2010年10月31日

【天使と悪魔】My Cinema File 624

天使と悪魔.jpg

原題: Angels & Demons
2009年 アメリカ
監督: ロン・ハワード
原作: ダン・ブラウン
出演: 
トム・ハンクス: ロバート・ラングドン
ユアン・マクレガー: パトリック・マッケンナ(カメルレンゴ)
アイェレット・ゾラー: ヴィットリア・ヴェトラ
ステラン・スカルスガルド: リヒター
ピエルフランチェスコ・ファヴィーノ: オリヴェッティ

<STORY>********************************************************************************************************
ヴァチカンの教皇が逝去した。新たな教皇を決めるコンクラーベ(教皇選挙)を前に、有力な候補である4人の枢機卿が誘拐される。その陰には、かつてガリレオを中心とした科学者たちによる秘密組織イルミナティの姿があった。科学を信仰するイルミナティは、宗教を第一義とするヴァチカンからの弾圧によって消滅を余儀なくされた組織だった。しかし彼らの残党は、科学の先端技術によって欧州原子核研究機構が生成することに成功し驚異的な破壊力を持つ「反物質」も盗み出して、ヴァチカン全体の破壊をも計画していた。ヴァチカンからの使者の依頼を受けて、ハーバート大学の宗教象徴学者であるロバート・ラングドン教授はローマへと向かう・・・
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「ダ・ヴィンチ・コード」に続いて映画化されたダン・ブラウンのベストセラー「天使と悪魔」の映画化作品である。小説が圧倒的な面白さを持っていたため、映画化してもどうだろうか、という危惧があったのは確かだが、観終わってみるとそれは杞憂であった。

小説を映画化すると、どうしても時間の制限というものが出てくる。小説版の「天使と悪魔」の世界は、とてもではないが2時間では収まらない。ただカットし過ぎてダイジェスト版になってしまったら面白くない。そんな難しさをこの映画ではよく克服したと思う。

もちろん省いている部分は多い。反物質を生み出したセレン研究所についてはほとんどカットされていたし、4つの教会の説明も最小限だった。
教会とその対立する組織であるイルミナティとの関わりもかなり省かれていたようだ。個人的には小説版の方が比較にならないくらい面白いと思うが、時間の制約がある以上こうした変更はやむをえないだろう。

一方映画には映画としての良さがある。小説では想像力が頼みだが、映画ではビジュアルに楽しめる。バチカンの街の様子、教会などは想像力だけでは限界がある。見てわかるわかりやすさというものは映画の特徴だ。

ストーリーは至極単純。教皇の死にあたり、次の教皇を選ぶ選挙であるコンクラーベが行われる。そしてその時を狙ったように教皇庁にしかけられた強力な破壊力を持つ反物質。そして教皇候補4人が誘拐され、1時間ごとに一人ずつ殺害するという予告が届く。手掛かりとして残されたアンビグラムの紋章。専門家であるロバート・ラングドンに協力が要請される。

レオナルド・ダ・ヴィンチの本を手掛かりに、殺害される予定の4つの教会を推測し、殺害を阻止すべく追いかけて行くラングドン教授と警察。一方で反物質のありかも探さねばならない。時間が刻一刻と迫る中で、歴史をヒントに謎解きと犯人追跡に観る者も参加する事になる。

主役のラングドン教授は、前回に続いてトム・ハンクス。そしてもう一人の重要人物カメルレンゴ役が、ユアン・マクレガー。こういう真面目な人物像からアクションモノ(スターウォーズ・シリーズ)まで多彩にこなす。出演作には外れは少ない俳優で、けっこう個人的には好きである。

映画は映画と考えれば十分に楽しめる。ベストセラー原作の映画化成功例と言える一作である・・・


評価:★★★☆☆



    


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2010年10月30日

【バビロンA.D.】My Cinema File 623

バビロンAD.jpg

原題: BABYLON A.D.
2008年 アメリカ
監督・脚本: マチュー・カソヴィッツ
出演: 
ヴィン・ディーゼル: トーロップ
ミシェル・ヨー: シスター・レベッカ
メラニー・ティエリー: オーロラ
ジェラール・ドパルデュー: ゴルスキー
シャーロット・ランプリング: ノーライト派教主
マーク・ストロング: フィン
ジェロム・レ・バンナ

<STORY>********************************************************************************************************
放射能汚染地帯が点在する近未来。
新セルビアに住む傭兵のトーロップはマフィアのゴルスキーから、オーロラという少女をアメリカへと運ぶ仕事を請けた。
早速彼はオーロラ、彼女の保護者シスター・レベッカと共に移動を開始。
ロシア国境の街へたどりつき市場で必要な物資を購入していると、突然オーロラが「そっちへ行っては駄目!」とパニックを起こす。
すると次の瞬間、彼女の示した場所が大爆発を起こすのだった……。
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映画のエンドロールが流れ始めた瞬間、我が目を疑ってしまった。
「まだ途中じゃないか」と。
それともこれは2部作の第1部で、このあと第2部が公開されるのだろうかとも思った。だが、そんな形跡は見られない。となると本当にこれで完結した一つの映画なのだろうか。たぶん、この映画を観た人は同じような感想を持つはずだ。

舞台は近未来。新セルビアとされている紛争地帯と思しき街でストーリーは始る。主人公のトーロップがマフィアのゴルスキーから一人の少女をアメリカに送るように依頼される。用意された地図を広げ、地図を指でさわると地図が拡大されたり移動して表示されたりする。そこで初めてこれは近未来の映画だとわかる(もっともiPadの登場でこれも夢の技術ではないが・・・)。

アメリカへの旅に出たトーロップと少女とお守りのシスター。少女には不思議な能力があり、その能力で3人は間一髪爆死を免れる。彼らを追う謎のグループ。3人は表や裏のルートを使いカナダ経由でアメリカはNYへ向かう。そして彼らを待ち受けていた2つのグループ。

ここまでは非常にいい感じでストーリーは進む。 ヴィン・ディーゼルもいいし、ゲスト出演的に登場したK−1のジェロム・レバンナとの格闘シーンもサービスマインド溢れていて気に入った。潜水艦に乗ったり、スノーモービルで雪原を渡ったりと見所も多い。

そしていよいよ黒幕登場。少女に隠された謎と事件の全貌がいよいよ明らかにされる。とそこで映画は終わってしまう。絶句・・・
で一体何だったの?という疑問だけが残る。

作り手の意図はわからない。たぶんいろいろな意図があったのだろう。ただ観る者に伝わらなければ意味がない。謎を謎のまま終わらせたのは事実だし、黒幕も健在だし、少女が残したものはそのままだし、事件はまだ終わっていないのである。尻切れトンボのラストだけが残念な映画である・・・


評価:★★☆☆☆


   



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2010年10月25日

【キルショット】My Cinema File 622

キルショット.jpg

原題: KILLSHOT
2008年 アメリカ
監督: ジョン・マッデン
出演: 
ミッキー・ローク: アーマンド・“ブラックバード”・デガス
ダイアン・レイン: カーメン・コルソン
トーマス・ジェーン: ウェイン・コルソン
ジョセフ・ゴードン=レヴィット: リッチー・ニックス
ロザリオ・ドーソン: ドナ

<STORY>********************************************************************************************************
冷静沈着な殺し屋アーマンドとアメリカ全州で銀行を襲うことが念願のリッチーは、ある不動産屋から金を脅し取る計画を立てる。その不動産屋に勤務するカーメンは、鉄骨工の夫とオフィスにいる時に、恐喝しに来たアーマンドたちと鉢合わせになるが夫がこれを追い払う。顔を見られたアーマンドたちは夫妻を殺す機会を毎日窺う。そこでカーメンたちは住居と名前を変えて生活するという政府のプログラムを受けることにするが…。
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ミッキー・ロークもかつて「ナイン・ハーフ」の頃とはすっかり様変わりし、そしてそれが定着してしまった感がある。たっぷりと体重が増えて貫禄充分である。そんなミッキー・ロークがここでは殺し屋として登場する。

マフィアからの依頼を受けて殺しを請け負う通称ブラックバード=本名アーマンドが、ひょんなことから知り合ったリッチーの恐喝に付き合う事になる。ある依頼で誤射して殺してしまった弟の面影をリッチーに見たのである。そして一方、離婚の危機にある夫婦が登場。仕事を辞めた夫が再就職のため訪れた不動産屋。妻カーメンが努めるその不動産屋で、アーマンドとリッチーと遭遇する。顔を見られたら殺す主義のアーマンドは夫婦を殺す機会を伺う事になる。

ストーリーはアーマンドたちと夫婦とそれぞれを追う形で展開していく。夫婦を狙うのがマフィアとのつながりを持つ殺し屋と判明したため、FBIが夫婦の保護に乗り出す。アーマンドはそのままリッチーと過ごしながら夫婦を狙う。

アーマンドはネイティブ・アメリカンの血を引いているという設定。弟たちもみな犯罪者。冷酷なプロの殺し屋という雰囲気が今のミッキー・ロークにはよく似合っている。アクションこそはないものの、体型といい雰囲気といい、どこかスティーブン・セガールを彷彿とさせられる。

夫婦の妻カーメンを演じるのがダイアン・レイン。なんといっても「リトル・ロマンス」の少女が懐かしいが、今ではすっかりベテラン。最近でも「ハリウッドランド」「ブラック・サイト」「ジャンパー」などでお目にかかっていたが、正直言ってこの映画のような映画にも出演するようになってしまったのか、と残念に思える。下着姿で奮闘するシーンは、それはそれで嬉しい見せ場ではあるものの、はっきり言って下着姿になる意味などなく、ただのお色気サービスでしかない。無名女優がやるような役柄にちょっとがっかりな気がする。

ストーリーはシンプルだし、時間も短い。ちょっと時間のある時に、気楽に観ようかという感じの映画である。せっかく大物俳優二人の共演なのに、もったいないと思えてしかたがない映画である・・・



評価:★★☆☆☆


    



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2010年10月24日

【ダウト −あるカトリック学校で−】My Cinema File 621

ダウト〜あるカトリック学校で〜.jpg

原題: DOUBT
2008年 アメリカ
監督・原作戯曲・脚本 : ジョン・パトリック・シャンリィ
出演: 
メリル・ストリープ: シスター・アロイシアス
フィリップ・シーモア・ホフマン: フリン神父
エイミー・アダムス: シスター・ジェイムズ

<STORY>********************************************************************************************************
1964年のニューヨーク。ブロンクスにあるカトリック学校セント・ニコラス・スクールでは、校長のシスター・アロイシスが厳格な指導を信条に日々職務を果たしていた。一方、生徒の人気を集めるフリン神父は、ストイックな因習を排し進歩的で開かれた教会を目指していた。しかし、唯一の黒人生徒ドナルドと不適切な関係にあるのではないかという疑惑が持ち上がり、シスター・アロイシスによる執拗な追及が始まるのだった…。
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この映画はもともと舞台のものらしい。それゆえなのか、俳優同士のガチンコのぶつかり合いでストーリーは進んで行く。舞台は舞台で観てみたい気にさせられる映画である。

ストーリーはあるカトリック学校で始る。校長はメリル・ストリープ演じる怖い女校長。そしてその学校が付属する教会の神父として登場するのがフィリップ・シーモア・ホフマン。教会とそれに付属するカトリック学校という日本ではあまり馴染みのない制度だ。

ここで神父に疑惑(DOUBT)が起こる。黒人生徒ドナルドとの性的関係である。疑惑の発端は、担任のシスター・ジェイムズがフリン神父がドナルドの下着を彼のロッカーに入れたのを見た事である。さらにドナルドが教会のワインを飲んでいた事がわかる。報告を受けた校長は直ちにフリン神父追及を始める。

メリル・ストリープも大迫力。その怖い姿は「プラダを着た悪魔」の編集長そのままである。そしてフィリップ・シーモア・ホフマン。黒にかぎりなく近い灰色の人物としてはうってつけ。この人が出てくるだけで疑惑(DOUBT)は深まる。

厳しい追及の手を緩めない校長と、必死に弁護するフリン神父。間で右往左往するシスター・ジェイムズ。疑惑はあるが、事を荒立てる事に不安を感じて神父を信じてしまおうとしたいシスターを演じるのは、エイミー・アダムス。シリアスな役柄なのであるが、「魔法にかけられて」での能天気なお姫様の雰囲気を十分に備えている。大ベテラン二人の間で、存在感が光る。

白か黒かと思って見ているうちに、ドナルドの母親が登場し、白でも黒でもない意見が飛び出してくる。そこでは、貧しい黒人家庭で「事情を抱えた」息子の将来を案ずる母親の切実な気持ちが露わにされる。正義は確かに必要だが、歪んだ社会の中では正義に蓋をする必要もあるのではないかと思わせられる。

校長、神父、母親3者の意見のどれに与するかは個人の考え方だとは思うが、簡単にこれと決めにくいものがある。そして最大の疑惑は疑惑として観る者の判断にゆだねられる。なるほど舞台らしい濃厚なドラマである・・・


評価:★★☆☆☆






     
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2010年10月23日

【UNエージェント】My Cinema File 620

UNエージェント.jpg

原題: Résolution 819
2008年 フランス・ポーランド・イタリア
監督: ジャコモ・バティアート
出演: 
ブノワ・マジメル: ジャック・カルヴェ
イポリット・ジラルド: アルノー・レルビエ
カロリナ・グルツカ: クララ・ゴルスカ
ケン・デュケン: トマス・カレマンス

<STORY>********************************************************************************************************
1995年7月、国連が保護する「安全地帯」に指定されていたスレブレニツァから、8,000人を超えるムスリム人(ボシュニャク人)が消息を絶った。事態を重く見た旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ICTY)はフランス人捜査官ジャックを派遣する。捜査を開始したジャックは、ラトコ・ムラディッチ率いるスルプスカ共和国軍による恐るべき戦争犯罪を知る。
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ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争を題材とした映画である。同じ題材としては、過去に「ハンティング・パーティー」を観たが、これとはまた趣向が違う。

この映画で取り上げられているのは、スレブレニツァの虐殺と言われている事件。ムラディッチ将軍が率いるスルプスカ共和国軍によるムスリム人虐殺事件である。この事件の捜査のために派遣されたのはフランス人の捜査官ジャック。映画は基本的に実話であるが、この捜査官ジャックは複数の人物を元にした架空の人物らしい。

かつて『7つの隣国、6つの共和国、5つの民族、4つの言語、3つの宗教、2つの文字により構成される1つの国』と言われたユーゴスラビアだが、チトー死後に大分裂。紛争が勃発して各地で民族浄化と言われる虐殺事件が起こる。この映画の題材となっているスレブレニツァの虐殺もその一つ。

映画の冒頭では市街地にスルプスカ共和国軍による砲撃が出てくる。国連軍が派遣されているものの、手も足も出ない、出せない。現地の指揮官による空爆要請も却下されてしまう。挙句の果てには、国連軍の目の前で住人が連れ去られてしまう。理想とは裏腹に国連の持つ機能の限界が描かれている。さらには国連軍はヘルメットや装備などを奪われ、これが後にスルプスカ軍が国連軍に扮して、ムスリム人をおびき寄せて虐殺を行うというあり様にも発展する。

映画は主人公のジャックが、懸命の捜査を通じてやがて戦争犯罪人として、ムラディチ以下の人物を逮捕していくのであるが、どうも事件の紹介という感が漂う映画である。1時間半という短さのせいか、早送りされた感じで映画は進む。日本ではほぼ無名の俳優陣は新鮮だが、それがスポットライトが俳優陣よりも事件に当っているような感じがする一因でもある。

正直言って映画の出来はともかく、このような事件が現代でも起こり続けている事に暗鬱な気分にさせられる映画である。ちなみに原題はスレブレニツァを安全地帯に指定した国連決議のことである。「こういう事件があった」ということを知るにはいいテレビドラマである・・・


評価:★★☆☆☆





     
posted by HH at 11:33| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする