
2007年 日本
監督: 降旗康男
原作: 浅田次郎
出演:
妻夫木聡:別所彦四郎
夏木マリ:別所イト
赤井英和:九頭龍為五郎(疫病神)
香川照之:甚平 (蕎麦屋の主人)
西田敏行:伊勢屋(貧乏神)
江口洋介:勝海舟
<シネマトゥデイ>
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激動の幕末を舞台に、しがない下級武士が3人の災いの神様に取り憑かれて奮闘する姿を描いた時代劇ドラマ。1999年に公開され大ヒットした『鉄道員』の原作・浅田次郎と監督・降旗康男のコンビが8年ぶりにタッグを組み、時代が移りゆく世相の中で、武士としての本分を取り戻していく若きサムライの生き様を活写した。人生の意義に目覚める主人公の妻夫木聡をはじめ、災いの神様にふんした西田敏行、赤井英和ら演技派たちによる掛け合いも見もの。
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幕末。別所彦四郎は、婿養子に行った先から離縁され、兄夫婦の家に居候という、肩身の狭い思いをしていた。あるとき彦四郎は、旧友、榎本武揚と再会する。そば屋の親父が言うには、榎本が出世したのは、向島にある「三囲り(みめぐり)稲荷」にお参りしたからだという。その帰り道、酔った彦四郎は「三巡り(みめぐり)稲荷」を発見。ここぞとばかりに神頼みする彦四郎だったが、それは「みめぐり」違いで、災いを呼び寄せるお稲荷様だった…
原作は浅田次郎の同名小説。
これがなかなか味わい深い小説で、映画の方も是非観てみたいと思っていたものだ。
だがやはり小説を読んでしまうと映画はどうしてもダイジェスト版。
ちょっと物足りないものを感じてしまう。
主人公の彦四郎は本家に居候する日々。
一度婿養子に行ったのであるが離縁されて出戻っていたのだ。
この時代は長男が家督をすべて相続する時代。
次男以降はなんとか婿養子の口を見つけて家を出ないと居候の無駄飯食いになってしまう。
そこで剣術に学問に人一倍精を出したという。
彦四郎もそうした一人で、あの榎本武揚と肩を並べる優秀さであったという。
なのに榎本は大出世し、自分は燻っている・・・
どこの世にもありそうな悲哀である。
そんな彦四郎に「ご利益」を囁くそば屋の親父。
酔った勢いでふと見つけた「三巡り(みめぐり)稲荷」。あやかろうと考えた彦四郎がここぞと手を合わせたら、そこは同じ「みめぐり」でも違う神様。
それからやってくる3人のゴーストならぬ3人の神。
「貧乏神」「疫病神」「死神」。
それぞれの神が呉服屋、相撲取り、少女の姿でやってくる。
ディケンズの「クリスマス・キャロル」を髣髴させる展開であるが、神々との出会いを通じて主人公があるべき姿にたどりつくストーリーも同様である。
そして観る者に自分にあてはめて考えさせる事も・・・
幕末という時代設定も絶妙である。
時代が大きく激変する。
今までの価値観が揺らぐ。
それは代々将軍の影武者という役目を守り続けてきた別所家にも襲いかかる。
今までは家柄を守る事が己に果たされた役目であった。
昨日と同じ一日を今日もそして明日も大過なくすごせばそれでよかった。
しかし、黒船来航からグローバル化にさらされ、時代の波に乗ったものが大きな成功を収める。ここでは榎本武揚を登場させそれを表す。
「今までのままでいいのか」と己に問いかける者と必死になって耳をふさぐ者。
当時の武士たちも現代のサラリーマンと同じ課題を抱えていたのだろうか。
それぞれの神々と対峙しながら己の人生と向き合う彦四郎。
「これからどうなっていくのだろう」
「これから何をすればよいのだろう」
そして最後に己の取るべき道を決めた彦四郎。
武士道にのっとり堂々と決断を下した姿は、時代はどうあれ男はかくあるべしと観る者に伝えているように思える。
ただし、小説の方が最後はぐっとくる。
浅田次郎はやっぱり小説で味わうべきなのだろうと思わされる一作である・・・
評価:★★☆☆☆