
原題: BIUTIFUL
2010年 スペイン=メキシコ
監督: アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ
出演:
ハビエル・バルデム:Uxbal
マリセル・アルバレス:Marambra
エドゥアルド・フェルナンデス:Tito
ディアリァトゥ・ダフ:Ige
チェン・ツァイシェン:Hai
ギレルモ・エストレラ:Mateo
ルオ・チン:Liwei
<STORY>********************************************************************************************************
スペインのバルセロナに暮らす男・ウスバルは、妻・マランブラと別れ、男手一つで二人の子どもを育てていた。彼はアフリカ系や中国系の不法移民たちへの仕事の口利きや、警察への仲介などで収入を得ている。ある日、彼は病院で自分が末期ガンで、余命二ヶ月の宣告を受ける。しかし、そのことは誰にも告げず、子どもたちに少しでも金を残そうとしていた。マランブラとも再び同居を始め、彼は死の準備を整えようとするのだが…。
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邦題の「BIUTIFUL」を見た時に、スペルが間違っていると思ったのだが、この映画はスペイン語の映画。どうやら間違いではないのだと気がつく。
主人公はバルセロナで子供二人を男手一つで育てているウスバル。
仕事はと言うと、アフリカや中国からの不法入国者に仕事を紹介したりしている。
時に警官を買収したりして、彼らをサポートしている。
はっきり言ってまともな仕事ではないのであるが、今や失業率が20%以上と言われるスペインの実情を伺い知るかのようである。
セネガルから出て来た青年たちは路上でコピー商品や麻薬を売る。
中国からの労働者はコピー商品を作る。
劣悪な生活環境なのだが、それでも故国よりマシなのだろう。
何とも言えない、社会の底辺に生きる人々。
そんなウスバルには、人にはない能力がある。
はっきりとは描かれていないのだが、どうやら死んだ者と話ができるらしい。
それもこの世に思いを残して死んだ者のようである。
というと「シックスセンス」のような映画かと言えば、そうではない。
ウスバルの能力は、箸休めのようなサイドストーリーでしかない。
そんなウスバルだが、癌で余命2ヶ月と診断される。
心配なのは子供たち。別れた妻とは交流があるものの、精神状態が普通でない元妻にはとてもではないが子供は任せられない。
癌が進行する中で、後の事を考え、お金を貯めるウスバル・・・
「ビューティフル」というタイトルとは裏腹に、ストーリーはどこを見ても「ビューティフル」ではない。それどころか、社会の底辺で一生浮かばれないまま蠢く人々の姿を見せつけられ、何とも言いようのない気持ちになりさえする。
しかし、よくよく観ていくと、ウスバルは一人、周りの人のために働く。
劣悪な倉庫で、寒さに震えながら寝る中国人たちにストーブの手配をしたり、熱心に仕事の口利きをしたり。逮捕されて国外退去処分になったセネガル出身の男の妻子に住むところを提供したり。元妻との復縁を試みたり。
そして何より子供たちへの愛情。
社会の底辺にいながらも、それとなく互いに助け合う人たち。
救いのないようでいても、そこには救いがある。
ひょっとしたら、それこそがビューティフルなのかもしれないと思う。
ウスバルの能力は、しっかりと受け継がれていく。
それは誰かの役に立つのだろうか。
そんな余韻を残して終わる映画である・・・
評価:★★☆☆☆