2010年09月27日

マンデラの名もなき看守

マンデラの名もなき看守.jpg

原題: Goodbye Bafana
2007年 フランス=ドイツ=ベルギー=南アフリカ
監督: ビレ・アウグスト
出演 :  ジョセフ・ファインズ/デニス・ヘイスバード/ダイアン・クルーガー

<STORY>********************************************************************************************************
南アフリカで刑務所の看守として働くジェームズ・グレゴリーがロベン島の刑務所に赴任した1968年、アパルトヘイト政策により、反政府運動の活動家の黒人が日々逮捕され、投獄されていた。
グレゴリーはそこでネルソン・マンデラの担当に抜擢される。
黒人の言葉・コーサ語が解るので、会話をスパイするためだ。
妻のグロリアは夫の出世を喜び、順風満帆のようだった。
だがマンデラに初めて会った時から、グレゴリーは特別な印象を抱き始める・・・
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タイトルにある通り、これは元南アフリカ大統領ネルソン・マンデラが、投獄されていた時に看守だったジェームズ・グレゴリーの手記を映画化したものである。

アパルトヘイト廃止後の南アフリカに焦点を当てた「レッドダスト」、27年間の投獄生活を経て自由の身となり、さらに大統領となったネルソン・マンデラとラグビーチームを描いた「インビクタス/負けざるものたち」
今年に入って何だか南アフリカ付いているような気もするが、言ってみればその第3弾とも言える。

今回は投獄中のネルソン・マンデラの看守ジェームズ・グレゴリーにスポットを当てているところが興味深い。
(まあ本人の手記であるから当然なのであるが・・・)
マンデラの自伝である「自由への長い道」を読むと、グレゴリー氏の事はちょっとだけ出てくる。
もしかしたらグレゴリー氏が思うほどマンデラは彼の事をあまり意識していなかったのではないかと思ってしまう。

手記の方は読んでいないからなんとも言えない。
ただ、冒頭でマンデラをテロリストと信じて厳しい目つきで見ていたグレゴリーが、やがてマンデラの言動に惹きつけられていく様子は、あんまりはっきり描かれていない。
それゆえにマンデラに影響されていく様子が何か唐突なものに感じてしまう。
広場で運動のため歩かされているマンデラに、グレゴリーが寄り添って歩きながら話しかけるシーンがある。
たちまちグレゴリーは注意を受ける。
そんな状況下でなぜ、マンデラの言動に惹かれていくのか、映画を見ているだけではわかりにくい。
それに「自由への長い道」を読んでいたからこそ、展開についていけたところがあったが、読んでない人には果たしてどうだったのだろうかという疑問は残った。

マンデラは終身刑であったとはいえ、刑務所で虐待されていたわけではなく、むしろ自身弁護士として様々な権利の申し立てをしていた。
のちに国内情勢、国際的批判の中でマンデラがロベン島の刑務所から本土の刑務所に移されていくが、その背景も映画ではよくわからない。

もう少し丁寧に描かれていれば多少は感動的になったのかもしれない。
街中で白人警官が、黒人たちにIDの提示を求めるシーンがある。
提示できない者は片っ端から投獄される。
赤ん坊を抱いた母親に対してでさえ容赦はなく、それを目撃したグレゴリーの娘はショックを受ける。
そうしたアパルトヘイトの現実がもう少し見たかった気もする。

何度も辞めようとして慰留されるグレゴリー。
コーサ語が話せるという特技が彼を体制が必要とする人間たらしめたようである。
原題のBafanaとは彼が幼少時に一緒に遊んでいた黒人の子供の名前。
彼が「名もなき看守」だったのかどうか。
原題・邦題とも何だかしっくりこない映画である・・・


評価:★★☆☆☆

     
posted by HH at 23:13 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年09月26日

