
原題: The Hurt Locker
2010年 アメリカ
監督: キャスリン・ビグロー
出演:
ジェレミー・レナー:ウィリアム・ジェームズ一等軍曹
アンソニー・マッキー:J・T・サンボーン軍曹
ブライアン・ゲラティー:オーウェン・エルドリッジ技術兵
レイフ・ファインズ:PMC分隊長
ガイ・ピアース:マシュー・“マット”・トンプソン二等軍曹
<STORY>********************************************************************************************************
2004年、イラク・バグダッド。駐留米軍のブラボー中隊・爆弾処理班の作業中に爆発が起き、班長のトンプソン軍曹が爆死してしまう。トンプソン軍曹の代わりに派遣されてきたのは、ウィリアム・ジェームズ二等軍曹。彼はこれまでに873個もの爆弾を処理してきたエキスパートだが、その自信ゆえか型破りで無謀な行動が多かった。部下のサンボーン軍曹とエルドリッジ技術兵は彼に反発するが、ある事件をきっかけに打ち解けていく・・・
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元ジェームズ・キャメロン監督夫人で、第82回アカデミー賞ではそのジェームズ・キャメロン監督の「アバター」と賞レースを争った事で話題となったこの映画。
結果的に作品賞、監督賞を含む6部門を制している。
そんな背景もあり、期待して観た映画である。
タイトルはアメリカ軍の隠語で「苦痛の極限地帯」「棺桶」を意味するらしい。
主役はアメリカ軍爆弾処理班のジェームズ二等軍曹、サンボーン軍曹、エルドリッジ技術兵。
危険な爆発物と背中合わせの任務。分厚い防護服をつけての過酷な任務が「苦痛の極限地帯」「棺桶」といったイメージと重なるのだろう。
冒頭でいきなり処理シーンが登場する。
ロボットを使い爆発物を確認し、爆破処理にかかろうとする。
しかし、機材の損傷でやむなく防護服を着用し、直接準備する。
そして退避しようとしたところ、携帯電話を手にした男が現れる。
電話をやめさせようとするが、通じない。
射殺しろとの言葉が飛び交う中で、軍曹が駆け寄って電話をやめさせようとする。
しかし、次の瞬間、間に合わずに爆弾は爆発し、処理にあたっていた班長は爆死してしまう。
携帯電話の電波がいけなかったのだと思うが、それとわからずにしている行為を止めるために、一般市民を射殺できるかと言われたら難しいところがある。
マイケル・サンデル教授の「これから『正義』の話をしよう」にも取り上げられそうなシーンだ。同時に一般市民が数多くいる中で、ゲリラを相手にしなければならないという米軍の困難も見て取れる場面である。
代わりの班長として登場するのが、ジェームズ二等軍曹。
セオリーに沿った行動を取らず、破天荒なやり方はサンボーン軍曹の反発を招く。
それでも3人一緒に任務にあたる日々が続く。
特段大きな盛り上がりもなく続く任務の日々は、なんだかドキュメンタリー映画を観ている感じがする。死と隣り合わせの緊張感が、それゆえか伝わってくる。
そんな戦場にあっても、電話一本で平和な我が家に通じるという現実。
子供をあやしながら電話を取る妻。
一瞬で死ぬ世界と平和な日常生活とが薄い膜一枚で分けられているのがアメリカなのかもしれない。
任務を終えて帰国したジェームズ二等軍曹だが、スーパーマーケットの中で、一面に並ぶシリアルを見つめて立ちつくすシーンが印象的。
そしてまた任務に戻る。
「戦争は麻薬だ」という冒頭の言葉がずしりと響く。
特別アカデミー賞受賞したからどうというものは感じられない。
ただ、第2次大戦、ベトナム戦争ときた戦争映画の流れは、今確実にイラク戦争に入っていると感じさせられる映画である。過去形でない、これが現代の戦争映画なのだと思わされる一作である・・・
評価:★★★☆☆