2009年05月31日

【クロサギ】My Cinema File 399

クロサギ.jpg


2008年 日本
監督: 石井康晴
原作 : 黒丸・夏原武
出演 :
山下智久:黒崎高志郎
掘北真希:吉川氷柱
加藤浩次:白石陽一
市川由衣:三島ゆかり
大地真央:さくらママ(染谷綾子)
竹中直人:石垣徹
飯島直子:桶川レイコ
笑福亭鶴瓶:綿貫裕二郎
哀川翔:神志名将
山崎努:桂木敏夫

<映画.com>
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人気コミックを原作に、詐欺師のみを狙う詐欺師“クロサギ”の活躍を描いたテレビドラマの映画版。父親が詐欺に遭い、一家心中の末にただ1人生き残った青年・黒崎。復讐のためクロサギになった彼は、新たなターゲット・石垣の調査を開始する。しかし石垣は、何者かと共謀して日本経済を揺るがすほどの巨大詐欺を企んでいた。映画初主演となる山下智久らテレビ版のキャストに加え、竹中直人、大地真央ら豪華ゲストが参加。
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詐欺師のみを騙す“クロサギ”の黒崎は、詐欺界のフィクサー・桂木から新たなターゲットとなる詐欺師の情報を得た。その名は石垣。
贈答詐欺を生業とする詐欺師だ。仕事の依頼人であるレイコもかつて石垣の魔の手にかかり、経営する会社をつぶされた過去を持っていた。
黒崎は早速行動を開始、IT企業の社長に成りすまして石垣へと接近し、詐欺の罠を張る。しかしその企みはギリギリで石垣にかわされてしまう・・・

原作は同名タイトルの漫画。
一般人を騙す詐欺師を「シロサギ」とし、その「シロサギ」のみをターゲットとする詐欺師を「クロサギ」と呼んでいる。
詐欺師を騙す専門の詐欺師というちょっと変わった着眼点が面白い。
人を騙す詐欺師なら騙されても構わないだろう、そういう悪人専門の詐欺師であるなら正義の味方的にも扱える、そういう構図である。

だが、内容的にはちょっと苦しい。原作の漫画は長い連載なので、いろいろな登場人物の描写が可能でその分ドラマにも奥行きがある。だが、たかだか2時間の映画でその世界を描くことは難しい。

自分自身詐欺の被害にあって一家心中を図った家族の生き残りという過去を持つ黒崎。
そして詐欺界のフィクサー桂木から詐欺師の情報ほもらい、ターゲットとしている。
映画では石垣という詐欺師をターゲットとして定める。
2時間のストーリーではここまでが限界で、時々登場する吉川なる女性の位置づけはいまいちわからない。

手口も巧妙というよりは観る者の無知に付け込んでいるかの如くで、実際にそれでうまくいくかどうかは疑問である。
石垣の手形詐欺の手口もそうである。映画で大切なのはリアリティである。実際にうまくいくかどうか、はどうでもよくて、大事なのは「実際にやってもうまくいきそうだ」と思わせられるところである。もちろん、模倣犯の問題もあるから難しいところでもある・・・

名だたる俳優陣を揃えてはいるものの、ストーリー的に面白みが欠けるのが決定的。
せいぜいが子供向け番組のレベルであると言える。
ちなみに映画化の失敗というよりも、個人的には漫画自体もいまいちだと思っている一作である・・・


評価:★☆☆☆☆





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2009年05月30日

【花よりもなほ】My Cinema File 398

花よりもなほ.jpg

2006年 日本
監督: 是枝裕和
出演: 
岡田准一:青木宗左衛門(宗左)
宮沢りえ:おさえ
古田新太:貞四郎
國村準:伊勢勘
中村嘉葎雄:重八
浅野忠信:金沢十兵衛
原田芳雄:小野寺十内
香川照之:平野次郎左衛門
田畑智子:おのぶ

<シネマトゥデイ>
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父の仇を討つために東京・深川の貧乏長屋に住み着いた田舎侍が繰り広げる、笑いあり、涙ありの人情時代劇。監督は『誰も知らない』でカンヌ映画祭最優秀男優賞を主演の柳楽優弥にもたらした是枝裕和監督が務める。個性豊かな住人と触れ合ううちに仇討ちの使命に葛藤(かっとう)しだす主人公にV6の岡田准一、ヒロインに『たそがれ清兵衛』の宮沢りえがふんする。人々のたくましい生の物語を現代にも通じるテーマ性と絡めた、人間味あふれるドラマが感動を呼ぶ。
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父の仇を討つため信州松本から江戸に出てきた青木宗左衛門は、おんぼろ長屋で実家からの仕送りだけが頼みの貧乏生活を送りつつ、憎き仇、金沢十兵衛の所在を探っていた。仇討ちに成功した暁には、名誉の回復だけでなく藩からの賞金も手に入るはずだ。ところが、この宗左、剣の腕はからっきしで、その不甲斐なさは長屋の住人たちもあきれるほど。刀を差してはいても武芸にとんと疎い宗左は、近所の子どもたちを集めて寺子屋を開く・・・

仇討ち、と言えば現代では違法とされていて許される事ではないが、江戸の時代はむしろ武士の務めとされていた。
有名な赤穂浪士の忠臣蔵もそんな仇討ちを賞賛したものである。
ところが、現実の仇討ちはかなり大変であったようである。

吉良上野介は大名なので居場所は簡単にわかったが、普通人を殺して逃げた場合跡を追うのは現代の警察でも厄介な事。
ましてや情報の乏しい江戸時代はわらの中で針を探すのに等しかったようである。
国元を勇んで出たはいいが、何年も見つからずに放浪し、路銀はかかるし、仇討ちを終えなければ国にも帰れない、実際はそんな苦労の伴うものだったようである。

主人公青木宗左衛門もそんな仇討ちを目指す武士である。
親の敵を追って江戸に来たものの、あてなどあるわけでもない。
おんぼろ長屋に住んでいつ終わるともしれない生活を送っている。
おんぼろ長屋ゆえ住み着いているのはみな貧乏な市井の人々。
宗左以外はみんなその日暮らしだ。
「江戸っ子は宵越しの銭はもたねぇ」と粋がっていたのは、その日の糧しか稼げなかった裏返しなのかもしれない。

長屋もあちこち隙間だらけ。
薄い壁一枚ではプライバシーもあったものではない。
厠の肥を農家に売って家賃の足しにする大家。
江戸の長屋の暮らしってこんなものだったのかな、と思わせられる。

さてちょっと二枚目の宗左。
向いに住むのは美しき未亡人おさえ。
その息子の進之助と過ごす一時は、宗左の憩いの一時でもある。
その宗左であるが、実は剣術が苦手ときている。
仮に首尾よく親の敵が見つかっても見事討ち果たせるかは疑問である。

そんな日々を送るうちについに敵が見つかる。
逡巡するうちにその敵にもやはり妻がいて幼い子供がいる事がわかる。
同じような暮らしぶりのその相手をどうすべきか・・・
見事仇討ちを果たせば国には凱旋帰国でき、さらには100両とも言われる報奨金が出る・・・
武士としていかに生きるか。

「武士道とは死ぬ事なり」と言われた時代。
いかに潔く散るか、が美徳とされていた時代。
宗左はどうするのだろうと自然とストーリーに引き込まれる。
「桜は次の年にまた咲く事を知っているから、潔く散るんじゃないか」
ちょっとおつむの弱い孫三郎が呟く。
まさに言いえて妙、である。

生類憐れみの令が出て犬が大事にされ、赤穂事件が世間を賑わす時代背景。
大家に立ち退きを迫られる長屋。
宗左の下した決断・・・
ほのぼのとした庶民の暮らしを捉え、心に暖かいものが流れ込むストーリー。
個性のある俳優陣が見事なハーモニーを描き出す。
思わず拍手、である・・・


評価:★★★☆☆








    
   
posted by HH at 11:41| 東京 ☔| Comment(0) | TrackBack(1) | 時代劇/西部劇 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月26日

【となり町戦争】My Cinema File 397

となり町戦争.jpg

2006年 日本
監督: 渡辺謙作
原作 : 三崎亜記
出演 :
江口洋介:北原修路
原田知世:香西瑞希
瑛太:智希
菅田俊:町長
飯田孝男:前田善朗

<シネマトゥデイ>
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第17回小説すばる新人賞に輝いた、三崎亜記原作の同名の小説を映画化した話題作。となり町同士の戦争に巻き込まれて行く一般市民の恐怖をユーモたっぷりに描く。“ことなかれ主義”の主人公を演じるのは『戦国自衛隊1549』の江口洋介。彼を戦争に加担させる役場勤務の女性を『紙屋悦子の青春』の原田知世、その弟を『どろろ』の瑛太が演じるなど俳優陣も粒ぞろい。静かな町にじわじわと忍び寄る戦争の気配に引き込まれる。
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となりの町と戦争をする、という一見奇想天外な発想。
しかしそんなコメディチックな前提条件を実にシリアスに進める、という果敢な挑戦映画である。

二つ隣接する舞坂町と森見町。
突然広報に小さく開戦のお知らせが載る。
ところが開戦初日を迎えても天下の情勢に変化はない。
北原修路は毎日両町を行ったり来たりしているが、町の様子に変化はない。
しかし、広報のあるページだけは「戦死者」の数を掲載している・・・

主人公の北原の戸惑いはそのまま観る者の戸惑いでもある。
戦闘シーンに出くわすわけでもない。
ミサイルが飛んでくるわけでもなく、したがって空襲警報もない。
戦車も装甲車も登場しない。
不思議な戦争なのである。

そして突然偵察員に任命される北原。
役所の職員である香西の指示を受けて黙々と不思議な任務をこなす。
日常のありふれた「敵の」町の様子を報告する。
そしてそれが評価されるが理由はわからない・・・

主人公の江口洋介は2枚目俳優であるが、どちらかというと3枚目チックで登場する。
普段は良い男なのであるが、争い事となると腰が引けてしまうのである。
相手の原田知世も久々に観た気がする。
淡々と「業務」をこなす職員として光る存在である。

「そんなバカな」と笑い飛ばしたくなるようなとなり町との戦争という設定。
それを原田知世が真剣な表情で話すので、江口洋介も段々真面目に取りあうようになる。
我々観るものも江口洋介と同じようにドラマに引き込まれる。
ラスト近くでようやく戦争らしい緊迫シーンが登場するが、終戦となっても釈然としない。

都会に住む者にとっては不思議な習慣があるのが地方。戦争とはいかなくても、似たような不思議な出来事がこんな地方にはあるのではないかと思わせられる。原作の小説もヒットしたらしいが、ちょっと観てみるのも面白い映画である・・・


評価:★★☆☆☆








   
posted by HH at 22:12| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(2) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月24日

【NEXT−ネクスト】My Cinema File 396


NEXTネクスト.jpg

原題: NEXT
2007年 アメリカ
監督:  リー・タマホリ
原作 : フィリップ・K・ディック
出演 :
ニコラス・ケイジ:クリス・ジョンソン
ジュリアン・ムーア:カリー・フェリス
ジェシカ・ビール:リズ・クーパー
トーマス・クレッチマン:Mr.スミス
トリー・キトルズ:キャバノー
ピーター・フォーク :アーヴ

<映画.com>
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2分先の未来が見える能力を持つ男クリスは、米国内での核爆発を目論むテロリストの捜査に協力するようFBIに迫られる。最初は渋ったクリスだが、いつも見る未来に現れる女性が事件に巻き込まれることを知り、捜査に協力することに……。「ブレードランナー」「マイノリティ・リポート」の原作者フィリップ・K・ディックの短編小説「ゴールデン・マン」をニコラス・ケイジ製作・主演で映画化。監督は「007/ダイ・アナザー・デイ」のリー・タマホリ。
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マジシャンとして暮らすクリスは2分先の未来を見る事ができるという特殊な能力を持つ。
マジシャンといってもその能力を使ってのもので、しかもその能力を隠すための隠れ蓑である、という設定で始るこの映画、この設定がなかなか面白い。
将来のことすべて、ではなく2分先であり、したがってそこに自ずと限界がある。
制約条件のある能力というものは、その制約条件ゆえにハンディを負う事になり、それがドラマを盛り上げるのは王道パターンだ。
ウルトラマンのカラータイマーは3分で点滅するからこそ、緊迫感があるのである。

しかしながら、ある女性についてはどうやらこの能力はその制約条件を飛び越えて働く。
2分以上未来のようだが、それがいつかわからない。
したがって、クリスはその女性に会うために、毎日2時間、午前と午後の同じ時間に同じダイナーに出没している。
そしてこの制約条件を突破する女性のイメージがドラマのエンドへとつながっていく。

2分先でも未来は未来。
憧れの女性にどのように声をかけるか、一つ一つ検証するシーンが面白い。
Aパターンで行く、2分後に見事ふられたので、次にBパターンで行く・・・
そうした検証の結果、うまくいったパターンでクリスは彼女に声をかける。
未来はその時点で次々と変化していく、という設定である。

これはそのあとの展開でも活かされる。
仕掛けた爆弾にひっかかる未来の自分。
それを見て爆弾を回避する。
すると爆死しなかった未来が現実として続いていく。
それをうまく使いこなすと、まさに無敵の自分が存在するわけである。
こうした設定の面白さとそれを活かすストーリーの面白さを併せ持った映画である。

主演はニコラス・ケイジ。この人はほんとうにたくさんの映画に出ている。
なんとなく頼りな気な風貌。それゆえにアクション映画には不向きかと思えばそうでもなく、さまざまに出演しているし、またイメージ通りの優男役も多い。しかもハズレが少ないときている。不思議な俳優である。
その他、「刑事コロンボ」のピーター・フォークが出演しているのがとても懐かしい。

短い時間で手軽に楽しめる映画である・・・


評価:★★☆☆☆



   



このサイトで紹介したニコラス・ケイジ主演作品
「ウィッカーマン」
「ゴーストライダー」
「ワールド・トレード・センター」
「ロード・オブ・ウォー」
posted by HH at 10:57| 東京 ☁| Comment(2) | TrackBack(0) | アクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年05月23日

【ノーカントリー】My Cinema File 395

ノーカントリー.jpg


原題: No Country for Old Men
2007年 アメリカ
監督・脚本 : ジョエル・コーエン/イーサン・コーエン 
出演: 
トミー・リー・ジョーンズ:エド・トム・ベル保安官
ハビエル・バルデム:アントン・シガー
ジョシュ・ブローリン:ルウェリン・モス
ウディ・ハレルソン:カーソン・ウェルズ
ケリー・マクドナルド:カーラ・ジーン・モス

<映画.com>
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第80回アカデミー賞において、作品、監督、脚色、助演男優の4部門で受賞した犯罪ドラマ。1980年の米テキサスを舞台に、麻薬密売人の銃撃戦があった場所に残されていた大金を盗んだベトナム帰還兵(ブローリン)と殺し屋(バルデム)の追跡劇、そして2人を追う老保安官(ジョーンズ)の複雑な心情が描かれる。原作はピュリッツァー賞作家コーマック・マッカーシーの「血と暴力の国」(扶桑社刊)。監督・脚色は「ファーゴ」(96)、「ビッグ・リボウスキ」(98)のジョエル&イーサン・コーエン。
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砂漠で突然死体の山を発見したモス。
普通ならどうするであろうか。
モスは冷静に死体を検分し、何があったかを判別する。
生存者を見つけるが助けようともしない。
「水を」と乞われるが無視する。
もう手遅れだと悟っているのだろうか。

そうして発見した大金。
まともな金でない事は明らかなのだが、あえて持ち帰る。
そしてそこからモスの運命が狂う。
自分だったらどうするか?
無人の砂漠の中だし、やっぱり持ち帰るだろう。

そのままであったら、たぶん幸せに暮らせたのかもしれない。
ただ夜中に水を求めた男の事が気になって、モスは再び現場に戻る。
わからなくもないが、これがやっぱり命取りになるのだ。
一味に見つかって、命からがら逃げ延びるも身元がばれてしまう。
そして、追いかけてくるのは不気味な殺し屋。

何せこの殺し屋、ちっとも殺し屋らしくない。
サングラスをしていないし、黒のスーツを着ているわけでもない。
いい年したオタクという風体。
しかし殺しの腕前は確かで、そしてどこまでも冷酷。
彼の通りすぎた後には死体が累々と横たわる。
しかも殺された者は最後の瞬間まで自分が殺されるとは思わないようなほど、何気なく殺していく。

モスの危機に夫人が助けを求めた保安官。
代々の保安官一家である。
銃を持たなかった父や祖父の話が挿入される。
のどかな土地でのどかな日常の中で、のどかに職務を全うしてきたのである。
そうした中で起こった事件。

ジョシュ・ブローリン、ハビエル・バルデム、トミー・リー・ジョーンズの3人がそれぞれ演じる人物は存在感溢れる。
特に殺し屋のハビエル・バルデムは圧巻である。
ターミネーターのように無表情に人を殺していく・・・

そんな俳優人たちの熱演に支えられてか、本作品はアカデミー作品賞他に輝く。
ただし、だからといって劇的な感動作かと言えばそうでもない。
終わりがあってないようなエンディングであるが、引退してもどこか物憂げなトミー・リー・ジョーンズ保安官の表情が物語る。(There is)No Country for Old Menと。不気味な後味の悪さだけが静かに残る映画である・・・



評価:★★★☆☆



   


posted by HH at 11:03| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | バイオレンス | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする