2010年07月31日

【ディファイアンス】My Cinema File 577

ディファイアンス.jpg

原題: Defiance
2008年 アメリカ
監督・脚本 : エドワード・ズウィック
出演: 
ダニエル・クレイグ: トゥヴィア・ビエルスキ
リーヴ・シュレイバー: ズシュ・ビエルスキ
ジェイミー・ベル: アザエル・ビエルスキ
アレクサ・ダヴァロス: リルカ
アラン・コーデュナー: ハレッツ
マーク・フォイアスタイン: イザック
ミア・ワシコウスカ: ハイア

<STORY>********************************************************************************************************
第二次世界大戦さ中の1941年。ナチス・ドイツの迫害はポーランドの小さな田舎町まで迫っていた。両親を殺されたユダヤ人のトゥヴィア、ズシュ、アザエルのビエルスキ兄弟は、復讐を胸にポーランドに隣接するベラルーシの森に身を隠す。やがて森には、ドイツ軍の迫害から逃げてきたユダヤ人が次々と助けを求めて集まってくる…。食料難、寒さの中、人間らしく生き抜くことを心に決め、肉体も精神も極限状態の日々を過ごしていた…
********************************************************************************************************

主人公は第二次大戦中のユダヤ人の兄弟。というとすぐにホロコーストが連想され、抵抗空しく殺される悲劇の映画かと思いきや、タイトルにある通りこれは生き残るために戦ったユダヤ人のストーリーである。しかも実話というなによりも力強いバックボーンがある。

冒頭でのユダヤ人狩り。両親を殺害されたものの、ビエルスキの4兄弟はかろうじて森へ逃げ込む。幼き頃から慣れ親しんだゆえに、彼らにとって隠れて暮らすのはわけのない事だった。ところが、同じように難を逃れて森に逃げ込んできた人たちがあとを絶たない。次兄のズシュは食料を賄いきれないと受け入れに難色を示すが、長兄のトゥヴィアは博愛精神で受け入れる。

ドイツ兵を襲撃しては武器を奪い、ささやかな復讐を成し遂げるもトゥヴィアは満足せず、復讐よりも生き残る事を選択する。力による復讐を主張するズシュは、ソ連兵と行動をともにするが、トゥヴィアは膨れ上がった仲間たちのリーダーとして生きる事を決意する。

自然発生的にできた集団で、食料不足、意見の衝突、病気等の問題が起こる。死の恐怖におびえる人々をまとめていくトゥヴィア。リーダーとなるべきものの役割というものを考えさせられる。そして時には強権を発動する事も。

映画のストーリーの中にはエンターテイメント性を高めるためフィクションとして挿入されたエピソードもあるというが、総じて実話の持つすごみが現れている。ただ収容所に送られて一方的に虐殺されただけではなく、こうして森に逃げ込み生き抜いたユダヤ人たちがいたという事実は驚きだ。結局彼らは1941年から終戦までを森で過ごしたという。最終的には1,200人がそうして森で生き延び、病院や学校までも作っていたという。

映画というエンターテイメントである一方、リーダーシップのあり方や、困難な状況下での生き方などいろいろな要素が盛り込まれている。人間の強さ弱さがパターンを変えて出てくる。こういう映画は是非観ておきたい映画である・・・


評価:★★★☆☆
     

   





posted by HH at 19:12| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 実話ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月28日

【扉をたたく人】My Cinema File 576

扉をたたく人.jpg

原題: The Visitor
2008年 アメリカ
監督: トム・マッカーシー
出演: 
リチャード・ジェンキンス: ウォルター・ヴェイル
ヒアム・アッバス: モーナ
ハーズ・スレイマン: タレク
ダナイ・グリラ: ゼイナブ

<STORY>********************************************************************************************************
コネチカットで暮らす大学教授のウォルターは、妻と死に別れて以来本を書く事にも、教える事にも情熱を燃やせず憂鬱な日々を送っていた。ある日、出張でニューヨークを訪れた彼は、マンハッタンにある自分のアパートで見知らぬ若いカップルに遭遇する。知人に騙されて住んでいたというそのカップルは、シリアから移住してきたジャンベ奏者のタレクと彼の恋人でセネガル出身のゼイナブだと名乗る・・・
********************************************************************************************************

