
2016年 日本
監督: 水田伸生
出演:
多部未華子:大鳥節子
倍賞美津子:瀬山カツ
要潤:小林拓人
北村匠:海瀬山翼
金井克子:相原みどり
志賀廣太郎:中田次郎
小林聡美:瀬山幸恵
<シネマトゥデイ>
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2014年公開の韓国映画『怪しい彼女』を、『舞妓 Haaaan!!!』『謝罪の王様』などの水田伸生監督がリメイクしたコメディー。73歳の頑固な女性がひょんなことから20歳の姿に戻り、失われた青春を取り戻していく姿を描く。ヒロインの20歳時を『ピース オブ ケイク』などの多部未華子が、73歳時を『うなぎ』『OUT』などの倍賞美津子が演じる。多部による1960年代から1970年代のヒット曲の熱唱や倍賞の毒舌など、一人の女性を演じる二人の女優に期待が高まる。
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この映画は、韓国映画(『怪しい彼女』(My Cinema File 1586))のリメイク。リメイク作品はハリウッドなどではかなり見られるが、日本の映画もだんだんと海外作品のリメイクが増えていくのだろうかと思わなくもない。個人的には、どうせなら単なるコピーではなく、『許されざる者』(My Cinema File 1307)のようにうまく日本アレンジしたものだと嬉しいと思う。
主人公は、73歳の瀬山カツ。女手一人で苦労して、一人娘の幸恵を育て上げ、今は孫の翼と3人で暮らしている。韓国版『怪しい彼女』(My Cinema File 1586)では一人息子であったが、ここでは一人娘に代わっている。そして孫がミュージシャンを目指しているという設定は同じ。思ったことを言い、行動するセツは、娘ならず町内の人とも騒動を起こしがちであるが、唯一の理解者は戦災孤児の時から苦労をともにしてきた次朗である。これも韓国版と同じ。
ある日、カツは娘の幸恵とケンカして家を飛び出す。そしてふと目に止まったのは、ある古い写真館。店頭に飾られていたオードリー・ヘップバーンの写真に惹かれ、その不思議な写真館「オオトリ写真館」に入って、写真を撮ってもらう。写真館を出たセツが歩き始めるとひったくりにあってしまう。何とセツは、そのひったくりを追いかけ捕まえるが、気がつけば自分が大幅に若返っているのがわかり混乱する。
こうしてなんと、セツは20歳の自分に戻ってしまうが、打ち明けられる相手がいるわけでもなく、家に帰れるわけでもない。やむなく、それまでケチケチ蓄えた貯金を下ろすと身の回りのものを整える。そうして次郎の銭湯で湯船に浸かるが、そのままのぼせて倒れてしまい、ひょんなことから大鳥節子と名乗って次郎の家で居候生活を始める・・・
大まかなストーリーは韓国版と同じ。ミュージシャンを目指す孫に頼まれ、一緒にバンドに加わる。そして孫の音楽を否定すると、思いっきり昭和レトロな懐かしの歌謡曲を披露する。そしてこれがまた様になっている。特に「見上げてごらん夜の星を」はなかなかの圧巻。韓国版では味わえない昭和レトロの歌の味わいは、リメイク版ならではと言える。(もっとも音響にはちょっとモノ申したい気分であったが・・・)
奇想天外なストーリーもコメディタッチなので気軽に楽しめる。しかし、背景に描かれる人間ドラマはなかなか深い味わいがある。雑誌の編集長をやっているというセツの自慢の娘の幸恵は、おばさん扱いで閑職へと異動させられている。孫の翼は、バンドのメインボーカルが就活で抜け、人生の岐路に立っている。そして偏屈に思われていたセツも、女手一つで病弱な娘を抱え、なりふり構わぬ苦労をして生きてきたという過去がある。そうしたもろもろの思いが最後に現れ、涙腺を緩ませる・・・
韓国版は韓国版で良かったと思うが、主人公が歌う懐メロはやはり馴染んだ昭和のメドレーの方が深い味わいがある。メインとなる「見上げてごらん夜の星を」は、今聞いてもいい曲だと思う。そして主人公の息子を娘に変えたことで、子育ての苦労を同じ母の立場から見ることで、最後の母娘のしみじみとした会話につながっている。まさにリメイクならではだと思う。この映画に目を付けた人は隻眼だと言える。
オリジナルとは別に、むしろオリジナル以上にじっくりと味わえるリメイク映画である・・・
評価:★★☆☆☆