劔岳 点の記 

劔岳 点の記.jpg

2009年 日本
監督: 監督・撮影 : 木村大作
原作 : 新田次郎
出演 : 浅野忠信/香川照之/宮崎あおい/小澤征悦/井川比佐志/國村隼/夏八木勲/松田龍平/仲村トオル/役所広司

<STORY>********************************************************************************************************
明治40年、地図の測量手として、実績を上げていた柴崎芳太郎は、突然、陸軍参謀本部から呼び出される。
「日本地図最後の空白地点、劔岳の頂点を目指せ」―当時、ほとんどの山は陸地測量部によって初登頂されてきたが、未だに登頂されていないのは劔岳だけだった。
柴崎らは山の案内人、宇治長次郎や助手の生田信らと頂への登り口を探す。
その頃、創立間もない日本山岳会の会員も剱岳の登頂を計画していた・・・
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登山どころかハイキングでさえあまり好きでない私ゆえ、剱岳がどんなところかなどまったくの知識もなかった。
そんな私にも剣岳がどんな山かよくわかるのがこの映画である。
そしてさらにこれは実話がベースとなっており、知られざる日本の山岳史、測量史を知るという意味でも良い映画であった。

物語は明治40年。
日露戦争直後の日本。
それまでに日本の各地はほとんど測量されつくしていたが、唯一測量されていなかったのが剱岳であった。

険しいゆえに前人未到と言われていたが、陸軍は軍の威信をかけて初登頂と測量機の設置を測量手柴崎芳太郎に依頼する。
一方、外国の登山技術を取り入れ、独自に初登頂を目指す日本山岳会。
自然と初登頂を競う雰囲気が醸し出されていく。

柴崎は伝手を辿って山の案内人宇治長次郎と出会い、登頂の下見をするが、ただでさえ登頂困難なところに、測量機器を運びあげるという難題も抱え柴崎は気乗りしない。
しかしながら威信をかける陸軍が弱腰を許すはずもなく、柴崎は渋々登頂の準備を進める。
日本山岳会の面々も最新設備で登頂を目指し、競争を煽る新聞記者が柴崎らにまとわりつく。

近代装備もない時代。
案内人とともに登頂ルートを求めてさまよう柴崎。
何のために上るのか、地図作りとはいったい何なのかを自問する。
なるほど当時の陸軍らしい様子と一途に目的に向かう男の姿。
最後の結末は見事なまでに呆気なかった。
もう少し盛り立てても良かった気もする。

明治の気骨溢れる男たちの物語としても堪能できる一作である。



評価:★★☆☆☆
    
  
posted by HH at 21:51 | 東京 🌁 | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年09月23日

ワルキューレ

ワルキューレ.jpg

原題: Valkyrie
2008年 アメリカ=ドイツ
監督:  ブライアン・シンガー
出演:  トム・クルーズ/ケネス・ブラナー/ビル・ナイ/トム・ウィルキンソン/カリス・ファン・ハウテン

<STORY>********************************************************************************************************
第二次世界大戦下のドイツ。
アフリカ戦線で左目を負傷したシュタウフェンベルク大佐は、“良心”と“忠誠心”の葛藤に悩んだ末、祖国の平和のためにヒトラー暗殺を考えるようになる。
やがて画期的な暗殺計画≪ワルキューレ作戦≫を立案し、トレスコウ少将やオルブリヒト将軍ら、同志と着々と準備を進めていく―。
そして、決行の1944年7月20日を迎えた。
ヒトラーとその護衛たちを前に、大佐たちは計画を成功させられるのか…。
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第2次世界大戦下、西のノルマンディーには連合軍が上陸し、東ではソ連軍の反撃で青息吐息となり、敗色濃厚となったドイツ。
戦争を続行するヒトラーに対し、祖国を壊滅から救うため一部の将校たちが暗殺計画を立てる。
実はヒトラーに対する暗殺計画は開戦前から実に42回もあったのだという。
これはその中でも最大規模の「ワルキューレ作戦」を描いた映画である。

ヒトラーは1945年4月、連合軍が東西から迫りくるベルリンで自殺した。
つまり暗殺計画は失敗しているわけである。
そうした動かせない歴史がある以上、結末のわかっているドラマを観る事になる。
しかしながらこの映画、それでも面白かった。

まず史実にかなり忠実に作られているらしいから、何があったのかを知るという面白さがある。
事実、作戦は素人的にもかなりよくできていると思う。
暗殺が成功した後、SS(親衛隊)の動きも抑えるように準備していたとは知らなかったが、ヒトラー暗殺だけですべてがうまく行くとは考えていなかったわけである。
そしてこのベルリン鎮圧こそが、もともと有事に備えて作成されていたワルキューレ作戦を利用するもので、映画のタイトルにもなっている。

中心となったのはシュタウフェンベルク大佐。
これをトム・クルーズが演じる。
戦場で右手と左手の指2本と左目を失う。
もし右手が残っていれば、ヒトラー暗殺に成功していたかもしれない事も小説よりも奇なりだ。
(2つ用意するはずの爆弾を1つしか用意できなかった)

ベルリンに戻ったあと、作戦を指示し次々と首都の機能を抑えていく。
緊張感と高揚感がヒシヒシと伝わってくる。
スリリングな展開は盛り上がりを見せる。
しかし、ヒトラーは悪運強く生き残り、事態は収束に向かう。
1つだった爆弾の入った鞄は、たまたま位置を変えられた事により、ヒトラーは爆風の直撃を避けられたのである。

多数の登場人物たちが錯綜するが、彼らが保身に走る様子も興味深い。
みなヒトラーに対する忠誠と作戦支持との間でどちらをとるか苦悩するのである。
ヒトラーに対する忠誠は恐怖の裏返し。
作戦が失敗すれば忠誠を誓った自分はそのまま安泰だ。
作戦が成功すれば、ヒトラー派とみなされその後の出世もない。
人生はいつだってあらゆるところでこうした決断を迫られる。

娯楽としても、そして知られざる歴史に対する興味を満たしてくれる意味でも面白い映画である・・・


評価:★★★☆☆
 
   
posted by HH at 12:09 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(0) | 歴史ドラマ

2010年09月21日

幻影師アイゼンハイム

幻影師アイゼンハイム.jpg

原題: The Illusionist
2006年 アメリカ=チェコ
監督・脚本 : ニール・バーガー
原作 : スティーヴン・ミルハウザー
出演 : エドワード・ノートン/ポール・ジアマッティ/ジェシカ・ビール/ルーファス・シーウェル

<STORY>********************************************************************************************************
19世紀末ウィーン。
ハプスブルク帝国末期の芸術文化の都では、大掛かりな奇術=イリュージョンが一世を風靡していた。
中でも絶大な人気を誇っていたのは、アイゼンハイムという名の幻影師。
ある日彼は舞台の上で、幼なじみのソフィと再会する。
今では、皇太子の婚約者として注目を集める彼女は、その後ほどなく皇太子邸で謎の死を遂げてしまう。
謀殺の噂も沸き立つ一大スキャンダルのさ中、アイゼンハイムはソフィの幻影を蘇らせる前代未聞のイリュージョンを発表するのだが…。
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何もない箱からハトを取りだしたり、選んだトランプのカードを言い当てたりする手品は、だれもがやってみたいと思うだろう。
合コンでやれば女の子にも受けるに違いない。
そうした手品がいつ頃から行われていたのかはわからない。
この映画は19世紀のウィーンが舞台であるが、この頃にはこんな興行が実際に行われていのだろうかと、映画には関係ないところで思ったりした。

ストーリーは一人の幻影師が主人公。
マジシャンなのであるが、最後は死者の姿を人々に見せるという業を披露するからタイトルのIllusionist(幻影師)となったのであろう。
その幻影は映画だからそれなりに見られるが、19世紀の世界ではどんなネタがあって可能なのだろうとちょっと考えてしまう。

幻影師がその幻影を使って何をするのだろうかと思っていたら、その昔身分違いで諦めた恋を成就させようとしたもの。
要は恋愛映画と言える。
幻影師ゆえに奇抜な幻影で世間をあっと言わせるようなイメージがあったのだが、ちょっとイメージとは違う映画であった。

最後はあまりにも出来過ぎた感がある。
下手な幻影よりも舞台で見せた鏡を使ったマジックの方が面白かった。
舞台に上がってもらった素人さんに鏡の前でお辞儀をしてもらうのだが、鏡に映ったその人はお辞儀をしない。
驚いて振り向いても誰もいないし、すると人物が現れて剣を振りかざす。
実際にそんなマジックがあるのだろうか、あったら面白いだろうとストーリーとは関係のないところで関心した。

ストーリーの方は残念だったというのがオチだ。



評価:★★☆☆☆
    
   
posted by HH at 22:43 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2010年09月20日

パッセンジャーズ

パッセンジャーズ.jpg

原題: Passengers
2008年 アメリカ
監督: ロドリゴ・ガルシア
出演: アン・ハサウェイ/パトリック・ウィルソン/デヴィッド・モース/アンドレ・ブラウアー/クレア・デュバル

<STORY>********************************************************************************************************
セラピストのクレアは、飛行機事故で奇跡的に生き残った5人の乗客の、トラウマ的なストレスを治療する役割を突然命じられる。
彼女は生存者たちの記憶から浮かび上がる数々の謎を解き明かそうとする。
だが、患者たちは自分たちの記憶と航空会社の公式説明の食い違いに悩み、自分たちの記憶も曖昧になってくる。
やがて、事故の核心に近づくたびに患者たちが次々と失踪しはじめ、彼女の周辺でも不可解なことが続発し始める。
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「パッセンジャーズ(乗客)」というタイトルからして何やら「乗客」に関してなんだろうと考えていた。
確かに映画が始ると飛行機が墜落。
数名の「乗客」が生存者となる。
しかし主人公のクレア(アン・ハサウェイ)は「乗客」ではないし、ストーリーも生存者たちのセラピーを担当するクレアが何やらきな臭い陰謀めいた事に巻き込まれていくというもの。
「乗客」というタイトルがちょっとピントはずれしていると感じる。
しかし、それはラストのどんでん返しで見事ひっくり返される事になる。

クレアは精神科医で、飛行機事故の生存者に対するセラピーを依頼される。
担当患者は5人。
4人はグループで、そして一人エリックだけは自宅で治療にあたる事になる。
そうしたセラピーと並行して事故原因に対する疑惑が持ち上がる。
航空会社が事故原因を隠蔽しているのではないかという疑惑である。
4人の患者が次々と姿を消すため、隠蔽に対する疑惑が深まっていく。

ストーリーを追いながら思う事は、「アン・ハサウェイって美人だな」という事である。
綺麗に整った顔立ちに華奢なスタイル。
「アリス・イン・ワンダーランド」では妙にねじが外れたような白の女王を演じていて、これはユニークだったが、個人的には「プラダを着た悪魔」で、前向きなビジネス・パーソンの役柄が良かった。
ここでは仕事熱心なセラピストとして登場するが、仕事に一生懸命な役柄はイメージに合っている気がする。

すべては最後のどんでん返しに集約されるのであるが、まったく違う方向へ向かっていたストーリーを見事ひっくり返してくれて、なかなかやるなぁという感じの映画だ。
アン・ハサウェイを見つめていてもよいし、ストーリーを追ってもよいという映画だ。
ただ観終わって思うのだ。
「他の乗客はどうだったのだろう」と。

たぶん同じようなドラマが並行してあったに違いないし、そんな想像をしてみるのもまた映画の楽しみでもある・・・


評価:★★☆☆☆


     
posted by HH at 11:17 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | サスペンス