
原題: Goodbye Bafana
2007年 フランス=ドイツ=ベルギー=南アフリカ
監督: ビレ・アウグスト
出演
ジョセフ・ファインズ: ジェイムズ・グレゴリー
デニス・ヘイスバード: ネルソン・マンデラ
ダイアン・クルーガー: グロリア・グレゴリー
<STORY>********************************************************************************************************
南アフリカで刑務所の看守として働くジェームズ・グレゴリーがロベン島の刑務所に赴任した1968年、アパルトヘイト政策により、反政府運動の活動家の黒人が日々逮捕され、投獄されていた。グレゴリーはそこでネルソン・マンデラの担当に抜擢される。黒人の言葉・コーサ語が解るので、会話をスパイするためだ。妻のグロリアは夫の出世を喜び、順風満帆のようだった。だがマンデラに初めて会った時から、グレゴリーは特別な印象を抱き始める・・・
********************************************************************************************************
タイトルにある通り、これは元南アフリカ大統領ネルソン・マンデラが、投獄されていた時に看守だったジェームズ・グレゴリーの手記を映画化したものである。
アパルトヘイト廃止後の南アフリカに焦点を当てた「レッドダスト」、27年間の投獄生活を経て自由の身となり、さらに大統領となったネルソン・マンデラとラグビーチームを描いた「インビクタス/負けざるものたち」。今年に入って何だか南アフリカ付いているような気もするが、言ってみればその第3弾とも言える。
今回は投獄中のネルソン・マンデラの看守ジェームズ・グレゴリーにスポットを当てているところが興味深い(まあ本人の手記であるから当然なのであるが・・・)。マンデラの自伝である「自由への長い道」を読むと、グレゴリー氏の事はちょっとだけ出てくる。もしかしたらグレゴリー氏が思うほどマンデラは彼の事をあまり意識していなかったのではないかと思ってしまう。
手記の方は読んでいないからなんとも言えない。ただ、冒頭でマンデラをテロリストと信じて厳しい目つきで見ていたグレゴリーが、やがてマンデラの言動に惹きつけられていく様子は、あんまりはっきり描かれていない。それゆえにマンデラに影響されていく様子が何か唐突なものに感じてしまう。広場で運動のため歩かされているマンデラに、グレゴリーが寄り添って歩きながら話しかけるシーンがある。たちまちグレゴリーは注意を受ける。そんな状況下でなぜ、マンデラの言動に惹かれていくのか、映画を見ているだけではわかりにくい。それに「自由への長い道」を読んでいたからこそ、展開についていけたところがあったが、読んでない人には果たしてどうだったのだろうかという疑問は残った。
マンデラは終身刑であったとはいえ、刑務所で虐待されていたわけではなく、むしろ自身弁護士として様々な権利の申し立てをしていた。のちに国内情勢、国際的批判の中でマンデラがロベン島の刑務所から本土の刑務所に移されていくが、その背景も映画ではよくわからない。
もう少し丁寧に描かれていれば多少は感動的になったのかもしれない。街中で白人警官が、黒人たちにIDの提示を求めるシーンがある。提示できない者は片っ端から投獄される。赤ん坊を抱いた母親に対してでさえ容赦はなく、それを目撃したグレゴリーの娘はショックを受ける。そうしたアパルトヘイトの現実がもう少し見たかった気もする。
何度も辞めようとして慰留されるグレゴリー。コーサ語が話せるという特技が彼を体制が必要とする人間たらしめたようである。原題のBafanaとは彼が幼少時に一緒に遊んでいた黒人の子供の名前。彼が「名もなき看守」だったのかどうか。原題・邦題とも何だかしっくりこない映画である・・・
評価:★★☆☆☆