
原題: Imperium
2016年 アメリカ
監督: ダニエル・ラグシス
出演:
ダニエル・ラドクリフ:ネイト・フォスター
トニ・コレット:アンジェラ
トレイシー・レッツ
デビン・ドルイド
パベウ・シャイダ
ネスター・カーボネル
サム・トラメル
<映画.com>
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『ハリー・ポッター』シリーズのダニエル・ラドクリフが主演を務め、テロ計画を阻止するためネオナチ組織に潜入した実在のFBI捜査官マイケル・ジャーマンの体験を映画化。アメリカで放射性物質セシウム6缶の行方がわからなくなり、首都ワシントンを標的にした大型テロの可能性が浮上した。FBIは白人至上主義者のカリスマ的存在であるダラス・ウルフの情報を収集するため、若手捜査官ネイトに潜入捜査を命じる。自らの頭をスキンヘッドにして白人至上主義者になりきったネイトは、ウルフと面識のあるネオナチ青年ビンスの仲間になることに成功するが……。ラドクリフがスキンヘッド姿で主人公ネイト役を熱演。ヒューマントラストシネマ渋谷、シネ・リーブル梅田で開催の「未体験ゾーンの映画たち2017」上映作品。
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主人公は、FBI捜査官ネイト・フォスター。体の小さなネイトは、頭脳派タイプで、肉体派の仲間からはからかわれる日々。おりしもワシントンDCで大量のセシウムが輸入された事実が判明する。テロ組織の手に渡れば大規模なテロに利用されるかもしれない。捜査本部は国内のアラブ組織をターゲットにするが、唯一、国内テロ課のアンジェラ捜査官は白人至上主義者のグループの可能性を指摘する。
そんなアンジェラは、ネイトを呼び出すと白人至上主義者のグループへの潜入捜査を命じる。彼女は、ダラス・ウルフという男のラジオ番組に注目していて、その番組はネオナチやKKKなどの差別団体から支持されており、カリスマ的存在のウルフは「近々大きな計画がある」と宣言していたのである。ネイトは、自分には荷が重すぎると躊躇するが、アンジェラは彼を説得する。
ネイトは、ウルフについて学び、頭をスキンヘッドにし、元海兵隊の軍人で医薬品会社を経営していてどんな薬品でも手に入るという経歴を作り上げる。そしてメンバーが出入りするパブで、まずはウルフを知るという男ヴィンスという親しくなる。それを機に、ネイトは、ヴィンスの友人ジェリーを始めとして様々な男たちと接触する。やがて、ダラス・ウルフの決起集会に参加するチャンスが訪れ、ネイトはついにウルフに紹介される・・・
『アンダーカバー』とは、文字通り潜入捜査。主人公のネイトは、特命を受けて白人至上主義者の集団に潜入する。白人至上主義者と言っても、ネオナチやKKKなど様々な団体がある。みんな入れ墨等をしていかにも過激で、白人社会の人種差別を強く意識させられる。潜入したネイトは自ら入れ墨を入れ、すっかりなり切っていく。捜査が終わったらどうするんだろうと観ている方は余計な心配をしてしまう。
潜入捜査については、しばしば映画でも採り上げられている。中でも個人的に印象に残っている映画としては、アル・パチーノの『クルージング』があり、香港映画の『インファナル・アフェア』、それをリメイクした『ディパーテッド』(My Cinema File 14)があるが、ミイラ取りがミイラになる(なりそうになる)ところが潜入捜査をテーマとしたストーリーの面白さがあると言え、この映画もそんな臭いが途中までして良かったと思う。
ダニエル・ラドクリフは、『ハリー・ポッターと賢者の石』(My Cinema File 1197)では適役だと思っていたが、シリーズを下って『ハリー・ポッターと死の秘宝』(My Cinema File 879)となると成長してしまって子役には合わなくなっていたが、実はとても小柄なんだとこの映画で気付かされる。「子供の頃いじめられていた」という主人公のイメージにピッタリである。
ストーリーは最後に小規模などんでん返しがあってそれなりに楽しめるが、「潜入捜査の代表作」には程遠い。ほどほどに面白いというのが、正直な感想である。白人至上主義者の集団をもうちょっと突っ込んで描いていたら、もしかしたらもっと面白かったんじゃないかと思う。単なる奇人の類ではなく、今世界でも数が増えている移民排斥の動きなんかの背景と絡めてみても面白かったかもしれないと思う。
そんなところが、個人的に「普通の映画」を脱しきれなかった所以である。ダニエル・ラドクリフには、次回作を期待したいと思うところである・・・
評価:★★☆☆☆