2009年10月31日

みかへりの塔

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1941年 日本
監督: 清水宏
出演: 奈良真養/笠智衆/森川まさみ/横山準/古谷輝男/緒方喬/日守新一/忍節子

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乱暴者や、盗癖・虚言癖のある子供などなど、問題児ばかりを集めた教護施設で日夜、子供たちの教育に頭を悩ませる先生や保母たち。
そこへ新たに多美子という非行少女が入学してくるが、反抗的な彼女は学院の生活やルールを無視して周囲の連中といざこざを起こしたり、脱走を企てたりして、保母の夏村を困らせる。
またある日、卒業生の1人が学院を訪ねてくるが、実は彼は社会復帰に失敗して舞い戻ってきたことが判明し……。
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1941年というとまさに太平洋戦争開戦の年である。
この年の12月8日に真珠湾攻撃が起こったわけである。
それに先立つ事、すでに中国戦線では泥沼の日中戦争が続いており、米英との対立が深刻化。
国内世論も騒然としていた時代。
それでもこうして映画が作られている。

舞台はとある山間部の教護施設。
親元を離れた子供たちが集団で生活している。
問題児たちが集められているのであるが、その問題のレベルが問題である。
乱暴者や、盗癖・虚言癖のある子供などであるが、現代の水準からいくとどこが問題なのだと思ってしまう。

実際、子供たちは朝5時に起き、自分たちで布団をたたみ(おねしょをした子は自分で干し)掃除をし、揃って学校へと向う生活振り。
今の子供たちにできるだろうかと思う。
中には「とうちゃんはこの頃お酒をやめて真面目に働いています」なんて手紙が子供のところへ来ているから、子供ばかりの問題というわけでもなさそうである。

確かに細々としたところでは毎日問題が起こってはいるのであるが、子供の世界では当然と言えるレベルだと思える程度の問題である。
それが「問題」とされるのは、社会の許容度が今よりもずっと狭かったのかもしれない。
そうした学校で、職員たちは親代わりを兼ねて一緒に暮らしている。

学校にある塔が、象徴として描かれる。
この象徴の下で日々の暮らしが描かれていく。
水はすべて井戸の水。
子供たちが当番で汲みに行く。
やがてこの井戸が枯れかかり、水の確保が重要課題となる。
学校の脇を通る汽車の線路には踏み切りも柵もなくむき出しのまま。
水泳は川だ。
戦時下とは思えないのどかな田舎の暮らしぶり。

若き日の笠智衆が活き活きと演技している。
ついつい今の子供たちと比較して、まったく問題ない子供たちが、「問題児」とされているのだけが違和感漂うものの、ほのぼのとした気分になる。
このあと最も辛くて厳しい時代に突入していくわけであるが、この子達はみんなどうしたのだろうとふと思ってしまった。

この頃、すでに日本映画はかなり高い水準にあったのだと思わせられた映画である。


評価:★★☆☆☆

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2009年10月26日

椿山課長の七日間

椿山課長の七日間.jpg

2006年 日本
監督: 河野圭太
脚本 : 川口晴
原作 : 浅田次郎
出演 : 西田敏行/伊東美咲/成宮寛貴/志田未来/須賀健太

<STORY>********************************************************************************************************
デパートに勤務する椿山課長はバーゲンで大忙しの中、倒れて突然死してしまう。
そんな椿山が目を覚ました場所は天国と地獄の中間に位置する“中陰役所”だった。
ここでは「天国行き」か「地獄行き」かの審判を下されるのだが、自分の死に納得がいかず、かつ戻る事情があると判断された者は、3日間だけ現世に戻ることが許される。
突然死した椿山は、現世への“逆送”を希望。
戻ってきた椿山は正体を隠すため若い美女の姿になり…
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原作は浅田次郎の小説。
浅田次郎の小説は、胸に何かが残るものが多く、そのためか映画化されるものも多い。
代表的なのは「鉄道員(ぽっぽや)」であるが、「メトロに乗って」もそうであり、「憑神」もそうである。
どれもが普通の人達の、それでいて心に残るストーリーである。

しかし、小説の映画化の場合は大きな問題点がある。
つくる方からすれば、「小説の世界を2時間という制約のある映画の世界にどう移し変えるか」であり、観る方からすれば、「読んでから観るべきか、観てから読むべきか」というジレンマである。
両方を満足させる映画となるとなかなか難しい。

しかも、近年は原作不足なのであろうか、小説の映画化が多い。
この浅田次郎を始めとして、東野圭吾・伊坂幸太郎・梨木香歩・・・
そして小説を読んでしまうと、やはり映画の魅力が半減する事もまた確かである。
この「椿山課長の七日間」は、残念ながらその典型となってしまった。

死んだあとにわずかな期間だけ現世に戻されることを許されたら・・・
そんなことをテーマにしたこの映画。
主人公は働き盛りで突然倒れて死んでしまったデパート勤務の椿山。
家のローンはまだ残っているし、残してきた老父や妻や子供の事を考えるととてもではないが「死んでいる場合ではない」と現世への「逆送」を希望する。
そして初七日までというルールにしたがって現世に戻るのであるが、あの世のルールによって現世に混乱を起こさないため、生前とは似ても似つかない美女の姿になって蘇る。

小説では主人公の戸惑い、倒れるに至った過酷なストレス、「死んでなどいられない」という悲痛な心情が細かく描写されて、読む者の共感を誘う。
しかし映画ではさらりと触れられているだけである。
仕方がない、といえばその通りなのであるが、原作を読まない者にそれが十分伝わるのであろうかと考えてしまう。

ストーリーは概ね原作に沿ってすすむ。
人は自分のことはよくわかっているが、そして自分の周りの人の事もよくわかっているつもりではあるが、得てして知らぬは自分ばかりという事もあるもの。
主人公の椿山は、死んでから現世に逆送される事によりそんな「知らなかった真実」を知る。

もしも生前それを知っていたら、どんな対応をしたのだろうか。
そんなことを想像してみるのもまた楽しい事である。
そしてそういう自分にも、今現在「知らない真実」があるのだろうか、と。

椿山にとって「知らなかった真実」はどれも衝撃的であった。
だがそれらの真実を通して最後にとった行動は心温まるものである。
うまく映画化されていなくても、そこは「浅田次郎の世界」である・・・


評価:★★☆☆☆
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2009年10月25日

結婚しようよ

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2008年 日本
監督・脚本 : 佐々部清
出演:  三宅裕司/真野響子/藤澤恵麻/AYAKO/金井勇太/岩城滉一 /モト冬樹/入江若葉/松方弘樹

<STORY>********************************************************************************************************
香取家の主人・卓は、不動産会社に勤める平凡なサラリーマン。
専業主婦の妻・幸子、大学生の長女・詩織、バンド活動に情熱をそそぐ次女・歌織の一家4人で、卓の決めた「晩ご飯は必ず全員揃って食べる」というルールを守って暮らしてきた。
だが詩織は想いを寄せる苦労人の青年と会うため、歌織は波に乗り始めたバンド活動のため、揃わない日が増えていく。
家族との時間が何より幸福だった卓は、すっかり意気消沈してしまい…
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「結婚しようよ」というタイトルを見た瞬間、
♪僕の髪が肩まで伸びて、君と同じになったら、約束通り 街の教会で 結婚しようよ♪
という歌が蘇る。
そんな吉田拓郎全盛時代を知る者には懐かしくなる映画である。

そういう者の期待を裏切る事なく、この映画には全編を通して吉田拓郎の歌が流れる。
本人が歌ったものばかりではない。
中で歌われる曲もそうである。
主人公のサラリーマン卓の次女がオーディションで歌うキャンディーズの「やさしい悪魔」、「アンドゥトロワ」しかり、森進一の代表曲「襟裳岬」しかり、である。
拓郎ファンであればそれだけで満足かもしれない。

ストーリーはど真ん中のファミリードラマである。
家族第一主義の香取卓。
毎日仕事が終わるとまっすぐ家に帰り、家族全員で夕食を食べる。
それが卓の決めた香取家のルール。
ずっと破られる事なく続いてきたルールであるが、長女はある青年と恋におち結婚の話がでる。
次女は仲間たちと音楽の道に進もうとする中で、香取家のルールも存亡の危機を迎える。

誠実な仕事ぶりの卓、好きな青年ができて家族との間で悩む長女、歌の道に進みたい次女、そしてかつてはギターを抱えて歌っていた卓自信の過去。
そうしたエピソードが織りなされて進んでいく。
これでもか、というくらいに「くさい」ストーリー展開。
それでも観続けられるのは、吉田拓郎メドレーがあるからだろうか。

かつては青春時代を謳歌していた若者も、やがては人の親となりいつのまにか若者達から古いと反発されるようになる。
そんなお父さんに三宅裕司がぴったりとあてはまる。
くさ過ぎるドラマを真面目に真面目に作ってしまったという感じの映画であるが、たまにはこういうホームドラマもいいのではないだろうか・・・


評価:★★☆☆☆
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2009年10月24日

ハンティング・パーティー

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原題: The Hunting Party
2007年 アメリカ
監督・脚本 : リチャード・シェパード 
出演:  リチャード・ギア/テレンス・ハワード/ジェシー・アイゼンバーグ/ダイアン・クルーガー

<STORY>********************************************************************************************************
かつて紛争地域から、伝説的なレポートを送り届けていたサイモンとカメラマンのダック。
しかしある事件がもとでサイモンは仕事をクビになる。
一方、本国に戻ったダックは出世していた。その二人が数年ぶりにボスニアのサラエボで再会する。
「大きなネタ」を持っていると言うサイモン。
それは虐殺事件の首謀者であり、戦争犯罪人フォックスの情報だった。
フォックスを求めて、彼らは危険地帯へと足を踏み入れる…。
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危険な紛争地帯で取材を重ねるジャーナリスト。
そんなジャーナリストは世界中にたくさんいる。
サイモンとダックもそんなコンビ。
映画の冒頭で銃弾が飛び交う中、マイクとカメラを武器に飛び回る彼らが映し出される。
そんなジャーナリストの映画かと思わせられた。

ところがストーリーは予想した方向から違う方向へと向っていく。
彼らが追うことにしたのはボスニア・ヘルツェゴビナ紛争の大物戦争犯罪人通称フォックス。
インタヴューするというサイモンの言葉を信じてついて行くダック。
だが、本当の意図はフォックスを捕まえて500万ドルの懸賞金を手に入れる事であった。

こうなると骨太ジャーナリストのジャーナリスト魂を発揮した映画というよりは、単なるアクション映画となってしまう。
しかし、ランボーなどが主人公ならともかく、ジャーナリストが隠れ潜む大物戦争犯罪人を捕らえるなんてのは、いくら映画でも無理はあるというもの。
映画がここらあたりから期待値を下回るようになる。

そして時間の制約もあるのだろうが、クライマックスは大幅な省略。
とりあえず帳尻は合わせた形であるが、なんともなぁと思ってしまう。
ストーリーの裏には表では戦争犯罪人の追及とはいうものの、裏では自国のエゴからわざとフォックスを追わない先進各国の思惑があると示唆されている。
それならばそれでもう少し別のストーリーがあってもよかったのではないかと思わせられる。

主演はリチャード・ギア。
どうもこの人については、「愛に生きるいい男」というイメージがついてまわる。
「愛と青春の旅立ち」とか「プリティ・ウーマン」、「オータム・イン・ニューヨーク」などといった映画がフィットするのである。
年をとったこの頃では、「綴り字のシーズン」などという家族モノがあっている。
単なるイメージの問題なのであるが、この手のハード系には合わない気がする。
そういえば「消えた天使」でもそういう印象を受けた。

ボスニア紛争については、随分と酷かったらしいが、あんまり映画の題材にはなっていない気がする。
そういう意味では興味を惹かれた映画ではあった。


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 11:38 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | スリリング

2009年10月19日

ブラック・サイト

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原題: Untraceable
2008年 アメリカ
監督:  グレゴリー・ホブリット
出演:  ダイアン・レイン/ビリー・バーク/コリン・ハンクス

<STORY>********************************************************************************************************
オレゴン州ポートランドを舞台に、自身のWEBサイトに生々しい殺人の映像をライブで載せているシリアル・キラー。
彼に苦しめられる犠牲者の運命を握っているのは、罪悪感もなく、好奇心だけでサイトにアクセスする世界中66億人の人々。
彼のサイトのアクセス数が増えれば増えるほど、犠牲者たちの死期は早まってしまう。
さらに悪いことに、犯行を重ねれば重ねるほどサイトの存在は知れ渡り、アクセス数は増えて被害者の死に至る時間は短縮されていく。
ネット犯罪専門のFBI捜査官ジェニファーは、焦りをつのらせながらも必死に手がかりを探るのだが…。
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いまやすっかり我々の生活に定着したインターネット。
WEBサイトもありとあらゆるものがある。
そしてその中にはとんでもないものがあったりする。
ここで登場するのは殺人のライブ中継サイト。
しかもアクセスが増えれば増えるほど犠牲者の死が早まる仕組みとなっている。
となれば見なければいいのであるが、見たがるのが人の常。
仕組みがわかってもアクセスは増え続け、それによって犠牲者の死は早まる。

ネット社会の大衆心理を非常によく表している。
今までであれば、メディアを通してしか我々は世の中の出来事についての映像に接する事はできなかった。
だからメディアが規制を守っている以上は残虐なシーンを目にする事もない。
しかし、日本でもショッキングなシーンを移した写真週刊誌が売れた現象を見ても、「見られないものを見たい」という人間の好奇心は理性で抑えられるものではない。
そんな心理を見事についた映画である。

ネット犯罪専門のFBI捜査官ジェニファー。
ある時、killwithme.comというサイトで殺人のライブ中継が行われているのを発見する。
目の前で苦しむ犠牲者をあざ笑うかのごとく上昇するアクセス数。
IPアドレスも次々と変わり、発信元を突き止められない。
まさに「Untraceable」なのである。

しかしながら無差別殺人と思われていた事件に次第に共通点が浮かび上がってくる。
それと同時に犯人の魔の手がジェニファーにも近づいてくる。
こうしたストーリーでは追いかける立場がいつのまにか狙われる立場になるというのも王道パターン。
手に汗握る展開となるものである。

ネット社会の群集心理。
終わってみれば犯人の犯行動機にも同情の余地はある。
ネット社会の群集心理に対しては犯人もまたどうにもならない怒りを持ち合わせていたのである。
模倣範がでるとちょっと怖い。
そんな映画である・・・


評価:★★☆☆☆
posted by HH at 21:53 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 犯罪ドラマ