2008年03月31日

【手紙】My Cinema File 191

手紙.jpg

2006年 日本
監督: 生野慈朗
原作: 東野圭吾
出演: 
山田孝之:武島直貴
玉山鉄二:武島剛志
沢尻エリカ:白石由美子
吹石一恵:中条朝美
尾上寛之:寺尾祐輔
吹越満:緒方忠夫
風間杜夫:中条
杉浦直樹:平野

<シネマトゥデイ>
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東野圭吾のロングセラー小説を映画化した社会派人間ドラマ。殺人という大罪を犯した兄のせいで、人生を狂わされる弟の受難の日々を追う。『電車男』の山田孝之が不運な弟にふんし繊細な演技をみせる。坊主頭で服役囚の兄役に挑んだ『逆境ナイン』玉山鉄二や、健気なヒロイン役の『シュガー&スパイス 風味絶佳』の沢尻エリカらの演技も素晴らしい。重いテーマでありながらも、随所に笑いを盛り込んだ見事な演出が光る。
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工場で働く20歳の武島直貴は、職場の人間ともまるで打ち解けず、人目を避けるように暮らしていた。それというのも唯一の家族である兄・剛志が、直貴の学費欲しさに盗みに入った邸宅で老婆を殺してしまったからだった。兄が罪を犯したのは、自分のせいだ。そう自責する直貴は、せめてもの償いにと服役中の兄から届く手紙に丁寧な返事を書き続けていた。そんなある日、更生した元服役囚と出会った直貴は、一度はあきらめたお笑い芸人の夢に再び挑戦しようと決意する・・・

原作は東野圭吾の小説。
東野圭吾といえばサスペンス・ミステリーなどの作品が多いが(最近では「ガリレオ」がテレビドラマ化されていた)、この「手紙」は殺人犯の弟の苦悩を描いた直球勝負の小説である。
強盗殺人で無期懲役などといえば世間は被害者に同情的だ。
それを「加害者の弟」にスポットライトを当てたのがポイントだ。

心優しき兄剛志は殺人罪で服役中。弟直貴としては、兄の罪の原因は直貴が大学へ行くための資金が欲しかったためであり、恨む事はできない。されど世間の冷たい仕打ちで大学進学を断念した上に仕事や住居を追われることしばしば。さらには夢であるお笑い芸人への道や最愛の女性との結婚も諦めざるを得なくなる。そんな弟直貴の苦悩が綴られる。
唯一の慰めが、直貴になぜか好意を寄せる由実子の存在だ。冷たくされても裏に表に直貴の支えとなろうとする。

兄と弟を唯一つなぐのがタイトルとなっている手紙。
手紙を通しての兄と弟の交流。
そして苦悩・・・
親友寺尾や由実子に支えられながら家庭を築き、しだいに世間との係わり合いを広げて生きていく弟直貴。
被害者とのからみも交え、重厚なテーマでありながら感動的なドラマである。

通常こういった小説を映画化するのは難しい。
小説の世界を2時間程度の映画で描ききる事は困難な事が多いからだ。
だが、原作は文庫本400ページ程度であったためか見事に2時間の枠に収まっている。
映画でも小説でも同じような感動が味わえる。

唯一難をいえば弟直貴がめざした夢の違いだろうか。
原作はバンドであるが映画ではお笑い芸人。
満たされぬ思いを唄に託すのはしっくりくるが、世間に背を向けた暗い存在とネアカが要求されるお笑い芸人はどうもマッチしない。
(ネタは面白いのだが・・・)

時としてまともに議論をすれば何時間もかかりそうなテーマを映画や小説は雄弁に語る事がある。キリスト教の「原罪」を理解したければ「氷点」(三浦綾子作)を読めばいいように。
これは日本版「罪と罰」といえるだろう。
そんな名作を映像で味わえる映画である・・・


評価:★★★★☆






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2008年03月30日

【八月のクリスマス】My Cinema File 190

8xmas.jpg

2005年 日本
監督: 長崎俊一
出演: 
山崎まさよし:鈴木寿俊
関めぐみ:高橋由紀子
大倉孝二:宮田亮二
戸田菜穂:佳苗
西田尚美:純子
井川比佐志:鈴木雅俊

<映画.com>
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1999年に日本公開された「シュリ」と並び、現在の韓国映画ブームの火付け役となった「八月のクリスマス」。写真館を営む男性と交通取締官の女性のほのかな恋を描き韓国恋愛映画の金字塔となったこの作品を、舞台を日本に置き換えて長崎俊一監督がリメイク。主人公を演じるのは、「月とキャベツ」以来8年ぶりの映画出演となる山崎まさよし。出演だけでなく、音楽と主題歌も担当している。共演は「恋は五・七・五!」の関めぐみ。
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父親から受け継いだ古ぼけた写真館で働く寿俊。
彼は不治の病を抱えており余命が限られているのだが、その事は彼と彼の家族だけが知っている。彼はそんな状況でも、写真館の仕事ややもめの父親との家事をこなし、笑顔を絶やさず穏やかな毎日を送っている。
ある夏の日、小学校の臨時教員である由紀子が写真館にやってくる・・・

この映画は1998年に公開された韓国版のリメイク。
韓国映画はハリウッドでも数多くリメイク版が作られているが、切ない純愛を照れることなく堂々と語るストーリーは韓国映画の王道と言えそうである。

山崎まさよし演じる主人公寿俊は余命いくばくもない体。
悲恋のヒロインではよくあるパターンだが、一ひねりしてここでは男性がそうなのである。
事情を知らない友人が独り身を案じて女性を紹介しようとするが、やんわりと断る寿俊。
自分が死んだ後のことを考え、父親のためにDVDや写真機器の操作方法のメモを作る。
運命を受け入れ静かに「その時」を待つ。目の前に小学校の臨時教員由紀子が現れた時も自分には恋愛などもう関係ないものと淡々と付き合う。しかし、何回も顔を合わせるうちに段々と諦めたはずの恋心が動き始める・・・

丘の上のお気に入りの場所に由紀子を案内する寿俊。
冬の眺めが最高だと由紀子に教える。
「一緒に見に来たい」と無邪気に答える由紀子。
「無理だよ。体力がもたない」と答える寿俊。
その言葉の真意に気付かない由紀子。
見ているものはその意味がわかるわけで、もどかしい思いをさせられる。

映画の舞台となるのは富山。
のんびりとした町並みが寿俊の静かな心とマッチしている。
もしも自分の余命が限られたものであるとわかったら、どのように残された時間を過ごすのであろうか。
一枚一枚丁寧にシャッターを切る寿俊の姿に一瞬一瞬を大切に生きている事が伝わってくる。
静かな音楽とともに言葉ではなく映像で伝えられる映画の良さが発揮されるところだ。

秘めた想いを手紙にしたため、自分の葬儀用の写真を撮る寿俊。
見終わってちょっと切ない気分にさせられる映画である・・・


評価:★★★☆☆








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2008年03月29日

【ザ・センチネル -陰謀の星条旗-】My Cinema File 189

THE SENTINEL.jpg
原題: THE SENTINEL
2006年 アメリカ
監督: クラーク・ジョンソン
出演: 
マイケル・ダグラス:ピート・ギャリソン
キーファー・サザーランド:デヴィッド・ブレッキンリッジ
エヴァ・ロンゴリア:ジル・マリン
キム・ベイジンガー:サラ・バレンタイン
デヴィッド・ラッシュ:バレンタイン大統領
マーティン・ドノヴァン:ウィリアム・モントローズ

<シネマトゥデイ>
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レーガン大統領を暗殺者の魔の手から救ったこともあるベテランのシークレット・エージェントが、大統領暗殺計画の汚名を着せられるサスペンス・アクション。主人公のシークレット・エージェントを『トラフィック』のマイケル・ダグラス、彼に疑いを抱く調査員を「24 TWENTY FOUR」のキーファー・サザーランドが演じる。先の読めないスリリングなストーリー展開と、ダグラス対サザーランドの手に汗握る競演は見ごたえ十分。
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シークレットサービスのピート・ギャリソンは、ファーストレディ護衛の任務に就いていたが、守るべき彼女と愛し合う関係となっていた。そんな中、彼の同僚が自宅前で射殺され、ギャリソンのかつての部下、デヴィッド・ブレキンリッジは事件の捜査を開始。しかし事件が解決せぬ内に、ギャリソンに接触してきたタレ込み屋から、大統領暗殺計画の存在と、それにシークレットサービスの高官が関わっているという情報がもたらされ…

センチネルとは「見張り」「歩哨」といった意味らしい。ここでは大統領のボディーガードであるシークレット・サービスを指しての事だろう。かつてレーガン大統領が狙撃された時、その身を守り伝説的存在となったピート・ギャリソン。しかし、今はその職務を全うしつつ、こともあろうことかファーストレディーと愛し合う仲になっている。そのな中でもたらされた大統領暗殺計画。しかもシークレット・サービスの中に内通者がいるらしいとわかる。誰にも言えない「秘密」を持つギャリソンに疑いがかかり、身の潔白を晴らすと同時に裏切り者を見つけ出し、大統領暗殺を阻止しなければならなくなる・・・

ギャリソンを追うのはギャリソン自身も有能と考える男ブレキンリッジ。
追いつ追われつ事件の真相に迫っていく・・・
こんな展開どこかで見たなと思っていたら、そう「逃亡者」が同じようなストーリーだった。「逃亡者」でも医師キンブリッジが無実の罪を背負い、自分を追いかける連邦保安官から逃げながら真犯人に迫っていくというものだった。

ギャリソンは知識と経験をフル活用し仲間たちの目を欺きながら裏切り者に迫っていく。公にできない秘密。
守らねばならない大統領。緊迫感溢れるスリリングな展開が心地良い。
マイケル・ダグラスもキーファー・サザーランドももはや2世俳優とは言えない。
存在感溢れる二人の競演は見てみて損はない映画である・・・


評価:★★★☆☆







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2008年03月28日

【母たちの村】My Cinema File 188

moolaade.jpg

原題:  MOOLAADE
2004年 フランス=セネガル
監督: ウスマン・センベーヌ
出演: 
ファトゥマタ・クリバリ:コレ・アルド・ガロ・シ
マイムナ・エレーヌ・ジャラ:ハジャトゥ
サリマタ・トラオレ:アムサトゥ
アミナタ・ダオ:アリマ・バ
ドミニク・T・ゼイダ:兵隊さん
マー・コンパオレ:割礼師

<シネマトゥデイ>
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“アフリカ映画の父”と各国で賞賛される、『エミタイ』や『チェド』のウスマン・センベーヌ監督による人間賛歌。今もアフリカの多くの地域で問題になっている女子割礼の儀式と、それを取り巻く人々のドラマを力強く描く。主演のファトゥマタ・クリバリも実際に割礼を受けており、劇中では古くからの伝統である割礼に反対する母親を熱演している。2004年カンヌ国際映画祭ある視点部門でグランプリを受賞した実力作。
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西アフリカの小さな村で、割礼を嫌がった4人の少女たちがコレのもとへ逃げ込んで来る。第一、第三ママや子どもたちと暮らすコレは、自分が割礼で苦労し、二人の子どもを死産した経験から、娘には割礼をさせていなかった。少女たちはそのことを知って、「モーラーデ(保護)」を求めて来たのだった。コレはそれを受けるが、伝統に逆らうコレの行為に村の男たちは大混乱になる。そしてモーラーデを止めさせようと、コレに様々な圧力をかけてくる・・・

この映画はアフリカの割礼をテーマとしている。
何よりも風習の違いが興味深い。

主人公はコレ。
村に住むさる人物の第二夫人である。
「第二」ということは「第一」がいて、さらには「第三」までいる。
つまり一夫多妻制なのだ。

原題のモーラーデとは「保護」と訳されていたが、コレが割礼を嫌がって逃げてきた子供たちをかくまってこれを宣言、家の前に紐を結ぶと外から入って来られない。
またぐ事は簡単なのだが、どうやら宗教上の理由でそれをしてはいけないらしい。
宣言した本人が取り消さないといけないようである。
なのであの手この手でまわりは破棄させようとする。

その主要手段は旦那の懐柔。
絶対権力を持つ旦那にそれをさせようとする。
一夫多妻で亭主関白社会。
なんともうらやましい・・・

コレが伝統的な割礼廃止を言い出したのはラジオで毒された考え方に触れたからだと村中でラジオ処分運動が起こったりする。
ストーリーはさて置きこうした風習、考え方などがさりげなく散りばめられている。

ストーリーをみても、ひたすら伝統を守ろうとする長老派に対し一人敢然と立ち向かうコレ。
割礼を受けていないと結婚もできない。
受けていないコレの娘はそれを気に病む。
強い信念で娘を諭し、権威に立ち向かうコレ。

伝統を変えるのは大変だ。
ましてや多数派に単独で反対するのも。
次第に味方が増えていく。
何かを感じさせる映画だ。

いろいろな意味で見ておいて損はないと思う映画である・・・


評価:★★☆☆☆







posted by HH at 23:36 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | その他の国の映画

2008年03月23日

【ダウト】My Cinema File 187

ダウト.jpg

原題: SLOW BURN
2005年 アメリカ
監督: ウェイン・ビーチ
出演: 
レイ・リオッタ:フォド・コル
LLクールJ:ルサ・ピンクス
メキー・ファイファー:アイザック・デュパド
ジョリーン・ブレイロック:ノラ・ティマ
ガイ・トリー:チェット・プライス

<シネマトゥデイ>
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レイプから発展した殺人事件をきっかけに、想像を絶する事実が明らかになっていく異色ミステリー。監督は『アート オブ ウォー』の脚本家ウェイン・ビーチ。事件の謎に迫る地方検事を『ハンニバル』のレイ・リオッタが演じ、事件の真相を知っていると主張する謎の男を『マインドハンター』のLL クール Jが演じる。何人もの証言が交錯するストーリー構成と、謎が謎を呼ぶ展開の果てにたどり着く衝撃のラストは必見。
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 警察官から地方検事になり、出世街道まっしぐらのフォード・コールにとって、アフリカ系女性の地方検事補ノラ・ティマーは有能な部下であり恋人だ。ジャーナリストの密着取材を受けていた夜、事件は起こる。ノラが殺人で逮捕されたのだ。正当防衛を主張するノラだったが、殺された男の親友ルーサー・ピンクスが現れ、真相はノラの計画殺人だと告げる。事件の背後には裏社会の実力者ダニー・ルーデンの姿が見え隠れしていた・・・

 マスコミから密着取材を受ける地方検事フォード。
取材の最中に恋人である地方検事補ノラがレイプされ、相手を射殺するという事件が起こる。
正当防衛で片付けようとするが、殺された相手の親友と称する男が現れ、ノラとは異なる証言を始める。

 一つの事件を巡る相反する二つの証言。
ノラの証言を信じたいが、謎の男の証言にも真実味が見え隠れする。
疑心暗鬼に陥るフォード・・・
そして事件の黒幕である正体不明の人物ダニー。
はたして誰がダニーなのか。

 ダニーの正体をあれこれと見る者に推察させるところは先日見た「ユージュアル・サスペクツ」を髣髴させる。朝5時までというタイムリミットのある中で検事フォードが事件の真相を追って行く。二転三転するストーリーにあわせてあれこれと推理させてくれるのでついつい引き込まれてしまう。
そういう意味でなかなか見応えのあるドラマが展開される。

 しかし、ラストになってダニーの正体が判明し、事件の真相が解明されたと思ったら「???」となる。果たして見た通りの結末で良いのだろうか?それともダニーの正体はやっぱり・・・と「?」がついてしまう。何か複雑にしすぎているように思える。せっかくのストーリーなのに後味がすっきりしない。作り手の意図はわからないが、個人的にはすっきりできるエンディングの方がありがたい。これを見て詳しく解説できる人がいたら話を聞いてみたいものである。

 すっきりしないエンディングに残尿感の残る映画である・・・


評価:★★☆☆☆





posted by HH at 15:49 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ミステリー