2015年12月31日

素晴らしき哉、人生!

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原題: It's a Wonderful Life
1946年 アメリカ
監督: フランク・キャプラ
出演: 
ジェームズ・ステュアート:ジョージ・ベイリー
ドナ・リード:メアリー・ハッチ
ライオネル・バリモア:ヘンリー・ポッター
ヘンリー・トラヴァース:クラレンス
トーマス・ミッチェル:ビリー・ベイリー(ジョージの叔父)
ボーラ・ボンディ:ジョージの母親
フランク・フェイレン:アーニー(タクシードライバー)
ワード・ボンド:バート(警官)
グロリア・グレアム:バイオレット
H・B・ワーナー:ガウワー(薬局店主)
トッド・カーンズ:ハリー・ベイリー(ジョージの弟)
ヴァージニア・パットン:ルース・ディキン
サミュエル・S・ハインズ:ジョージの父親
シェルドン・レナード:ニック(バーテンダー)

<Movie Walker解説>
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キャプラ、ワイラー、スティーヴンスの3人が協力して設立したリバ ティ・プロの第1回作品(1946年)で、フランク・キャプラが製作・監督に当ったヒューマニスティック・コメディ。フィリップ・ヴァン・ドレン・スターンの物語を、「花嫁の父」のコンビ、フランセス・グッドリッチとアルバート・ハケット、それにキャプラが協力して脚色した。撮影はジョゼフ・ウォーカー(「ジョルスン物語」)、音楽は「楽園に帰る(1953)」のディミトリ・ティオムキンの担当。主演は「裸の拍車」のジェームズ・スチュアート、「地上より永遠に」のドナ・リードで、ライオネル・バリモア(「栄光の星の下に」)、トーマス・ミッチェル(「真昼の決闘」)、ヘンリイ・トラヴァース、(「セント・メリイの鐘」)、グロリア・グレアム(「綱渡りの男」)、ワード・ボンド(「恋は青空の下」)らが助演する。
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折に触れ、古い映画を観るようにしている。
時間を経てもなお、名前が知れている映画にはやはり一見の価値があると思うからである。
そんな考えもあって今回選んだのが、1946年のアメリカ映画。
終戦の翌年である。

主人公のジョージ・ベイリーは、苦境に立たされ、まさに橋から身投げをせんとしている。
彼を案じる祈りの声の多さに、神は2級天使のクラレンスを地上に派遣することにする。
うまく彼を救えれば、羽をもらえるとなり、張り切るクラレンス。
そんなクラレンスに、助ける相手となるジョージについて知らしめようと、神は彼の人生をクラレンスに示す。
物語は、そうしてジョージの子供の頃からスタートする。

氷の張った池で遊んでいて、池に落ちた弟を救い、それが元で風邪をこじらせ左耳の聴力を失う。
アルバイト先の薬局では、息子の死に動揺した店主が、薬の配合を間違えたのに気付き、惨事を防ぐ。
世界一周旅行を夢見、大学への進学に際し旅行に出かけようとしたところ、父親が亡くなり経営していた住宅金融会社の経営を引き継がざるをえなくなる。

弟の卒業を待って、経営を譲ろうとしていたが、弟は婚約者の父親の工場を継ぐことになり、自分の大学進学も諦める。
結婚し、ハネムーンに出発する時に、自らが経営する住宅金融会社に取り付け騒ぎが起き、旅行費用として持っていた資金を使い急場をしのぐ。
そんな風にして過ごし、いつしか4人の子供にも恵まれる。

だが、叔父の不注意で多額の現金をなくし、会社は窮地に追い込まれる。
自らの生命保険と引き換えにしようしていたのが、冒頭の場面。
そして、2級天使のクラレンスが、ジョージの前に現れる。
しかしこの天使、羽がないのはいいとして、見た目は冴えないおっさん。
天使のイメージとは程遠い。
違和感たっぷりなのであるが、まぁストーリー展開としてはやむをえないのかもしれない。

「自分など生まれなければよかった」と嘆くジョージに、クラレンスはジョージが生まれなかった世界を見せる。
時期的にもクリスマスだし、なんとなくディケンズの『クリスマス・キャロル』を彷彿させる展開である。
あれは欲深い金持ちが、過去・現在・未来を見せられる話であったが、ここでは善人の主人公がその体験をする。
この物語でも、強欲な金持ちヘンリー・ポッターが登場するが、神はこの強欲な男を改心させようとは思わなかったようである。

辛くても自分のいた元の世界がどんなに素晴らしかったか。
そして自分のやってきたことが、どれだけ人々の生活に影響を与えていたのか。
ラストでは、それまで自分のやってきたことがまさに実を結ぶ。
涙腺の弱い人は、ここでタオルが必要になるだろう。

古い映画で、モノクロで、天使はおっさんなのだが、内包するエッセンスには不変のものがある。
なぜ名画と呼ばれるのか、観ればそれがよくわかる。
時期的にもタイムリーであり、観てよかったと素直に思える映画である・・・

評価:★★★★☆






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2015年12月30日

アメリカン・スナイパー

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原題: American Sniper
2014年 アメリカ
監督: クリント・イーストウッド
出演: 
ブラッドリー・クーパー:クリス・カイル
シエナ・ミラー:タヤ・カイル
ルーク・グライムス:マーク・リー
ジェイク・マクドーマン:ビグルス
ケビン・ラーチ:ドーバー

<映画.com>
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「ミリオンダラー・ベイビー」『許されざる者』の名匠クリント・イーストウッドが、米軍史上最強とうたわれた狙撃手クリス・カイルのベストセラー自伝を映画化。米海軍特殊部隊ネイビー・シールズの隊員クリス・カイルは、イラク戦争の際、その狙撃の腕前で多くの仲間を救い、「レジェンド」の異名をとる。しかし、同時にその存在は敵にも広く知られることとなり、クリスの首には懸賞金がかけられ、命を狙われる。数多くの敵兵の命を奪いながらも、遠く離れたアメリカにいる妻子に対して、良き夫であり良き父でありたいと願うクリスは、そのジレンマに苦しみながら、2003年から09年の間に4度にわたるイラク遠征を経験。過酷な戦場を生き延び妻子のもとへ帰還した後も、ぬぐえない心の傷に苦しむことになる。イーストウッド監督とは初タッグのブラッドリー・クーパーが、主演兼プロデューサーを務めた。********************************************************************************************************

今や“名優”から“名監督”になりつつあるクリント・イーストウッド監督作品。
実在の米軍兵士の自伝を基にした映画だという。

その主人公クリス・カイルは、幼少期から父親に射撃を伝授される。
テキサス生まれの生粋のカーボーイに憧れ、ロデオに明け暮れている。
そんなある日、アメリカ大使館爆破事件をニュースで見て愛国心を掻き立てられ、海軍に志願する。
そして名高い激しい訓練を耐え抜き、シールズに合格する。

やがて最愛の妻となるタヤと出会い結婚するが、3.11が勃発し、ハネムーンもそこそこにイラクへと派遣される。
すでに狙撃兵となっていたクリスは、その腕前を生かし、味方を護衛するため敵を次々に打ち倒す。

ショッキングな一例が、冒頭で展開される。
米軍の一行を前に怪しげな動きのあるビルから、母と子と思しき親子連れが出てくる。
母親は服の陰から息子にそっと対戦車弾を渡す。
そして息子はそれを抱えて米軍兵の方向へと走り出す・・・
これが大人の敵兵ならば躊躇もすまい。
されど女子供となると、「わかってはいても」というところがある。

スコープに映る敵を次々と打ち倒すクリス。
いつしか「レジェンド」という異名をとるようになるが、なんとトータル160人に及ぶ敵を倒したというから凄い事である。
その数とラストとの関連には、目に見えぬ何かを感じざるをえない。

過酷な戦場経験からPTSDになる兵士が多い。
この映画でも多く出てくるが、クリスは160人を狙撃してもなお「味方を守るためだった」と語り、さらに「もっと多くの仲間を守りたかった」と語っている。
都合4度にわたってイラクに行っているが、自ら望んで行っているところが、他の「命令されてやむなく」という兵士と違っている。

そうさせているのは、愛国心。
祖国を守るという愛国心は志願した時から不変だった様子。
今となっては、イラク戦争はアメリカの防衛戦争ではなく、石油利権確保のためだったとされている。
現場の兵士の意識との違いがもの哀しい。

妻タヤと携帯で話す途中で戦闘が始まるシーンがある。
タヤからすれば、電話口から銃声が聞こえてくるだけでオロオロするばかり。
いかにも現代風であるが、そのうちリアルな戦闘シーンを家庭で見ることができてしまうかもしれないと思える。
意図せざるとも、身内が戦死する瞬間を目撃してしまう可能性だってあるかもしれない。
映画とは関係ないところで、そんなことを想像してもいた。

