分が登場する官能小説を書けば、自分の話をするというものであった。

 世間を騒がせた死刑囚の告白本を書くことは赤羽にとって大きなチャンスだったが、一方で噂を聞きつけた被害者の遺族たちからは抗議を受ける。数年前に少年Aの告白本が出版されたことが脳裏を過るが、遺族からすれば許しがたいと思うのも無理からぬところがある。しかし遺族の1人、姉を殺された長谷川千夏からは、事件の真相を知るために告白本を書いて欲しいと頼まれる。遺族も微妙に一枚岩ではない。それにまだ発見されていない頭部を探したいという気持ちもあるのだろう。そして赤羽は告白本を書くことを決意する。

 なかなか面白そうな出足に期待感が高まっていく。呉井との約束で、呉井の信者である女性たちを訪ねて行く赤羽。そして彼女たちを主人公に官能小説を書いていき、呉井に読ませる。ところがなんとその女性たちが、次々と殺害されてしまう。しかもその手口は、殺されて頭部を切断されるという呉井の犯行と同じもの。実は本当に呉井は無実なのかもしれない・・・

 こうして中盤も面白さを増していくのだが、何と後半にかけて失速。何とも平凡な展開になっていく。あまりにも都合よく物語が展開し、興覚めしていくのである。赤羽の会った信者の女性たちが、呉井の犯行と同じ手口で殺されていくが、それが実にアップテンポに進む。そんなに簡単にはいかないだろうと思う所からケチがつく。やがて呉井の過去がだんだんと明らかになっていくが、結末はさらに興ざめする。

 原作は、「日本の海外ミステリランキングで史上初の三冠に輝いた」という以上、それなりに面白いのだろうが、映画と言う枠に収めきれなかったものと思われる。せっかくの原作だが、残念なことこの上ない。観終わってみれば、観たことを後悔させられるほど。実に残念な映画である・・・


評価:★☆☆☆☆






posted by HH at 00:00 | 東京 ☁ | Comment(0) | ミステリー

2018年05月29日

【特捜部Q 檻の中の女】My Cinema File 1928

特捜部Q 檻の中の女.jpg

原題: Kvinden i buret
2013年 デンマーク
監督: ミケル・ノルガード
出演: 
ニコライ・リー・カース:カール・マーク
ファレス・ファレス:アサド
ソニア・リクター:ミレーデ・ルンゴー
ミケル・ボー・フォルスガード:ウフェ
ソーレン・ピルマーク:カールの上司
トロールス・リュービュー:ハーディ

<映画.com>
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世界的に人気を集めるユッシ・エーズラ・オールスン原作のミステリー小説「特捜部Q」シリーズの第1作「檻の中の女」を、本国デンマークで映画化。『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』のニコライ・アーセルが脚本を手がけた。コペンハーゲン警察殺人課の刑事カールは、新設されたばかりの未解決事件班「特捜部Q」に左遷させられてしまう。捜査終了と判断された事件の資料を整理するだけの仕事にやる気を見出せないカールだったが、資料の中から5年前に世間を騒がせた美人議員失踪事件の捜査ファイルを発見し、その捜査結果に違和感を抱く。助手アサドと共に調査に乗り出したカールは、やがて議員がまだ生きている可能性にたどり着く。主人公カール役を『天使と悪魔』のニコライ・リー・カース、助手アサド役を『ゼロ・ダーク・サーティ』のファレス・ファレス、失踪した議員役を「しあわせな孤独」のソニア・リクターが演じた。2015年1〜2月、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で開催の「未体験ゾーンの映画たち 2015」上映作品。
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デンマーク映画というと、日本ではあまり馴染みがないものの、時折観る機会に恵まれる。日本にいてそうなのだから、たぶん現地ではかなり製作されているのではないかという気がする。そんなデンマークのミステリー映画である。

主人公は、コペンハーゲン警察署殺人課の刑事カール・マーク。仕事熱心であることは間違いないが、時に自身の思いの強さからのめり込んでいく傾向がある。冒頭ではいきなりの張り込み現場で、応援を待とうという同僚の声を無視し、カールは現場に踏み込む。しかし、待ち受けていた者に銃撃され、自らも負傷するが、同僚の1人は死亡、もう1人は半身不随の重症を負ってしまう。

3ヶ月後、傷が癒えて署に戻ったカールだが、現場を外されてしまう。異動先は新設部署である“特捜部Q”。そこでは、20年分の未解決事件の書類を整理し再検証するというミッションを与えられる。はっきり言って左遷である。“特捜部Q”は左遷場所にふさわしく、署内の地下にある物置のような部屋。そしてアラブ系の男アサドが、部下として配属される。アサドもどういう経歴かはわからないが、前職は2年間倉庫でスタンプ押しをしていたというもの。カールと違ってアサドは前向きスタンス。

やる気など起こりようのない状況だが、カールはアサドが壁に貼りまくった資料のうち、「ミレーデ失踪事件」の資料に目が留まる。それは5年前、人気の女性議員ミレーデ・ルンゴーが突然乗っていたフェリーから失踪したというもので、手掛かりがない中、「自殺」とされていたもの。しかし、自殺の現場に自閉症の弟を連れて行くのは不自然だとカールは考える。

