
2008年 日本
監督: 瀧本智行
原作: 間瀬元朗
出演:
松田翔太:藤本賢吾
塚本高史:森尾秀和
成海璃子:飯塚さくら
山田孝之:飯塚さとし
柄本明:参事官
劇団ひとり:島田
金井勇太:田辺翼
佐野和真:滝沢直樹
井川遥:近藤医師
笹野高史:石井課長
風吹ジュン:滝沢和子
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初のテレビ出演を翌日に控えているギタリストの田辺翼は、ボーカルと反りが合わず、悩んでいた。元々、親友の秀和とコンビを組み、路上で歌っていたが、翼ひとりだけがスカウトされ、事務所に決められたボーカリストとデュオを組まされたのだった。そこに、厚生保健省の藤本という男が現れ、「イキガミ」を渡される。「イキガミ」とは、18歳から24歳までの若者に国から発行されるもので、受け取った者は24時間後に死亡することになる…
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突拍子もない前提で始まるストーリーというのは、うまくツボにはまれば面白い。
この「イキガミ」を観てつくづくそう思う。
国家によって18歳から24歳までの青年が強制的に命を奪われるという社会。
それによって命の尊さを教えようという試みで、ドラマの中では事件も自殺件数も劇的に減っている。
中心となって制度を運営しているのは厚生保険省。
あらかじめ体内に注射されたカプセルが、「予定時刻」に破裂して毒を撒き散らす。
その時間はあらかじめ設定されているため、対象者には24時間前に厚生保険省の役人が「死亡予告証」=通称「イキガミ」を届ける。
残された24時間をどう使うかは本人次第。
国家は「イキガミ」を受け取った者にあらゆるサービスを提供する。
殉教者として称えられるし、レストランで豪華な食事をしても飛行機に乗ってもタダなわけで、残された遺族には年金が支給される。
ただし、やけになって犯罪に走ればその権利を失う・・・
架空の設定であるが、よく考えられている。
しかし、もっとよく考えてみると、なんだか既視感を感じる。
国家の為に18〜24歳の若者が命を散らす。
死んだものは称えられ、周りの者は「イキガミ」を受け取った者に最大限の敬意を払い、できる限りの協力を惜しまない。
逆に制度に反対する、あるいは疑問を呈する者は「思想犯」として処罰される・・・
大戦中の日本のようなのである。
当然中には疑問を持つ者も出てくる。
主人公の藤本もその一人。
仕事を忠実にこなしながらも、どこか釈然としない思いを抱えている。
彼がどうなって行くのか、残念ながら映画はそこまで描かない。
イキガミを受け取った3人の24時間を追うのみである。
原作はこれも漫画らしい。
映画の2時間という制限時間の中でどこまで描くは難しいところ。
原作は読んでいないが、なんとなく物足りないのはきっとそのせいかもしれない。
いろいろと考えさせられる映画である・・・
評価:★★★☆☆