2008年12月31日

【あかね空】My Cinema File 326

あかね空.jpg


2006年 日本
監督: 浜本正機
出演: 
内野聖陽:永吉/傳蔵
中谷美紀:おふみ
中村梅雀:平田屋
石橋蓮司:清兵衛
岩下志麻:おしの
勝村政信:嘉次郎
泉谷しげる:源治

<シネマトゥデイ>
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時代小説の第一人者、山本一力の直木賞受賞作品を映画化した感動作。市井に生きる人々の愛と人情、そして家族の再生を描く。本作の企画には、2003年の『スパイ・ゾルゲ』をもって監督業を引退した篠田正浩がたずさわっている。主演は内野聖陽と『嫌われ松子の一生』の中谷美紀。石橋蓮司や、篠田正浩の実生活での妻でもある岩下志麻など個性派が脇を固める。VFX映像でリアルによみがえらせた永代橋など、江戸の町並みも見どころのひとつ。
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江戸は深川蛤町。職人たちが多く暮らす長屋が並んだ裏町で、井戸から汲み上げた水をじっと眺めている旅姿の男ー京の豆腐屋で修行し、江戸で店を持つためにやってきた永吉ーは、近くに住む桶屋の娘おふみと出会う。お互い惹かれ合うものを感じた二人は、京の豆腐を江戸で売り出すために力を合わす。影で見守る清兵衛とおしのは、幼くして行方知れずになった息子を永吉に重ね合わせ、何かと力になるのだった。
そして18年の時が流れる…

原作は山本一力の直木賞を受賞した小説との事(知らなかった)。
一言で言えば大江戸人情物語である。
冒頭の永代橋。
浮世絵で見たことのある景色そのままの大迫力であるが、このVFX映像というやつは「ALWAYS三丁目の夕日」でもリアル感を見せてくれたが、ここでも威力を発揮。
そこかしこの江戸の街も自然に再現されていて違和感がない。
きっとこうだったんだろうなと思えるのである。

京都の豆腐屋で修行し、一旗上げるべく江戸へと出てきた永吉。
もともと世話好きなのだろうか、上京したての永吉に何くれとなく世話をやくおふみ。
この二人を軸にストーリーは進んでいく。

今では日本の首都東京は日本の中心地。
しかし、当時は江戸幕府によって政治の中心は関東に移っていたものの、京はいまだに「上方」。江戸へは「下る」と表現されていたようである。

そんな「上方」豆腐を広めようと悪戦苦闘する永吉。
同業者の嘉次郎や清兵衛も口では冷たくあしらうが、裏では江戸で繁盛するヒントをくれたり口利きをしてくれたりする。
粋を売り物にした江戸っ子らしさが現れている。

やがて成功し表店を構え3人の子に恵まれた永吉とおふみ。
しかし、長男永太郎と永吉はことごとく衝突する。
永吉の「京や」の成功を快く思わない平田屋は腹に一物を秘めたまま永太郎を取り込む。

内野聖陽が一人二役で賭場を仕切る傳蔵親分として登場。
平田屋の悪巧みに手を貸していく。
真面目一筋に商売をする永吉とおふみ。
後半では平田屋と傳蔵に対して見事な振る舞いをする。
マネーゲームに明け暮れる現代人に「大事なモノ」を示唆してくれるようで、今の時勢にぴったりとあったような映画である。

江戸といえば「人情」。
そして禍福はあざなえる縄の如し。
良いこと悪い事がどちらもやってくる。
人と人は、助け助けられ。
おふみはどんな窮地にあっても「平気、平気」という口癖で乗り越えていく。
現代とは違って何の保証もなかった時代の人々の生きる様。
そんな江戸風情に触れてみたくなったら、この映画を観ればいいかもしれない。
原作も是非読んでみたくなった一作である・・・


評価:★★★☆☆






posted by HH at 10:40| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | 時代劇/西部劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

【アパートメント】My Cinema File 325

アパートメント.jpg

2006年 韓国
監督: アン・ビョンギ
出演: 
コ・ソヨン:セジン
カン・ソンジン:ヤン刑事
チャン・ヒジン:車椅子の女性ユヨン
パク・ハソン:女子高生ジョンホン
笛木優子:地下鉄の赤い服の女キム

