
1962年 日本
監督: 浦山桐郎
出演:
吉永小百合:ジュン
東野英治郎:石黒辰五郎
杉山徳子:トミ(妻)
市川好郎:タカユキ
鈴木光子:金山ヨシエ
森坂秀樹:サンキチ
浜村純:父
菅井きん:母美代
浜田光夫:塚本克巳
<allcinema ONLINE>
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鋳物の町として有名な埼玉県川口市。この街にはキューポラという煙突が立ち並ぶ。昔カタギの職人の町にも時代の波が押し寄せる。旧来型の鋳物職人であるジュンの父は、働いていた工場が大工場に買収されたことからクビになってしまう。困窮に苦しむ一家だったが、ジュンはそんな境遇の中でも、自分の進路について一生懸命考え、パチンコ屋でバイトしながらも高校進学の学費を稼ごうとがんばる……。吉永小百合主演で、高度経済成長期の庶民の暮らしを温かなまなざしで描いた青春ドラマ。
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鋳物の町として有名な埼玉県川口市。銑鉄溶解炉キューポラやこしきが林立するこの町は、昔から鉄と火と汗に汚れた鋳物職人の町である。石黒辰五郎も、昔怪我をした足をひきずりながらも、職人気質一途にこしきを守って来た炭たきである。この辰五郎のつとめている松永工場には五、六人の職工しかおらず、それも今年二十歳の塚本克巳を除いては中老の職工ばかり。それだけにこの工場が丸三という大工場に買収され、そのためクビになった辰五郎ほかの職工は翌日から路頭に迷うより仕方なかった・・・
温故知新で過去の名作を観ている。
ちょっと年代が上の人であれば川口と言えばキューポラ、キューポラと言えば川口とまずは反射的に思っていたはず。
そんな川口=キューポラのイメージを決定付けたといえる一作。
1962年と言えばまだ新幹線も開通していない時代。
今でも京浜東北線、東北本線の鉄橋が荒川を越えてすぐのところにある川口。
汽車から電車へと変わっているとはいえ古いタイプの電車が行き交う町でのロケは当時の町並みが覗けて興味深い。
職人気質の辰五郎を父に持つ中学3年のジュンを主人公とした物語。
鋳物工場にも近代化の波が訪れ、辰五郎の勤め先である小さな鋳物工場は大手の工場に買収され、辰五郎も職を失う。
高校へ進学したいジュンであるが、家計の事情が大きな壁となる。
ジュンがアルバイトをするパチンコ店。
台の裏で玉を補給する仕事。
家の前の水道でお釜を洗うジュン。
家はガラスの引き戸で戸を開けるとすぐに茶の間兼寝室。
電報もそのまま隣の人に預けてしまうので読まれてしまう。
個人情報も何もあったものではない。
こんなシーンに当時の世相がわかる。
友人の家族が北朝鮮へ帰る事になる。
かつて大々的に行われていた帰還事業だ。
「ほくせん(北鮮)」「なんせん(南鮮)」という言い方も新鮮だ。
辰五郎はやがて労働組合の力で職を得て働き始める。
なんだか偏りが感じられると思っていたら、原作者は共産党員だとか。
そこには目を瞑るとしても世相を反映したこうした映画は個人的には興味津々。
これからもたくさん観たいと思う。
ジュンは働きながら定時制高校へ進学する道を選ぶ。
時代の息吹だろうか溢れる希望がこぼれ落ちてきそうな映画である・・・
評価:★★☆☆☆