
1941年 日本
監督: 清水宏
出演: 奈良真養/笠智衆/森川まさみ/横山準/古谷輝男/緒方喬/日守新一/忍節子
<STORY>********************************************************************************************************
乱暴者や、盗癖・虚言癖のある子供などなど、問題児ばかりを集めた教護施設で日夜、子供たちの教育に頭を悩ませる先生や保母たち。そこへ新たに多美子という非行少女が入学してくるが、反抗的な彼女は学院の生活やルールを無視して周囲の連中といざこざを起こしたり、脱走を企てたりして、保母の夏村を困らせる。またある日、卒業生の1人が学院を訪ねてくるが、実は彼は社会復帰に失敗して舞い戻ってきたことが判明し……。
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1941年というとまさに太平洋戦争開戦の年である。
この年の12月8日に真珠湾攻撃が起こったわけである。
それに先立つ事、すでに中国戦線では泥沼の日中戦争が続いており、米英との対立が深刻化。
国内世論も騒然としていた時代。
それでもこうして映画が作られている。
舞台はとある山間部の教護施設。
親元を離れた子供たちが集団で生活している。
問題児たちが集められているのであるが、その問題のレベルが問題である。
乱暴者や、盗癖・虚言癖のある子供などであるが、現代の水準からいくとどこが問題なのだと思ってしまう。
実際、子供たちは朝5時に起き、自分たちで布団をたたみ(おねしょをした子は自分で干し)掃除をし、揃って学校へと向う生活振り。
今の子供たちにできるだろうかと思う。
中には「とうちゃんはこの頃お酒をやめて真面目に働いています」なんて手紙が子供のところへ来ているから、子供ばかりの問題というわけでもなさそうである。
確かに細々としたところでは毎日問題が起こってはいるのであるが、子供の世界では当然と言えるレベルだと思える程度の問題である。
それが「問題」とされるのは、社会の許容度が今よりもずっと狭かったのかもしれない。
そうした学校で、職員たちは親代わりを兼ねて一緒に暮らしている。
学校にある塔が、象徴として描かれる。
この象徴の下で日々の暮らしが描かれていく。
水はすべて井戸の水。
子供たちが当番で汲みに行く。
やがてこの井戸が枯れかかり、水の確保が重要課題となる。
学校の脇を通る汽車の線路には踏み切りも柵もなくむき出しのまま。
水泳は川だ。
戦時下とは思えないのどかな田舎の暮らしぶり。
若き日の笠智衆が活き活きと演技している。
ついつい今の子供たちと比較して、まったく問題ない子供たちが、「問題児」とされているのだけが違和感漂うものの、ほのぼのとした気分になる。
このあと最も辛くて厳しい時代に突入していくわけであるが、この子達はみんなどうしたのだろうとふと思ってしまった。
この頃、すでに日本映画はかなり高い水準にあったのだと思わせられた映画である・・・
評価:★★☆☆☆