
2010年 日本
監督: 森田芳光
出演: 堺雅人/仲間由紀恵/松坂慶子/中村雅俊/草笛光子
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会計処理の専門家、御算用者として代々加賀藩の財政に携わってきた猪山家八代目・直之は、家業のそろばんの腕を磨き、才能を買われて出世する。
江戸時代後期、加賀藩も例にもれず財政状況は逼迫していた。
加えて武家社会では出世するにつれ出費も増え続けるという構造的な問題があった。
猪山家の家計が窮地にあることを知った直之は、家財道具を処分し借金の返済にあてることを決断、家族全員で倹約生活を行うことにする・・・
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実在の加賀藩藩士が残した家計簿。
37年間に及ぶ入払帳や書簡をもとに、映画化したという。
武士と言えば刀。そろばんなど商人の扱うモノとしてバカにされていたようなイメージがあるが、藩でも当然会計はあるわけで、そういう部署で働く侍もいたようである。
加賀藩の藩士猪山家はそういう会計に関わる一家。
そろばんが稼業であり、直之はそろばんの腕も磨き、実直に務めに励む。
ある飢饉の年、食糧難にあえぐ農民に対し、藩から援助米が支給される。
しかしその一部を横流しして懐を肥やす者たちがいる。
直之は在庫をチェックする事でそのカラクリに気付いてしまう。
やがて実直な勤務ぶりが評価され、直之は出世する。
順風満帆に思えた直之の生活。
しかし体面を重んじる武家社会。
お付き合いの出費もかさむ。
そして長男の祝いの時、直之はとうとう猪山家が膨大な借金を抱えている事実を知る事になる。
ここからが武士の家計簿の始り。
資財を売り払って借り入れを減らし、残りは日々収支を管理して返済に努めていく。
当たり前の事だが実行に移すのはたやすいことではない。
それを武士の身分でありながら始めたところが、猪山直之の非凡なところ。
そしてそれがゆえにこの物語が生まれた事になる。
しかしそこにはおのずと限界もある。
珍しい武家の家計簿はそれだけで話題にもなるし、当時の武家の生活振りなどが伺える貴重な資料なのではあると思う。
されどそこから映画というエンターテイメントになりうるかという問題が生じてくる。
つまり、倹約して借金を返済する物語が面白いか、という問題である。
残念ながらこの映画はその限界に行き当たる。
物珍しいが見所も少ない。
武家の親子の日常の物語として、平凡な作品になってしまっているというところが、個人的な感想なのである・・・
評価:★★☆☆☆