
2008年 日本
監督: 滝田洋二郎
出演:
本木雅弘:小林 大悟
広末涼子:小林 美香
余貴美子:上村 百合子
吉行和子:山下 ツヤ子
笹野高史:平田 正吉
山崎努:佐々木 生栄
<STORY>********************************************************************************************************
所属する東京のオーケストラが解散し職を失ったチェロ奏者の大悟は演奏家を続けることを諦め、妻の美香を連れて故郷の山形に戻ってくる。早速、求人広告で見つけたNKエージェントに面接に出かけ、その場で採用になるが、それは遺体を棺に納める納棺師という仕事だった。戸惑いながらも社長の佐々木に指導を受け、新人納棺師として働き始める大悟だったが、美香には冠婚葬祭関係の仕事に就いたとしか告げられずにいた・・・
********************************************************************************************************
第81回アカデミー賞外国語映画賞を受賞し、話題となった作品である。
もともとは「納棺夫日記」という原作を読んだ主演の本木雅弘が、映画化を計画したものの、原作と脚本の相違から著者の承諾を得られず、「まったく別の作品としてやってほしい」という話になり本作に至ったという。そんなエピソードは映画に隠し味を与える。
納棺夫などという職業が存在しているという事実は、考えてみれば理解できるが、一般的に知名度は低い。映画の中でも、失職して故郷に帰った主人公大梧が納棺夫の仕事を得るものの、仕事の内容を妻に言えないというシーンが出てくる。そしてその事実を知った妻からは辞めてくれと懇願され、またある納棺時に「この人みたいな仕事をして・・・」と言われるシーンからも伺えるように、忌み仕事と思われているからかもしれない。
個人的にはどうとも思わないが、日本には伝統的に「死」を扱う職業についてはあまりいい扱いを受けていないため、そんな風になるのだろう。実際にはわからないが、この映画が話題となった事で納棺夫という職業も市民権を得られたのではないかと推測する。
映画の方は、音楽家としての夢を断念した大梧が仕事として納棺夫を選び、仕事を通じて納棺夫という職業に対する理解を深めていく過程を妻・故郷の友人・会社の社長たちとの交流を横糸に描いていく。遺体を棺桶に入れるという単純な作業を、死者に対する敬意を込め、遺族に対する配慮も交えながらきめ細かな思いやり溢れる手順で行っていく様は、繊細なる日本人らしいものと改めて思う。
映画はいろいろな影響を観る者に与える。ただ単に「オスカーを取った」という話題性だけではなく、そうした影の部分に優しい光を当てたところがこの映画の良いところかもしれない。広末涼子があまりにも良い奥さんを演じ過ぎていて、ちょっと羨ましく思えた映画である・・・
評価:★★★☆☆