
原題: Heaven & Earth
1993年 アメリカ
監督: オリヴァー・ストーン
出演:
ヘップ・ティー・リー:Le Ly
トミー・リー・ジョーンズ:Major Steve Butler
ジョアン・チェン:Mama
ハイン・S・ニョール:Lely's father
デビー・レイノルズ:Abigail
<STORY>********************************************************************************************************
1949年、フランス支配下のインドシナの農村で、小作農民のプング夫婦に女の子が生まれた。未熟児のゆえ間引きを勧められたが、母親のママ・プングはこの子にも生きる権利があると断り、レ・リーと名付けて慈しんで育てた。レ・リーが10代になったころ、ヴェトナム戦争が勃発。2人の兄はヴェトコンに身を投じて北へ行き、村に残ったレ・リーもヴェトコンのスパイとして働く。だが、南ヴェトナム軍に捕らえられたレ・リーは過酷な拷問を受ける。なんとか兵士を買収して村に戻った彼女に、村人は仲間を売った二重スパイの烙印を押す。身も心も引き裂かれた彼女は、ママと一緒にサイゴンへ出る・・・
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オリバー・ストーン監督と言えば、ベトナム戦争を題材とした代表作「プラトーン」が真っ先に思い浮かぶ。これはそんなオリバー・ストーン監督のベトナムものという事で嫌が上にも興味が湧きたつ映画である。映画自体は1993年制作という事で、もう"ビンテージ"モノであるが、個人的には何とこれまで観る機会に恵まれなかった“まだ見ぬ強豪”とでも言える作品だ。
物語は、実在の女性レ・リーの自伝。
レ・リーの家族は、フランス軍に家を焼かれ、続くアメリカとの戦争では村にも戦火がおよび、さらにやって来た北ベトナム軍に二人の兄は身を投じと、歴史の運命に翻弄される。
レ・リー自身もゲリラと疑われて南ベトナム側から拷問を受ける。
なけなしの金で役人を買収して家族に助け出されるも、逆に釈放された事でベトコンからは裏切り者と烙印を押され、レイプまでされる。
母親と二人サイゴンへ働きにでるも、住み込んだ家の主人によりレ・リーは妊娠する。
すると夫人の迫害で屋敷を追い出され、身重の体で世間に放り出され、必死に食いつなぐ事になる。やがてあるアメリカ兵スティーブと知り合い、結婚。
米軍の撤退とともに、アメリカにわたる。
まさに波間に漂う小舟の如く、運命に翻弄される一人の女性。
女たちは、生き抜くためには体も売る。
身重のレ・リーを養うために娼婦をする姉。
訪ねてきた父親のいるところで男の相手をする。
父にとっても姉にとっても、レ・リーにとっても地獄のような環境だ。
そんなベトナムでの生活と対照的なアメリカでの生活。
画面も自然と明るさを増す。
アメリカの豊かさがこれでもかというくらいに強調される。
余った食べ物も平気で捨てられる。
ベトナムでは、レ・リーはゴミあさりすらしていたのに、である。
人間は贅沢になれていくもの。
必死で生きる必要がなくなれば、不平不満も顔を出す。
地獄から救い出されたレ・リーも、次第にスティーブとの仲は悪くなっていく・・・
それもやはり人間なのであろう。
米兵スティーブを演じるのは、トミー・リー・ジョーンズ。
最近はボスのCMや「メン・イン・ブラック」シリーズなどでも渋いおじさんというイメージで通っているが、さすがに20年前のこの映画では若くておまけに痩せている。
レ・リー役のヘップ・ティー・リーと比べると顔が異様に大きく感じられる。
もはやベトナム戦争もすっかり過去の傷跡。
今ではイラクであるが、戦争をし続ける国アメリカにとっては、連続する歴史の一ページなのかもしれない。
それにしても過酷な運命を生き抜いたレ・リー。
実話の重みがヒシヒシと伝わってくる。
戦争のない国に生まれて育った幸せを改めて実感させられる。
20年経ってもまったく色褪せていない、オリバー・ストーン監督のこれも代表作の一つとして記憶に留めたい映画である・・・
評価:★★★☆☆