<映画.com>
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「友引忌」「コックリさん」などで知られる韓流ホラーの名手アン・ビョンギ監督が、「二重スパイ」のコ・ソヨン主演で描くサスペンススリラー。ソウル近郊のマンションに住むOLセジンは、自宅の向かいに建つアパートの照明が毎晩9時56分になると一斉に消えるのを発見する。そのアパートでは、住人たちが次々と謎の死を遂げていた。消灯と住人の死が関係していることに気づいたセジンは、警察や住人たちにそのことを知らせようとするが……。
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ソウル近郊の高級マンションに住むセジン。
彼女の部屋から見える「幸福アパート」では、ここ数日9時56分になると一斉に部屋の灯りが消えるという不思議な現象が起き、さらに謎の死亡事故が続いていた。
ある日、地下鉄の駅で飛び込み自殺を目の当たりにしたセジンは、大きなショックを受け、自宅に引きこもるようになってしまう。
その夜の9時56分、再び幸福アパートの灯りが消えると、住人がベランダから飛び降り…

韓国のホラー映画である。
どうも最近はこれといったホラーにめぐり合えていない。
別にホラーファンではないが、「リング」クラスのインパクトのあるものが恋しいと思うこの日この頃である。

何気なく観たこの映画、期待はまったくしていなかったから、そういう意味では「期待はずれ」とは言えない。
予想した通りのつまらない映画であった。

冒頭の地下鉄のシーン。
何やら意味深な赤いコートの女。
「寂しくない?」と主人公のセジンに問いかけたと思ったら、一緒に電車に飛び込もうとする。
幸いその手を振り切ったセジンは助かるが、心に大きな傷を負う。
そしてショックでひきこもり状態となる。

余談ではあるが、韓国でも「ひきこもり」がそのまま使われている。
そこだけ日本語だからわかったのだが、こんな日本語も輸出されているとはちょっとした驚きである。

さて、その後セジンの周りに現れる赤いコートの女。
取りつかれたかと思いきや、物語はセジンの住むアパートの向い側のアパートの怪現象へと移っていく。
9:56と寝るには早い時間に起こる怪現象。
韓国の人の夜は早いらしく、この時間に寝ているシーンが多い。

赤い女とのつながりは?
最後まで引っ張っておいて結局はわからずじまい。
ホラーであれば「恐怖のポイント」ともいうべきものがあるはずだか、それがない。
ちょっと貞子っぽく意識してみたシーンにどきりとする程度。
ストーリーに難有りの一本である。


評価:★☆☆☆☆








posted by HH at 09:54| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 韓国映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月30日

【俺は、君のためにこそ死ににいく】My Cinema File 324

俺は君のためにこそ死にに行く.jpg

2006年 日本
監督: 新城卓
出演: 
徳重聡:中西正也
窪塚洋介:板東勝次
筒井道隆:田端絋一
岸恵子:鳥濱トメ
中村友也:河合惣一
宮崎美子:河合惣一の母
多部未華子:鳥濱礼子

<シネマトゥデイ>
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第二次大戦末期、特攻隊基地のあった鹿児島県で隊員たちと交流を持った女性の体験をドラマ化した感動巨編。製作総指揮は東京都知事で作家の石原慎太郎。隊員から母のように慕われた鳥濱トメ本人の口から若者たちの真の姿を聞かされた石原が自ら脚本を書き上げた。特攻隊員役に徳重聡、窪塚洋介、筒井道隆らが挑むほか、トメ役には大女優の岸惠子がふんする。出撃前の隊員たちの測り知れない苦悩や衝撃的な特攻シーンに言葉を失う。
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昭和19年秋。
太平洋戦争で不利な戦況の日本軍は、最後の手段として戦闘機に爆弾を搭載し、敵艦に体当たりする特別攻撃隊を編成。鹿児島県の知覧飛行場はその特攻基地となった。軍指定の食堂を構え、飛行兵たちから慕われていた鳥濱トメは、特攻に志願した彼らを引き止める事も出来ず、戦地へと赴く若者との別れを幾度も経験する。やがて終戦を迎えた日本で、特攻隊員の生き残りと遺族は思いがけない過酷な試練を経験する事になる・・・

