2016年06月26日

【クリード:チャンプを継ぐ男】My Cinema File 1565

クリード-チャンプを継ぐ男.jpg

原題: Creed
2015年 アメリカ
監督: ライアン・クーグラー
出演: 
マイケル・B・ジョーダン: アドニス・ジョンソン
シルベスター・スタローン: ロッキー・バルボア
テッサ・トンプソン:ビアンカ
フィリシア・ラシャド: メアリー・アン・クリード
アンソニー・ベリュー: “プリティ”・リッキー・コンラン

<映画.com>
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シルベスター・スタローンを一躍スターに押し上げた代名詞『ロッキー』シリーズの新たな物語。ロッキーのライバルであり盟友であったアポロ・クリードの息子アドニス・ジョンソンが主人公となり、スタローン演じるロッキーもセコンドとして登場する。自分が生まれる前に死んでしまったため、父アポロ・クリードについて良く知らないまま育ったアドニスだったが、彼には父から受け継いだボクシングの才能があった。亡き父が伝説的な戦いを繰り広げたフィラデルフィアの地に降り立ったアドニスは、父と死闘を繰り広げた男、ロッキー・バルボアにトレーナーになってほしいと頼む。ボクシングから身を引いていたロッキーは、アドニスの中にアポロと同じ強さを見出し、トレーナー役を引き受ける。アドニス役は「フルートベール駅で」の演技が高く評価されたマイケル・B・ジョーダン。同じく「フルートベール駅で」で注目された新鋭ライアン・クーグラーが監督・脚本。第88回アカデミー賞ではスタローンが助演男優賞にノミネート。スタローンにとっては、『ロッキー』以来のアカデミー賞ノミネートとなった。
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『ロッキー・ザ・ファイナル』で大団円だと思っていたシリーズ。まさかこう言う形で次があるとは思ってもいなかった。でもロッキーが再びリングに上がるというのもなんだし、これはこれで興味を惹かれて迷わず観る。

主人公は、かつてロッキーと死闘を演じたアポロの息子アドニス。それも愛人の息子というおまけつき。ケンカに明け暮れて施設に収容されていたところをアポロの未亡人メリーアンに引き取られる。さすが元チャンピオンの家だけあって、豪邸に住むメリーアン。アドニスは何不自由ない暮らしを送り、まともな仕事にもついている。しかし、心の中でボクシングに対する衝動は抑えられない。

ひっそりとメキシコでリングに上がり、14戦全勝の記録を残す。そして抑えきれない衝動に動かされ、仕事を辞め父のジムに入門を申し入れる。しかし、あっさり断られたアドニスは、反対する母を振り切ってフィラデルフィアへ向かう。そこは亡き父のライバル、ロッキーのいる町。アドニスは、『ロッキー・ザ・ファイナル』でも登場したレストラン「エイドリアン」を訪ねて行く。

そしてロッキーのコーチが始まるのであるが、それはかつてロッキーがミッキーから受けたコーチを受け継ぐもの。鶏を追うトレーニング、そしてフィラデルフィアの街中を走るランニング。どうせなら朝起きて生卵を飲み干してからトレーニングを始めて欲しかったし、肉をサンドバッグに見立てたトレーニングや、ロシアで行ったトレーニングなんかも復活させて欲しかった気がする。

そうして力をつけたアドニスが、やがて英国のスーパースターコンランに目をつけられ、対戦を求められる。ロッキーがアポロから指名されたのに似ている。肝心の試合は、なかなかの迫力。実際のボクシングでは、いいパンチが入ればそれで試合は終わってしまうから、ここまでの殴り合いは映画ならではかもしれない。いずれにせよ、ロッキーのファイトが受け継がれたことは間違いないだろう。

気になるのは今後だろう。単なる『ロッキー』シリーズのスピンアウトで終わるのか、シリーズ最終作となるのか、あるいはこれが新たな『クリード』シリーズの幕開けとなるのか。幕開けとしては、ちょっとインパクトが弱かったかもしれないが、そうなっても面白いと思う。

『エクスペンタブルズ』シリーズでは、まだまだ第一線で活躍しているスタローンも、ロッキーとしては衰えを見せている。その姿にも哀愁を感じさせ、時間の流れを感じさせる。『ロッキー』から40年経っていることを考えると、それも自然であり、かつこれだけ長く続くシリーズも凄いと思う。

その金字塔的なシリーズの一作とするのに問題は全くない。
今後の展開を期待したい映画である・・・


評価:★★★☆☆








posted by HH at 17:02| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | スポーツドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月25日

【ラストベガス】My Cinema File 1564

ラストベガス.jpg

原題: Last Vegas
2013年 アメリカ
監督: ジョン・タートルトーブ
出演: 
マイケル・ダグラス:ビリー
ロバート・デ・ニーロ:パディ
モーガン・フリーマン:アーチー
ケヴィン・クライン:サム
メアリー・スティーンバージェン:ダイアナ
ジェリー・フェレーラ:ディーン
ロマニー・マルコ:ロニー
ロジャー・バート:モーリス
ジョアンナ・グリーソン:ミリアム
マイケル・イーリー:エズラ

<シネマトゥデイ>
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マイケル・ダグラス、ロバート・デ・ニーロ、モーガン・フリーマン、ケヴィン・クラインら大物オスカー俳優たちが豪華共演を果たしたドラマ。老いても気持ちだけは子ども時代から変化のない友人たちが、ラスベガスを舞台に大騒ぎする一夜を描き出す。監督は『ナショナル・トレジャー』シリーズなどのジョン・タートルトーブ。友情に夫婦愛に恋愛などさまざまな要素が絡み合う極上の物語に引き込まれる。
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ビリー、パディ、アーチー、サムは10代の頃からの幼馴染。長い付き合いの彼らも70代となり、それぞれの家庭の事情や持病を抱えている。そんな中で、唯一若々しいビリーが32歳の女性と結婚することになる。ラスベガスでの挙式を前に、久々に会ってバチェラー・パーティをやろうということになる。

持病を抱えるアーチーは、心配する息子を欺いて家を出る。サムは妻にコンドームとバイアグラを渡され、元気を出してこいと見送られる。二人は、ビリーと不仲のパディを強引に連れ出し、ラスベガスで4人は再会する。しかし、みんなの幼馴染でもあったパディの妻の葬儀にビリーが出席しなかったことから、ビリーとパディの間には亀裂が入っている。

かつて訪れたことがあるラスベガスだが、泊まろうと思っていたホテルは改装中。そして4人は、たまたま入ったクラブで、若くはない歌手のダイアナと知り合う。ブラックジャックで大金を稼いだアーチーは、キャンセルされたセレブのスィートに部屋を確保する。そして様々なしがらみから解放された4人は、一夜の豪遊を楽しむことにする。

年を取っても人間頭の中は変わらない。サムが嘆く。「気持ちは17歳なのに体が動かない」。この気持ちはよくわかる。そして幼馴染は、子どもの頃から共に遊んだ仲間であり、その関係は何年経っても変わらない。幼馴染の友人たちと接している時間は、己の年齢を忘れるものである。家では孫を抱くことさえ労わられるアーチーや、亡き妻の写真を眺めて隣人の訪問さえ疎ましく思うパディが、羽目を外して楽しむ姿は実に楽しげである。

若者たちの中に年寄りが混じると、かなりの違和感があるのは事実だが、だからといって楽しむ場から遠ざかるのも寂しい気がする。恋愛も若者の特権とは思いたくないが、ただ年寄りの恋愛というのもサマにならないのも事実。ダイアナをめぐってパディとビリーがもめるのだが、それほどのものかと思わなくもない。

それはそれだが、長い間に育まれた友情は、時に不協和音が入ったりするが、揺るがぬ音色を育むもの。そんなハートウォーミングなストーリーは、素直に良いと思う。家族の存在も良いが、老後を楽しく過ごすには友や仲間の存在も欠かせないと思う。そんなことを考えさせてくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆









posted by HH at 16:16| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | コメディ/ラブコメ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月21日

