2017年07月31日

ヴィジット

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原題: The Visit
2015年 アメリカ
監督: M・ナイト・シャマラン
出演: 
オリビア・デヨング:ベッカ
エド・オクセンボールド:タイラー
キャスリン・ハーン:ママ
ディアナ・デュナガン:祖母
ピーター・マクロビー:祖父

<シネマトゥデイ>
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『シックス・センス』などで知られるM・ナイト・シャマラン監督が手掛けたスリラー。三つの奇妙な約束事がある祖父母の家にやって来た姉弟が体験する恐怖を描く。『パラノーマル・アクティビティ』シリーズなどのジェイソン・ブラムと『マッド・ナース』などのマーク・ビエンストックが、本作の製作陣にも名を連ねている。約束が破られたら何が起こるのか、様子が変な祖父母や夜中に聞こえる音、襲ってくる女など、随所に伏線の張り巡らされた予測不能な展開に引き込まれる。
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M・ナイト・シャマラン監督作品となると、『アフター・アース』なんていうSFはあるけれど、やっぱり「ホラー」「スリラー」系を期待してしまう。そんな期待から観てみることにした一作。

主人公は、15歳の姉ベッカと13歳の弟タイラーの姉弟。母はその昔、両親から結婚を反対されて駆け落ちし、その後シングルマザーとして2人を育てている。その間、故郷には一度も帰っていない。2人で映画を撮っている姉弟は、冒頭で母にインタビューし、そんな事情が語らせる。そしてそんな時、突然祖父母から連絡がある。和解の申し出なのであろう、孫にも会いたいとなったようである。姉弟はこの提案に喜んで応じ、休暇を利用して遊びに行くことにする。母はその間、恋人と旅行である。

こうして2人は、祖父母の家へと向かう。駅で優しく出迎えてくれる祖父母。そこで1週間を過ごすことになる。優しい祖父母のもてなしに、2人は大喜びし、早速映画作りに励む。2人の様子を描くのはこの映画用のハンディカメラ。のちに恐怖で逃げ惑う中もしっかり撮影しているのはご愛嬌として、2人の撮影する映像を眺める形で映画は進んで行く。

やがて少しずつ「違和感」が生じて行くのは、お約束のパターンと言えるかもしれない。初めに祖父からは、「楽しい時間を過ごすこと」、「好きなものは遠慮なく食べること」、「夜9時半以降は部屋から絶対に出ないこと」という3つの約束を守るように言い渡される。田舎で娯楽があるわけでもなく、年寄りは夜が早いと2人は苦笑しながら受け入れる。しかし、夜中になると、家の中に不気味な物音が響き渡る・・・

さらに祖父は祖父で、祖母は祖母でおかしな行動が目につくようになる。それぞれ年だし多少の異常行動は老人には不思議ではないこともあって、2人も目を瞑るが、さすがに老婆が夜中に全裸で家の中を這い回っていたらビビるというもの。祖父も納屋に排便後のオムツを隠していたりするが、この時点で普通だったら老人施設に連絡するだろうレベルの行動である。

さらに最初に立ち入りを禁止された地下に果たして何があるのか、祖父母の異常行動の理由はなんだろうか、姉弟にどんな恐怖が襲い掛かかるのか。物語が進むうちに、それらは予想外の展開となって行く。それは事前に予想していたようなものではなかったが、その意外性に加えて、しっかり恐怖心を煽ってくれる。「怖くないホラー」も多い中で、これはなかなか脅かしてくれた。

恐怖の大作というほどではないが、「ナイト・シャマラン監督作品」としてのブランド価値には十分ふさわしい内容であったと思う。ちょっと怖い映画を観たい時に恐怖心を煽ってくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆






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2017年07月29日

キングコング:髑髏島の巨神

キングコング:髑髏島の巨神.jpg

原題: Kong: Skull Island
2017年 アメリカ
監督: ジョーダン・ボート=ロバーツ
出演: 
トム・ヒドルストン:ジェームズ・コンラッド
ブリー・ラーソン:メイソン・ウィーバー
サミュエル・L・ジャクソン:プレストン・パッカード
ジョン・グッドマン:ビル・ランダ
ジン・ティエン:サン
ジョン・C・ライリー:ハンク・マーロウ
トビー・ケベル:ジャック・チャップマン
ジョン・オーティス:ビクター・ニーブス

<シネマトゥデイ>
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キングコングを神話上の謎の島に君臨する巨大な神として描いたアドベンチャー大作。島に潜入した調査隊が正体不明の巨大生物と遭遇し、壮絶な死闘を繰り広げる。監督は、主にテレビシリーズに携ってきたジョーダン・ヴォート=ロバーツ。調査遠征隊のリーダーを『マイティ・ソー』シリーズなどのトム・ヒドルストンが演じるほか、『ルーム』などのブリー・ラーソン、サミュエル・L・ジャクソンらが共演。巨大な体でリアルな造形のキングコングの迫力に圧倒される。
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「キングコング」と言えば、個人的にはジェシカ・ラングが主演した「1976年版」が印象深い。そしてそれ以前に創られた「1933年版」をリメイクした『2005年版』だろうか。いずれも人間が未開の地「スカル・アイランド」で発見したコングをニューヨークに連れてくるというストーリーだったが、この映画はそうした一連のシリーズとはまったく別物のストーリー。どういう位置付けなのか、興味深いところである。

物語は1944年に始まる。時に太平洋戦争の最中の南太平洋戦域。空戦で日米双方の戦闘機がとある島に墜落する。それぞれ降下したアメリカ兵マーロウと日本兵は、共に殺し合いとなるが、そこに巨大な猿が現れ、2人は殺し合いを忘れて呆気にとられる・・・コングの姿をずっと隠していた過去のシリーズに比べ、この映画は冒頭からいきなりコングが登場する。

そして時は流れ、ベトナム戦争が終ろうとしている1973年。特務研究機関モナークの一員であるランダは、ランドサットが発見した未知の島・髑髏島(スカル・アイランド)への調査の承認を得る。ランダはさらに護衛の部隊を派遣するように要請し、ベトナムから帰還予定だったパッカード大佐の部隊が同行することになる。また、元英軍特殊空挺部隊隊員のコンラッドを島の案内役として雇い入れる。ランダたちの行動を知った戦場カメラマンのウィーバーも調査隊に加わり、一行は髑髏島に向けて出発する。

髑髏島の周囲は暴風雨に覆われて船での接近は不可能という設定。それが衛星によって発見されたという状況。過去のシリーズとは一線を画すかの如きこの映画だが、舞台を現代にできないのは、地球上にはもはや未開の地はないという現実なのだろう。それでも目指す髑髏島は暴風雨で外界とは遮断されており、一行はベトナム戦争の象徴でもあるヘリコプター部隊で島へと向かう。

さっそく調査隊は、地質調査のための爆弾を投下していくが、そこに現れたコングは、次々とヘリを叩き落とす。「1976年版」では武装ヘリの前に倒されたコングだが、この映画ではヘリの攻撃に傷つきながらも、あっという間にヘリ部隊を全滅させる。この映画のコングは、なかなかの攻撃力である。

帰る手段を失ったコンラッドたちは、あらかじめ予定されていた3日後の迎えに向けて、島の中を合流地点に向かう。次々に現れる巨大生物。やがて一行は、島に住む未開の島民とそこで生き残っていたマーロウと出会う。そしてマーロウのおかげで島の様子がわかって来る。なんとコングは島の守護神であり、凶悪な生物スカル・クローラーを退治してくれる存在なのだと知る。一方ヘリ部隊を全滅させられ、部下を殺されたパッカードは、コングへの復讐の念に燃える・・・

人間だから、それぞれ立場や考え方が異なるのは仕方ない。探検に訪れた島で、いきなりコングに襲われた調査チーム。やがてコングが島の守護神であり、さらに島にはもっと凶悪な生物がいるとわかると、コングの立場は正義の味方へと変わる。しかし、最初の襲撃を根に持つ軍人たちにその考えはない。島からの脱出とコングとの対立と襲い来る巨大生物と、いろいろなものが混ざった物語。コングへの共感という点では同じだが、どうしても今までのキング・コング映画とは異なる。

「1976年版」も『2005年版』も、傲慢な人間の姿を描き、それを戒める部分があった。この映画もそれは同じ。しかし、人間社会に連れてこられたコングから感じさせられたものがこの映画にはない。島に残ったコングという点で、この映画は過去の映画とは異なる。鑑賞後の感じもそれが大きく影響する。この映画は単なる冒険モノの1つという感じである。

キング・コングの映画は単なるパニック映画ではなかったはずだが、この映画では単なるパニック映画と化している。
自分の中では、過去のシリーズとは一線を画したいと思う映画である・・・


評価:★★☆☆☆





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2017年07月28日

さいはてにて やさしい香りと待ちながら

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2015年 日本
監督: チアン・ショウチョン
出演: 
永作博美:吉田岬
佐々木希:山崎絵里子
桜田ひより:山崎有沙
保田盛凱清:山崎翔太
臼田あさ:美城山恵
イッセー尾形
:弁護士
村上淳:清水俊夫
永瀬正敏:男
浅田美代子:山崎由希子

<シネマトゥデイ>
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『四十九日のレシピ』などの永作博美と『アフロ田中』などの佐々木希が共演を果たしたヒューマンドラマ。故郷の能登でコーヒー店を開いた孤独な女性と、近所に住むシングルマザーの触れ合いを通して、人と人との関わり合いが生み出す温かさや喜びを浮き上がらせていく。メガホンを取るのは、台湾映画界の名匠ホウ・シャオシェンに師事し、『風に吹かれて−キャメラマン李屏賓(リー・ピンビン)の肖像』で注目を浴びた女流監督チアン・シウチュン。ハートウオーミングな物語に加え、オールロケを敢行した能登半島の美しい風景も見ものだ。
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冒頭、弁護士が主人公の吉田岬と話をしている。どうやら失踪した父親が残した借金の話なのだが、岬はあっさりと払うと答え、その答えを予想していなかった弁護士は面食らう。何気ないシーンだが、この映画での岬の性格を表しているかのようである。そして弁護士は、失踪した父親が残したという不動産の話をする。その物件がある石川県能登半島の最も北側にある奥能登に、岬は古い自動車に家財道具を乗せてやってくる。

そこは父の残した海辺の船小屋。岬には幼い頃、この小屋で父がギターをつま弾く記憶がある。寂れて朽ち果てつつあるその小屋を岬は改築し、焙煎コーヒーのお店『ヨダカ珈琲』を開く。越してきたその日、岬は小屋の前にある民宿に宿を取ろうと訪ねて行くが、そこに現れた若い女性は岬を民生委員と勘違いし、追い返す。やむなく近くのスーパーに買い物に行った岬は、そこで商品を万引きしようとしていた有沙と翔太という姉弟を見かける。

やがてヨダカ珈琲の改築が終わり、開業する。こんな人通りもない辺鄙なところにと思っていたが、ヨダカ珈琲の販売ルートは通販。インターネットで注文を受け、全国に珈琲豆を発送している。なるほどと思わず頷く。一方、眼前の民宿に住んでいるのは若いシングルマザーの絵里子と二人の子供たち有沙と翔太。絵里子は、2人を放置してどこかへ行ってしまい、ネグレクトかと思っていたが、やがて深い事情が分かってくる。

放置された有沙は給食費が払えない。困り果てて知り合った岬に借金を申し入れるが、岬は借りるのは良くないとして、逆に店で働くことを勧める。喜んだ有沙はさっそくヨダカ珈琲で働き始める。そんなヨダカ珈琲には、有沙の担任・恵が家庭訪問に来たついでに寄り、岬と知り合う。絵里子の家にはよからぬ男が出入りし、男が来ている間、居場所のない有沙と翔太は外で時間を潰すことになる・・・

いかにも日本映画的なドラマが展開される。シングルマザーの絵里子は、子供を置いたまま金沢のキャバクラで働いている。その間、小学生の姉弟は二人きりで何日も過ごす。ひどい母親だと思ったが、やがてやむない家庭事情が見えてくる。こんなドラマが展開される。主人公には主人公の事情があり、そこまでの経緯は描かれていないが、根底に流れる悲しみが感じられる。

主人公を演じるのは永作博美。個人的なイメージだが、この方は薄幸な女性というイメージがよく合う。特にそれを感じたのが『八日目の蝉』であるが、この映画でも失踪した父親を幼き日の思い出を抱えて探す(実際にはかつての船小屋で待っているのだが)女性のイメージにピッタリなのである。そしてそんな女性が最後に小さな幸せに辿り着く。しみじみとした味わいがある。

それにしても『ふしぎな岬の物語』も岬の喫茶店が舞台であったが、似たような舞台で、面白いなと感じる。この映画のヨダカ珈琲のようにネット販売というルートがあれば別であるが、店頭販売だけでは商売になりそうもないなぁどと、ついつい現実目線で観てしまった。
それはともかくとして、永作博美の存在感といい、登場人物たちのドラマと相まって、しみじみとした味わいの映画である・・・


評価:★★☆☆☆




posted by HH at 00:00 | 東京 ☀ | Comment(0) | ドラマ

2017年07月24日

ロスト・エモーション

ロスト・エモーション.jpg

原題: Equals
2015年 アメリカ
監督: ドレイク・ドレマス
出演: 
ニコラス・ホルト:サイラス
クリステン・スチュワート:ニア
ガイ・ピアース:ジョナス
ジャッキー・ウィーヴァー:ベス
オーロラ・ペリノー:アイリス

<映画.com>
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リドリー・スコット製作総指揮の下、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』のニコラス・ホルトと『トワイライト』シリーズのクリステン・スチュワートが共演したSFサスペンス。世界戦争によって地上の99.6%が破壊された近未来。滅亡の危機に瀕した人類は、遺伝子操作を施した感情のない人間の共同体「イコールズ」をつくった。そこで暮らす人々は保健安全局の監視下に置かれ、愛情や欲望といった感情が生まれると、「発症」したとして隔離施設へ送られ、安楽死させられる運命にあった。そんな環境下で、感情を「発症」してしまったサイラスとニアは、外の世界への脱出を決意する。日本でもロケを敢行し、世界的建築家・安藤忠雄の建築物で近未来都市の世界観をリアルに再現した。監督は「今日、キミに会えたら」のドレイク・ドレマス。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2017」上映作品。
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「リドリー・スコット製作総指揮」のSF映画となると、何はともあれ観てみたいと思う所である。そんなこの映画は、世界大戦によって地上のほとんどが破壊しつくされた世界が舞台。生き残った人類は、共同体を作って生活している。そして人類が絶滅近く追い込まれた諸悪の根源は感情にあるとして、人類は感情を封じて暮らしている。そう言えば、『リベリオン』でも人類は感情を封じて暮らしていたが、これがやっぱり争いの元なのだろうか。

さて、そうして感情を封じて暮らしている人類であるが、時折感情が生じてしまう。これを「発症」として、レベル管理し(今で言えば「認知度3」みたいなものだ)、発症した場合は適宜投薬治療を受けることになる。しかし、レベル4以上の「重症」となると、施設へと送られ、何とその先に待っているのは「安楽死」という状況なのである。

主人公のサイラスは、他の人々と同様、無表情で日々の暮らしを送っている。毎日同じように起きて出勤し、波乱のない仕事を淡々とこなし、そして家に帰ると一人食事をして寝る。誠に寂しい生活ぶりであるが、そもそも「寂しい」という感情がないのだろうからそんなことも感じないのであろう。

そんなサイラスは、ある時同僚のニアという女性の存在に気付く。そして気が付くとニアを目で追っている。我々にしてみれば、目の前にクリステン・スチュアートがいればそれは目が釘付けになろうというものだが、感情のない人々にしてみれば異常行動なのだろう。そしてある日、ビルから人が飛び降りる。感情のない人々は淡々と眺めているが、ニアは明らかに動揺した様子であり、それにサイラスは気が付く。

そうしてついにサイラスは自らの感情の芽生えに気付き、診察の結果「レベル1」と診断される。まだ初期症状である。「空気感染はしないがマグカップは他の者とは異なる専用のものを使用する」など、同僚と話し合って決める様子が滑稽である。その昔は呪術など怪しげな治療が行われていたが、それを笑えない社会である。そしてサイラスの「症状」はいよいよ重症となっていく・・・

物語は、近未来のSF映画の形を取った恋愛映画という見方もできる。恋愛といっても、感情が芽生えたばかりのサイラスとニアのそれは、現代の高校生レベルと言えなくもないものである。それでもこの世界では重大事。禁を犯し感情に従って行動するサイラス。そのようにして物語は静かに展開していく・・・

主演はニコラス・ホルトとクリステン・スチュアートとあって、これはそれだけでも観る価値はあると思うが、やはりストーリー的に難がある。SFというには、ちょっと物足りないし、ハラハラドキドキするわけでもない。『リベリオン』が体制に反して戦うのに対し、この映画はもっと消極的な手段を選ぶ。平和的と言えば平和的。その分、映画としては魅力が下がっている。

静かな分、可も不可もないという感想の映画である・・・


評価:★★☆☆☆




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2017年07月23日

岸辺の旅

岸辺の旅.jpg

2015年 日本・フランス
監督: 黒沢清
出演: 
深津絵里:薮内瑞希
浅野忠信:薮内優介
小松政夫:島影
村岡希美:フジエ
奥貫薫:星谷薫
赤堀雅秋:タカシ

<シネマトゥデイ>
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『アカルイミライ』がパルムドールにノミネートされた経験もある黒沢清監督が、湯本香樹実が2010年に上梓した小説を映画化。3年間行方をくらましていた夫がふいに帰宅し、離れ離れだった夫婦が空白の時間を取り戻すように旅に出るさまを描く。脚本は『私の男』などで知られる宇治田隆史が黒沢監督と共同で担当。『踊る大捜査線』シリーズなどの深津絵里と、『バトルシップ』『マイティ・ソー』シリーズなどでハリウッド進出も果たした浅野忠信が夫婦愛を体現する。
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なんとも不思議な物語。主人公の瑞希は、ピアノの家庭教師をしている。のんびりとした性格の主人公は、深津絵里のイメージによくあう。どうやら一人暮らしの瑞希の前に、突然1人の男が姿を表す。それも家の中で、靴を履いたままで、だ。その男優介は瑞希の夫であり、そして祐介が語るには、すでに自分は死んで海の底なのだと。

現れた夫は幽霊であるというが、実態もあって歩けば足音もする。実に不思議な設定である。そして瑞希は、夫に見せたいところがあるからと思い出の地をめぐる旅に出ようと誘われる。電車に乗って辿り着いた最初の街で、ふたりは新聞配達業に携わる老人、島影の店を訪ねる。優介は過去に島影の下で働いていたとのことであるが、実は島影もまた死者であるという。では配っている新聞はいつのものだと突っ込みたくなりつつ、ストーリーを追う。

次にふたりが訪れたのは、夫婦の経営する食堂。今度は生きている夫婦らしいが、ここでも死者であるはずの夫も普通の存在。これなら死ぬのも悪くはなさそうである。やがて瑞希は2階に残されたピアノを見つけ、それをめぐる妻フジエと死別した妹との思い出を聞かされる。そしてそこに現われる死んだ妹・・・

旅を続ける2人は優介が過ごした時間を追体験して行く。最後に訪れた山奥の農村では、優介は私塾を開いていて、そこで久しぶりの講義を行う。そしてそこでも一家の働き手であった男が、死後再び妻の前に現れたりする。それぞれの物語は静かに進んで行くが、どうもこの物語の設定に馴染めない自分には、どこか物語に入り込めない。やはり死者はもう少し死者らしくあってほしいのである。

この映画に対する違和感は、やはりそこに尽きる。生きている人間と変わりない幽霊の姿は、どこか興ざめである。生きている人間と変わらず実態を持つから、当然夫婦間にはセックスもある。こうなると妄想は勢いが止まらない。そんなリアリティのないスートリーの世界には入っていけず、どこか醒めた目で映画を観てしまっていた。人の感覚はそれぞれだから一概にはいえないが、自分にとってみれば映画の世界に入っていけない映画はそこまでである。

いい映画かどうかは別として、自分にとっては、受け入れにくい映画であった・・・


評価:★★☆☆☆





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