製作総指揮・脚本石原慎太郎となっているが、それだけで作り手の思いが伝わってくるようである。知覧基地を拠点とした特攻秘話は語りつくされた感があるが、この映画はその総集編とでもいうべきものであろう。軍指定食堂を運営していた鳥濱トメさんと特攻志願兵たちとのエピソードのいくつかはあちこちで耳にしたことのあるものである。

実際特攻兵たちはみな二十歳前の若者が大半であったというのは改めて驚きである。
いったいその年に自分は何を考え、何をしていただろうかと思わざるを得ない。
そして肝心の特攻機も終戦間際の物資欠乏時にあって整備不良が多発し、かつそれでも性能の良いものは本土決戦用に取り置かれ、特攻用には旧式機が当てられたというのもなんともやるせない話だ。

参加兵はみな「軍神」と崇められる。
戦後は手のひらを返したように生き残った者は「特攻崩れ」と言われたというエピソードは何とも言えない気分にさせられる。
出撃していった兵たちもアメリカ兵から見ると「クレイジー」とされ、今の自爆テロと同じように見られていたのかもしれないと思うとそれもやるせない。

観ながらいろいろと考えるにはいい映画だ。
しかしエンターテイメントとしての映画として観るとなると話は違う。
どこか「お涙頂戴のお芝居」に成り下っている。
真実の持つリアリティが決定的に不足しているのである。

同様の一連の映画と比較すると、同じ神風特攻を扱った「The winds of Gods Kamikaze」よりははるかに良いが、人間魚雷回天を扱った「出口のない海」と比べるとどっこいどっこいと言ったところか。製作側の意向はわからないでもないが、リアリティが不足すると「お芝居」になってしまうので、こういうテーマは映画として完成させるのは難しいと改めて思わされる一作である・・・


評価:★☆☆☆☆






posted by HH at 22:40| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 戦争/戦場ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月29日

【エンド・ゲーム大統領最期の日】My Cinema File 323

endgame.jpg


原題:END GAME
2006年 アメリカ
監督: アンディ・チェン
出演: 
キューバ・グッディングJr.:アレックス・トーマス
ジェームズ・ウッズ:ボーン・スティーヴンス
アンジー・ハーモン:ケイト・クロフォード
アン・アーチャー:大統領夫人
バート・レイノルズ:モンゴメリー将軍

<シネマトゥデイ>
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『ラッシュアワー』シリーズなどのヒットメーカー、ブレット・ラトナーが製作総指揮を務めるポリティカル・サスペンス。アメリカ大統領暗殺から始まるショッキングな事件の真相に大胆に迫る。大統領の警護にあたる主人公を、『僕はラジオ』のキューバ・グッディング・Jrが体当たりで熱演。共演者もジェームズ・ウッズやバート・レイノルズら名優たちが名を連ねる。二転三転するストーリー展開から浮かび上がる衝撃のラストは必見。
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アメリカ大統領が、万全の警備体制の中、狙撃された。犯人はその場で射殺されるが、大統領も搬送先の病院で息絶えた。記者のケイトは独自の調査を始め、犯人に協力者がいたことを知る。しかしそんな彼女の動きは、謎の集団により監視され、関係者が次々と抹殺されていく。ケイトはシークレット・サービスのトーマスを訪ねるが、彼は大統領を守りきれなかった思いから失意の日々を送っていた。そこへ謎の男たちが二人を襲撃する・・・

大統領が暗殺されるという大事件が発生する。
記者のケイトが偶然犯人の目撃者を見つけて接触するが、直後に目撃者が殺される・・・
あまり大して期待せずに観始めた映画であるが、何だか面白そうな雰囲気を感じる。
しかも出てくる出てくる昔の名前、白髪のジェームズ・ウッズ、トレードマークの口ひげ健在のバート・レイノルズ、アン・アーチャー・・・

シークレット・サービスのトーマスと合流したケイトだが、謎の集団の正体はつかめない。
出てくる人物はみな謎めいていて、こいつが黒幕かとあれこれ想像させてくれる。
一方でプロと思しき暗殺者との死闘も見所としてスリリングに展開される。
何だか思わぬ拾い物の映画に当たったように思えていた。

そして衝撃のラスト。
何が衝撃かというと「これだけ盛り上げておいてその結論か」という盛り下げ度である。
せっかくオールドキャストで盛り上げておいてそれはないだろうとなってしまった。
やっぱりある程度の陰謀は期待したかった。

キューバ・グッディングJrの熱演と懐かしのオールドネームだけが見所といえる映画である・・・


評価:★☆☆☆☆








posted by HH at 23:09| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | アクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年12月28日

【東京裁判】My Cinema File 322

東京裁判.jpg

1983年 日本
監督: 小林正樹
ナレーター: 佐藤慶

<シネマトゥデイ>
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“東京裁判”と呼ばれ、戦後日本の進路を運命づけた極東国際軍事裁判。太平洋戦争敗戦後の昭和23年、市ヶ谷の旧陸軍省参謀本部にて開廷された裁判の模様を、裁判より25年の後に公開されたアメリカ国防総省の長大なフィルムをもとに製作した記録映画。生々しい当時の映像をもとに、戦争責任の所在、国家と個人の関係、あるいは勝者が敗者を裁くことの限界といった様々な問題を浮き彫りにした渾身の力作。
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昭和23年1月22日。
ポツダム宣言にもとづいて、連合軍最高司令官マッカーサー元帥が、極東国際軍事裁判所条例を発布し、戦争そのものに責任のある主要戦犯を審理することにした。
満州事変から支那事変、太平洋戦争におよぶ17年8ヵ月間、日本を支配した指導者百名以上の戦犯容疑者の中から、28名が被告に指定され、法廷は市ヶ谷の旧陸軍省参謀本部、現在の自衛隊市ヶ谷駐屯地に用意された。

裁判官及び検事は、降伏文書に署名した9ヵ国と、インド、フィリッピンの計11ヵ国代表で構成され、裁判長にはオーストラリア連邦代表、ウイリアム・F・ウェッブ卿が、主席検察官にはアメリカ合衆国代表、ジョセフ・B・キーナン氏が選ばれた。
一方弁護団は28人に対する主任弁護人が全部そろわず、キーナン検事団とはあまりにも格差がありすぎた・・・

戦後に行われた連合国による極東国際軍事裁判を記録したドキュメンタリーである。
そもそも「裁判」という名がついているが、これはその名に値しないと個人的には考えている。専門家による批評はあるだろうが、シンプルに考えて「裁判官と検察と弁護士」、この三者が分立してこそ公平な裁判と言えるが、「裁判官&検察vs弁護士」という構図では公平な裁判とは言い難い。これは戦勝国による敗戦国に対する報復以外の何物でもない。

映画は裁判の進展を時の世情を間に挟みながらナレーションで補足するという形で進行し、裁判事態の進行をわかりやすくしてくれている。
不公平な裁判ではあるが、冒頭のアメリカ人弁護士による陳述は連合国側の勝者の理論を鋭くつくもので敵ながらあっぱれと感じる。
少なくとも弁護についてはきちんとなされていたようである。

連合国側も一枚岩ではない。
すでに冷戦の息吹は芽生えており、米ソの鞘当も見られる。
最悪の戦犯とされる東条英機も覚悟を決めていたのか堂々としており、アメリカ側のつたない通訳に文句をつけたりするところは臨場感溢れている。

そんな東条の発言が天皇の戦争責任追及につながりそうになると、それを不都合と考えるアメリカ側はキーナン検事が水面下で東条と調整をし、天皇に責任が及ばないように発言をしていくくだりがある。これなども所詮この裁判がアメリカの意図した通りに進むように図られている証左であり、まことに滑稽である。

「ワールド・オブ・ライズ」で披露されたアメリカのその傲慢さはすでにこの時に現れている。そんなアメリカに対し、「自分は敗戦の結果について国民に対しては責任があるが、連合国側に対しては自衛戦争であり責任はない」と東条英機ははっきり述べる。

靖国問題の根本は戦犯の合祀にある。
しかし肝心の戦犯とはこの茶番劇裁判でアメリカによって決められたものである。
勝者の理論で決められた戦犯。
277分という非常に長い映画であるが、生きた歴史の記録であり日本人としては必見の映画である・・・


評価:★★☆☆☆






posted by HH at 19:39| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(1) | ドキュメンタリー/ドキュメンタリー風 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする