2010年06月28日

【春よこい】My Cinema File 565

春よこい.jpg

2008年 日本
監督:  三枝健起
原作・脚本 : 中村努
出演 :  工藤夕貴/西島秀俊/時任三郎/宇崎竜童/吹石一恵/ 高橋ひとみ

<STORY>********************************************************************************************************
唐津市呼子町で漁業を営む芳江。
夫の修治は、不慮の事故で借金取りを死なせ、4年間、姿を消していた。
父親と息子のツヨシを養うため、芳江は必死で働いていた。
ある日、交番に貼られた指名手配犯の父親の写真を眺めるツヨシの姿が地元新聞に掲載される。
その記事が元で噂が蒸し返され、芳江は仕事を休業に追い込まれてしまう。
記事を書いた記者、岡本は責任を感じ、修治を捜し出し、たった1日でも家族の時間を作る事を決意する・・・
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2008年作といえば、本当に最近の公開作品なのだが、あんまり記憶に残ってない。
気が付かなかったのか、あんまり宣伝していなかったのか・・・
もちろん、何の情報もなく観る事になった。

時代は30年ほど前の九州が舞台。
一人のチンピラが一軒の家に土足で上がり込んで船の鍵を奪っていく。
追いかけるその家の主である修治。
船の上で乱闘となり、チンピラはアクシデントで頭を打って死んでしまう。
修治はそのまま逃走。
残された妻の芳江は息子ツヨシとともに、世間の風当たりに耐えながら暮らしている・・・

もともとは船を買うための借金が元なのだが、それがどうやらあこぎな高利貸しの手に渡って、チンピラが借金のカタに船を取りに来たとの事らしい。
そんな事って現実的にあり得ないだろう、などと突っ込むのはナンセンス。
ナンセンスなのだが、やっぱりある程度は現実味というものを持たせてほしいと思う。
それに状況からして正当防衛だろうし、今やそのくらいの知識は誰だって持っているだろう。
ちょっと苦しい不自然な前提でドラマは始まる。

父親が指名手配されているとなれば、子供が学校でイジメられるのは当然の成り行き。
父親を恋しがる息子の姿を大々的に報じてしまう地元新聞。
個人情報のない時代だとはいえねぇ・・・それはいかんだろうと思わず突っ込みを入れてしまう。
残された芳江とツヨシの親子。
ツヨシの担任と新聞記者のその兄。
彼らの織りなす人間模様。

新聞記者の兄は、先日「真木栗ノ穴」で主演を演じていた西島秀俊。
けっこう二枚目なんだな、この人。
それに刑事役で登場したのは宇崎竜童。
これが何となく味のある刑事なのである。
主演の 工藤夕貴や時任三郎よりもいい味出していた感じである。

何となく感動映画に仕上げたかったんだろうなという感じは伝わってくるのであるが、その試みは空振りだったようである。
やっぱり不自然な前提が苦しかったのと、ストーリー展開が読めてしまったのがその原因だ。
こういう映画って難しいだろうな・・・


評価:★★☆☆☆

     
posted by HH at 22:54 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年06月27日

【山桜】My Cinema File 564

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2008年 日本
監督:  篠原哲雄
原作 :  藤沢周平
出演 :  田中麗奈/東山紀之/篠田三郎/壇ふみ/北条隆博/南沢奈央/樋浦勉/千葉哲也/富司純子/高橋長英/永島暎子/村井国夫

<STORY>********************************************************************************************************
江戸後期、北の小国、海坂の地。
不幸な結婚生活に耐える野江は、叔母の墓参りの帰り、山道に咲く山桜を見つける。
その美しさに心惹かれ、薄紅色の花に手を伸ばすが、枝は思いのほか高い。
その野江の背中に男の声が響いた…
「手折ってしんぜよう」山桜に手繰り寄せられた運命の糸。
ただ一度の出会いが二人の未来を大きく揺るがしていく…
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藤沢周平原作の時代劇である。
藤沢周平原作の時代劇と言えば「蝉しぐれ」が筆頭に挙げられるが、小説では一番面白いこの原作も映画の方はいまいちだった。
逆に「武士の一分」などは、原作は短編なのだが、映画は原作以上に面白かった。
たぶん長編はそれなりに小説の世界で描かれきってしまっているので、ダイジェスト版とならざるを得ない。
時間制限のある映画では表現しきれないのだろう。

この「山桜」も短編である。
短いながらも心に沁みいるいい話である。
短編というのは短い分、行間に隠れた部分を読み手が補う。
映画はそれを具体化するので、ふくらみのあるストーリーとなるのではないだろうか。

主人公は再婚で嫁に入った野江。
最初の夫とは死別し磯村家に嫁いだが、どうも折り合いが悪い。
そこには「出戻り」と「家柄の違い(双方の禄高の違い)」という江戸時代ならではの微妙な問題が影を差す。
そんな野江が、叔母の墓参りの帰り道に手塚という武士と出会う。
実は手塚はかねてから野江に想いを寄せている。
野江もそんな手塚の事を意識し始める。

一方領内では名門の組頭である諏訪が、権力を振りかざして懐を肥やしていた。
疲弊する農民。
名門ゆえに取り入るか沈黙するしかない藩内の雰囲気。
誰もが何も言えないでいる時、事件が起きる。

厳格な身分制度と社会制度。
不自由な世界でも人の想いは変わらない。
今のように簡単に離婚などできるものでもない。
どうにもならない現実が切なく胸に迫ってくる。

小説ではイメージするしかない山桜を映画は見事に視覚に訴える事ができる。
結末は小説と同様、観る者の想像に委ねられている。
あれこれと結末を想像してみると面白い。
個人的にはささやかなハッピーエンドを加えてみた。
人それぞれだろう。

ストーリーはさすがに藤沢周平だけあって、静かで、そして心にじんわりと沁み渡ってくる。
しかし、難を言えば野江と手塚のキャスティングだろうか。
田中麗奈はちょっと目つきがきついし、東山紀之は髷姿がこっけいに見えてしまう。
二人の似合わなさが、心に沁み渡るストーリーとずれてしまった。
個人的にはとっても残念である・・・


評価:★★☆☆☆

     
    
posted by HH at 23:06 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | 時代劇/西部劇

2010年06月26日

【戦場からの脱出】My Cinema File 563

戦場からの脱出.jpg


原題: Rescue Dawn
2006年 アメリカ
監督: ヴェルナー・ヘルツォーク
出演: クリスチャン・ベール/スティーヴ・ザーン/ジェレミー・デイヴィス/ザック・グルニエ/マーシャル・ベル/トビー・ハス/GQ/エヴァン・ジョーンズ

<STORY>********************************************************************************************************
1966年、ベトナム。
米空軍爆撃機パイロットのディーターは、初の北爆参加にいきり立つものの、あえなくラオス上空で撃墜されてしまう。
ベトコンに捕まり、拷問を加えられた末にジャングルに囲まれた捕虜収容所に送られるディーター。
そこで彼を待っていたのは、数年に渡って幽閉され、もはや気力も失せかけた米兵たちだった。
彼らの姿を見たディーターは早速脱走計画を練り始めるのだが…
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アメリカの汚点として残っているベトナム戦争。
そのベトナム戦争で捕虜となりながらも自力で脱出した元空軍パイロットの実話である。
こうした実話モノというのは、それだけでフィクションにはない迫力というものがある。
その迫力がヒシヒシと伝わってくる映画である。

1966年というとまだベトナム戦争もそんなに激化していない。
空母で寛ぐディーター達もどことなく「戦場に来ている」という雰囲気がない。
いざ敵上空へと北爆に向かうも余裕である。
この頃はまだ後々の激戦で地獄と化していく戦場の恐怖というものがなかったのだろうな、などと想像してしまう。

そして撃墜。
パイロット達はあらかじめ撃墜された時のレクチャーを受けている。
無線連絡するな
ジャングルを味方とせよ
ヘリによる救出を待て
等々
まさか本当に撃墜されるとは誰も考えずにレクチャーを受ける。

慣れないジャングルで地の利の不利もあり、ディーターはベトコンに捕まってしまう。
拷問を受け、挙句に連れて行かれた粗末な捕虜収容所には同じアメリカ人の捕虜がいる。
彼らとの交流が後半の見どころ。
ここでの各人各様は人生の縮図のような気がする。

脱走を主張するディーターにじっと救出を待つべきだとする意見の者、風見鶏になる者・・・
2年も収容所にいても脱走という事を意識していないと何も見えてこない。
脱走を考えるディーターには、様々なものが脱走時の備えとして目に飛び込んでくる。
仲間にプランを伝え停滞していた雰囲気を変えていく。
ディーターには間違いなくリーダーの資質がある。
そして最後にモノを言ったのは何といっても「生きて帰る」という強い意志の差だったようである。

主演はクリスチャン・ベール。
スティーブン・スピルバーグの「太陽の帝国」で主人公の子供役でデビューした時は強烈な印象を受けた。
もう立派な俳優だ。
「ダークナイト」は秀作だったし、近々観る予定の「ターミネーター4」も楽しみである。

映画では捕虜となった主人公が、ウジ虫を食べたり蛇を食べたりして生き抜くが、そんな生活でやせ細っていく姿を実演。
映画の冒頭と比較すると驚きである。
いったい何キロダイエットしたのだろうか、役者魂が凄いと思う。
そんなところも見応えのある映画である。


評価:★★★☆☆
 
   
     
posted by HH at 11:30 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 戦争/戦場ドラマ

2010年06月20日

【そして、私たちは愛に帰る】My Cinema File 562

そして、私たちは愛に帰る.jpg

原題: Auf der anderen Seite(独)/The Edge of Heaven(英)/Yaşamın kıyısında(トルコ)
2007年 ドイツ/トルコ/イタリア
監督:  ファティ・アキン
出演 :  バーキ・ダヴラク/ハンナ・シグラ/ヌルセル・キョセ/トゥンジェル・クルティズ/ヌルギュル・イェシルチャイ/パトリシア・ジオクロース

<STORY>********************************************************************************************************
ハンブルクに住む大学教授のネジャットの老父アリはブレーメンで一人暮らしだったが、同郷の娼婦イェテルと暮らし始める。
ところが、アリは誤ってイェテルを死なせてしまう。
ネジャットはイェテルが故郷トルコに残してきた娘アイテンに会うためにイスタンブールに向かう。
そのアイテンは反政府活動家として警察に追われ、出稼ぎでドイツへ渡った母を頼って偽造パスポートで出国し、ドイツ人学生ロッテと知りあう・・・
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ふだん観る映画はその大半がアメリカ映画か邦画であり、その他の国の映画は数が少ない。
個人的な趣味もあるが、やっぱり配給量の差というものもあるだろう。
数が少ないながらも我々の目に留まるという事は、逆に厳選された映画だけが配給されているとも言えるかもしれない。
そんな期待をもって観た「ドイツ=トルコ」映画である。

一人暮らしの老人アリが一人の女性に声をかける。
場所は雰囲気からすると娼婦街。
元気だなと思う反面、相手の娼婦もえらくくたびれているなというのが正直なところ。
やがてこの娼婦イェテルも27の娘がいるとわかる。
見た目の判断は間違っていなかったわけである。

アリもイェテルも出身はトルコ。
ドイツでは労働者の移民が問題となっているが、そんな社会的問題をまさに映し出す内容なんだろうと想像する。
日本でも民主党が「移民受け入れ増」を主張しているが、それに伴う事象をいろいろと考慮しないといけないだろう。
やがてアクシデントから同居していたイェテルをアリは殺してしまう。

シーンが変わってトルコで反政府活動に加わるアイテン。
指名手配され仲間の手引きでドイツへと逃れる。
知り合ったロッテの家でロッテの母と議論になる。
「トルコではお金持ちでなければ教育は受けられない、それを改善するために戦っている」と主張するアイテン。
「そんなのトルコがEUに加盟すれば解決する」と答えるロッテの母。

EU神話のようなものを感じさせるシーンである。
こうしたセリフが映画の中で語られるという事は、市民の間にもそんな感覚があるのかもしれない。
トルコの抱える問題があぶり出される映画である。

そんな2つの物語が後半で一つに融合していく。
交わる事のなかった二つの家族が「死」をきっかけに交わっていく。
同時に壁があった二組の親子の間からその壁がなくなる。
社会問題を浮き彫りにしつつ、親子の愛情を描いた映画であり、やっぱり配給される理由は十分に理解できる映画だと言える。

たまにはこういう映画もいいものである・・・


評価:★★☆☆☆


     
posted by HH at 11:11 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年06月19日

【砂の器】My Cinema File 561

砂の器.jpg

1974年 日本
監督: 野村芳太郎
原作: 松本清張
出演: 丹波哲郎/森田健作/加藤剛/加藤嘉/春田和秀

<STORY>********************************************************************************************************
6月24日早朝、国鉄蒲田操車場構内に扼殺死体が発見された。
被害者の年齢は50〜60歳だが、その身許が分らず、捜査は難航をきわめた。
警視庁の今西栄太郎刑事と、西蒲田署の吉村正刑事らの必死の聞き込みによって、前夜、蒲田駅前のバーで被害者と酒を飲んでいた若い男が重要参考人として浮かび上った。
そしてバーのホステスたちの証言で、二人の間に強い東北なまりで交わされていた“カメダ"という言葉に注目された・・・
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松本清張の言わずと知れた名作である。
ちょうど生誕100年という事で話題となっていた事から観てみる事にした。
その昔、テレビで観たような記憶もあるが、定かではない。
ストーリーもほとんど覚えていない。
そういう意味では「古くて新しい」映画と言えなくもない。

ストーリーはいきなり他殺体の発見から始まる。
事件の捜査にあたるのは二人の刑事。
これが丹波哲郎と森田健作。
二人とも若く、丹波哲郎も晩年の好爺の雰囲気はなく若々しい。
森田健作も当時人気となった青春ドラマからそのまま出てきた様子で懐かしい雰囲気がする。

身元もわからない死体から捜査は難航。
ところが少しずつ、事件の糸が解きほぐされていく。
この前半は推理ドラマの展開だ。
それと並行して登場する音楽家和賀英良。
その和賀英良の愛人として登場するのが島田陽子。
これもまた若い。
若き日の緒方拳も出てくるし、こうしたベテラン俳優の若い、あるいは懐かしい姿を観るのもいいものである。

執念の捜査はやがて犯人を特定するに至る。
そして今西刑事が捜査本部で事件の真相を語る。
らい病(ハンセン氏病)にかかった事から妻に去られ、まわりの偏見から6歳の息子とともに故郷を追われた一人の男。
放浪の末に彼を救った田舎の巡査。

不幸な生い立ちの末にようやく掴んだ成功へのきっかけ。
あまりにも悲しい事件の全貌に心が重くなる。
これが名作と言われる理由がよくわかる。
古いからと言って侮る事はできない。
何度もドラマ化や映画化されている理由もよくわかる。
これは観ておきたい映画である・・・


評価:★★★☆☆

     
posted by HH at 14:38 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 犯罪ドラマ