
2011年 日本
監督: アミール・ナデリ
出演:
西島秀俊:秀二
常盤貴子:陽子
菅田俊:正木
笹野高史:ヒロシ
でんでん
<映画.com>
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イランの名匠アミール・ナデリ監督が西島秀俊を主演に迎え、殴られ屋をして金を稼ぐ売れない映画監督の映画への愛情を描き出す。いつも兄からお金を借りて映画を撮っていた秀二だったが、どの作品も映画館にかけることができない。そんなある日、秀二は兄が借金のトラブルで死んだという報せを受け、兄が自分のために借金をしていたことを知る。罪悪感にさいなまれる秀二は、兄の痛みを分かち合い、借金を返済するため、兄が死んだヤクザの事務所で殴られ屋を始めるが……。青山真治が共同脚本で参加。共演は常盤貴子、笹野高史ら。
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映画監督の秀二は、いつも兄から金を借りて映画を撮っていたが、どの作品も商業映画として映画館でかけることさえできずにいた。映画に賭ける情熱が迸る主人公の秀二。十分な資金もなく、やむなく自分が理想とする過去の名作映画の上映会を細々と続けている。
そんなある日、秀二は兄が借金トラブルで死んだという知らせを受ける。
兄はヤクザの世界で働いていて、そこから秀二のために借金をしていたのだった。
秀二は何も知らずにいた自分を責め、兄のボスである正木から、残った借金額を聞かされる。
1,300万円に及ぶ借金。
しかし自分の映画製作資金すら満足に手当てできない秀二に返すあてなどあるはずもない。
そこに現れたヤクザの親分。
面白半分に秀二を殴り、その対価を現金で渡す。
秀二は、それをヒントに殴られ屋をすることで返済することを決める。
場所は兄が殺された事務所のトイレの中。
殴られる痛みと苦痛とに耐えるには、その場所しかないと決めての事。
こうして、10日程しかない借金返済期限に向けて、秀二のチャレンジが始る・・・
ちょっと変わった映画である。
過去の名作映画に対する敬愛が溢れているという点では、「ヒューゴの不思議な発明」に相通じるものがあるかもしれない。しかし、秀二は過去の名作を褒め称え、現代の映画は商業主義に堕落した映画と批判するが、その基準ははっきりしない。
現代の商業主義の大作でも、過去の名作に負けず劣らず優れている。
こんなところが、今一歩この映画に共感できないところとなっている。
そして秀二が始める殴られ屋。
そもそも兄がどうして殺されたのか、(しかも自分の組の事務所のトイレで、だ)よくわからないし、場所が場所なだけに、身内の犯行のような感じもする。
そうした部分もモヤモヤ感が拭えない。
さらに1,300万円の借金完済には、1発1万円としても1,300発。
10日あまりの間にこれだけ殴られたら普通死ぬだろう。
さらに殴るヤクザもそんなに毎日金を払って殴りたいのだろうか、という疑問も拭いきれない。結局のところ、どこか不自然なのである。
秀二が批判する商業主義に毒された映画とは言わないが、名作にはほど遠い独りよがりさに溢れた映画だと言える。
結末的には面白いオチだったかもしれないが、プロセスがねぇ。
出演者は、常盤貴子のいつも伏し目がちな陽子といい、ヒロシといい、主演の西島秀俊も雰囲気としては良かったと思うのだが、こういうのは脚本のせいなのだろうか。
今一となってしまっている映画である・・・
評価:★★☆☆☆