【メイズランナー2:砂漠の迷宮】My Cinema File 1563

メイズランナー2-砂漠の迷宮.jpg

原題: Maze Runner: The Scorch Trials
2015年 アメリカ
監督: ウェス・ボール
出演: 
ディラン・オブライエン:トーマス
カヤ・スコデラーリオ:テレサ
トーマス・ブローディ・サングスター:ニュート
キー・ホン・リー:ミンホ
デクスター・ダーデン:フライパン
ジェイコブ・ロフランド:エリス
アレクサンダー・フローレス:ウィンストン
パトリシア・クラークソン:エヴァ・ペイジ
ローサ・サラザール:ブレンダ
ジャンカルロ・エスポジート:ホルヘ

<シネマトゥデイ>
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巨大迷路からの脱出劇をテーマに世界中で大ヒットした第1作の続編として、迷路を脱出した主人公たちを待ち受けていた次なる迷宮でのサバイバルを描くアクション。謎の迷路の出口にたどり着いた“選ばれた者”たちが、第2ステージでは砂漠を舞台に逃走劇を繰り広げる。第1作のディラン・オブライエンやカヤ・スコデラーリオが引き続き出演し、監督もウェス・ボールが続投する。砂漠での過酷なアクションや行く手を阻むトラップの数々、新たな仲間も加わり展開される友情と裏切りなど、前作を上回るステージに期待が高まる。
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最近、何となくシリーズもののように何部かに分かれて創られる映画が増えている気がするが、この映画もその一つ。目が覚めたら突然迷路に囲まれた村にいたという主人公の脱出劇を扱った『メイズ・ランナー』の続編である。

ようやくWCKDの迷路を脱出したトーマスたち。そこに現れた謎の武装集団にヘリに乗せられ、いずこかにある施設に送り込まれる。そこには同じような若者たちが大勢いて、食事もベッドも与えられ、一時の安堵を得る。しかしながら、トーマスは一人孤立している男エリスに興味を持つ。そして先に施設に連れてこられ、既に一人で探りを入れていたエリスとともに、施設で人体実験が行われていることを発見する。その実験がやがて自分たちに及ぶことを悟り、トーマスは仲間とともに施設を脱出する。

脱出したものの、外は砂漠の世界。そして突然襲い来るゾンビの群れ。施設でライトアームなる組織の話を聞き、WCKDと敵対しているライトアームこそが自分たちの味方になりうると遥かなる山を目指す。その過程で、どうやら世界はフレアという伝染病が蔓延し、それによって人類はゾンビと化した事、WCKDは免疫を持つ若者たちを使って治療薬を造ろうとしていることがわかってくる。

迷路からゾンビとがらりと様相が変わる。原作は3部作なようで、映画も3部作となっている。面白そうなものは何でも詰め込もうという原作者の意図なのだろうか。どうも前作の迷路との繋がりに無理がある気がしてならない。WCKDはゾンビの治療薬を開発しようとしており、その目的はどう考えても正しい。主人公たちがなぜWCKDを敵視し、逃げようとしているのかと言えば、その治療薬の人体実験に自分たちが使われようとしているからに他ならない。人類全体の利益を考えれば、WCKDにも正義があり、微妙なところである。

そうした思いはヒロインのテレサも抱いていて、トーマスとの間に微妙な隙間が生じる。どうも観ていて、すっきりと主人公に同調できないのは、そんなところにある。本来であれば、正義が悪を倒して終わるのであるが、WCKDにも正義がある以上、単純にはいかない。ここからどうストーリー展開させるのかわからないが、WCKDが負けると治療薬が開発できなくなるのではないかと心配になる。

単純に面白いと思う反面、どう決着させるのだろうかという不安もあり、この映画を単独で評価するのはなかなか難しい。評価もストーリーと同様、”to be continued”といったところであろうか。それにしてもやはり前作の迷路とのストーリーの「断絶」が気になるところ。何のための迷路だったのか、ここまで観た限りではわからない。それも合わせて、すべては最終章に期待したい映画である・・・


評価:★★☆☆☆





posted by HH at 22:39| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | SF/近未来ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月19日

【ナイトクローラー】My Cinema File 1562

ナイトクローラー.jpg

原題: Nightcrawler
2014年 アメリカ
監督: ダン・ギルロイ
出演: 
ジェイク・ジレンホール:ルイス・ブルーム
レネ・ルッソ:ニーナ・ロミナ
リズ・アーメッド:リック
ビル・パクストン:ジョー・ロダー
アン・キューザック:リンダ

