
原題: 海角七號/Cape No.7
2008年 台湾
監督: ウェイ・ダーション
出演:
范逸臣(范逸臣/ファン・イーチェン):阿嘉(アガ)
田中千絵:友子
應蔚民(イン・ウェイミン):水蛙(カエル)
民雄(ミンション): 勞馬(ローマー)
林宗仁(リン・ゾンレン):茂(ボー)爺さん
中孝介:教師/中孝介
<STORY>********************************************************************************************************
ミュージシャンの夢敗れ、台北から故郷の恒春に戻った青年アガは、郵便配達の仕事についたものの、無気力な日々を送っていた。そんな時、日本から中孝介を招いて行われる町おこしのライブに、前座バンドとして駆り出されることに。オーディションで集められたメンバーは寄せ集めで、練習もままならない状態。ひょんなことからマネージャーをする羽目になった日本人女性・友子とも、衝突してばかりだったが…。
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公開当初はそれほど振るわなかったものの、口コミで評価が広がり、結果的に「タイタニック」についで台湾歴代映画興行成績2位を記録したという台湾映画である。
そんな前評判を聞いてしまうと、観る前から期待のテンションが上がる。
主人公はミュージシャンの夢破れ、故郷に帰って燻っている青年アガ。
地元の議員が町おこしに駆け回る。
若者に職を与え、日本人アーティストを招いての町おこしには、許認可権を盾に強引に地元バンドを前座として押し込んでしまう。
アガはそんな流れの中で、郵便配達の仕事を得、そして前座バンドに名を連ねる。
一方、現地で働く日本人女性友子。
本当は自らファッション・モデルであるはずが、雑用係としてこき使われている。
そんな友子が、マネージャーからの指示で、地元の前座バンドのオーディションから管理までを任される事になる。
コンサートに向けて進む日々の中、アガが手にした宛先不明の郵便箱。
住所は旧日本統治時代の「海角7号(直訳すると岬7番地)」。
中味は60年前のラブレター。送られる事なく箪笥の隅に眠っていたものを、差出人の遺族が本人の死を機に宛先の友子という名の女性に送ってきたものだった。
古いラブレターを背景に物語は進んでいく。
前座バンドといっても、急遽集める事となったため、素人集団となる。
集める過程、集めた後の練習と、ドタバタの様子はコメディタッチで進む。
その一方で、アガと友子との間も衝突からやがて恋心が生じるというありがちな展開も織り込む。このあたり歴代興行収入2位の看板が、ストーリーが進むにつれて次第に色あせていく。
出演者はさすがにまったく馴染みなく初めてお目にかかる俳優さん。
日本人友子役は、台湾語のセリフが大半だったが、これも知らない女優さん。
そういう意味では新鮮である。
最後に登場する日本人有名アーティスト中孝介。
映画の中の架空のスターかと思っていたら、実名のアーティストだという。
日本の前に台湾でデビューしたらしいが、芸能界に疎い身にはわからない。
まあ映画には関係ない。
圧巻なのは最後のコンサート。
中孝介の前座として、急造バンドが急遽練習した2曲だけのレパートリーを披露する。
これが、なかなか心を震わせてくれる。
それまでのドタバタの中で描かれていた要素が、最後に見事に組み合わされる。
映画の中の観客の反応はそのまま映画を観る者の反応でもある。
60年前の切ない恋物語は、正直言ってあまり感動するものとも思えなかったが、登場人物たちの様々な思いが凝縮されたラストは、なかなかの感動もの。
このラストに導くためのストーリー展開だったのかと、改めて思い直す。
そんなラストシーンのコンサートは、アンコールっていうものは、本来こういうものだと思わされる。
最後に台湾映画興業成績歴代2位の看板に偽りなし、と確信できた映画である・・・
評価:★★★★☆