
原題: Empire of the Sun
1987年 アメリカ
監督: スティーヴン・スピルバーグ
出演:
クリスチャン・ベール:ジム
ジョン・マルコヴィッチ:ベイシー
ミランダ・リチャードソン:ヴィクター
ナイジェル・ヘイヴァース:ローリンズ医師
伊武雅刀:ナガタ
ガッツ石松
<Movie Walker 解説>
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第2次大戦下の中国を舞台に、日本軍の収容所の中で過ごす11歳のイギリス少年の成長過程を描く作品。J・G・バラードの自伝的色彩の強い同名の小説を基に「カラーパープル」のスティーヴン・スピルバーグが監督・製作。共同製作にキャスリーン・ケネディ、フランク・マーシャル。脚本は「未来世紀ブラジル」のトム・ストッパード、撮影は「ハリーとヘンダスン一家」のアレン・ダヴュー、音楽は「イーストウィックの魔女たち」のジョン・ウィリアムス(2)が担当。出演はクリスチャン・ベール、ジョン・マルコヴィッチ、ミランダ・リチャードソンほか。
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この映画を初めて観たのは、もう25年も前の事。
主人公の少年が、その後「ダークナイト」他の映画で注目俳優になるクリスチャン・ベールだとは想像もできなかった。改めて観てみると、やはりそれなりの面影はある。
物語は、1941年から始る。
クリスマスを迎えた上海。
英国租界の邸宅に両親と暮らすジム少年(クリスチャン・ベール)は、学校の勉強よりも空を飛ぶことに心を奪われていた。
特に日本軍の「零戦」が憧れの的であった。
両親とともに出かけた仮装パーティ。
下界の中国人たちの貧しい暮らしと仮装パーティーはいかにも対照的。
次第に戦雲漂う中、ジム一家も上海から脱出する準備を始めたが、時すでに遅く、日本軍が怒濤の如く市街に進攻してくる。
砲弾、銃声の飛び交う大混乱の中で、ジムは両親と離ればなれになってしまう。
庇護してくれる者のない中、飢えに苦しむところをジムは、ベイシー(ジョン・マルコヴィッチ)とフランク(ジョー・パントリアーノ)の2人のアメリカ人に拾われる。
しかし、ある夜、2人を邸宅に連れてきたところ日本軍に出くわし、3人は収容所へと送られてしまう。以後、終戦までを不自由な中で過ごす事になる・・・
冒頭、両親の詳しい背景はわからないが、かなり贅沢な暮らしをしていた主人公のジム。
物乞いを横目に、学校から車で帰ってくる。
貧しい中国人たちが溢れかえる中、仮装パーティに集まる白人たち。
上空を日本軍機が飛び交い、やがて帝国陸軍が進軍してくる。
このあたりの臨場感はなかなかのものだと思う。
登場する日本軍は、英国人の目から見れば敵軍であり、憎き存在として描かれるのも仕方ないところ。ただ、夕陽をバックにしたパイロットたちの姿や、特攻に飛び立つのであろう航空兵たちの哀しげな出陣風景など、必ずしも悪一色というわけでもない。
どこか絵画的なシーンが、そう思わせてくれるのである。
初めは幼かった少年が、両親とはぐれて、たった一人での収容所生活。
あまり感心しない大人たちに混じっているうちに、否応なく成長していく事になる。
初めは憧れていた零戦だが、やがて米軍のP51の攻撃に歓声を上げるようになる。
だが、米軍に心を許しているようにも見えない。
仲良くなった日本人少年兵との交流。
そこには、大人とは違う敵味方の価値観が流れているようでもある。
困難な時代の中、一人の少年の生きるための闘い。
少年クリスチャン・ベールの一人舞台といった感がある。
バックに流れるジョン・ウィリアムスの音楽も実に印象的。
久々に観たが、インパクトのある映画である・・・
評価:★★★☆☆