2012年03月31日

武士の家計簿

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2010年 日本
監督: 森田芳光
出演: 堺雅人/仲間由紀恵/松坂慶子/中村雅俊/草笛光子

<STORY>********************************************************************************************************
会計処理の専門家、御算用者として代々加賀藩の財政に携わってきた猪山家八代目・直之は、家業のそろばんの腕を磨き、才能を買われて出世する。
江戸時代後期、加賀藩も例にもれず財政状況は逼迫していた。
加えて武家社会では出世するにつれ出費も増え続けるという構造的な問題があった。
猪山家の家計が窮地にあることを知った直之は、家財道具を処分し借金の返済にあてることを決断、家族全員で倹約生活を行うことにする・・・
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実在の加賀藩藩士が残した家計簿。
37年間に及ぶ入払帳や書簡をもとに、映画化したという。
武士と言えば刀。
そろばんなど商人の扱うモノとしてバカにされていたようなイメージがあるが、藩でも当然会計はあるわけで、そういう部署で働く侍もいたようである。

加賀藩の藩士猪山家はそういう会計に関わる一家。
そろばんが稼業であり、直之はそろばんの腕も磨き、実直に務めに励む。
ある飢饉の年、食糧難にあえぐ農民に対し、藩から援助米が支給される。
しかしその一部を横流しして懐を肥やす者たちがいる。
直之は在庫をチェックする事でそのカラクリに気付いてしまう。
やがて実直な勤務ぶりが評価され、直之は出世する。

順風満帆に思えた直之の生活。
しかし体面を重んじる武家社会。
お付き合いの出費もかさむ。
そして長男の祝いの時、直之はとうとう猪山家が膨大な借金を抱えている事実を知る事になる。

ここからが武士の家計簿の始り。
資財を売り払って借り入れを減らし、残りは日々収支を管理して返済に努めていく。
当たり前の事だが実行に移すのはたやすいことではない。
それを武士の身分でありながら始めたところが、猪山直之の非凡なところ。
そしてそれがゆえにこの物語が生まれた事になる。

しかしそこにはおのずと限界もある。
珍しい武家の家計簿はそれだけで話題にもなるし、当時の武家の生活振りなどが伺える貴重な資料なのではあると思う。
されどそこから映画というエンターテイメントになりうるかという問題が生じてくる。
つまり、倹約して借金を返済する物語が面白いか、という問題である。

残念ながらこの映画はその限界に行き当たる。
物珍しいが見所も少ない。
武家の親子の日常の物語として、平凡な作品になってしまっているというところが、個人的な感想なのである・・・


評価:★★☆☆☆
    
   





   
posted by HH at 14:22 | 東京 ☔ | Comment(0) | TrackBack(1) | 時代劇/西部劇

2012年03月27日

白夜行

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2011年 日本
監督: 深川栄洋
原作: 東野圭吾
出演: 堀北真希/高良健吾/船越英一郎/戸田恵子/田中哲司

<STORY>********************************************************************************************************
昭和55年、廃ビルの中で質屋の店主が殺された。
刑事の笹垣は被害者の10歳の息子・亮司と会い、彼の暗い目に驚く。
殺害された日、被害者が西本文代という女性の家を訪ねていたことが判明。
文代には雪穂という10歳の娘がいた。
やがて文代が自殺し、被疑者死亡のまま捜査は終了するが、笹垣は納得できないままだった。
数年後、雪穂は遠縁に引き取られ、美しい女子高生に成長した。
ある日、雪穂の同級生がレイプされる事件が起こる。
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東野圭吾原作映画をまた一つ。
原作はかなり長いストーリー。
そしてやはりWOWOWでドラマ化された「幻夜」は、この映画の原作の続編とも言われている。
どちらも目的のために手段を選ばず、しかも男を操って事を為す女性を主人公にしている。

物語は質屋の店主の死体が発見されるところから始る。
夫人は店の番頭と浮気をしているという噂があり、夫婦には一人息子亮司がいる。
捜査線上に店主が浮気していたとみられる女性が浮かぶ。
そしてその女性には一人娘の雪穂がいる。
捜査に当たるのは所轄の刑事笹垣。

犯人不明のまま時は流れ、母親が亡くなったあと親戚に引き取られた雪穂はお嬢様学校に通う。
いじめに遭っていた江利子と仲良くなる雪穂。
江利子をいじめるグループのリーダー格で、雪穂を心良く思わない級友。
しかし、ある時その級友がレイプされるという事件が起きる。

時は流れ、同じ大学に通う雪穂と江利子。
所属していたダンス部の部長篠塚。
金持ちの御曹司で、江利子に好意を抱く。
親しくなっていく篠塚と江利子。
しかしやがて江利子に事件が巻き起こる。
その後篠塚と雪穂は付き合うようになる・・・

一方、亮司は主婦売春の斡旋を始めとして、日の当らない人生を歩む。
子供の頃から得意だった切り絵作りは続けている。
事件の担当をしていた刑事笹垣は折に触れ、亮司の母親が経営するスナックに通う・・・

ストーリーは雪穂と亮司とを対比させながら進んでいく。
二人を結びつけるものはなく、別々の時間帯が流れて行く。
間に立つのが刑事笹垣。

小学生だった二人が高校生になり、大学に通い、社会に出る。
長い時間の変遷を笹垣を間に進む。
「幻夜」では巧みに雅也を操った美冬だが、ここの雪穂は違う。
二人の女性は、美しいという点では共通しているが、行動の点で少し描かれ方が違う。

その違いは主演女優の違いともよくマッチしている。
この映画の堀北真希は、裏の顔を表に出す事はしない。
そんな顔がある事すら匂わせない雰囲気がある。
「ALWAYS 三丁目の夕日'64」に出てくる田舎っぺ丸出しのロクちゃんとは、とても同一人物とは思えない。

美しさの裏面に魔性を秘めた雪穂。
「幻夜」と同様のエンディング。
そのあとどうなるのだろうと思わずにはいられない。
ただ「幻夜」がこの映画の続編だとするならば、その繋がりを想像してみるのも悪くはない。

長い原作を2時間半という長めの枠にうまく納めている。
原作の持ち味をうまくまとめた映画だと言える・・・


評価:★★☆☆☆


東野圭吾原作作品
「手紙」
「変身」
「レイクサイドマーダーケース」
「g@me」
「容疑者Xの献身」
「幻夜」
「さまよう刃」



posted by HH at 23:03 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(1) | サスペンス

2012年03月26日

瞳の奥の秘密

瞳の奥の秘密.jpg

原題: El secreto de sus ojos
2009年 スペイン・アルゼンチン
監督: フアン・ホセ・カンパネラ
出演: リカルド・ダリン/ソレダー・ビヤミル/パブロ・ラゴ/ハビエル・ゴンディーノ/ギレルモ・フランチェラ

<STORY>********************************************************************************************************
刑事裁判所を退職したベンハミンは、残された時間で25年前に起きた忘れ難い事件をテーマに小説を書くことを決心し、かつての上司で今は判事補のイレーネを訪ねる。
それは1974年、銀行員の夫と新婚生活を満喫していた女性が自宅で殺害された事件。
当時、渋々担当を引き受けたベンハミンが捜査を始めてまもなく、テラスを修理していた二人の職人が逮捕されるが、それは拷問による嘘の自白によってだった…。
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普段観る機会もほとんどないアルゼンチン映画。
アカデミー外国語映画賞に輝かなければ、たぶん日本に紹介される事もなかったのではないかと思う。

裁判所を退職したベンハミンが、判事補のイレーネを訪ねるところから物語は始る。
退職を機に、ずっと気になっていた25年前の事件を本にするつもりだと語る。
そして物語は、現在と25年前とを交互に描きながら進んでいく事になる。

25年前の事件とは、銀行員の夫と暮らしていた23歳の女性が自宅でレイプされて殺された事件である。
若くて美しい人妻の死体に、初めは渋々だったベンハミンも興味を惹かれる。
被害者の夫は、犯人への憎しみを語りながら、死刑制度を廃止した国のスタンスを支持する。
犯人はあくまでも終身刑にすべきだ、と。

アルゼンチンの警察制度はよくわからないが、裁判所が警察と一緒に捜査をする部分があるようである。
ベンハミンの助手は飲んだくれのパブロ。
面白い事に、イレーネ→ベンハミン→パブロという上下関係は、そのまま年の若い順となっている。
かの国でも学歴によるエリートは存在するようである。

警察の捜査は信じながら、自らも駅で犯人を探す被害者の夫。
その執念に焚きつけられたベンハミンも犯人を追う。
やがてその執念で捕まえた犯人も、同じ国の制度によって野に放たれてしまう。
その無常感。

たくみに最後のどんでん返しに向けて、仕掛けが施されていく。
25年の時間差を開けた事件が、現在で一つになっていく。
さすがにアカデミー賞に輝いただけあって、ストーリーは見事。
俳優陣も知らない人ばかりで新鮮でもある。
たまにはこういう映画もいいかもしれない・・・


評価:★★☆☆☆
   
    

    
   
posted by HH at 23:03 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | サスペンス

2012年03月25日

コトバのない冬

コトバのない冬.jpg

2008年 日本
監督: 渡部篤郎
出演: 高岡早紀/渡部篤郎/未希/広田レオナ/鈴木一真

<STORY>********************************************************************************************************
北海道の小さな町で父親と暮らす冬沙子。
東京でモデルとして成功している妹と違い、冬沙子は、父や町の人々と過ごす平凡な生活を愛していた。
ある日、冬沙子は父親の使いで夕張まで出かける。
雪が降り出した帰り道、冬の間、閉鎖している遊園地を管理する青年、渉と知り合う。
渉は、言葉を話せなかったが、2人は不思議な心のつながりを感じるのだった…。
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舞台は北海道のある小さな町。
父親は薬局を経営、母親は既に亡くなり、主人公の冬沙子は牧場で働いている。
すでに結婚適齢期でありながら、こんな片田舎では出会いもないまま平凡な日常生活が続いている・・・
そんな雰囲気が、説明はなくとも伝わってくる。
きっとどこにでもある光景なのだろう。

やがて東京から妹が帰ってくる。
モデルとして働いている妹だが、いつ戻るとも言わない帰宅に、何となく何か東京であったのかな、という感じを覚えさせる。
小説と違い、映画はこういう雰囲気で伝える部分が強みだ。

ある日、冬沙子は父親に頼まれて、遠方に住む顧客に薬を届けに行く。
その帰り途。
いつ来るとは知れぬ田舎のバスを待つ時、遊園地を管理する一人の青年と知り合う。
彼は口がきけない。
タイトルの意味がなんとなくわかってくる。

映画を観て行くと、なんとなく映画らしからぬ違和感に包まれる。
映画を観ているというよりも、何だかドキュメンタリー番組を観ているような感覚に襲われるのである。
何でだろうかはよくわからない。
たぶん、ハンドカメラなのだろうか、手ぶれ感が漂う画面だからかもしれない。

ドキュメンタリー風に、淡々と登場人物たちを映し出していく。
どこで、何がどう盛り上がるのか、まるで掴めないままなのである。
その感覚のまま、冬沙子はしきりにどこかに電話をかけ、コール音だけを空しく聞いている。
そして突然の展開。

冬の北海道と言えば一面の銀世界。
その白いイメージのままの映画。
突然の展開に、「ああそういう話だったのか」と思わず思ってしまう。
そんな事もあるのかもしれない。
どこかの街で、起こりそうとも言えるし、ドラマなお話とも言える物語なのである。


評価:★★☆☆☆
   
   
   
posted by HH at 16:40 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ

2012年03月21日

ヒューゴの不思議な発明

ヒューゴの不思議な発明.jpg

原題: Hugo
2011年 アメリカ
監督: マーティン・スコセッシ
出演: エイサ・バターフィールド/ベン・キングズレー/クロエ・グレース・モレッツ/サシャ・バロン・コーエン/ジュード・ロウ