実話の持つ迫力もあるだろうが、リアルな戦場描写は観ていても十分迫力がある。
さすがクリント・イーストウッド監督と思わざるをえない。
『プライベート・ライアン』を抜いて、アメリカで公開された戦争映画史上最高の興行収入を記録したというのも、納得の一作である・・・

評価:★★★☆☆




posted by HH at 17:50 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | 実話ドラマ

2015年12月29日

誰よりも狙われた男

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原題: A Most Wanted Man
2013年 アメリカ/イギリス/ドイツ
監督: アントン・コルベイン
出演: 
フィリップ・シーモア・ホフマン:ギュンター・バッハマン
レイチェル・マクアダムス:アナベル・リヒター
ウィレム・デフォー:トミー・ブルー
ロビン・ライト:マーサ・サリヴァン
グリゴリー・ドブリギン:イッサ・カルポフ
ホマユン・エルシャディ:ファイサル・アブドゥラ博士
ニーナ・ホス:イルナ・フライ
ダニエル・ブリュール:マキシミリアン

<シネマトゥデイ>
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2014年2月に急逝したフィリップ・シーモア・ホフマン最後の主演作となった、ジョン・ル・カレの小説を実写化したスパイサスペンス。ドイツのハンブルクを舞台に、対テロ諜報チームを率いる男がテロリストの資金源となっている者の正体をつかんでいく。監督は『ラスト・ターゲット』などのアントン・コービン。『きみに読む物語』などのレイチェル・マクアダムス、『シャドウ・オブ・ヴァンパイア』などのウィレム・デフォーら実力派が共演。息詰まる展開に加え、ホフマンの熱演にも引き込まれる。
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スパイといえば、ジェームズ・ボンドとかイーサン・ハントとか、イケメンでなんでも万能にこなすスーパーマンというイメージがあるが、実際はそんなこともないのだろう。
この映画に登場するスパイは、ジェームズ・ボンドとは対極的。
でっぷりと太り、キューバ産の葉巻ならぬ安そうなタバコを限りなくくゆらせる男、ギュンター・バッハマン。

舞台となるのは、ドイツ。
バッハマンはドイツの諜報機関に所属しているようである(映画だけではよくわからない)。
そのバッハマンの元に、ある日イスラム過激派のメンバーであるイッサが密入国したとの報告がもたらされる。
チームは早速行動に移る。

そのイッサは伝手を辿り、知人宅に身を寄せながら、弁護士のアナベルに助けを求める。
ロシアから逃れてきたイッサはチェチェン人。
ロシアの刑務所で拷問を受けた経緯を語り、アナベルに亡命希望を伝える。
また、同時にある人物へのコンタクトを依頼する。

その人物とは、銀行家のブルー。
実は、イッサの父親はブルーの銀行に大金を預けていたのである。
遺産としてこの受け取りを希望するイッサ。
そして、ブルーとアナベルに、ギュンターのチームが近づいていく・・・

イッサを追うのはギュンターのチームだけではなく、CIAのチームもこれを追う。
両者それぞれ思惑があり、対立と協調とが絡み合う。
そんな国家権力にマークされればなす術もないのが、弁護士のアナベルとイッサ。
それに銀行家のブルー。
先の分からない展開が面白い。

主演のフィリップ・シーモア・ホフマンはこれが遺作だという。
ねちっこい独特の喋り方と、体型が特徴的だったが、この映画ではそのいやらしさを存分に発揮。
存在感がある俳優さんだけに、これで見納めというのも残念な気がする。

レイチェル・マクアダムズは、プロの手にかかり翻弄される女性弁護士としてはイメージぴったりである。
この人、やっぱり『パッション』のような腹黒い役よりも、純粋に可憐な美人役が本当によく似合うと思う。

ジョン・ル・カレらしい濃厚なスパイ映画。
ストーリーでも十分に楽しめる映画である・・・

評価:★★☆☆☆





posted by HH at 16:25 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | スパイ

2015年12月28日

幸せの行方

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原題: All Good Things
2010年 アメリカ
監督: アンドリュー・ジャレッキー
出演: 
ライアン・ゴズリング:デヴィッド・マークス
キルスティン・ダンスト:ケイティ・マークス(キャサリン・マッカーシー)
フランク・ランジェラ:サンフォード・マークス
リリー・レーブ:デボラ・ラーマン
フィリップ・ベイカー・ホール:マルヴァーン・バンプ
ダイアン・ヴェノーラ:ジャニス・リゾー
クリステン・ウィグ:ローレン・フレック

<映画.com>
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ライアン・ゴズリング、キルステン・ダンスト主演で描くラブミステリー。大富豪の御曹司デビッドとごく普通の家庭で愛情に恵まれて育ったケイティは、出会ってすぐにひかれあう。周囲の反対を押し切って結婚した2人は田舎でつつましい生活を始め、やがてケイティが妊娠する。しかし一族の血を自分の代で終わらせたいと考えるデビッドは、ケイティに中絶を強要し……。実在の不動産王セイモア・ダーストの息子ロバート・ダーストの周辺で起きた夫人失踪事件と殺人事件をもとに映画化。
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冒頭からなんとなく不思議な感じが漂う映画。
「実在の事件にヒントを得た」という微妙な表現。
そして物語は、主人公のデヴィッド・マークスがケイティと出会うところから始まる。
初対面から流れるように恋愛関係となっていく。
デヴィッドは、ニューヨークで一大不動産業を営むマークス家の長男。
されど、デヴィッドは家業を避け、ケイティと二人で郊外で食料品店を始める。

二人の店の名前は、“All Good Things”。
「良品店」とでも訳すのであろうか、これがこの映画の原題となっている。
このまま二人で店を経営していたら、もしかしたら幸せに暮らしていたのかもしれない。
されど、マークス家の長男という立場がそれを許さない。
父親のサンフォード・マークスは、事あるごとに息子にプレッシャーをかけ、ついに家業に引き入れる。

デヴィッドは、実は子供のころ目の前で母親が飛び降り自殺するという暗い過去を引きずっている。
そして妊娠したケイティに中絶を強要する。
次第にヒビが入る夫婦関係。
仕事でも弟の方が評価され、弟の下で働くようになる。
次第に壊れ行くデヴィッド。
やがてデヴィッドとケイティに決定的な瞬間が訪れる・・・

結局、ケイティは行方不明となる。
のちに友人のデボラが書いた小説が、ケイティ失踪の状況に酷似しているということで、再捜査が始まる。
そして次々と事件が起こる。

デヴィッドは、逃げかくれて住んでいたアパートの隣人を殺した容疑で裁判にかけられる。
映画のストーリーは、デヴィッドがケイティを殺し、それを隠蔽するために次々と事件を起こしていくように描いていく。
ラストのテロップも含め、デヴィッドが犯人であるかのように描いているが、実際は死体遺棄で9か月刑務所に入っただけで済んだ様子。
強い非難調なのであるが、有罪にもなっていないケイティ殺害犯として描いていいのだろうかと疑問に思う。
そこで冒頭の微妙な表現に行き当たる。

実際、事件は実在の人物をモデルにしているようであるが、有罪になっていないのでそうとは描けず、あくまでも架空のストーリーとしているのである。
日本でもかつて「ロス疑惑」などと話題になった事件があったが、アメリカでも同様な事件があったということらしい。
真実がどうなのかは、知る由もない。

それはそれ、映画は映画。
映画としては、次第に壊れていくデヴィッドの心理描写が、個人的には印象的であった。
演じたライアン・ゴズリングも、一見さわやかな好青年風であるが、『ステイ』『ブルー・バレンタイン』『オンリー・ゴッド』のように、ちょっと普通じゃなかったり、荒れた様子が似合ってしまう雰囲気がある。
この映画でも、ケイティと出会った頃のさわやか好青年からの変化が、よくドラマの雰囲気を醸し出している。

タイトルからは、ハッピー・エンディングな映画を期待していたが、どっこい疑惑のドラマであった。
真実はどうなのだろう。
ちょっと気になった映画である・・・

評価:★★☆☆☆





posted by HH at 22:47 | 東京 ☁ | Comment(0) | TrackBack(0) | サスペンス

2015年12月27日

her/世界でひとつの彼女

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原題: her
2013年 アメリカ
監督: スパイク・ジョーンズ
出演: 
ホアキン・フェニックス:セオドア・トゥオンブリー
スカーレット・ヨハンソン: サマンサの声
エイミー・アダムス:エイミー
ルーニー・マーラ:キャサリン
オリヴィア・ワイルド:ブラインドデート
クリス・プラット:ポール
マット・レッシャー:チャールズ
ポーシャ・ダブルデイ:イサベラ

<映画.com>
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「マルコヴィッチの穴」「アダプテーション」の奇才スパイク・ジョーンズ監督が、「かいじゅうたちのいるところ」以来4年ぶりに手がけた長編作品。近未来のロサンゼルスを舞台に、携帯電話の音声アシスタントに恋心を抱いた男を描いたラブストーリー。他人の代わりに思いを伝える手紙を書く代筆ライターのセオドアは、長年連れ添った妻と別れ、傷心の日々を送っていた。そんな時、コンピューターや携帯電話から発せられる人工知能OS「サマンサ」の個性的で魅力的な声にひかれ、次第に“彼女”と過ごす時間に幸せを感じるようになる。主人公セオドア役は『ザ・マスター』のホアキン・フェニックス。サマンサの声をスカーレット・ヨハンソンが担当した。ジョーンズ監督が長編では初めて単独で脚本も手がけ、第86回アカデミー賞で脚本賞を受賞。
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主人公のセオドアは、最愛の妻と別居中で、手紙の代筆をする会社に勤めている。
PCに向かって言葉を発すれば、それが適度な筆跡と用紙が選択されて出来上がるという優れもの。
舞台は今より少し未来のようである。
妻に未練たっぷりのセオドアは、仕事以外何をする気力もなく、友人の誘いも断る日々。

そんなある日、セオドアは最新鋭のAIのコマーシャルを偶然見つけ、購入する。
早速PCにインストールし、質問に答えていくと、やがてセットアップされた人工知能型OSが語りかけてくる。
女性の声を選択したセオドアに、OSは「サマンサ」と名乗る。

『ターミネーター』『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』のように人類を滅ぼそうとするAIもあれば、ここに出てくるAIは人間の話し相手となる穏やかなもの。
しかも優しげな女性の声となれば、実現するとかなり需要が高そうな気がする。
人は誰にでも言えない事を抱えているものだろうし(たぶんだが・・・)、そんな事を話せて相槌でも打ってもらえるなら、相当な満足感が得られそうな気がする。

セオドアも間もなくサマンサにどっぷりとはまることになる。
今よりも少し技術が進化していて、耳にイアフォンをセットし、携帯端末を持ち歩けばいつでもどこでもサマンサと会話ができる。
肉体こそないものの、24時間いつでも常に身近にいる存在となっていく。
(この肉体がないというハンディを克服するためにサマンサが考えた方法はなかなかである)

いつしか明るくなっていくセオドア。
その気持ちはよく伝わってくる。
こんなAIがあったら欲しいと素直に思う。
明るくなったセオドアが、正式に離婚するため妻のキャサリンに会い、サマンサのことを告白する。
当然、白い目で見られてしまうのであるが、あまりのめり込むとアニメの少女に恋するオタクと同レベルで見られる危険性もあるということである。

しかし、それ以外では実に完璧な存在なわけで、秘書的に頼み事をしても完璧に応えてくれるとなると、「付き合い方」次第では、犬や猫が青くなるかもしれないと思ってみたりする。
日々進化していくAIであるが、ある日のアップデートを境に、その裏側が見えてしまう。
当たり前っちゃぁ当たり前なのであるが、「入れ込んでいた」側からすればそれは愕然とする事実。
受け入れきれないセオドアに、新たな苦悩が訪れる。

未来社会には希望もあれば、それに伴う新たな問題もある。
こういうAIが普及すると、便利な反面、モテない男は実在の女性より確実にAIにのめり込むだろうし、結婚して理想と現実を知った者の新たな逃げ場所になるかもしれない。
そんなあれこれを想像してみたりしたが、それはそれで一つの問題提起なのかもしれない。

サマンサの声を担当しているのは、スカーレット・ヨハンソン。
個人的にすっかりブラック・ウィドゥというイメージが定着しつつあるが、かなり出演作品も観ているせいか、声もわかるようになっている。
(たぶん声だけ聞いても聞き分けられるだろう)
サマンサとブラック・ウィドゥとは相容れないが、それはそれで楽しめる。

一家に一台、いつか欲しいサマンサ。
そんな未来社会を期待したくなった一作である・・・


評価:★★☆☆☆





posted by HH at 12:29 | 東京 ☀ | Comment(0) | TrackBack(0) | ファンタジー