<シネマトゥデイ>
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第87回アカデミー賞脚本賞にノミネートされたサスペンス。事件や事故現場に急行して捉えた映像をテレビ局に売る報道パパラッチとなった男が、刺激的な映像を求めるあまりに常軌を逸していく。脚本家として『ボーン・レガシー』などを手掛けてきたダン・ギルロイが、本作で監督に初挑戦。『ブロークバック・マウンテン』などのジェイク・ギレンホールを筆頭に、『マイティ・ソー』シリーズなどのレネ・ルッソ、『2ガンズ』などのビル・パクストンらが出演。報道の自由のもとで揺らぐ倫理という重いテーマが、観る者の胸をざわつかせる。
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「ナイトクローラー」とは、夜を這いつくばるというようなニュアンスなのだろうが、実に内容によくマッチしたタイトルであると思う。

主人公のルイスは、冒頭からいかにも怪しげな男。あちこちからモノを盗み、どうやらそれを売って暮らしている。一応、仕事には就きたいと思っているようで、盗品を売り込みに行った会社の社長に盗品だけではなく自らをも売り込む。しかし、盗品を売り込みに来た男をいくらそれを買っている立場とはいえ、雇う者などいない。

ある時、ルイスは偶然通り掛かった事故現場で被害者を助ける警官を撮影している男に出会う。男はいわゆるパパラッチ。撮った映像を目の前でテレビ局に売り込んでいるのを目撃し、「閃く」。早速、盗品を売って粗末なカメラと警察無線傍受セットを買い込むと、ポンコツの車を操って夜の街に繰り出して行く。

パパラッチの世界も、素人が真似をしてすぐにうまくいくものではないだろうが、素人なりに物怖じしないルイスは、事件現場では被害者を至近距離まで接近して撮影し、警官に追い払われる。プロが守る一線も素人にはわからない。しかしこの迫真の映像が、プロデューサーのニナに気に入られ、以後ルイスはニナの元に映像を届けるようになる。同時に仕事を探していたリックを雇い、コンビで夜の徘徊を始める。

パパラッチと聞くと、プライベートも関係なく人の迷惑顧みずに写真を撮りまくるというイメージがあるが、ルイスはまさにそれを地で行く。「いい映像」を撮るためなら、躊躇なく法もモラルも踏みつぶしていく。一方、ニナからはどんな映像にニーズがあるのかを聞き出し、「売れる映像」を撮る創意工夫も見せていく。この男、まともに働いていたら、仕事がデキる男になっていただろう。

ルイスにとっては、傷ついて横たわる被害者も「売れる材料」でしかない。事故現場では、「いい映像」を撮ろうと、倒れているけが人を救助するどころか「いいポジション」に移したりする。そして、ルイスの持ち込む映像を視聴率のために反対の声を押し切って次々とオンエアするニナ。挙句、ルイスの行動はどんどんエスカレートしていく・・・

ルイスを演じるのは、ジェイク・ギレンホール。もともと個性派的なところがある俳優さんだが、こういうちょっとアブない役柄はなんとなくピッタリのように思える。そしてアクの強いプロデューサーのニナ。どっちもどっちのモラル観のない二人であるが、二人の役者さんの迫力なのだろうか、強烈なインパクトの残るものとなっている。「見る者」がいるから「見せる者」がいて、だから「撮る者」がいる。ルイスの姿は実に醜いのであるが、果たしてそうと言い切れるのであろうかと思ってみたりする。

考えれば深いテーマの映画である・・・


評価:★★☆☆☆





posted by HH at 23:19| 東京 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月12日

【バンクーバーの朝日】My Cinema File 1561

バンクーバーの朝日.jpg

2014年 日本
監督: 石井裕也
出演: 
妻夫木聡:レジー笠原
亀梨和也:ロイ永西
勝地涼:ケイ北本
上地雄輔:トム三宅
池松壮亮:フランク野島
佐藤浩市:笠原清二
高畑充希:エミー笠原
宮崎あおい:笹谷トヨ子
貫地谷しほり:ベティ三宅
石田えり:笠原和子
ユースケ・サンタマリア:堀口虎夫
鶴見辰吾:トニー宍戸
本上まなみ:杉山せい

<シネマトゥデイ>
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1900年代初頭のカナダに暮らす日系人が、過酷な環境にあえぎながらも野球チームを結成、戦術やひたむきさでやがて白人に認められていくさまを実話を基に描くドラマ。メガホンを取るのは『舟を編む』『ぼくたちの家族』などの石井裕也。製材所で肉体労働に就く野球チームのキャプテンを妻夫木聡が演じるほか、チームのメンバーに亀梨和也、勝地涼、上地雄輔、池松壮亮、主人公の父親に佐藤浩市など豪華キャストが集結する。体格で勝るカナダ人を相手に、力ではなく技術で立ち向かっていく彼らの姿に爽やかな感動を覚える。
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戦前〜戦中のスポーツドラマといえば、『ラストゲーム 最後の早慶戦』『KANO〜1931海の向こうの甲子園〜』を観たが、この映画もほぼ同じ時期のカナダでの実話である。

戦前の日本が、貧しさから海外に多くの移民を出していたことは知られているが、ブラジルやハワイは有名だが、カナダは正直言って知らなかったところ。一世が苦労して拠点を築き、今やその子供達が中心世代となっている日系社会。しかし白人優位の社会で、日本人は白人たちから蔑まれ、労働条件など様々なところで差別を受けている。

そんな日本人の若者たちが集まって野球のチーム「朝日軍」を結成しているが、体格差もあって白人のチームにはまるで歯が立たない。日々の生活も苦しく、メンバーは家族などから冷ややかな視線を浴びて練習に来ている。日本人は勤勉であるが、一方で「仕事がすべて」となりがちなものも事実。チームのエースであるロイも、仕事を終えて練習に行こうとすると、「いい身分だな」と嫌味を言われる。このあたりの雰囲気は、私が就職した当時もまだ残っていた。

主力メンバーが抜け、新たにキャプテンに任命されたのはレジー笠原。父は移民一世で、今もあちこちで日雇い仕事をこなしているが、稼いだ金は飲むか日本への仕送りに使ってしまい、家族からは白眼視されている。母親は裁縫の仕事をこなし、妹は白人家庭で家政婦をし、レジー本人も製材所で働く日々。

どうしたら体格で勝る白人チームに勝てるのか。考え続けたレジーは、バントや盗塁と言った日本人特有の小回りの良さを生かし、かつ相手を研究した頭脳野球=「Brain Ball」に開眼する。そして白星が増えてくると、日系社会の応援も出てきて、チームは一躍「希望の星」となっていく。実話と言ってもこのあたりはどこまで実話なのかわからないが、観ていて展開は面白いので気にならない。

それにしても、試合中も明らかなボールをストライクと判定されたり、と差別は尽きない。元々の白人優位思想に加え、日本人はカナダ人の半分の給料で10時間働くとコメントされていたが、そうしてカナダ人の職を奪い、恨みを買ったところもあるのかもしれない。そして真珠湾攻撃で、チームには決定的な終焉が訪れる・・・

白人もすべてが差別主義というわけでもなく、差別なく接する人もいる。また、実力を示すと、素直に態度を改めて相手を認められる人もいる。自分もかくありたいと思うところである。また、日本人も白人には差別されたが、一方で『セデック・バレ』でも描かれていたように、自分たちより劣るとする者には差別する方に回っているし、一概に大きなことを言えたものではない。いずれにせよ、差別する姿は醜い事この上ない事は間違いない。

貧しさゆえに、海外へと新天地を求め、差別や労苦の中で生活を営む移民世代の苦労が画面から滲み出る。朝から晩まで働き、わずかな時間に白球を追う。そんな祖先の苦労とわずかな喜びが伝わってくる。今は好きな事を当たり前のようにできるいい時代であるとつくづく実感する。祖先の苦労に思いを馳せ、今の幸せを噛みしめながら観たい映画である・・・


評価:★★★☆☆









posted by HH at 23:07| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 実話ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする