2011年11月28日

【すべて彼女のために】My Cinema File 796

すべて彼女のために.jpg

原題: Pour elle
2008年 フランス
監督: フレッド・カヴァイエ
出演: ヴァンサン・ランドン/ダイアン・クルーガー/ランスロ・ロッシュ/オリヴィエ・マルシャル/アムー・グライア

<STORY>********************************************************************************************************
フランス、パリ。
国語教師であるジュリアンと編集者であるリザは、一人息子のオスカルと共に平凡ながらも幸せな生活を送っていた。
しかし、ある朝、彼らの人生が一変してしまう。
警察が突如として家に押し入り、リザが上司を殺した容疑で逮捕され、投獄される。
やがて三年の時が経ち、リザに二十年の禁固刑が宣告されてしまう。
無実の罪を必死に主張するリザであったが、状況証拠などから、誰もが彼女の罪を確信していた。
夫・ジュリアンを除いては…。
彼女の人生に残されたのは絶望だけだった。
次第に衰弱し、精神も不安定になっていくリザ。
悩んだ末に、ジュリアンがとった行動とは?そして、リザはその時…。
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フランス映画という事もあるかもしれないが、何となく系統の違う映画を観た感じがする。
主人公は国語教師のジュリアン。
編集者のリザと一人息子オスカルと暮らしている。
そんなある日、家に雪崩れ込んできた警察によってリザは逮捕されてしまう。
容疑は殺人。

実は殺人現場でリザは犯人とすれ違い、それと気がつかずに凶器に触り、コートには血痕をつけられ、そうした状況証拠の数々から何と有罪になって収監されてしまう。
幸せな生活が一転。
持病を抱えるリザは、家族と離れての収監生活に次第に疲弊していく。

ここでジュリアンは妻を救い出す事に力を入れていく。
普通ならそれは「真犯人を探す」という事なのだが、なんとここではそれは「脱獄」
何となく「系統が違う」と感じたのはこのストーリー展開だ。
悪は悪のまま放置して、それを犯罪という手段で覆そうというのだ。
「正しい目的のためなら違法手段も許されるのか」と、哲学的なテーマを突きつけられる事になる。

「脱獄」と言っても、近代の刑務所ではそう簡単にできるものではない。
そこを必死で探していくジュリアンの姿は、なるほど映画としては面白い。
年端もいかない子供を抱えて、そんな無謀な計画に没頭していくのはリスクが高い。
リザも心配している通り、「両親が揃って収監」となったら、子供に与える影響は計り知れない。

最後までハラハラさせてくれるストーリーはそれなりに面白い。
しかしながら、真犯人こそどこかでほくそ笑んでいるわけであり、果たしてこれはハッピーエンドなのだろうかと思うラストもどうなのかと思わずにはいられない。
ハリウッド映画ならあり得ない展開とラストのような気がする。
まあこれはこれで、ハリウッドにはない魅力なのかもしれないと思わせられる映画である・・・


評価:★★☆☆☆


                    

    
   
posted by HH at 23:58 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | スリリング

2011年11月27日

【FLOWERSフラワーズ】My Cinema File 795

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2010年 日本
監督: 小泉徳宏
出演: 蒼井優(凛)/鈴木京香(奏)/竹内結子(薫)/田中麗奈(翠)/仲間由紀恵(慧)/広末涼子(佳)

<STORY>********************************************************************************************************
2009年(平成21年)、奏(かな)はピアニストの夢にも行き詰まり、長年付き合った恋人とも別れ、意気消沈していた。
お腹の中には子どもがいたのだ。
祖母の告別式であった妹・佳(けい)は既に息子を産み、幸せそうな生活を送っていた…。
1936年(昭和11年)奏の祖母にあたる凛は会ったことのない男性と結婚すべきかどうか悩んでいた。
時代は巡り、物語は1960〜1970年代の凛の三人の娘、薫、翠、慧の恋愛・結婚の軌跡を追う。
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クレジットの出演女優のリストを観ているだけで、なんと豪華なと思ってしまった。
よくぞ集めたものである。
資生堂が、自社製品「TSUBAKI」のCMに出ていた女優さんを集め、制作・特別協賛したというが、こうした貢献でいい映画が出来あがるなら好ましいと思う。

物語はある家族の年代記。
トップは昭和11年の凛。
女学校を出た凛は親の決めた結婚を明日に控えて、心は揺れ動く。
父と娘のやり取りは、いかにも古き時代のそれ。
挙句に式の当日、凛は花嫁衣装のまま家を飛び出してしまう。

続いて昭和40年代の3姉妹。
凛の長女薫は、亡き夫との思い出の新婚旅行の地を一人訪れる。
二女の翠は、当時としては珍しいキャリアウーマン。
セクハラや「女のくせに」という風当たりを受けつつ、恋人にプロポーズされて思い惑う。
三女の慧は二人目の子供を授かるが、もともと体が弱く医者からは出産を諦めるようにと言われる。

そして現代の姉妹。
慧の長女奏は、ピアニストの夢は遠ざかり、お腹の中には分かれた恋人の子供を抱え思い迷う。
二女の佳は、夫と子供と幸せそうに過ごしている。

悩みを抱えた3世代の女性達。
時代を背景にそれぞれの悩みと向き合う。
当人たちのとっては大きな悩みも、時代を経て世代が変わると、その流れの中に埋もれていってしまう。
凛の葬儀に集まった人たちは、凛の結婚式での顛末をもはや誰も記憶していないだろう。
その中で一人奏の抱える苦悩も、やがては同じように埋もれていくのだろう。

それぞれオムニバス形式で描かれるが、昭和40年代のシーンは、とくに映像が懐かしい感じがした。
ファッションやオフィスの様子や車などが、丁寧に再現されていて、ストーリーと別のところで感心。
高度成長期も遠い過去になりつつある。

親と子とのシーンでは、少しうるうるする場面もあり、全体的には好印象。
欲を言えば各シーンがもう少し長ければ、というところだ。
現代のシーンでは、凛の葬儀が一つの舞台となっている。
そこにいるはずの薫と翠も描いて欲しかったと思うのだ。

奏と佳もやがて次の世代へとバトンを渡す。
こうして時代は流れていく。
個人的にはこの手のストーリーが好きな事もあって、大手企業が金に余せて有名女優を並べて終わったというだけの映画にならなかったところが良かったところだろう。
観る価値の十分ある映画である。


評価:★★★☆☆

                      

    
     
posted by HH at 23:58 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

【レクイエム】My Cinema File 794

レクイエム.jpg


原題: Five Minutes of Heaven
2009年 イギリス・アイルランド
監督: オリヴァー・ヒルシュビーゲル
出演: リーアム・ニーソン/ジェームズ・ネスビット/アナマリア・マリンカ/

<STORY>********************************************************************************************************
爆弾テロや殺人が日常茶飯事となっていた1975年の北アイルランドで、アルスター義勇軍のメンバーである17歳のアリスター・リトルは、報復テロとしてカトリック教徒である19歳のジム・グリフィンを殺害する。
しかし、その現場をジムの8歳になる弟ジョーに目撃される。
33年後、加害者であるアリスターと被害者の弟ジョーがテレビ番組の企画で顔を合わせることになる。
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アイルランド紛争も世界の中では大きな紛争の一つであった。
そのアイルランド紛争まっ最中の1975年。
アルスター義勇軍のメンバーであったアリスターは、自分達の仲間の受けた報復として、相手の男を射殺する。
その男は引っ越す予定であり、あえて殺害する事もなかったのであるが、仲間に対する虚栄心から計画を実行する。

そして現場では一部始終を相手の弟に目撃される。
弟のジョーは、母親からは何もしなかった事を責められ続け、それが心の傷となって残る。
33年後、テレビの企画で、ジョーはすでに服役して釈放されていたアリスターとの対談番組に出演する事になる。

映画は若き日のアリスターが殺害を実行するまでと、33年後にアリスターと被害者の弟ジョーとの再開の場面とに二分される。
前半部分は映画の導入部分だ。
激化する紛争。
その中で殺人をも厭わない抗争。
若き日のアリスターが一人の男を射殺するまで。

そして後半。
33年後にアリスターと殺された男の弟とが出会う。
どのような出会いとなるのかが興味の焦点。
しかしながら、どうも肝心のこの部分が感情移入できない。
33年のブランクを飛び越え過ぎなのである。

その33年の間にどんな人生があったのか。
母親に兄の死の責任を押し付けられ、それがトラウマとなったジョー。
それはよくわかるのであるが、アリスターの方はよくわからない。
わからないまま、二人の出会いを見ていても心に残るものはない。
90分と時間が短いのだから、もう少し丁寧に二人の背景・心情を描いていっていたら、あるいはもう少し心に残るものになったかもしれない。

なんだか中途半端な映画である・・・


評価:★☆☆☆☆


                    
posted by HH at 00:55 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2011年11月23日

【ダウト〜偽りの代償〜】My Cinema File 793

ダウト偽りの代償.jpg

原題: Beyond a Reasonable Doubt
2008年 アメリカ
監督: ピーター・ハイアムズ
出演: マイケル・ダグラス/アンバー・タンブリン/ジェシー・メトカーフ/ジョエル・デヴィッド・ムーア/オーランド・ジョーンズ

<STORY>********************************************************************************************************
地方TV局の報道記者CJは、法廷で無敵と評判の切れ者の検事マークが実は証拠を捏造しているのではないかと疑いを抱き、それを暴いてスクープしようと一大決心。
最近起きたうってつけの殺人事件を見つけ出したCJは、自らをあえてその容疑者に仕立てて逮捕され、法廷でマークと対決することに。
そして、いざというところで自分の無実を証だてる証拠を持ち出す手筈だったが、思わぬ手違いから彼は絶体絶命の窮地に陥ってしまう・・・
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映画を観る前にある程度の期待を持つ。
あまり期待していない映画だったが、観てみたら面白かったという時はやはり得した気分である。
この映画はそんな喜びをもたらしてくれそうだったが、最後に失速してしまった感じである。

地方TV局のCJは意欲に燃えて仕事をしている。
そんな彼が、次のターゲットとして目をつけたのは検事のマーク。
最近の裁判では17連勝し、次の知事候補とも目されている。
しかし、裁判の最後になってDNA絡みの動かぬ証拠を突きつけるというやり方に疑問を抱いたCJは、マークが証拠をねつ造しているのではないかという疑いを抱く。

マークの部下のエラを口説き恋仲になる一方で、マークの証拠ねつ造の調査をするがなかなか尻尾を掴めない。
業を煮やした彼は、とうとう自ら囮となって「犯人に仕立て上げられ」、最後に自らの潔白を証明してマークの証拠ねつ造を立証しようと計画する。
そんなある時、一人の娼婦が殺害される。
事件現場で得られた犯人の特徴を聞き出すと、相棒とともに犯人になるための準備を始める・・・

熱心なリポーターが、権力の座にある男を追いつめようと自ら囮となって犯人に成りすますというストーリー展開は、身の潔白を証明する証拠のDNAが鍵となる。
それを突きつけて大勝利となるはずが、そうならないところが映画というもの。
そういう展開は予想できた。
しかしながら最後のどんでん返しは意外だった。

そうした意外性は面白いストーリーとしていいと思うのだが、せっかく盛り上げたストーリーなのだから、もう少し丁寧にやってほしかったと残念に思う。
CJ達の計画を潰そうとするマーク派との息詰まる対決は、あっという間に終わってしまう。
肩すかしを喰らったようでがっくりきたのは事実だ。

主人公CJと恋人のエラはあんまりメジャーでない俳優さん。
この手の映画にはなるほどと思うのだが、なぜか大物マイケル・ダグラスが出演しているのがちょっと驚きだ。
さすがの貫禄なのだが、なぜこの手の映画に出ているのかとそれだけが気になった。

まあほどほどの映画と言えるだろう・・・


評価:★★☆☆☆

         
              
posted by HH at 22:35 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | サスペンス

2011年11月22日

【笑う警官】My Cinema File 792

笑う警官.jpg

2009年 日本
監督: 角川春樹
原作: 佐々木譲
出演: 大森南朋/松雪泰子/宮迫博之/忍成修吾/螢雪次朗

<STORY>********************************************************************************************************
札幌市内のアパートで女性警官の変死体が発見された。
まもなく被害者の元交際相手の巡査部長・津久井に容疑が掛けられ、さらに異例の射殺命令までも下される。
かつて津久井と同じ任務にあたったことのある警部補・佐伯は、この一連の流れに違和感をもち、女性刑事の小島、新人刑事・新宮ら信頼できる仲間とともに秘密裏に捜査を始める。
やがて、彼らは北海道警察内部に隠された闇に踏み込んでいくのだったが……。
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冒頭で流れる北海道警の裏金事件。
なんだか聞いた事のあるニュースだと思っていたが、実際に北海道警であった事件であり、記憶にも新しい。
どうやらその裏金作り事件にヒントを得たらしい。
原作は警察小説というイメージが強い佐々木譲。
「警官の血」を読んだ事があるが、重厚な味わいの小説であった。

冒頭からジャズが流れ、何だかその昔流行ったハードボイルド系探偵小説の雰囲気。
出演者たちの名前も横文字で流れ、それを強く印象付ける。
(でもおかげで主演の大森南朋の名前がNAOと読む事がわかった)
敢えてハードボイルドの匂いをプンプンさせたがっている雰囲気はよく伝わってくる。

冒頭で短銃自殺する警官。
裏金作りでマスコミの質問をはぐらかす警察上層部。
そんな中で1件の殺人事件が起こり、地元所轄の刑事達が現場に乗り込む。
ところがすぐさま本庁の刑事達が現れ、所轄の刑事達は現場を追い出される。
さらにすぐに現場に現れる部長らの面々。
何かおかしいと勘繰り始める所轄の刑事たち。

やがて被害者は元ミス道警にも選ばれた事のある婦人警官と判明。
犯人も被害者と交際歴のあった津久井巡査部長と判明。
さらに覚せい剤使用の疑いと銃器保持の可能性から、SATの出動が要請され、射殺指示まで出る。
あまりの手際の良さに、かつて津久井とコンビを組んでいた佐伯は疑問を抱き、仲間とともに独自の捜査を始める。

まもなく冒頭の裏金作り事件で、津久井が100条委員会という調査委員会で証言する事になっている事がわかる。
何者かが裏で津久井に証言をさせないために、糸を引いていると思える。
佐伯は信頼できる仲間5人と捜査に取り掛かる。
翌日10時までに事件の真相を探り、射殺命令の撤回と津久井を100条委員会に送り届けないといけない・・・

冒頭のハードボイルドタッチと、警官の汚職というテーマと、相手が同じ警察という事とが相俟って、なかなか期待させるストーリー展開。
さすが佐々木譲と思わずにはいられない。
ストーリーの中で、登場人物たちは「正義か組織か」という葛藤にさらされる。
組織に逆らってまで正義を追及する事が、何より自分自身にとってプラスになるのか・・・
警官ならずとも会社勤めの人間であればよくわかる感覚である。

ストーリーの伏線として、そういう葛藤が描かれる。
まだ若い新宮は、正義という理想に走るが、年配妻子持ちの刑事は「首になったら潰しがきかない」と組織に逆らう事に抵抗を覚える。
そうした部分は実に人間的だ。

そんな泥臭いドラマであるが、射殺命令が出されたり、上層部の腐敗が必要以上に強調されていたり、実際の事件だってこんなに真っ黒なものではないだろうという印象とで、映画全般に対するイメージは進むにつれて落ちて行く。
人工的な作り物の匂いが鼻につく。

原作を読んでいないから、果たして原作はどうなのだと言う思いがする。
こうした泥臭い現実的なテーマの映画では、リアリティという要素がかなり重要なファクターになる。
そのリアリティに、残念ながら欠けている。
いくら組織が酷くても、ここまでは・・・と思うのである。
それが大きく足を引っ張る。

いずれ機会があったら読むとして、映画としてはイマイチと思わずにはいられない映画である・・・


評価:★★☆☆☆
                  
                 

    
posted by HH at 23:38 | 東京 ☁ | Comment(1) | TrackBack(1) | 刑事・探偵・推理ドラマ