
2013年 日本
監督: 宮崎駿
出演(声):
庵野秀明:堀越二郎
瀧本美織:里見菜穂子
西島秀俊:本庄
西村雅彦:黒川
スティーブン・アルパート:カストルプ
風間杜夫:里見
國村隼:服部
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宮崎駿監督が『崖の上のポニョ』(2008)以来5年ぶりに手がけた長編作。ゼロ戦設計者として知られる堀越二郎と、同時代に生きた文学者・堀辰雄の人生をモデルに生み出された主人公の青年技師・二郎が、関東大震災や経済不況に見舞われ、やがて戦争へと突入していく1920年代という時代にいかに生きたか、その半生を描く。幼い頃から空にあこがれを抱いて育った学生・堀越二郎は、震災の混乱の中で、少女・菜穂子と運命な出会いを果たす。やがて飛行機設計技師として就職し、その才能を買われた二郎は、同期の本庄らとともに技術視察でドイツや西洋諸国をまわり、見聞を広めていく。そしてある夏、二郎は避暑休暇で訪れた山のホテルで菜穂子と再会。やがて2人は結婚する。菜穂子は病弱で療養所暮らしも長引くが、二郎は愛する人の存在に支えられ、新たな飛行機作りに没頭していく。宮崎監督が模型雑誌「月刊モデルグラフィックス」で連載していた漫画が原作。「新世紀エヴァンゲリオン」の監督として知られる庵野秀明が主人公・二郎の声優を務めた。松任谷由美が「魔女の宅急便」以来24年ぶりにジブリ作品に主題歌を提供。第70回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門に選出され、第86回アカデミー賞では長編アニメーション部門にノミネートされるなど、海外でも高い評価と注目を集めた。
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宮崎駿監督のアニメはよく観ている。
ただし、今回はこれまで観てきた宮崎駿監督のアニメとはちょっと傾向が違う。
それは、実在の人物をモデルにしたという点が大きいかもしれない。
観終わってみると、これもまたいいものだと実感した次第である。
物語は田園風景ののどかな田舎に暮らす一人の少年二郎の夢から始まる。
空を飛ぶことを夢見、学校では先生に海外の航空雑誌を借り、英語辞書片手に読む。
夢の中でイタリアの航空機設計家カプローニ伯爵に、近眼でも設計はできると励まされ、夢を育てていく。
やがて東大に入った主人公堀越二郎は、関東大震災の混乱の中で、少女菜穂子とその女中を助ける。東大生になっても、航空機の設計という夢は変わらず、航空機の設計会社に就職する。
そして上司の厳しいながらも心ある指導と期待を受け、ヨーロッパ視察を経て、海軍の航空機の設計を手掛けていく・・・
少年時代からの夢を追う堀越二郎の物語を縦糸に、そして関東大震災で出会った少女菜穂子との恋愛をサイドストーリーに映画は進んでいく。解説によると、このサイドストーリーの部分は堀辰雄の小説『風立ちぬ』から着想されているらしい。純粋なる実話というわけではないようであるが、映画的にはまったく問題ない。
この時代、日本はまだ海外の先進国に後れを取っている。
二郎たちは、ドイツの航空機メーカーユンカースに視察に行くが、コピーを恐れたユンカースの社員が二郎たちに自由に見学させないというシーンが出てくる。
当時世界最先端であったドイツの工業技術。
そしてそれに必死に追いつこうとする我が国の先人たち。
現在の日本の礎を改めて見る思いである。
アニメとはいうものの、空を飛んだり、動きのあるシーンでは、実写と見まがうほどの描写。アニメも馬鹿にしたものではない。そしてサイドストーリーの部分でも心を動かされる。当時死の病と言われた結核に罹っていた菜穂子。二郎はその身を案じつつも夜遅くまで仕事に打ち込む。「男は仕事」という時代の、この頃はその先駆けだったのかもしれない。
いつのまにかじっくりと観入ってしまっていた。
実在の堀越二郎氏は零戦の設計者として知られているが、物語はその部分は描かれていない。
いろいろと思うところがあったのかもしれないが、だから不足感があるかというとそんなことはない。
アニメではあるものの、大人も十分に堪能できる内容。
味わい深い映画である・・・
評価:★★☆☆☆