興味を持ったカールは、刑事魂に火が付き、資料の読み込みに入る。そして一緒にいた弟のウフェが、カフェでレインコートの男と歩いていたと言う証言が無視された事に気づく。実はミレーデは、何者かによってフェリーから拉致されており、以後なにやら堅固な部屋に監禁されていたのである。さらにその部屋は加圧室になっていて、不気味な声の男が気圧を上げ、「1年後に会おう」と言ったきり放置される。食事は与えられるものの、ミレーデは誰も知らない中で、孤独に監禁生活に入る。

 こうしてカールは、アサドとともに誰も見向きもしない事件の捜査を密かに開始する。わずかな手掛かりからわずかな手掛かりへ。カールとアサドは地道に捜査を続けていく。しかし、経費の請求や問い合わせからそれが上司の知るところとなり、上司からは制止される。左遷男には大人しくさせておこうと考えた上司にとっては、煩わしいことこの上ない。しかし、もともとの暴走男がそんな制止に従うはずもない。一方で、何者かによるミレーデの監禁は続いている。その目的は不明。
 
 事前の情報を何も知らずに観始めたものの、いつの間にかストーリーに引き込まれていく。上司の妨害にもめげずに事件を追うカール。そのままではおそらく迷宮入りするだけだった事件が、次第に明らかになってくる面白さ。誰が何の目的でという謎解きもあって、いつの間にか引き込まれていく。何となくラストのカールの言動から今後も“特捜部Q”が続いていきそうだと思ったら、原作はシリーズ化されているという。この映画もシリーズ化されたなら、観るのも面白そうだと思う。

 「檻の中の女」というタイトルだけがどうも引っ掛かるが、それ以外は大満足な一作である・・・


評価:★★☆☆☆





posted by HH at 00:00 | 東京 🌁 | Comment(0) | ミステリー

2018年05月26日

【エスケイプ・フロム・イラク】My Cinema File 1927

エスケイプ・フロム・イラク.jpg

原題: The Mountain II
2016年 トルコ
監督: アルパー・カグラー
出演: 
カグラー・アートグルール
ウフク・バイラクター
アフ・タルクペンス
ムラート・セレジル
ムラート・アーキン

<シネマトゥデイ>
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トルコ軍の特殊部隊の活躍を描くミリタリーアクション。彼らが、IS(イスラミックステート)にとらわれた女性ジャーナリストの救出に挑む。メガホンを取るのは『ヒットマン:デッドリミット』などのアルペール・チャーラル。カグラー・アートグルール、ウフク・バイラクター、アフ・タルクペンス、ムラート・セレズリらが出演し、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』や『ハードコア』などを手掛けたVFXスタッフが参加している。
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冒頭、オレンジのつなぎを着せられた女性が砂漠に座らせられ、目だし帽の男に首にナイフを突き付けられている。その前にはビデオカメラを構えた男。以前、ずいぶんとニュースになった衝撃的なシーンである。そしてあわや処刑寸前というところで、静かに近寄っていたトルコ軍特殊部隊精鋭が一気にテロリストを殲滅し、救助する。しかし、助けられたはずのジャーナリストは、彼らに好意を抱いていない。

それでも母国民救出のためにイラクに潜入したトルコ軍特殊部隊は、かまわずジャーナリストを連れてヘリによる救出地点までの道のりを歩いて行く。そこは危険なISの勢力圏内であり、追撃を逃れての行動となる。その合間に、特殊部隊隊員たちの過去が描かれていく。『GIジェーン』でもお馴染みの過酷な訓練。どこの国も似たようなものなのかもしれない。

そんな過酷な訓練を経たメンバーは精鋭。ISが束になってもかなうものではない。しかし、無敵の勢いの精鋭部隊も数で勝るISはやはり脅威である。隊長は、なるべく戦闘を回避しようとするが、ISのリンチに遭っている民間人を捨ておくわけにはいかずこれを助ける。そのたびに足かせが増えていく。ようやく合流地点付近の村にたどり着くが、今度は迫りくるISを前に無防備な村人たちを放置できるかという試練に立たされる。

『ローン・サバイバー』では、非武装の敵住民を見逃してゲリラに通報されて特殊部隊のメンバーが窮地に陥ったが、同じような構図である。ISの大部隊が迫る中、隊長は命令を無視してジャーナリストと村の子供たちだけをヘリに乗せる。残った村人たちを隠れさせた上で、たった7人で数百名のIS軍を待ち受ける・・・

村の境界にトルコ国旗を掲げ、悲壮な決意で敵に対峙する特殊部隊の面々。いやが上にも気分は高揚する。これがハリウッド映画だったら感じなかったと思うのだが、トルコ映画ということを考えると、これはエンターテイメントというよりは「国威発揚映画」なのだろうと思えてくる。それも悪くはないとは思うものの、やはり映画は純粋にエンターテイメントとして創ってほしいと無邪気な自分は思う。

映画には亡くなったと思しき兵士に対する哀悼文言が出てくる。もしかしたら実話をベースにしているのかもしれない。同じトルコ映画でも『シーバトル戦艦クイーン・エリザベスを追え!!』は、エンターテイメントとしてはあまり面白くなかったが、こちらはクライマックスの戦闘シーンはなかなかの圧巻。気分を盛り上げるシーンもあって、国威発揚だろうが無関係な国民からすると純粋に楽しめるのは確かである。

 余計なことは考えず、純粋に楽しみたい映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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