
2007年 日本
監督: 松岡錠司
原作: リリー・フランキー
脚本: 松尾スズキ
出演:
オダギリジョー: ボク
樹木希林: オカン
内田也哉子: 若い頃のオカン
松たか子: ミズエ
小林薫: オトン
<STORY>********************************************************************************************************
1960年代。3歳のボクは、遊び人のオトンを捨てたオカンに連れられ、小倉から筑豊のオカンの実家に戻ってきた。オカンは女手ひとつでボクを育てた。オカンの作る美味しいご飯を食べて、ボクは成長した。15歳になって、ボクはこの町を出て行きたくなった。大分の美術高校に入学し、東京の美大をなんとか卒業するが、仕事もせずに、仕送りしてもらい、更に借金を重ねていた。そんな中、オカンが癌に侵されていることが分かった・・・
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この原作本が話題となるまで、リリー・フランキーなる人物の事はまったく知らなかった。しかし、ほぼ同世代でしかも実は結構あちこちで活躍していた方のようである。作詞作曲からDJ、イラストレーター、絵本・小説作家等々ととても多才なようである。そんな著書が自らの母親を中心に語った自伝がこの映画である。
全編を通して流れるのは母親に対する深い愛情である。3歳の頃の両親の思い出から始り、母親の死までのストーリー。1960年代の小倉や筑豊の町並みは、うまく再現されている。「AALWAYS三丁目の夕日」以来、そういった映像には驚かないが、それでもやっぱり映画ならではの映像表現を満喫する。
遊び呆ける学生時代。酒にたばこに女にマージャンの日々。卒業だってできるわけなく、当然のように留年。オカンは一人で働きながら仕送りをする。親不孝この上ない学生時代。おまけに祖母の葬式も、送ってもらった交通費を使い込んで帰らずじまい。
そんな彼もとうとう目が覚める。今までの分を取り返すべく働く。切なくなるのは母親の想いだ。息子の大学の卒業証書を後生大事にしている。後々に入院した時は病室まで持ってきてもらう有り様だ。
夫と別居し、出戻りで居心地が悪かったであろう中、一人働いて息子を学校にやる。高校・大学と8年間だ。息子が卒業した時、自分がやり遂げた証と映ったに違いない。「貯金なんてないよ、みんなこれ(卒業証書)につぎ込んだもの」と語るオカンはあっけらかんとしつつもとても誇らしげ。そんな母の心が胸に染みわたる。
彼女にもオカンの話をするボクは、一歩間違うとマザコンだ。だが、互いに思い思われる母子の姿にしみじみとするものがある。男はどちらかと言うと親とはあまりベタベタしないものである。だが、そんなのはどこ吹く風とばかり、母親と暮らすボクは実はとても自分に正直に生きているのかもしれない。
自分と親との関係をちょっと見直してみたくなった。オダギリ・ジョーも樹希希林も良い味出している。観て損はない心揺さぶられる映画である・・・
評価:★★★☆☆