主人公は大学教授のウォルター。ピアノを習い始めるも、合わない教師を冷たく首にしたり、一方で大学の仕事はやる気のなさがありありとしているという具合の人物。そんな彼が、しぶしぶニューヨークへの出張に出かける。ニューヨークにある自分のアパートに久しぶりに寄る。ところが、そこには見知らぬカップルが住んでいる。

カップルはタレクとゼイナブという名で、友人に騙されてその部屋で暮らしていたのである。行くあてもない彼らを受け入れ、妙な同居生活を始めるウォルター。タレクはジャンべという太鼓の一種である楽器の奏者であり、ウォルターはタレクからジャンべの演奏を習う事となる。

ウォルターとタレク、ゼイナブとの交流。なんだかよくわからないまま、淡々とストーリーが進んで行く様子は「そして、私たちは愛に帰る」にどことなく雰囲気が似ていなくもない。仕事にもピアノにも没頭できなかったウォルターが、しだいにタレクとの交流を深めていく。いつのまにかタレクと公園でともにジャンべを演奏するようになっていく様は、それまでにはあり得なかった彼の変化を表している。

しかし好事魔多し。そんな時に事件が起こる。アメリカ社会が抱える問題点の一つがこの事件を通して明らかになる。いかにアメリカ社会が多様な人種から成り立っているか。そして必ずしも優しい社会ではないというのがわかるのである。

なんだかアメリカ映画というよりヨーロッパ系の映画のような雰囲気が漂う映画。ストーリー的には面白いとはいいにくいものの、じっくり観てそして考えさせられてしまう。そんなタイプの映画である・・・


評価:★★☆☆☆


     
    


posted by HH at 23:00| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月21日

【シックスデイ】My Cinema File 575

シックスデイ.jpg


原題: The Sixth Day
2000年 アメリカ
監督: ロジャー・スポティスウッド
出演: 
アーノルド・シュワルツェネッガー: アダム・ギブソン
トニー・ゴールドウィン: マイケル・ドラッカー
ロバート・デュヴァル: グリフィン・ウィアー博士
マイケル・ラパポート: ハンク・モーガン
マイケル・ルーカー: ロバート・マーシャル
サラ・ウィンター: タリア・エルスワース

<STORY>********************************************************************************************************
2010年、人間のクローン化が法規制された社会。その3年前に出来た“人間は人間を造り出してはならない"とする「6d法」のおかげで、社会はかろうじて秩序を守っていた。しかしある日、飛行士のアダム・ギブソンが仕事を終えて帰宅すると、そこには自分と同じ姿の男が愛する家族と共に彼の誕生日を祝っていた・・・
********************************************************************************************************

アーノルド・シュワルツェネッガーといえばやっぱりアクション。どれもはずれがないため安心して観る事ができる。いまや現役の州知事という事で、最近では新作を観る事ができない。「ターミネーター4」に出てきた時はびっくりしたが、CGだったそうである。なぜだか見落としていたこの映画をようやく観る機会に恵まれた。

ストーリーは近未来の社会。クローン技術が進化し、すでに動物では商売が成り立っている。愛するペットが死んだ時、クローン技術によって生前の姿そのままで復活するのである。「リペット」と呼ばれ、生前の記憶や覚えた芸もそのままだという。しかし、人間については「6d法」という法律によりクローンが禁止されている。そんな社会の物語。

冒頭で史上初のフットボールの3億円プレーヤーが試合中のアクシデントに見舞われる。脊椎損傷で再起は無理そうとわかると、救急車の中で生命維持装置のスイッチを切られる。しかし、シュワルツェネッガー扮するアダムが見ているニュースの中で、その選手の復活が報じられる。ここらあたりから、どういう展開になりそうなのかが見えてくる。

誕生日、家に帰ったアダムであるが、やけに賑やかな我が家を窓から覗くと自分が家族と誕生日のパーティーをしているのが目に入る。驚く間もなく見知らぬ者たちに襲撃される。カーチェイスの末に命からがら逃げ切るも、「もう一人の自分」の存在が理解できない。そして友人とともに真相究明に乗り出す・・・

舞台となっているのは近未来。近未来というところが味噌で、現代とかけ離れた未来社会という事もなく、「トータル・リコール」のようなSF未来社会とも違い、現代をベースに微妙に進化している。冷蔵庫は牛乳の残りを感知して、ボタン一つで注文が完了する。車は自動操縦だし、アダムが仕事で使うヘリはスイッチ一つでジェットエンジンの航空機に変化する。タクシーの支払いも指紋一つでOKといった具合だ。

こうしたアイテムは、のちのアクションシーンで使われたりするが、いずれ実現しそうなものはやっぱり夢を感じる。クローン技術も臓器レベルでは病気の克服という意味でいいだろう。しかし、人間そのものとなるとやはり考えてしまう。

法を犯してクローン人間を製造するドラッカーとウィアー博士。ウィアー博士が法を犯したのは最愛の妻を救うためだ。死んでも元の記憶をもったまま復活できる。そうなると人類は不死を手に入れる事ができるわけである。たんなるSF映画であっても、こういう部分は現実的に考えさせられるところがある。自分自身が、あるいは最愛の家族が死に瀕していて、死ななくても済む手段があるとしたら、本当に「クローンはいけない事」と反対できるだろうか・・・重度の障害をもっていて、死にゆく我が子が元気になって生き続けられるとなったら、親は本当に反対できるだろうか・・・

娯楽作品であっても映画は時として考えるヒントをくれたりする。シュワルツェネッガーのアクションを楽しみながら、こんな事を考えてみるのもいいかもしれない一作である・・・


評価:★★★☆☆
       

     




posted by HH at 10:46| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | SF/近未来ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月20日

【レボリューショナリー・ロード 燃え尽きるまで】My Cinema File 574

レボリューショナリーロード.jpg


原題: Revolutionary Road
2008年 アメリカ・イギリス
監督: サム・メンデス
原作: リチャード・イェーツ
出演: 
レオナルド・ディカプリオ: フランク・ウィーラー
ケイト・ウィンスレット: エイプリル・ウィーラー
キャシー・ベイツ: ヘレン・ギヴィングス夫人
キャスリーン・ハーン: ミリー・キャンベル
マイケル・シャノン: ジョン・ギヴィングス

<STORY>********************************************************************************************************
1950年代のアメリカ、コネチカット州。フランクとエイプリルのウィーラー夫妻は、閑静な住宅街に暮らし、子供にも恵まれた理想のカップル。しかし、甘い新婚時代の暮らしも次第に色あせていく。演劇志向のエイプリルは地元の劇団の舞台に立つが、芝居の出来が悪く夫婦で口論に。一方フランクは、しがないセールスマンの仕事にやるせない不満を感じていた。そんな時エイプリルが提案する。「みんなで、パリで暮らしましょう」と…
********************************************************************************************************

レオナルド・ディカプリオとケイト・ウィンスレットと言えば「タイタニック」。その二人が「タイタニック」以来の共演と言う事で随分と盛り上がった映画である。そうしたイメージの延長には当然、恋愛映画という連想が成り立つ。ところが、そうした連想を打ち砕くシリアスな人間ドラマである。

時は1950年代。第2次大戦で疲弊した欧州各国を尻目に、アメリカが我が世の春を謳歌していた時代。フランクとエイプリルの二人は二人の子供にも恵まれ、平均的なサラリーマンとして中の上とも言える生活を送っている。「レボリューショナリーロード」に面した住宅街はちょっとした憧れの的。「大工や左官工が住む地域を抜けると」、と不動産屋が誇らしげに勧めた地域である。

しかしながらフランクは通勤電車に揺られてのしがないセールスマン生活に、どこかうんざりしている。エイプリルは役者を夢見ているが、地元の劇団での活動はぱっとしない。「人生これでいいのだろうか」と思うも、だからといって代わりに目指すものがあるわけでもない。世間からみれば十分恵まれた生活を送っているのだが、当人たちにしてみればそうでもない。何だか現代の我々にも当てはまりそうな状況である。

そんな二人が現状を打破しようと試みる。パリに移住してエイプリルが国際機関で高級の秘書として働き、フランクは自分に合った仕事を探すという計画。周りも観ているこちらも夢物語のような計画に唖然とする。しかし計画実現を前にして次の難題が持ち上がってくる。無理やり計画を実行するか、堅実な現実路線を行くか。そうこうするうちに二人の間に微妙な温度差が生じてくる・・・

恋愛ドラマどころか、シリアスな人間ドラマ。ディカプリオもケイト・ウィンスレットも甘い夫婦関係どころか、苦悩する夫婦として正面からぶつかり合う。互いに秘めた思いを精神を患う知人がずけずけと言い当て、それがまた諍いの元となる。

途中で出てくる精神病の知人。極めて合理的なものの考え方をするのだが、「人間関係」においてはどこかが壊れている。しかし、一見「幸せな家庭」の結末を見ると何が正常で何が異常なのか、判別は難しい。我々の日常生活にもすぐ隣接しているようなちょっとした怖さがある。華やかな恋愛ドラマとはかけ離れた、実に濃厚な人間ドラマである・・・


評価:★★★☆☆
 






    
posted by HH at 18:40| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月19日

【ストリート・ファイター/ザ・レジェンド・オブ・チュンリー】My Cinema File 573

ストリートファイター.jpg
 
原題: Street Fighter: The Legend of Chun-Li
2009年 アメリカ
監督: アンジェイ・バートコウィアク
出演: 
クリスティン・クルック: 春麗(チュンリー)
ロビン・ショウ: ゲン
クリス・クライン: チャーリー・ナッシュ
エドムンド・チェン: シアン
ムーン・ブラッドグッド: マヤ・スニー
ニール・マクドノー: ベガ

<STORY>********************************************************************************************************
中国の豪邸に父母と暮らし幸せな日々を送っていた少女・春麗(チュンリー)。しかしある夜、裏組織シャドルーを牛耳るベガとその部下バイソンに父が連れ去られてしまった。その後大人になりピアニストとして活躍していた春麗の元に、謎の絵巻物が届く。それが行方不明の父の手がかりだと考えた彼女は巻物に書かれた言葉に従い、元と名乗る男を捜すためバンコクへと向かうのだが……
********************************************************************************************************

ストリート・ファイターと聞くと、やった事のない私ですらゲームの名前を連想してしまうが、それくらい大ヒットした対戦型のゲームがある。この映画はそのゲームの登場キャラを映画化したものであるらしい。

ゲーム自体には8人のキャラがあって、プレーヤーはその中から好きなキャラを選ぶらしい。中国人の若い女性である春麗(チュンリー)は、中でも人気キャラであるらしい(らしいばかりで、ゲーム事情に疎いことがばれてしまう)。映画自体もゲームをどうやら意識していて、バイソン、バルログ、ベカといった敵役の登場人物もすべてゲームのキャラクターのようである。

こうした前提条件が整うと、ストーリーは自ずから決まってくる。主人公が悪の手によって悲劇に見舞われ、復讐を誓う。厳しい修行をして実力を磨く。悪に立ち向かい、苦戦の末これを倒す。「スターウォーズ」から始って、こうした映画にはお決まりの王道ストーリーである。これに人間ドラマがどのように織り込まれ、スパイスされるかでその映画の出来が決まるというもの。この映画はその点からいくと今一歩といったところであった。

美形の主人公自体は問題ないし、格闘シーンもそれなりなのであるが、どうにも荒削りという感が否めない。ベガが送りこんできたバルログは、上映時間に限りがあったためかあっさりやられてしまうし、最後で登場するベガが格闘家であるなんてゲームをやらない人間にはわからない。突然凄腕の技を披露されても戸惑ってしまう。

まあそれでも短い時間でちょっと楽しめる映画である事は間違いない。ストーリーもシンプルだし、展開も王道パターンで安心して観ていられる。それにしてもゲームに題材を求めるのはもうすっかり珍しい事ではなくなってきた。これまで観た中でも、
「サイレントヒル」
「DOOMドゥーム」
「DOAデッド・オア・アライブ」
「バイオハザード」シリーズ
「ブラッドレイン」
「ヒットマン」
と数々ある。

ゲームのクリエーターも立派な脚本家ということであろうか。そんなことを思わせてくれる一作である・・・


評価:★★☆☆☆


     





posted by HH at 22:21| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | アクション | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする