
原題: It's a Wonderful Life
1946年 アメリカ
監督: フランク・キャプラ
出演:
ジェームズ・ステュアート:ジョージ・ベイリー
ドナ・リード:メアリー・ハッチ
ライオネル・バリモア:ヘンリー・ポッター
ヘンリー・トラヴァース:クラレンス
トーマス・ミッチェル:ビリー・ベイリー(ジョージの叔父)
ボーラ・ボンディ:ジョージの母親
フランク・フェイレン:アーニー(タクシードライバー)
ワード・ボンド:バート(警官)
グロリア・グレアム:バイオレット
H・B・ワーナー:ガウワー(薬局店主)
トッド・カーンズ:ハリー・ベイリー(ジョージの弟)
ヴァージニア・パットン:ルース・ディキン
サミュエル・S・ハインズ:ジョージの父親
シェルドン・レナード:ニック(バーテンダー)
<Movie Walker解説>
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キャプラ、ワイラー、スティーヴンスの3人が協力して設立したリバ ティ・プロの第1回作品(1946年)で、フランク・キャプラが製作・監督に当ったヒューマニスティック・コメディ。フィリップ・ヴァン・ドレン・スターンの物語を、「花嫁の父」のコンビ、フランセス・グッドリッチとアルバート・ハケット、それにキャプラが協力して脚色した。撮影はジョゼフ・ウォーカー(「ジョルスン物語」)、音楽は「楽園に帰る(1953)」のディミトリ・ティオムキンの担当。主演は「裸の拍車」のジェームズ・スチュアート、「地上より永遠に」のドナ・リードで、ライオネル・バリモア(「栄光の星の下に」)、トーマス・ミッチェル(「真昼の決闘」)、ヘンリイ・トラヴァース、(「セント・メリイの鐘」)、グロリア・グレアム(「綱渡りの男」)、ワード・ボンド(「恋は青空の下」)らが助演する。
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折に触れ、古い映画を観るようにしている。
時間を経てもなお、名前が知れている映画にはやはり一見の価値があると思うからである。
そんな考えもあって今回選んだのが、1946年のアメリカ映画。
日本では終戦の翌年である。
主人公のジョージ・ベイリーは、苦境に立たされ、まさに橋から身投げをせんとしている。
彼を案じる祈りの声の多さに、神は2級天使のクラレンスを地上に派遣することにする。
うまく彼を救えれば、羽をもらえるとなり、張り切るクラレンス。そんなクラレンスに、助ける相手となるジョージについて知らしめようと、神は彼の人生をクラレンスに示す。物語は、そうしてジョージの子供の頃からスタートする。
氷の張った池で遊んでいて、池に落ちた弟を救い、それが元で風邪をこじらせ左耳の聴力を失う。アルバイト先の薬局では、息子の死に動揺した店主が、薬の配合を間違えたのに気付き、惨事を防ぐ。世界一周旅行を夢見、大学への進学に際し旅行に出かけようとしたところ、父親が亡くなり経営していた住宅金融会社の経営を引き継がざるをえなくなる。
弟の卒業を待って、経営を譲ろうとしていたが、弟は婚約者の父親の工場を継ぐことになり、自分の大学進学も諦める。結婚し、ハネムーンに出発する時に、自らが経営する住宅金融会社に取り付け騒ぎが起き、旅行費用として持っていた資金を使い急場をしのぐ。そんな風にして過ごし、いつしか4人の子供にも恵まれる。
だが、叔父の不注意で多額の現金をなくし、会社は窮地に追い込まれる。
自らの生命保険と引き換えにしようしていたのが、冒頭の場面。
そして、2級天使のクラレンスが、ジョージの前に現れる。
しかしこの天使、羽がないのはいいとして、見た目は冴えないおっさん。
天使のイメージとは程遠い。違和感たっぷりなのであるが、まぁストーリー展開としてはやむをえないのかもしれない。
「自分など生まれなければよかった」と嘆くジョージに、クラレンスはジョージが生まれなかった世界を見せる。時期的にもクリスマスだし、なんとなくディケンズの『クリスマス・キャロル』を彷彿させる展開である。あれは欲深い金持ちが、過去・現在・未来を見せられる話であったが、ここでは善人の主人公がその体験をする。この物語でも、強欲な金持ちヘンリー・ポッターが登場するが、神はこの強欲な男を改心させようとは思わなかったようである。
辛くても自分のいた元の世界がどんなに素晴らしかったか。
そして自分のやってきたことが、どれだけ人々の生活に影響を与えていたのか。
ラストでは、それまで自分のやってきたことがまさに実を結ぶ。
涙腺の弱い人は、ここでタオルが必要になるだろう。
古い映画で、モノクロで、天使はおっさんなのだが、内包するエッセンスには不変のものがある。なぜ名画と呼ばれるのか、観ればそれがよくわかる。時期的にもタイムリーであり、観てよかったと素直に思える映画である・・・
評価:★★★★☆