2010年12月31日

【愛を読むひと】My Cinema File 645

愛を読むひと.jpg

原題: The Reader
2008年 アメリカ・ドイツ
監督: スティーヴン・ダルドリー
原作: ベルンハルト・シュリンク(『朗読者』
出演: 
ケイト・ウィンスレット: ハンナ・シュミッツ
レイフ・ファインズ: マイケル(ミヒャエル)・ベルク
デイヴィッド・クロス: 少年時代のマイケル(ミヒャエル)
レナ・オリン: ローゼ・マーター/後年のイラーナ・マーター
ブルーノ・ガンツ: ロール教授

<STORY>********************************************************************************************************
1958年のドイツ。15歳のマイケルは21歳年上のハンナとの初めての情事にのめり込む。ハンナの部屋に足繁く通い、請われるままに始めた本の朗読によって、2人の時間はいっそう濃密なものになるが、ある日、ハンナは忽然と姿を消す。1966年、大学で法律を学ぶマイケルは傍聴した法廷の被告席にハンナを見つける。裁判に通ううちに彼女が必死に隠し通してきた秘密にようやく気づき、衝撃を受けるのだった・・・
********************************************************************************************************

原作はベルンハルト・シュリンクの「朗読者」。ベストセラーという事で読んだが、あまり印象に残っていない。どうも感性が合わなかったようだが、評判通りの感動を感じる事ができなかった。そんな原作の映画版。原作の印象が薄かったせいか、特に違和感を感じることなく観る事ができた。

戦争が終わって13年後のドイツ。15歳のマイケルは気分が悪くなってあるアパートの前で吐いてしまう。アパートの住人ハンナが偶然そこに出くわし、介抱する。回復してお礼に再びアパートを訪れるマイケル。大人の女性のさり気ない色気にどきりとする。

あっという間にハンナと初体験。そうなると若いマイケルはハンナにのめり込む。アパートに通い、ハンナと情事に耽る毎日。やがてハンナに請われるまま、マイケルはハンナにいろいろな書物の朗読を始める・・・

若い男と年上の女。男からすれば、最初は年上の女性にリードしてもらうという理想的な関係。同級生の女の子がサインを送ってきても、まるで眼中に入らない。実はハンナには秘密があって、至る所にその伏線が張られていく。原作を読んでいたため、その伏線の一つ一つに気がつくが、読んでいない人にはどんな風に思えたのであろう。

突然マイケルの前から姿を消すハンナ。その理由はその秘密のゆえでもあり、年若い男といつまでもふしだらな関係を続けていてはいけないという大人の判断なのかは判然としない。マイケルは突然の喪失感に茫然とするも、やがて成長して大学生になる。

再びマイケルがハンナと再会するのは、戦争犯罪人を裁く裁判での事。被告席にそのハンナが座っている。そうしてやがてマイケルはハンナの秘密に気がつくのであるが、どうもその秘密を巡る扱いについて理解し難いところがある。日本とドイツの社会の違いなのかもしれない。

お堅い原作に沿って作られているせいか、映画も真面目な展開だ。文学作品らしさが漂う。ドイツ人が主人公なのに全編英語。あまり気にしないのかもしれない。

主演のケイト・ウィンスレットも「タイタニック」の時は初々しい女性であったが、ここでは少しくたびれかけた女性から、後半は老女まで変身。随分変わるものだと思っていたが、同時期に制作された「レボリューショナリーロード」では、まだ若さ溢れる女性として登場したから、たぶん役作りなのだろう。すっかりと演技派に変身したようである。

映画は原作と同様、これといったインパクトはない。文学作品らしい良い映画だとは思うが、大げさな宣伝文句ほど感動させられるというものでもない。その原因は、マイケルとハンナの心情にどうしても同感できかねるところがあるからだと思う。そこは仕方がないところなのかもしれないと思うところである・・・


評価:★★☆☆☆
    

 



ネタばれ覚悟で続きを読む
posted by HH at 16:40| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月30日

【SPACE BATTLE SHIP ヤマト】My Cinema File 644

ヤマト2.jpg

2010年 日本
監督: 山崎貴
出演: 
木村拓哉: 古代進
黒木メイサ: 森雪
山崎努: 沖田十三
柳葉敏郎: 真田志郎
緒形直人: 島大介
西田敏行: 徳川彦左衛門

<STORY>********************************************************************************************************
西暦2199年、突如侵攻してきた謎の敵・ガミラスによって、人類はその存亡の危機に瀕していた。人類の大半は死滅し、生き残った者も地下生活を送っていた。ある日、地球へカプセルか落下してきた。それは惑星イスカンダルからの通信カプセルで、そこに行けば、放射能浄化装置があるという。人類最後の希望を乗せて、最後の宇宙戦艦“ヤマト”がイスカンダル目指して旅立つ。しかし、行く手にはガミラスの艦隊が待ち構えていた。
********************************************************************************************************

私も「宇宙戦艦ヤマト」世代であるから、アニメはきっちりと観ていた。映画版もパート1、パート2までは観た。そのあとは安易な継続に興味を失って観ずに終わっている。したがって、「実写版」となると、しかも主演がキムタクとなるとしばし観に行くのをためらった。結局、劇場まで足を運んだのは、興味が勝ったと言える。

冒頭、あの「無限に広がる大宇宙」の郷愁をそそられる曲が流れ、引き寄せられた瞬間にいきなりの戦闘シーン。ガミラスの艦隊に為す術もなく撃破される地球艦隊。古代守の乗艦「ゆきかぜ」が敵の砲火を浴びて火に包まれる。この戦闘シーンはアニメ以上の迫力。つかみはOKといったスタートだ。

結局、この現代の映像技術によって再現された数々のシーンだけで観に来た甲斐はあったと満足。放射能による汚染を逃れ、生き延びるために作られた地下都市のシーンも十分な出来栄えだ。効果音もアニメそのままで、懐かしさが胸に広がる。

アニメとの相違は登場人物。森雪は生活班から戦闘班所属に変わり、勇ましいパイロットとして登場する。のんべえの佐渡先生は女性。第一艦橋の相原も女性。アナライザーは携帯端末になっている。

いよいよイスカンダルに向けて14万8千光年の旅に出るのであるが、いかんせんこの物語は2時間の映画に短縮できるものではない。大迫力の戦闘シーンももっと見せてくれても良かったし、戦闘シーンにも劣らない人間ドラマの数々はカットされてしまって物足りなさが残る。それでも登場人物たちの名セリフはそのままで、かつての2作を観た世代には胸に蘇るものがある。

おそらく映画単体で評価したら「つまらない」という感想が出てくるかもしれない。この実写版だけで判断するとそうなるだろう。突っ込みどころは満載だ。だが、かつてアニメのパート1・2を観て胸を躍らせた世代なら、たぶんプラスアルファを感じられるに違いない。これをかつてのように30分×26話でやったら、たぶんみんな画面にくぎ付けになるに違いない。そんなドラマを観てみたいという気持ちになった。

そういう世代なら一見の価値ある映画だと思う・・・


評価:★★★☆☆

     
ヤマト3.jpg




                

             
ネタばれ覚悟で続きを読む
posted by HH at 23:36| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(7) | SF/近未来ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月27日

【いずれ絶望という名の闇】My Cinema File 643

いずれ絶望という名の闇.jpg

原題: DIAMANT 13
2009年 フランス/ベルギー/ルクセンブルク
監督: ジル・ベア
出演: 
ジェラール・ドパルデュー: マット
アーシア・アルジェント: カルーン
オリヴィエ・マルシャル: フランク
アンヌ・コエサン: マレッティ
アイサ・マイガ: ファリダ
カトリーヌ・マルシャル

<STORY>********************************************************************************************************
強引な捜査手法が問題視されて、謹慎を命ぜられるはめとなった刑事のマット。そんな彼に、相棒の麻薬捜査官フランクが、いい儲け話があると誘いをかけてくるが、マットはそれを断わる。その一方で彼は、かつての恋人でいまは女性警視にまで昇進したカルフーンから、フランクが麻薬王のラジと癒着しているとの嫌疑がかけられていることを聞かされる。そんな矢先、フランクの惨殺体が発見され、マットは独自の調査に乗り出すが……
********************************************************************************************************

ジェラール・ドパルデューと言えば大きな鼻が特徴的な個性派俳優である。かつて「シラノ・ド・ベルジュラック」を観た時には、まさにはまり役だと思った。その彼がここでは刑事として登場する。刑事と言っても、華々しいそれではない。夜中に事故現場に呼び出され、無謀運転の末事故死した若者の首の入ったビニール袋を渡されたり、自殺志願者のところに駆けつけたりと地味な仕事が続く。警察署に戻っても、同僚たちはみな似たような事件を扱っており、誰も彼も疲労の色がにじみ出ている。

ハリウッド映画がどちらかと言うと明るいのに対し、この映画はヨーロッパ映画らしいのだろうか、全体的に灰色の雲に覆われたようなどんよりとした雰囲気が漂う。退廃した雰囲気に覆い隠されているのである。

ジェラール・ドパルデューが演じる刑事マット。強盗事件の現場に駆け付け、人質を取って立てこもる犯人と相対峙し、一瞬の隙をついて犯人を射殺する。驚いた人質が議員夫人であった事から、そのやり方が大問題となり、マットは謹慎処分となる。そんな時、元相棒のフランクから儲け話を持ちかけられる。それは麻薬絡みの違法行為であった。

ここから警察と麻薬組織の暗部が浮かび上がってくる。そしてフランクの死。麻薬組織と警察の双方から追われるマット。頼りになるのは、相棒と知人の記者などごくわずか・・・

しかし、ここからどうもストーリーがよくわからなくなっていく。派手なアクションがあるわけではない。退廃的な雰囲気の中で、追いつ追われつ静かに進む。だが、一体、何がどうなっているのか、何が言いたいのか、はっきりしないままストーリーは終わる。

暗部はそのまま温存されていたし、結局下っ端が死んでそれでジ・エンドなのかいと思わず突っ込みを入れたくなる。これがEU流なのであろうか。個人ではどうにもならない巨悪の前に、マットが選んだのはなるほど、「絶望と言う名の闇」と言える道なのかもしれない。

ちょっと空気の重い映画である・・・


評価:★★☆☆☆



      




posted by HH at 00:39| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 犯罪ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月25日

【あなたは私の婿になる】My Cinema File 642

あなたは私の婿になる.jpg

原題: The Proposal
2009年 アメリカ
監督: アン・フレッチャー
出演: 
サンドラ・ブロック: マーガレット・テイト
ライアン・レイノルズ: アンドリュー・パクストン
メアリー・スティーンバージェン: グレース・パクストン
クレイグ・T・ネルソン: ジョー・パクストン
ベティ・ホワイト: アニー・パクストン

<STORY>********************************************************************************************************
ニューヨークにある出版社で書籍編集の編集長を務める40歳のマーガレット・テイトは着実にキャリアを重ねていた。しかしその合理的な働きぶりによって、部下たちからは恐れられる存在だった。ある朝、気難しくて有名な作家からインタビュー番組への出演をとりつけ、自分の意見に従わない男性社員をクビにしていたマーガレットは、会長から呼び出される。マーガレットはてっきり自分の有能ぶりを褒めちぎられるものと思い込んでいたが、思いがけない事実を知らされる。カナダ人である彼女はビザの申請を延ばし延ばしにしてきたが、ついに国外退去を命じられたのだ・・・
********************************************************************************************************

サンドラ・ブロック主演のラブコメディである。サンドラ・ブロックはシリアス系の映画も多いが、コメディ系も多い。恋愛モノも「イルマーレ」のようなシリアスなものと比較すると、どちらもそれなりに面白い。魅せる幅が広いという事なのであろうか。

この映画では徹底してライトなコメディタッチ。部下から恐れられるビジネス・ウーマン、マーガレット。合理的ドライに行動し、部下の首を切る事も厭わない。首になった部下に罵倒されても平然と対応する。そして頭の切れもよい。

そんな彼女がビザの更新手続き漏れという理由で国外退去処分となる。となれば会社にいられない。会社で築き上げてきたものが一瞬にして崩壊する。するとその場で機転を利かせ、部下のアンドリューと結婚すると言い出す。アメリカ人と結婚すれば、国外退去にならなくて済む・・・

ここまで来ると大体のストーリーは読めてしまった。最初は偽装結婚のつもりが、ドタバタの紆余曲折があってやがて本物の結婚へと変化していく。ストーリーは至極単純である。それがラブコメの良いところ。あとは途中でどれだけ盛り上げるかだ。

偽装結婚のため、アンドリューの故郷を訪ねる二人。そこで彼の家族に会い、故郷の街を歩き、友人たちと時を過ごす。今までは、便利に使っていたただの部下だった男だが、彼にもそれまでの人生があり彼を取り巻く人たちがいる。そんな事に気がついていくマーガレット。ちょっとほんわかさせられるのもラブコメの王道だ。

ハッピー・エンドも当然の結末。安心して観ていられるのもいいところ。コメディ系もそつなくこなすサンドラ・ブロックなのであるが、やっぱり「スピード」の印象は強く、個人的に言えばシリアス系の方が好きである。まだまだ出演作は増えていくだろうが、そうした作品が多ければいいなと思うのである・・・


評価:★★☆☆☆


    




posted by HH at 11:33| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | コメディ/ラブコメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年12月23日

【ザ・スピリット】My Cinema File 641

ザ・スピリット.jpg

原題: THE SPIRIT
2008年 アメリカ
監督: フランク・ミラー
出演: 
ガブリエル・マクト: スピリット
サミュエル・L・ジャクソン: オクトパス
スカーレット・ヨハンソン: シルケン・フロス
エヴァ・メンデス: サンド・サレフ
サラ・ポールソン: エレン

<STORY>********************************************************************************************************
セントラル・シティを悪から守る仮面の男、スピリット。その正体は死んだはずの元刑事デニー・コルトだ。彼は一度死んだもののなぜか墓場から甦り、死なない肉体を武器に戦い続けている。ある日連絡を受けたスピリットは闇取引の現場へと向かうと、そこには凶悪犯罪者オクトパスの姿が。また同じ現場からは宝石泥棒サンド・サレフも脱出を図っていた。スピリットはサンドが自分の初恋の相手であることを知り、彼女を探すが……。
********************************************************************************************************

すっかり珍しくなくなったアメリカン・コミック原作の映画化。さて、一体どれくらいあるのだろうと考えてしまう。映画化されるのはどれも大体同じで、超人的なヒーローが悪を退治するというものだ。そしてここで登場する正義のヒーロー・スピリットもまた然りである。

白黒のモノトーンの画面が一層悪のはびこる雰囲気を漂わせる。正義のヒーロースピリットがどんな能力を持っているのか、アメコミを観ていない者には皆目わからない。冒頭で暴漢に襲われる女性を助けるスピリット。見事暴漢を叩きのめすが、腹に突き刺さるのは暴漢の持っていたナイフ。何事もなかったかのように抜いて立ち去っていく。

悪の親玉オクトパスも登場。こちらはサミュエル・L・ジャクソンだ。となれば実に個性的。そしてスピリットとの対決。超人離れした殴り合いによって、次第に二人の能力が分かってくる。どうやら二人とも不死身なようなのである。

やがてオクトパスが追い求める秘宝が明らかになる。スピリットが若き日に別れた彼女が、再び彼の目の前に現れる。スピリットを愛する女医がいて、その父親は警察署長でいつもスピリットと反発しあいながらもともに悪に向かう。不気味なクローン兄弟と怪しい女がオクトパスに従う。

アメコミだから複雑なストーリーはない。単純明快な勧善懲悪モノ。ラストも正義の勝利に終わるものの、どうやら続編へと繋がる。まあ楽しめるには楽しめるのだが、終わってみれば、サミュエル・L・ジャクソンの個性だけが際立っていた感じがする。シリーズ化されて根強い人気を得られるかと問われれば、難しいかもしれない。早くも天井が見えている感じがすると言える映画である・・・


評価:★★☆☆☆



   
 

posted by HH at 22:53| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | スーパーヒーロー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする