2009年01月31日

【スプレンドール】My Cinema File 344

スプレンドール.jpg

原題: Splendor
1989年 イタリア・フランス
監督: エットーレ・スコラ
出演: マルチェロ・マストロヤンニ/マッシモ・トロイージ/マリナ・ヴラディ/ パメラ・ヴィロレージ

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閉館決定後、既に改装準備にあるイタリアの田舎町の映画館・スプレンドール座。
館主のジョルダンは、人々が立ち働く喧操の中、映画と共に歩んだ自らの人生を回想し始める。
子供の頃は、巡業映画館を営む父の手伝い。
長じて復員してきた彼は、スプレンドール座を継ぐ。
その頃は映画の全盛期、彼の恋心も全盛で、レビューの踊り子シャンタルに一目惚れして彼女を自分の劇場の座席係に据え、彼女のグラマラスな美貌を目当てにいよいよ客足も繁くなる・・・
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いかにも映画を愛する者が作りましたという雰囲気が出ている映画である。
「ニューシネマパラダイス」という映画に似た雰囲気を感じさせられた。

映画館がつぶれるというのは寂しい事である。
子供の頃に住んでいたところには映画館が3館もあった。
いかにもローカルな映画館であったが、「映画館のある街」である事が嬉しかったものである。

冒頭で館主のジョルダンが子供の頃の回想をする。
トラックに上映機材を満載し、町の広場に白い布のスクリーンを設置する。
(2本の柱を立てて紐で結び付けるのである)
夜になってみんな思い思いに椅子を持って集まってくる。
風で「スクリーン」が揺れる中、モノクロの映画が上映される。
音響係のジョルダンは得意満面でレコードを回すのである・・・

やがてジョルダンに代替わりし、映画館での上映が始まる。
映画の全盛。
人々は争ってチケットを求め、館内は立ち見も出る。
踊り子のシャルタンを連れてきて劇場係にしてしまうジョルダン。
(ちょっと年を食った踊り子で、モノクロでもごまかしきれないのが玉に瑕)

そんな歴史が華やかに綴られる。
やがて経営難から閉館となるわけであるが、次の用途のために回想される館内でぼぉーと運び出されていく品々を眺めるジョルダンの姿がなんとも印象的である。
古き良き映画館に想いを寄せて作られた映画である。


評価:★★☆☆☆

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2009年01月26日

【アイデンティティー】My Cinema File 343

アイデンティティー.jpg

原題: IDENTITY
2003年 アメリカ
監督: ジェームズ・マンゴールド
出演: ジョン・キューザック/レイ・リオッタ/アマンダ・ピート/ジョン・ホークス/クレア・デュバル/ジョン・マッギンリー

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天を突いたような豪雨の夜、寂れた街道で交通事故が起こる。
加害者のエドは、近隣のモーテルに救援を求めるが、豪雨で電話は不通。
道路も冠水し、行く手を阻まれてしまう。
やむなくエドはモーテルに引き返し、天候の回復を待つ。
モーテルに集ったのは、同じように立ち往生した10名の男女。女優と運転手、娼婦、新婚夫婦、囚人と刑事…。
互いに見ず知らずの彼らは、それぞれが何か秘密を抱えているようだった。
やがて彼らは雨に閉ざされたモーテルで、1人また1人と謎の死を遂げてゆく・・・
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最後にアッと驚くエンディングのスリラーである。
郊外の寂れたモーテルに次々に人が集まってくる。
女優と付き人、再婚カップルと連れ子、刑事と護送囚人、新婚カップル・・・
それが一人、また一人と殺されていく・・・

一方で死刑執行を翌日に控えた死刑囚の再審請求がなされ、判事と弁護士と検事と死刑囚本人が集まる。
同時平行して進むストーリー。
どちらも降りしきる豪雨。

前半は謎解きだ。
いったい誰が殺人を重ねているのか。
それはなんでなのか。
あれこれと推理しながらストーリーを追う。

後半はその謎解きがなされ、二つのストーリーが融合する。
殺人事件の「理由」がわかるのだ。
ちょっとヒネリが効いていて面白いストーリーだ。
ただ全体的には小粒な印象。
コンパクトにまとまっているが、インパクトが弱い。

主演は「ザ・スナイパー」にも出ていたジョン・キューザック。
なんとなくコンパクトな映画によく出ているというイメージの俳優だ。
ちょっとした暇つぶしにいい、ハズレではない映画という感想だ。


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 21:54 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | スリラー

2009年01月25日

【厨房で逢いましょう】My Cinema File 342

厨房で逢いましょう.jpg

原題: EDEN
2006年 ドイツ・スイス
監督: ミヒャエル・ホーフマン
出演: ヨーゼフ・オステンドルフ/シャルロット・ロシュ/デヴィット・シュトリーゾフ

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南ドイツの保養地で小さなレストランを営む天才シェフのグレゴア。
彼の作る料理は舌の肥えたグルメたちもうならせる。
しかし人づきあいが苦手な彼には恋人もいなかった。
その彼が出逢ったのはビアガーデンで働く主婦エデン。
グレゴアの料理を食べた彼女は、たちまちその味の虜になる。
やがて二人は親しくなり、グレゴアはエデンに料理をふるまうことが最大の楽しみになる。
しかしエデンの夫はそのことを快く思わなかった…
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天才シェフと人妻のラブ(友情?)ストーリー
主人公のグレゴアは子供の頃に見た妊娠中の母親の裸体に魅せられ、自ら大きなお腹に憧れて育ったという奇妙な人物。
大きなお腹になるために食べて食べて食べ続けてきた。
そのお陰でいつしか料理の腕前は天才的となるのだが、女性との付き合いからは程遠くどう接していいのかもわからないままきてしまう。

そんな彼が何気なく通ううちに気になりだしたのが、そこでウェートレスとして働く主婦エデン。
ふとしたきっかけで話をするようになる。
ぎこちない態度は、とても女性の心を射止めたものではない。
ところが娘の誕生日にプレゼントしたケーキでそれを変えてしまう。

狂ったようにケーキを食べる知的障害児の娘を目にして一口食べたエデン。
自らもそのおいしさの虜となり、レストランの厨房に通うようになる。
ここからのエデンとグレゴアの交流が邦題にもなっている通り、映画のテーマとなっていく。

ドイツって料理というイメージはしないのであるが、予約はずっと先まで一杯というグレゴアのレストラン。
エデンも客としては行けないが夜に厨房に忍び込み、特別料理を味わうという贅沢。
二人は双方とも好意を寄せつつも手も握らない関係。
逆にエデンは、彼の料理のお陰で家族関係がよくなり子供まで授かったと、嬉しそうに彼に報告する。

すぐにベッドインするような激しい恋とはほど遠い
密かな想いを秘めるグレゴアと友情と感じるエデン。
しかし嫉妬に狂ったエデンの夫が、行動に移った事で事態は予期せぬ方向へと進んでいく。

エデンに食べさせる料理を黙々と作るグレゴア。
彼の料理をうっとりとした表情で食べる客。
なんだかこちらも食べてみたくなる。
当たり前であるが五感のうち触覚、味覚、臭覚は映画では楽しめない。
それが残念だ。
結局街を追われたグレゴアが、最後にたどり着いた場所でも才能を発揮しているのをみて微笑ましく思う。
ちょっと味わいのある映画である。


評価:★★☆☆☆

posted by HH at 10:06 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年01月24日

【太陽が弾けた日】My Cinema File 341

太陽が弾ける日.jpg

2007年 日本
監督:  横井健司
出演: 小沢仁志/小沢和義/大山なつ/金山一彦/本宮秦風/大沢樹生/遠藤憲一/寺島進

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フィリピンのスラムで、血の繋がらない兄妹として生まれ育ったトニー、マックス、レイ。
彼らはジャッピーノと呼ばれ差別される、日本人とフィリピン人との混血児だった。
弁護士への道を歩むマックスと、幼馴染の恋人バギーと暮らすレイは、ささやかな幸せを掴んでいたが、トニーは酒とドラッグに溺れながら、未だに社会の底辺を彷徨っていた。
そんなトニーにチャンスが訪れる。
ボスであるアイクを裏切り殺害し、アイクの麻薬密売の権利をその手にする。
暴力の限りを尽くし、ホセ、レンゾら仲間を増やしながら、勢力を拡大していくトニー。
しかし、その破滅的な運命はマックスとレイまで巻き込んでいく・・・
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フィリピンのスラム街で育った兄妹が、過酷な運命に晒されていく様子を綴ったバイオレンスアクション。
日本人が金に余せて子供を作ったはいいが、そのまま知らん顔して社会問題になったジャッピーノ。
底辺から這い上がろうとする者達の人間ドラマ。

着眼点はいいと思うのだが、ストーリーはともかく、その雑な展開がラストで映画の面白みをトーンダウンさせてしまった。
途中まではよかったのだが、誠に惜しい映画だ。

セリフは多少の日本語交じりであるがほとんど英語。
まあそれはいい。
腕と度胸で裏社会を登っていく長兄トニー。
弁護士として表街道を行くマックス。
幼馴染とささやかな店を持ってまっとうに生きるレイ。
3人がそれぞれのやり方で成功の証=日本への道を歩む。

短気な兄と冷静な弟と真面目な妹という組み合わせはマフィア映画のシンボル「ゴッドファーザー」にも相通ずるものがある。
特に妹に暴力を振るった亭主に頭に来た兄が旦那に報復するところなどはそのままだ。

また底辺からのし上がった男が、最後にその砦ともいうべき屋敷で、敵対する組織の圧倒的な数の兵隊に襲われて破滅へと陥る様は、同じアル・パチーノ主演の「スカーフェイス」を髣髴させるストーリーだ。
デジャヴを感じるストーリーであるが、フィリピンの暑さの中でそれがブレンドされて面白い展開となる。

ところが最後に兄妹の運命の結末をドラマチックに演出しようとし過ぎて、かえってわざとらしくなって興醒めしてしまった。
淡々と語られた方がよかったのではないか、少なくとも「スカーフェイス」はそれで最後に締まったと思うのだが・・・

個人的によかったと思うのが対立する日本人ヤクザを演じた寺島進だ。
この人はヤクザ役が多いのだが、北野武の一連のバイオレンスシリーズ(特に「BROTHER」が良い)でも良い味出していたがここでもそれを発揮。
背は低いのだが存在感は大きい。

つくづくラストが惜しい映画である・・・


評価:★☆☆☆☆

posted by HH at 11:26 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | バイオレンス

2009年01月21日

【天国と地獄】My Cinema File 340

天国と地獄.jpg

1963年 日本
監督: 黒澤明
出演: 三船敏郎/仲代達矢/香川京子/三橋達也/木村功/石山健二郎/志村喬/山崎努

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ナショナル・シューズの権藤専務は、大変な事件に巻込まれてしまった。
明日まで五千万円を大阪に送らないと、次期総会で立場が危くなるというのに、息子の純と間違えて運転手の息子進一を連れていってしまった誘拐犯人から、三千万円をよこさないと進一を殺すという電話があったからだ。
苦境に立った権藤は結局金を出すことになった・・・
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日本が世界に誇る巨匠黒澤明監督の代表作の一つである。
子供の営利目的誘拐事件というのはここのところ耳にしなくなった気がする。
成功確率が低くなってきたという事で銀行強盗と並んで「割りにあわなくなった」ということなのであろうか、いずれにせよ喜ばしい事である。

子供の誘拐事件というテーマであるが、それに絡めた心理描写がみどころの一つ。
誘拐されたのが製靴会社重役権藤の運転手の息子であった。
当初自分の息子だと思い、迷わず金(当時の相場の10倍もの桁外れの金額)を出すつもりであった権藤も息子と遊んでいた運転手の息子とわかり一転する。
実はその金で自社の株を買占め、安易な販売に走ろうとするライバル重役たちに対抗するつもりだったのである。
しかもその金を作るために豪邸も担保に入れ、すぐにも払わないとならない状況であった。

この、「運転手の息子のために会社で立場を失い、かつ破産する」事を選択できるかというジレンマ。
ただ良心のままに「出すべきだ」と感情論で訴える妻と家族の生活を守らねばならない男の葛藤。
見応えのある展開である。

1963年と言えば新幹線開通の前年。
当時の最速特急「こだま」を利用した身代金のやりとり。
子供の生存を川の一方で確認させ、対岸で金を列車から落とさせるというアイディア。
模倣犯が出ないよう気を使ったというが、なかなかのアイディアである。

映画は子供が誘拐されて開放されるまでの前半と刑事が執念で犯人を追い込んでいく後半とに分かれる。
一つ一つしらみつぶしに捜査していく刑事たち。
直通電話も行き渡っていない当時、電話を手がかりに捜査範囲を絞り込んでいく様子も一興である。

犯人は当時新人であった山崎勉。
声だけは変わっていない。
まだまだ社会の底辺が今よりずっと低く、ボロアパートの一室から丘の上の権藤邸を見上げて卑屈な思いを募らせていく若者として登場するが実によく雰囲気が出ている。

逮捕されるきっかけとなったのが煙突から出る煙。
モノクロ映画でありながら、この煙だけオレンジ色になっている。
これも印象的なシーンだ。

今とはまだまだ大分違う当時の町並み。
それでも今と変わらない江ノ電に微笑ましい思いがした。
一度は観ておきたい映画である。


評価:★★★☆☆


   
posted by HH at 22:23 | 東京 🌁 | Comment(0) | TrackBack(0) | 犯罪ドラマ