2009年07月28日

【つぐない】My Cinema File 421

つぐない.jpg


原題: Atonement
2007年 イギリス
監督: ジョー・ライト
原作: イアン・マキューアン
出演: キーラ・ナイトレイ/ジェイムズ・マカヴォイ/シーアシャ・ローナン/ロモーラ・ガライ/ヴァネッサ・レッドグレイヴ/ブレンダ・ブレッシン

<STORY>********************************************************************************
第二次世界大戦前夜、夏のイングランド。
政府官僚の娘で未来の大作家を自負する13歳のブライオニーは、大学を卒業したばかりの姉セシーリアと使用人の息子で幼なじみのロビーのただならぬ関係を察知し、ロビーへの警戒心を抱く。
そして事件は起きる。
ブライオニーの嘘の証言によって、愛しあう恋人たちは無残にも引き裂かれ、犯した過ちの重さにブライオニーが気づいたときには、泥沼の戦争が始まっていた・・・
**********************************************************************************************

第二次世界大戦前夜、1935年のイングランド。
上流階級のセシーリアとブライオニー姉妹。
ブライオニーは13歳にして恋愛をテーマにした戯曲を書き、才能に溢れるがちょっとおませな少女。
セシーリアは表面とは裏腹に使用人の子であるロビーに心惹かれている。

ロビーからセシーリアへの手紙を託されたブライオニーは中味を見てしまう。
13歳の少女にとっては大人のエロティックな手紙は衝撃的。
おまけに二人が屋敷の片隅で愛し合う姿を目撃してしまい、ロビーに対する嫌悪感を抱く。
そして友人が草むらの中で男に覆いかぶさられているのを見てしまうと、暗闇の中で男を確認しなかったにも関わらず、犯人はロビーだと証言するブライオニー。
上流階級と使用人の子。
そんな背景もあって、ロビーは刑務所へと送られる・・・

前半は階級社会イギリスで、ロビーとセシーリアの人目を偲ぶ恋と妹ブライオニーの関係が綴られる。
愛だの恋だのに憧れる13歳にとって恋愛とはどこかしら美しいものであり、実際に愛し合う男女の行為は生々し過ぎて理解できない。
そんなブライオニーの心情は、大人からすれば微笑ましく映るものである。

潔癖なブライオニーにとって愛する姉のそんな姿は、逆にロビーに対する反感へとつながる。
13歳という年齢は実に微妙だ。
草むらで抱き合っていた友人も「押し倒された」とブライオニーに語ったが、それに抵抗したのかどうかは怪しいところだ。
むしろ後半のシーンでは同意の上であったように思わせられる。

現代であればそんな少女の証言一つで刑務所というのも行き過ぎだと思われるが、そこが戦前のイギリス社会ゆえか。
引き裂かれたロビーとセシーリア。
13歳ゆえの過ちと言えばそうなのかもしれない。
そしてその「つぐない」はあまりにも切ないもの。
原作は読んでいないが名作の香り漂う作品である。


評価:★★★☆☆
posted by HH at 10:14 | 東京 ☀ | Comment(1) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年07月27日

【砂時計】My Cinema File 420

砂時計.jpg

2008年 日本
監督・脚本 : 佐藤信介
原作 : 芦原妃名子
出演 : 松下奈緒/夏帆/井坂俊哉/池松壮亮/塚田健太/岡本杏理/戸田菜穂/高杉瑞穂/伴杏里/風間トオル/藤村志保

<STORY>********************************************************************************
両親が離婚し、母の故郷である島根にやって来た14歳の杏。
東京育ちの杏に、田舎の生活は不慣れなものであったが、口では厳しいことを言うが心根は優しい祖母や近所に住む同級生の大悟に支えられ、次第に村に溶け込んでいく。
しかし、離婚後、祖母からの叱咤激励の言葉に追い詰められた母は、杏を置いて自殺してしまう。
母の死を止められなかった自責の念と孤独に苛まれる杏に大悟は、「俺がずっと一緒におっちゃる」と約束する・・・
**********************************************************************************************

原作はどうやら同名の漫画らしい。
砂時計というタイトルは実に意味深い。
下に溜まった砂が過去。
落ちていく口が現在。
そして上にある砂が未来。
ひっくり返すと過去が未来になる。
そんな砂時計をうまくイメージして物語りが語られていく。

冒頭に出てくる「1年を測る砂時計」というものは初めて知った。
こういうスケールは感動モノである。
人間って偉大だな、と思えるところである。
そんな砂時計を見上げながら見つめ合う男女。
意味あり気だなと思っていたら、案の定の主役の二人。
時は12年遡り、主人公の杏が14歳のところからドラマが始まる。

父親が何やら事業に失敗し、島根県の山奥にある母の実家に母と二人で帰ってきた杏。
田舎暮らしにも慣れ始めた頃、母親が自殺してしまう。
落ち込む杏を同級生の大梧が慰める。
そうしていつのまにか、ずっと一緒にいようと約束をするようになる。

少女から大人へと成長していく杏。
東京へ戻り離れ離れになり、やがて二人の関係もギクシャクするようになる・・・
ありふれた、といえばありふれたラブストーリー。
大梧と杏とにそれぞれ思いを寄せる友人たちとの葛藤。
単純といえば単純なストーリー。

しかしながら、同じとまではいかなくても似たような経験をしていると、なんとなく共感を覚えるシーンがあったりする。
2時間という時間制限のある映画の世界であるから、展開が早過ぎたりする部分はもったいないように思う。
じっくりと描けば味わい深いものがあるかもしれない。

ずっと一緒にいられると思うのは初めて付き合った頃には誰でもそう思うものかもしれない。
そんな「永遠」であったはずなのに、壊れてしまった大梧との関係。
大人になった杏が砂時計をひっくり返す。
そして過去が未来となる・・・
ストーリー的にはいいと思うのだ・・・


評価:★★★☆☆
     
     
ネタバレコメントを読む
posted by HH at 23:10 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 恋愛

2009年07月26日

【4ヶ月、3週と2日】My Cinema File 419

4ヶ月、3週と2日.jpg

原題: 4 luni, 3 saptamâni si 2 zile
2007年 ルーマニア
監督・脚本 : クリスティアン・ムンジウ
出演: アナマリア・マリンカ/ローラ・ヴァシリウ/ヴラド・イヴァノフ/ルミニツァ・ゲオルジウ

<STORY>********************************************************************************
1987年の冬のある日、チャウシェスク政権下のルーマニアで、大学生のオティリアは寮のルームメイトのガビツァとせわしくなく動き回っていた。
寮を出たオティリアはホテルへ行くが、予約が入っていない事を知り、仕方なく別のホテルを取る。
またガビツァの代わりにある男に会う事に。
実はガビツァは妊娠しており、オティリアはその違法中絶の手助けをしていたのだ。
しかし思うように事は進まず、オティリアの苛立ちはつのっていく・・・
**********************************************************************************************

ルーマニア映画を観る機会というのは多くない。
観る機会に恵まれたのは、たぶんこの映画がカンヌ映画祭で最高賞パルム・ドールを取ったからであろう。
東ヨーロッパの映画事情については詳しくないものの、こういった映画が作られるという事は、それなりのレベルにあるのだと思う。

1987年のルーマニア。
時は共産党の悪名高きチャウシェスク政権下。
不幸にも妊娠してしまったルームメイトの堕胎のため、奔放する友人とそのルームメイトの1日を描いた作品である。
当時は堕胎が違法であった。

そういえば、似たような映画としてやはり違法な堕胎を行う女性を描いた「ヴェラ・ドレイク」という映画があった。
あれは1950年代のロンドンを舞台にしていた。
中絶の禁止は今でも賛否両論がある問題であるが、しかしながら当時のルーマニアでは避妊行為自体が違法であったという。
共産党政権といえど、実質的にはチャウシェスクの独裁政権下であったからこその、国民を虐げる悪法の例といえる。

さて、不幸にも臨まない妊娠をしてしまったカビツァ。
ルームメイトのオティリアが金を集め、堕胎を行うホテルを手配し、堕胎師とコンタクトを取る。
ホテルも共産党政権下らしく、サービスのかけらもない。
苦労して段取りをしても堕胎師に金ばかりか体まで要求され、断る事もできない。
オティリアは恋人から母親の誕生日に招待されるも、それどころではない事情を抱え苦悩する。

共産党政権下ということを意識してであろうか、全体的に灰色の印象が漂う。
アメリカのたばこを求めて闇商人とコンタクトしたり、バスには切符をチェックするだけで二人も乗員がいる非効率性が見られたり、夜はとにかく暗かったり、ホテルも蛍光灯が切れ掛かっていたり・・・
そんな当時の様子が窺い知れるところも興味深い。

友人のために体を張ったり、恋人と喧嘩したり東奔西走するオティリア。
当の本人はのんびりしていたりするのも対象的だ。
パルム・ドール受賞も理解できる内容といえる。
タイトルはたぶん、妊娠期間なのだろうとは思うが、観ただけでははっきりとはわからなかった。
それも意図しての事なのだろうか・・・


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 10:52 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | その他の国の映画

2009年07月25日

【28週後・・・】My Cinema File 418

28週後.jpg

原題: 28 Weeks Later
2007年 イギリス
監督: ファン・カルロス・フレスナディージョ
出演: ロバート・カーライル/キャサリン・マコーマック/イモージェン・プーツ/マッキントッシュ・マグルトン/ローズ・バーン

<STORY>********************************************************************************
感染すると凶暴性を引き起こし、ほかの人間を襲うようになるレイジ・ウィルスが猛威をふるう中、ドンは妻のアリスらと山荘に籠っていた。
ある日、子供を追ってきたウィルス感染者たちに襲撃され、アリスは退路を断たれてしまう。
ドンはそんな妻を見捨て、命からがらボートで脱出する。
そしてウィルス発生から28週後、ロンドンでは軍の厳重な監視のもと、再建が始まっていたのだった・・・
**********************************************************************************************

「28日後・・・」の続編である。
前作では感染すると凶暴化する「レイジウィルス」がイギリスを席巻。
孤立した人々を描いた。
それから28週間後、凶暴化した人々は自ら生き残る能力に欠け、次々と餓死していく・・・

この設定には無理があると個人的には思う。
感染して凶暴化したとはいえ本能的に何でもいいから食べようとはしないだろうか、そうしたらすくなくともみんな餓死して感染者が死滅するって事はどうなんだろう、と。
まあそうはいっても映画だから、それはそれとして観続ける。

今回の出演者たちは前作とはまったく異なる。
前作では昼間は行動していないかのようであった感染者たちは、今回は昼日中でも襲ってくる。
こうなると手もつけられない。
山荘に篭っていたドン夫妻らは感染者の襲撃を受ける。
襲われたものはその場で襲うものに変身する。
退路を絶たれた妻を見捨ててドンは一人逃げる・・・

ようやく感染も沈静化し、人々が復興に向けて戻ってくる。
ドンは外国にたまたま出かけていて難を逃れた子供たちと再会する。
妻の最後を語って聞かせる。
しかし、死んだはずの妻が生きて保護された事から新たな展開が始まる。

こういうパニック物には一つの定石がある。
混乱の最中逃げ惑い、一緒に逃げていた者たちが次々と倒れる中、最後に主人公が無事逃げおおせてめでたしめでたし、というものである。
この映画もその定石を踏んでいる。
ただ、めでたしめでたし、とは言えないところが不気味なところなのかもしれない。

ウィルスに対する対抗策の光明が見えた反面、被害がイギリスを越えて広がっていくからだ。
果たして続編が作られるのか、否か。
すべては興行収入次第なのであろうか・・・


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 22:58 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | パニック

2009年07月23日

【シティ・オブ・メン】My Cinema File 417

シティオブメン.jpg

原題: Cidade dos Homens
2007年 ブラジル
監督: パウロ・モレッリ
出演:  ドグラス・シルヴァ/ダルラン・キュンハ

<STORY>********************************************************************************
リオデジャネイロの貧民街“ファヴェーラ”で生まれ育った二人の少年、アセロラとラランジーニャは親友同士。
幼い時から一緒に育った仲だ。
ある日、ラランジーニャは長い間行方不明だった父親と再会する。
彼は父親と暮らし始め、幼い子供を持つアセロラと距離を置くようになる。
ギャング・グループの抗争が激しさを増す中、アセロラに残された道は、地元のグループに入ることだけだった…
**********************************************************************************************

以前「シティ・オブ・ゴッド」という同じブラジル映画を観たが、これはその兄弟編らしい。
「シティ・オブ・ゴッド」はバイオレンスシーンの連続で、しかもそれが年端もいかない若者達のものであっただけに衝撃的であった。
抜け出すことの出来ない貧民街で、麻薬や銃が回りに溢れている環境では人の命も紙くずに等しい。
そんな映画の兄弟編という事で、この映画を見る事にした。

同じように丘の町で生まれ育ったアセロラとラランジーニャ。
二人とも父親の顔を知らない。
さらにアセロラは10代にしてすでに父親である。
子供ができたと知った時、父親になるには早過ぎると思ったが、どうにもならなかったのである。
それでも自分と同じ父親のない子にしたくなくて面倒をみているのである。

ラランジーニャは父親を探して方々を訪ねる。
しかし結局は刑務所に行き当たる。
出所した父親と対面を果たすが、みんな「そういう環境」に暮らしているのである。
そして否応なしにギャング団の対立に巻き込まれていく。

銃が簡単に手に入るという事は、抗争は即撃ち合いとなるわけである。
周りには住民がたくさんいる中、撃ち合いが始まると商店は店を閉める(といっても粗末なシャッターを下げるだけである)。
ドアやシャッターも銃痕で穴が開いている状態である。
銃声が響けば「一人減った」という環境は、実際には本当にこんな感じなのだろうかと驚くばかりである。

日本では間違いなくニンテンドーDSを手にしているような少年たちが銃を乱射している現実。
フィクション映画ではあるものの、かなり現実に近いそうである。
そんな中にあって、自ら父親の役目を果たそうとするアセロラの姿が唯一の救いである。
親子間の愛情が、暴力の連鎖を断ち切る一つの道かもしれない。
最後はそんなメッセージさえ感じさせる映画である。


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 12:20 | 東京 🌁 | Comment(0) | TrackBack(0) | バイオレンス