
原題: 賽コ克・巴萊 /Seediq Bale
2011年 台湾
監督: ウェイ・ダーション
出演:
リン・チンタイ(林慶台): モーナ・ルダオ(壮年)
マー・ジーシアン(馬志翔): タイモ・ワリス
安藤政信: 小島源治
河原さぶ: 鎌田弥彦
ビビアン・スー(徐若瑄): 高山初子(オビン・タダオ)
ダーチン(大慶): モーナ・ルダオ(青年)
木村祐一: 佐塚愛佑
シュー・イーファン(徐詣帆): 花岡一郎(ダッキス・ノービン)
スー・ダー(蘇達): 花岡二郎(ダッキス・ナウイ)
ルオ・メイリン(羅美玲): 川野花子(オビン・ナウイ)
田中千絵: 小島マツノ
<シネマトゥデイ>
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日本による統治下の台湾で実際に起こった、先住民族のセデック族と日本軍とのし烈な戦い「霧社事件」を映画化した歴史大作の後編。民族の誇りを胸に武装蜂起したセデック族と反撃に出た日本軍による激しい戦闘と、戦いの陰で悲しい運命をたどった人々の姿を描く。『海角七号/君想う、国境の南』のウェイ・ダーション監督がメガホンを取り、リン・チンタイ、安藤政信、ビビアン・スーらが出演。日本軍の攻撃にひるむことなく戦う戦士や、壮絶な決断をする女性たちなど、セデック族の生きざまのすさまじさに圧倒される。
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セデック族の予期せぬ襲撃により、日本人は女子どもの区別なく次々と殺害されていく。かろうじて難を逃れた警官の連絡により、日本軍が救援・制圧に動き出す。しかし、険しい山中では思うように兵士も動けず、地の利を知り尽くしたセデック族に苦闘を強いられる。一方、セデック族の女性たちは、日本軍の報復を恐れて山中に避難するが、食料が不足することを案じ、また日本軍の強さを案じ、足手まといを避けるべく集団自決するという結論に達する・・・
前編に続く後編では、セデック族対日本軍の対決に焦点が当てられる。セデック族も一枚岩ではなく、日本軍に協力する部族も出てくる。もともと互いに縄張りを巡って対立し、首を狩りあってきた間柄となると、そう簡単にも行かない。後の日中戦争では相対立する国民党と共産党が「共通の敵」を前に手を組んだ。しかし、ここではタイモ・ワリス率いる部族は日本軍と手を組む。
圧倒的な軍事的優位を誇る米軍もベトナムのジャングルでは苦戦し、ベトコンに敗退した。この映画でも日本軍は険しい山中でセデックの攻撃に苦戦の連続。300人のセデック族に数千人の日本軍が翻弄される様は、エンターテイメントとしては面白い。ただし、史実は異なるようで、日本軍の被害は警官も含めて30人未満だったというから、あくまでもエンターテイメントに徹しているのだろう。
日本軍もセデック族が持たない重火器を擁して反撃する。そして航空機による毒ガス攻撃も行うが、これは史実通りであったようである。日本側も無抵抗な女子供が犠牲になっており、「頭に血が上っ」ていたのかもしれない。史実と違うところはあっても、その原因はやはり日本軍の統治とその方法にあったことは間違いないであろうし、セデック側に「正義の視点」をおいてみるのもおかしくはない。
セデック族の子孫の人たちもいまさら祖先の生活には戻りたいと思わないだろうし、文明衝突の悲劇と言えなくもないが、日本の主張する「文明化」の功罪は判断が難しいところである。ただし、首狩りの習慣だけは、やっぱり未開文明の劣った習慣として過去の遺物にしていいと思うところである。
日本が徹底して悪者である映画であるが、それほど嫌悪感はなく、逆にいろいろと考えさせてくれる映画である。単なるエンターテイメントではなく、得るものが多いと感じるのは、やっぱり親日的な台湾の映画だからだろうかと思える映画である・・・
評価:★★☆☆☆