2011年01月30日

レスラー

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原題: The Wrestler
2008年 アメリカ
監督: ダーレン・アロノフスキー
出演: ミッキー・ローク/マリサ・トメイ/エヴァン・レイチェル・ウッド/マーク・マーゴリス/トッド・バリー

<STORY>********************************************************************************************************
“ザ・ラム”のニックネームで知られ、かつては人気を極めたものの今では落ち目でドサ廻りの興業に出場しているレスラー、ランディは、ある日、ステロイドの副作用のために心臓発作を起こし、医者から引退を勧告されてしまう。
馴染みのストリッパー・キャシディに打ち明けると、家族に連絡するように勧められる。
長らく会ってない娘・ステファニーに会いにいくが、案の定、冷たくあしらわれてしまって…。
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主人公は往年の名レスラー、ランディ“ザ・ラム”ロビンソン。
冒頭で1980年代のランディの活躍ニュースが流される。
観衆を熱狂させ、悪役レスラー・アヤットラーとの世紀の一戦は今もファンの間で伝説となっている。
物語はそんな栄光の時代の20年後である。

既に肉体のピークは過ぎ、地方巡業でかろうじて現役を維持。
トレーラーハウスで暮らし、生活のためスーパーで働く。
それでも家賃が払えなくて、しばし家主から締め出されてしまう生活。
プロモーターから支給されるギャラも、寂しい限り。

会場に入れば、いまだにレスラー仲間からは尊敬を集める。
肘やひざに分厚くテーピングを施し、リングに向かう姿は痛々しい。
そんなレスラーを演じるのは、ミッキー・ローク。
かつては二枚目で鳴らしたミッキー・ローク。
二枚目俳優はみなそれなりにダンディに年を取るものであるが、この人の変貌は凄い。
とても「イヤー・オブ・ザ・ドラゴン」や「ナイン・ハーフ」のミッキー・ロークと同一人物とは思えない。

驚くのはプロレスラーの舞台裏を赤裸々に綴っている事。
試合前に試合展開の打ち合わせをする。
テーピングテープにカミソリを仕込み、流血を演出する。
常人離れした肉体を保つためにステロイドを始めとして、薬物を大量に摂取する。
虚像の裏の世界をリアルに描き、それが物語に厚みを加える。

試合後に心臓発作を起こして倒れるランディ。
手術によって一命は取り留めたものの、レスラーとしては再起不能の宣告を受ける。
孤独に耐えかね、長年音信不通の娘と連絡するも冷たくされる。
栄光の時代に遠征、遠征で家庭を顧みなかった事が窺い知れる。
家族のために働いていたのか、自らの栄光に酔いしれて家庭を顧みなかったのかは定かではないが、栄光と引き換えの代償は大きい。

栄光のリングで生きてきた男。
リングでしか生きられない男。
リングから離れようとしても離れられない現実。
とっくに限界を越えてしまった肉体。

一人のレスラーの生きる姿が息苦しく目に映る。
ミッキー・ロークもそんなレスラーになりきっている。
それは何だか「栄光の二枚目時代」を誇る彼自身の姿ともダブって見える。
ラストがちょっと切ないこの映画は、ミッキー・ロークそのものなのかもしれない。

見応えのある映画である・・・


評価:★★★☆☆

    
    
posted by HH at 22:13 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年01月29日

ハリー・ポッターと謎のプリンス

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原題: Harry Potter and the Half-Blood Prince
2008年 アメリカ
監督: デヴィッド・イェーツ
出演: ダニエル・ラドクリフ/エマ・ワトソン/ルパート・グリント/マイケル・ガンボン/アラン・リックマン

<STORY>********************************************************************************************************
ついに人間界にまで広がり始めた、闇の帝王ヴォルデモートの脅威。
ダンブルドア校長は、かつてホグワーツで魔法薬学を教えていたホラス・スラグホーンを復職させる。
「ホラスだけが知っているヴォルデモートの弱点を聞き出せ」とダンブルドアに命じられたハリー・ポッターは、ホラスに気に入られようと計画的に近づく。
一方、ホグワーツの校内では思春期ならではの恋わずらいが多発。
ハリー、ロン、ハーマイオニーらも恋の甘美さと苦しみを経験する。
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「ハリーポッターと炎のゴブレット」および「ハリーポッターと不死鳥の騎士団」に続くシリーズ第6弾。
映画も原作のシリーズを追いかけてどんどんと進む。

第2作以降原作を読んでいないせいか、映画のシリーズはけっこう楽しめる。
原作との違和感を感じないで済むせいもあるだろう。
ただ難点があるとしたら、前作の内容を忘れてしまう事だろう。
全体の設定とストーリーの流れくらいはわかるのだが、細かいエピソードとなると忘れてしまう。
「ハーマイオニーって、ハリーと恋仲じゃなかったっけ?」なんて思いながらこの映画を観てしまった・・・

ヴォルデモートによる脅威が大きくなってくる。
人間界にもその余波が及ぶ。
シリーズものの余裕であろうか、この物語ではヴォルデモートとの対決はまだない。
ダンブルドア校長は、かつてヴォルデモートがホグワーツの生徒であった事をハリーに教え、当時の教師であったスラグホーンを復職させた上でヴォルデモートの過去を探らせようとする。
ヴォルデモートとの対決の、いわば前哨戦にあたるシリーズである。

スラグホーンの魔法薬教室に参加を許されたハリー。
教科書を借りる事になるが、それはかつて「半血のプリンス」と名乗る者が使った教科書。
そこに書かれたメモ書きの効果は大きく、ハリーは抜群の成績を残す。
タイトルにもなっている「半血のプリンス」は、かつて優秀な生徒であった事は間違いなく、それが誰なのか、興味を引かれながら物語は進む。

一方でハリー、ハーマイオニー、ロンの間にもあれこれと恋愛がわきあがってくる。
魔法使いらしく、惚れ薬なんてのも登場し、その他にも薬を使ったエピソードもでてくる。
そうしたサイドストーリーも今回は楽しめるところである。

それにしても、こういう物語は映画化の効果も大きい。
想像のスポーツ・クィディッチの試合も、映画となれば具体的に目で見る事ができる。
数々の魔法も、現代の映像技術からすれば、リアリティに富んで目の前で展開される。
そうした「観る楽しみ」もこの映画の魅力と言える。

現在公開中の「死の秘宝」2部作でどうやらハリー・ポッターも終わりのようである。
頑張ってストーリー覚えておいて、観てみたいと思う・・・


評価:★★★☆☆

    
posted by HH at 22:55 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー

2011年01月23日

イノセンス

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2004年 日本
監督: 押井守
原作: 士郎正宗
声の出演: 大塚明夫/田中敦子/山寺宏一/大木民夫/仲野裕

<STORY>********************************************************************************************************
人間とロボットが共存し、電脳ネットワークが整備された近未来都市。
ある夜、少女型のアンドロイドが暴走し、所有者を惨殺する事件が発生する。
人間のために作られた機械がなぜ人間を襲ったのか。
内務省公安九課に所属する刑事バトーは、相棒のトグサとともに捜査を開始する。
自身が全身を義体化したサイボーグであるバトーは、捜査の過程で様々な人形=ロボットと出会い、その存在に托された意義について思いを巡らせる。
捜査を妨害するハッカーに苦しみながらも、バトーとトグサは事件の核心に迫ってゆくが…
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「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」の続編にあたるアニメ映画である。
前作「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」では、現実社会と電子社会が隣り合わせとなった世界が描かれた。
それはそのまま「マトリックス」に影響を与えた世界である。
これは観ずにはおかれない。

少女型のアンドロイドが暴走し、所有者を惨殺するという事件がおきる。
「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」では主役の草薙素子をサポートしていた刑事バトーが本作では主役となり、事件を追う。
バトーは全身がサイボーグ=義体である。
それゆえに普通の人間には真似のできない事もできたりする。
やくざの事務所に乗り込み、ほぼ壊滅させるなんて芸当も可能だったりする。

ストーリーは単純ではない。
事件を追ううちに、人間と機械=ロボットについての哲学的な思考が渦を巻く。
人間はなぜ自身に似せてロボットを作るのか。
登場人物たちは首の後ろのプラグでネットに接続し検索が可能なので、ミルトンや論語などの引用も自由自在。
哲学的な問答が、観る者を巻き込んでいく。

バトーが住む界隈は、様々な文化が混じり合った街の裏通りの雰囲気。
それは「ブレードランナー」に登場した酸性雨の降る街並みに似ている。
実写のような映像とアニメがブレンドされた映像。
それに流れるBGMが、映画の中で独特の世界を形成する。

アンドロイドの製造元である多国籍企業に乗り込んでいくバトー。
空からヘリで眺める高層ビルを「卒塔婆」と表現するが、まさにその表現通り。
文明社会も一歩離れて見ればそんな風に映るのかもしれない。

ほとんど無敵の如く人間にはできない荒っぽい事をするバトーに対し、生身の相棒トグサは及び腰。
彼には妻がいて、幼い娘もいる。
だが、ハッカーによって脳に侵入されると、その存在すらも不安の対象となる。
孤独なバトーが飼っている犬はどうやらクローンのようである。

独特の映像と哲学的な世界観とが織り成すこの映画は、もはやアニメの域を越えてしまっている。
観終わって溜息が出る数少ない映画である・・・


評価:★★★☆☆

   
   
posted by HH at 22:12 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | アニメ

2011年01月22日

真夏のオリオン

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2009年 日本
監督: 篠原哲雄
出演: 玉木宏/北川景子/堂珍嘉邦/平岡祐太/黄川田将也

<STORY>********************************************************************************************************
1945年夏、沖縄南東海域。
日本海軍所属潜水艦イ−77は米海軍の侵攻を防ぐべく、倉本艦長の指揮の下、防衛任務に就いていた。
イ−77は倉本の的確な読みによって米軍の輸送艦を撃沈。
しかし同じく防衛任務に当っていたイ−81は米海軍の駆逐艦パーシバルに葬られてしまう。
親友である有沢・イ−81艦長の最後のメッセージを受け取った倉本は、パーシバル、そして敵艦艦長スチュワートとの戦いに臨むが……。
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太平洋戦争中の旧海軍潜水艦を舞台とした映画である。
一人の若い女性が、アメリカから送られてきた一枚の楽譜を手に一人の老人を訪ねる。
今は亡き祖母の手によるその楽譜。
亡き祖父の話を聞こうと、かつての祖父の部下を訪ねた孫娘。
二人の話から物語は始る。

終戦間際の夏。
壊滅状態の帝国海軍にあって、まだ残っていた潜水艦部隊。
アメリカ輸送船団に一撃を加えるべく出撃する。
主人公となるのは艦長倉本。
同僚艦は親友の有沢が指揮を取る。

潜水艦の闘いとなると、名画「Uボート」にもあるように天敵駆逐艦との死闘が連想される。
この映画でもそれは踏襲され、米駆逐艦と倉本艦長のイ号潜水艦とが死闘を繰り広げる。
降り注ぐ機雷。
狭い艦内での息詰まる緊張感・・・
「Uボート」ではそれが見事に伝わってきたものだった。
ただ、残念ながらこの映画ではあまり感じられなかった。

その最大の欠点はリアリティの欠如だと言える。
これは、例えば「出口のない海」だとか、「俺は、君のためにこそ死ににいく」でもそうであったが、いかにも「現代の若者が演じています」という雰囲気がアリアリなのである。

時代考証にしても素人目にもちょっと違和感を感じるし、当時の人たちがこんな言動したのだろうかと気になってしまう。
例えば倉本艦長は人間業雷「回天」を、(人の命を無駄にする)もったいない兵器として最後まで使用を許可しない。
これなどもいかにも現代人の感覚だ。
あまりにも「綺麗なドラマ」になり過ぎているのである。

戦争という題材は、運命に翻弄されたり不本意な別れがあったりとドラマにしやすい要素は多々ある。
しかしそれに胡坐をかいて安易なドラマ作りをするとまるで上滑りしてしまう。
昨今の戦争モノを見ているとそんな気がしてしまう。
残念ながらこれは見事に安易なドラマであったと言わざるを得ない映画である・・・


評価:★★☆☆☆
    
  
posted by HH at 23:05 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 戦争/戦場ドラマ

2011年01月16日

アンティーク 〜西洋骨董洋菓子店〜

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英題: ANTIQUE
2008年 韓国
監督: ミン・ギュドン
原作: よしながふみ
出演: チュ・ジフン/キム・ジェウク/ユ・アイン/チェ・ジホ/アンディー・ジレ

<STORY>********************************************************************************************************
甘いものが苦手なジニョクは、「女性客が多い」という理由で洋菓子店アンティークを開く。
パティシエとなったのは、イイ腕を持ちながら恋愛絡みのトラブルが絶えない“魔性のゲイ”ソヌ。
高校時代、ジニョクが手酷く振った相手だ。
さらに元ボクサーのギボム、ジニョクに忠実に仕える幼なじみスヨンも加わり、店は軌道に乗り始める。
そんな矢先、町では子供の連続誘拐事件が発生。
次第に、ジニョクの幼い頃の悲しい記憶が甦る…。
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原作は日本の漫画「西洋骨董洋菓子店」だという。
そして日本でもテレビドラマ化されたらしい。
だが、いずれも知らないのでまったく白紙の状態でこの映画に臨んだ。

主人公のジニョクは、自分自身甘いものが苦手でケーキを食べると吐いてしまう。
なのに自らキャリアを振って洋菓子店を開く。
映画だけではなぜ「骨董」なのか、よく説明されていないためわからない。
たぶん原作を読めばわかるのだろうが、そこは短い映画ゆえ割愛したのであろう。

ジニョクが、甘いものが嫌いなのにも、それにも関わらず洋菓子店を開いたのにも理由があるのだが、それはストーリーの進展とともに明らかになる。
それはともかく、自ら作れない以上誰かパティシエを雇わないといけない。
そうして雇ったパティシエは、実は高校時代の同級生。
しかもゲイで、卒業式の日にジニョンに告白して振られた経歴をもつソヌ。

偶然のいきさつで二人で洋菓子店「アンティーク」を開店させる。
ソヌは自称「魔性のゲイ」で一緒に働いた男性を次々に虜にしてきてしまうという経歴の持ち主。
されどジニョンには通用しない。
やがて元ボクサーのギボム、幼い頃からの知り合いスヨンと4人で店を切り盛りして行く。
繁盛する「アンティーク」の日常と、密かに進行する誘拐事件とが静かに描かれていく。

個性あふれる4人の日常と非日常である誘拐事件。
何となくこの組み合わせにはしっくりとこないものがある。
ずっとコメディタッチで続いて行く物語が、突然どろどろとした事件とごっちゃになるからだ。
気にならない人には気にならないのかもしれないが、個人的にはなんとなく違和感を覚える。

「魔性のゲイ」というのはなかなか面白いキャラクターだ。
キム・ジェウクも、メガネをかけたパティシエ姿やナイトクラブで妖艶な雰囲気を漂わせる姿などの変化を楽しませてくれる。
次々と男が虜にされてしまうというところがユニークで、もっと違う展開も面白かったのではないかと思わせられる。

機会を見て、一度原作にもあたってみたいと、ふと思った映画である・・・


評価:★★☆☆☆
    

 
posted by HH at 22:55 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