<STORY>********************************************************************************************************
ひとりぼっちの少年ヒューゴは、時計のネジを巻きながらモンパルナス駅に隠れ住んでいた。
彼は駅の中の玩具店で玩具を盗もうとし、店主のジョルジュに見つかってしまう。
ジョルジュは、ヒューゴのポケットの中にあった手帳を見つけ取り上げた。
父の遺品であるその手帳には、父が見つけてきた不思議な機械人形の修理法についての研究結果が書かれていた!
手帳を取り返すため、ヒューゴはジョルジュの養女・イザベルに協力を頼む。
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舞台となるのは第一次大戦後、しばらくしてのパリ。
主人公のヒューゴは駅に隠れ住んでいる。
保護者であるはずの駅の時計係の叔父は行方不明。
身よりのない孤児は孤児院へと収容されるため、ヒューゴは叔父の仕事を代行する事で、駅の公安員の目を盗み、隠れ暮らしている。
時計が正常に動いている限り、ヒューゴが孤児となっている事実がばれないだろうという考えだ。

ヒューゴがそうして暮らしているには理由があった。
今は亡き父が残した機械人形の修理をするためだった。
ところが部品を調達しようとした玩具店で、店主のジョルジュに捕まり、修理方法の書かれた大事な手帳を取り上げられてしまう。
何とか取り返そうとするヒューゴは、ジョルジュの養女イザベルと知り合う・・・

主演のヒューゴはまだ知名度が低い子役だが、店主のジョルジュはベン・キングズレー。
もういろいろな映画に出演しているが、個人的には「ガンジー」と「シンドラーのリスト」が一押しの名優だ。
この映画でもいい味を出している。

その養女のイザベルは気がつかなかったが、「キック・アス」の“ヒット・ガール” クロエ・グレース・モレッツだった。
前作よりかなり大人になっていてわからなかったが、ここでは女の子らしい役柄で登場。
前作とはまたがらりと異なるイメージだ。

映画は謎めいた機械人形を必死に直そうとするヒューゴの冒険(何せ朝の食事を“調達”する事から公安員から逃げ回るまで終わりのない日常生活なのだ)と、何やら事情がありそうなジョルジュとの交流が描かれていく。
そして映画の黎明期の様子が、背景の事情として語られる。
映画も始めは「動く写真」という物珍しい出しモノ的な扱いだったようだ。
列車が駅に到着するだけのシーンに、人々は驚いていたようだ。
後日、こんな一大産業になるなんて夢にも思わなかったのだろう。
やがて明らかになるジョルジュの正体。

監督はマーティン・スコセッシ。
この人の映画は、「タクシー・ドライバー」や「レイジング・ブル」等々ロバート・デ・ニーロと組んだ作品や、「アビエイター」、「ディパーテッド」「シャッター・アイランド」等々ディカプリオと組んだ作品などがあるが、いずれも大人向けの映画で、子供が主人公の映画というのは今までとちょっと傾向が違う。

しかしながら観て行くうちに、映画に対する深い思い入れが伝わってくる。
それはまるで、今まで携わってきた映画業界に対する恩返しのような感じもする。
なぜ傾向の違う映画に手を出したのかと言えば、そんな感じがしないでもない。

機械人形を修理しようとするヒューゴは、父親から教え込まれた修理の技術がある。
修理の対象は機械ばかりではない。
誰もが抱えている大切な過去。
それを大事にしようとする気持ちが、映画の根底にはある。
ほろっとさせるところもあって、なかなか味わい深い映画である。

主要部門ではなかったものの、今年のアカデミー賞5部門に輝いているが、主要部門であったとしても少しも不思議ではない映画。
さらには3Dで観ると、いっそう物語を深く味わえる感覚が得られるかもしれない。
観るべき価値の高い映画だと言える・・・


評価:★★★★☆
   
                 

   
   
posted by HH at 23:05 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(2) | ファンタジー