2009年09月29日

【アナトミー】My Cinema File 461

アナトミー.jpg

原題: Anatomy
2000年 ドイツ
監督: ステファン・ルツォヴィツキー
出演: フランカ・ポテンテ/ベンノ・フュルマン/アンナ・ロース/セバスチャン・ブロムベルグ

<STORY>********************************************************************************************************
野心家の医学生パウラは、医学界に名を馳せた祖父が学んだ伝統ある名門大学の解剖学セミナーに合格し、熱心に実習に励んでいた。
ある日、パウラは実習の教材として運ばれてきた死体の血液濃度が、異常に高いことに気づく。
かかとに“AAA!“と刺青されたその死体の組織を調べると、血を素早く凝固させる違法の医薬「プロミダル」が検出された。
それは、人間を生きたまま保存できる死の薬だった・・・
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これはちょっと恐ろしい映画である。
といっても目を覆いたくなるようなスプラッターシーンがあるわけではない。
想像するだに恐ろしいという意味である。

冒頭で生きたまま腹を割かれて解剖されていく男のシーンが登場する。
眠りから醒めたものの、自分に対してなされている行為を認識し愕然とする。
痛みはないものの、その恐怖は観る者にも伝わってくる・・・

医学の発展にある程度の実験はやむを得ない。
それが節度ある範囲であれば当然容認される考え方である。
だが、医学の発展という大義名分はどこまで許されるのか。
この映画は限度を遥かに越えてしまっているが、それは難しいテーマでもある。

パウラは祖父から続く医師の一家。
跡を継げという父の意見に反発し、祖父の学んだ名門大学に合格し、希望に燃えて入学する。
言い寄る男たちも多いが、勉強優先と燃えている。
そんなパウラが、道中で命を助けた男が解剖の標本となっていたのを見つけ、その死に疑問を抱く。
疑惑を調べるうちにその影に大きな組織に行き当たる。

ストーリー自体はよくありがちなものである。
ただ、想像する恐怖というものが痛々しい。
ちょっと背筋の凍るドイツ映画である。


評価:★★☆☆☆
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2009年09月27日

【晩春】My Cinema File 460

晩春.jpg

1949年 日本
監督: 小津安二郎
出演: 笠智衆/原節子/月丘夢路/杉村春子/青木放屁/宇佐美淳也

<STORY>********************************************************************************************************
早くに妻を亡くし、それ以来娘の紀子に面倒をかけてきた大学教授の曾宮周吉は、紀子が婚期をのがしつつあるあることが気がかりでならない。
周吉は、妹のマサが持ってきた茶道の師匠・三輪秋子との再婚話を受け入れると嘘をついて、紀子に結婚を決意させようとするが、男が後妻を娶ることに不潔さを感じていた紀子は、父への嫌悪と別れの予感にショックを受けてしまう。
マサの持ってきた縁談を承諾した紀子は、周吉と京都旅行に出かけ再度心が揺れるが、周吉に説得されて結婚を決意する。
紀子が嫁いだ晩、一人家に残る心を決めた周吉は、人知れず孤独の涙を流すのだった・・・
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小津安二郎監督のDVDがまとめて手に入った。
これから折に触れて観ていきたいと思う。
小津監督は戦前からの映画監督で近年になって再評価されてきた監督であるが、国際的にも評価は高く以前より興味を持っていたものである。

この作品は昭和24年のもの。
まだ戦後4年であるが、舞台は北鎌倉と一部東京であり、あまり戦争の匂いのするものは感じられない。
ストーリーもあまり戦後という時代を意識したものでもないからそれでも良いのかもしれない。
ただ、やはり60年前の日本社会と現代との違いは個人的に興味深いところである。

描かれているのは父と娘の物語。
今でこそ独身女性も珍しくないが、当時はやはり当然のようにみな結婚するものという雰囲気。
娘の紀子はそんな中で自分が結婚したら父親の世話をするものがいなくなると考え、結婚に踏み切れない。
父は婚期を逃しては大変という思いが強い。
周囲には結婚を勧める伯母や友人たちがあり、結婚を巡る父と娘のやり取りが描かれる。

それにしても静かな映画である。
主演の笠智衆も娘の結婚に気をもむといっても、のんびりしており焦っている風でもない。
静かな日常生活の中で、淡々と物語は進む。

父親の世話をするため結婚しない、という紀子の考え方は現代では共感を得られないかもしれない。
だが、ご飯だってお釜で炊く時代、家事労働は今よりもはるかに大変であり、上げ膳据え膳の男がいきなり独りになったら、目も当てられないだろう。

印象的なのは歌舞伎見学のシーンだ。
セリフは一切ない。
歌舞伎を観る父と娘。
嬉しそうに歌舞伎を眺める父と結婚について様々な思いが交錯する紀子。
二人の表情による演技が続く。
映画ならではのシーンである。

畳で暮らしていた時代の日本人。
恋愛結婚に憧れつつも、お見合いはごく普通の結婚に至る手段であると考えられていた時代。
そんな時代の父娘の交流がしみじみと心に残る。
最後に嫁いでいく紀子。
「晩春」というタイトルの意味がよくわかった・・・


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 11:05 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 小津安二郎監督作品

2009年09月26日

【クローバーフィールド/HAKAISHA】My Cinema File 459

クローバーフィールド.jpg

原題: Cloverfield
2008年 アメリカ
監督: マット・リーヴス
出演:  マイク・ヴォーゲル/ブレイク・ライヴリー/リジー・キャプラン/マイケル・スタール=デヴィッド/オデット・ユーストマン

<STORY>********************************************************************************************************
ニューヨークのとある高級アパート。
東京への転属が決まったロブのためにサプライズ・パーティが開かれている。
そんな中、突然、とてつもない爆音が響き渡る。
表を見ると、外では大爆発が起きている。
そこに何かが飛んでくる…近くのビルに激突し、地面に落下したのは自由の女神の頭だった…―コードネーム“Cloverfield”と呼ばれるビデオ映像。
かつてセントラル・パークと呼ばれた場所で見つかったものである。
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最近の映画としては比較的低予算で作られたというこの映画、かなりの大ヒットとなった。
それは巧みなPR戦略によるものであるが、私自身この映画の予告を観て猛烈に好奇心をかきたてられた者の一人であるから、それはよくわかる。

映画自体は偶然撮られたホームビデオに映った出来事という形式で語られる。
ごく日常のありふれたシーンを記録した普通のホームビデオ。
そういえばやっぱり大ヒットした「ブレアウィッチ・プロジェクト」も同じ形式であった。
ごく普通の日常という臨場感がドラマに加わって一層の迫力となっている。

ドラマは主人公ロブのパーティー用として撮影されたものである。
東京への転勤が決まり、みんなが集まってのサプライズ・パーティーである。
そこに集う人々は本当に普通の人々だ。
ビデオ担当となったハッドもその一人。
意中の彼女と話をするきっかけになるとの口説き文句で撮影を引き受ける。
そしてその撮影根性がこの映画につながるわけである。

冒頭でこれは「かつてセントラルパークと呼ばれた場所で発見されたもの」との注釈がつく。
そうするとあらかじめ「ビデオ」の運命はわかっているわけで、それが写された人々の運命とどう関わっていくのかと思いながら観ていく事になるので興味深い。

パーティーの途中で突然揺れが起こる。
ただの地震かとみんなは思う。
その「自然さ」がまたいい。
ホームビデオという特徴が活かされているのだろう。
そうして突然爆発が起こり何かが暴れたのを目撃する事になる。
大混乱となった中で戸惑う人々。
目の前に地響きを立てて落ちてきたものは、何と自由の女神の頭部。

平穏な生活が突然大きく乱れる。
9.11を思い起こし、テロではないかとの言葉も飛ぶが、きっとこういう感じだったのではないだろうか。
現実の生活でも地震や何かの災害が突然起きた時にはたして適切に行動できるだろうか。
「ビデオ」の中の人々の行動を観ているとそんな思いがする。

混乱の中を逃げる途中で一人また一人と仲間を失っていく。
ハッドは頑張ってその記録を撮り続ける。
実はそのビデオは録画済のテープを誤って二重に録画してしまっている。
なのでところどころに以前の彼女との幸せな一時を写したコマが入ってくる。
そのあまりにも無邪気な日常が印象的である。

ストーリーもさることながら、臨場感溢れる映像は映画ならでは。
PRに負けず劣らず面白い映画であった・・・


評価:★★★☆☆
posted by HH at 11:25 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | アクション

2009年09月23日

【ゼア・ウィル・ビー・ブラッド】My Cinema File 458

ゼアウィルビーブラッド.jpg

原題: There Will Be Blood
2007年 アメリカ
監督・製作・脚本 : ポール・トーマス・アンダーソン
原作 : アプトン・シンクレア
出演: ダニエル・デイ=ルイス/ディロン・フレイジャー/ポール・ダノ/ケビン・J・オコナー/キアラン・ハインズ

<STORY>********************************************************************************************************
一攫千金を夢見るダニエル・プレインヴューは、幼い1人息子を連れて石油の採掘を行っていた。
ある青年から、「故郷の広大な土地に石油が眠っている」と聞いた彼は、パートーナーのフレッチャーと共に米西部の小さな町、リトル・ボストンに赴き、安い土地を買占め、油井を掘り当てる。
しかし、油井やぐらが火事になり、幼い息子は聴力を失う。
精神に混乱を来した息子を、プレインビューは彼方の土地へ追いやってしまう・・・
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何ともよくわからない映画だった、というのが正直な感想である。
良い映画というのは解説などなくても面白さが伝わってくるものだと思う。
観終わって途方に暮れ、あとで解説を読んで「ああ、そうだったのか」と思うような映画は、一つの世界として完結していない。
この映画にもいろいろと背景がありそうである。
それがわかればもっと内容を味わえたのかもしれない。

”There will be blood”というタイトルもわかったようなわからないようなタイトルである。
Bloodは血という意味であるが、それが実際に流される血を意味するのか、それとも親子の血縁といった意味なのであろうかといろいろと考えてしまった。
もっともそれがわかったところでどうだという事もないが・・・

主人公のダニエルは始めは金を掘り、次に石油を掘る。
ともに当てれば大きな見返りがある。
事故で死んだ仲間の子供H・Wを引き取って育てる優しさもあるが、それも実は商売のためで、後に事故でH・Wが聴力を失うと寄宿舎のようなところへ追い払ってしまう。

しかし石油が出る土地を買い占めるにしても、地主たちにもその土地に住まわせ、学校を建てて恩恵に預からせているのだから、根っからの悪人というほどでもないのかもしれない。
そう思っていると、弟と称して近寄ってきた男に対しては非常な行為をおこなったりする。
金に対する執着心が強く、冷酷非情な男なのかと思えば事故で死んだ部下に対する対応を見てもそうとも言い切れないところがある。

結局、そうした掴み所のなさが、なんとなく映画として迫力を感じられないところとなってしまう。
この映画で主演のダニエル・デイ=ルイスはオスカーに輝く(主演男優賞)。
確かに演技力という点ではダニエルという男を怪演したという事で評価されたのであろう。
それはそれでわかるのであるが、映画全体としての印象からすれば?マークがついてしまう。
「誰かに解説してもらわないと理解できない映画」は他人がどう評価しようが個人的にはパスだ。
ただ、「石油を巡る一人の男の物語としてはそこそこだ」、とだけは言えるのではないだろうか・・・


評価:★★☆☆☆

posted by HH at 10:46 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2009年09月22日

【クライマーズ・ハイ】My Cinema File 457

クライマーズ・ハイ.jpg

2008年 日本
監督・脚本 : 原田眞人
原作 : 横山秀夫
脚本 : 加藤正人/成島出
出演 : 堤真一/堺雅人/尾野真千子/高嶋政宏/山崎努

<STORY>********************************************************************************************************
1985年8月12日、群馬県御巣鷹山にJAL123便が墜落、死者520人の大惨事が起こった。
前橋にある北関東新聞社では、白河社長の鶴の一声により、一匹狼の遊軍記者・悠木和雅が全権デスクに任命される。
そして未曽有の大事故を報道する紙面作り―闘いの日々が幕を開けた。
さっそく悠木は県警キャップの佐山らを事故現場へ向かわせる。
そんな時、販売部の同僚で無二の親友・安西がクモ膜下出血で倒れたとの知らせが届く…
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「クライマーズ・ハイ」とは登山者の興奮状態が極限まで達し、恐怖感が麻痺してしまう状態のことである。
「ランナーズ・ハイ」という走る者の興奮状態はよく聞くからなんとなくわかる。
この映画、当初は山男の山物語かと思っていたのでちょっと敬遠していた。
そういう意味では少し考えた方がいいように思えたが、映画を観終わってみるとなかなかな納得のタイトルである。

御巣鷹山の日航機墜落事故は24年を経た今も、当時ニュースを見ていた者からすると強烈な印象が残っている。
そんな強烈な印象はこの映画に出てくるような記者たちが送り出していたものである。
映画自体はフィクションだが、似たようなことがきっとどこの現場でも行われていたのではないか、と想像させられる。

新聞記者は事件を報道する者である。
それを見るのは我々であり、大いに関心のあるところである。
しかし報道の裏側では様々な経緯・やり取りがある。
新聞の紙面作りはその新聞社の生命線であるが、そこには現場の人間達の思惑が入り乱れる。
何を1面に持ってくるのか、構成はどうするのか・・・
あらためて普段我々が目にするニュースは、知らず知らずのうちに新聞社のフィルターを通されているのだと感じる。

内容的には★★★★☆になりかけたが、迷って★★★☆☆とした。
面白かったのであるが、やはりところどころ引っ掛ったのだ。
全権デスク悠木が山男である事はわかったのであるが、子供とのエピソードがわかりにくかった(子供が事故に巻き込まれたのだと思っていた)し、倒れた親友との絡みがわかりにくかった。
新聞社内の権力関係もよくわからなくて指揮系統が乱れているようにも思えた。
原作を読んでいないのでよくわからないが、映画の枠内に収めるために端折った感がする。
大事故を熱くなって追う男たちの姿は感動的ですらあるので、もう少し違う形であったら、ひょっとしたら名画になっていたかもしれないと思わせられる。

最前線で突入取材を敢行する佐山の記者魂も素晴らしい。
記者がみんなこういう熱い人間だったら、新聞の紙面ももっと違うものになるような気がする。
今の新聞はただムードに流され、深い思考のない薄っぺらな記事があまりにも多い。
「サラリーマン記者」の無難な記事が多すぎるのである。
それゆえにここで熱く働く男たちの姿は感動的である。

「ハイ」の状態は、第3者にはわかりにくいものである。
だがそれがわかるような気になる映画である・・・


評価:★★★☆☆
posted by HH at 23:20 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