2017年09月30日

【あやしい彼女】My Cinema File 1802

あやしい彼女(日本).jpg

2016年 日本
監督: 水田伸生
出演: 
多部未華子:大鳥節子
倍賞美津子:瀬山カツ
要潤:小林拓人
北村匠:海瀬山翼
金井克子:相原みどり
志賀廣太郎:中田次郎
小林聡美:瀬山幸恵

<シネマトゥデイ>
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2014年公開の韓国映画『怪しい彼女』を、『舞妓 Haaaan!!!』『謝罪の王様』などの水田伸生監督がリメイクしたコメディー。73歳の頑固な女性がひょんなことから20歳の姿に戻り、失われた青春を取り戻していく姿を描く。ヒロインの20歳時を『ピース オブ ケイク』などの多部未華子が、73歳時を『うなぎ』『OUT』などの倍賞美津子が演じる。多部による1960年代から1970年代のヒット曲の熱唱や倍賞の毒舌など、一人の女性を演じる二人の女優に期待が高まる。
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この映画は、韓国映画(『怪しい彼女』(My Cinema File 1586))のリメイク。リメイク作品はハリウッドなどではかなり見られるが、日本の映画もだんだんと海外作品のリメイクが増えていくのだろうかと思わなくもない。個人的には、どうせなら単なるコピーではなく、『許されざる者』(My Cinema File 1307)のようにうまく日本アレンジしたものだと嬉しいと思う。

主人公は、73歳の瀬山カツ。女手一人で苦労して、一人娘の幸恵を育て上げ、今は孫の翼と3人で暮らしている。韓国版『怪しい彼女』(My Cinema File 1586)では一人息子であったが、ここでは一人娘に代わっている。そして孫がミュージシャンを目指しているという設定は同じ。思ったことを言い、行動するセツは、娘ならず町内の人とも騒動を起こしがちであるが、唯一の理解者は戦災孤児の時から苦労をともにしてきた次朗である。これも韓国版と同じ。

ある日、カツは娘の幸恵とケンカして家を飛び出す。そしてふと目に止まったのは、ある古い写真館。店頭に飾られていたオードリー・ヘップバーンの写真に惹かれ、その不思議な写真館「オオトリ写真館」に入って、写真を撮ってもらう。写真館を出たセツが歩き始めるとひったくりにあってしまう。何とセツは、そのひったくりを追いかけ捕まえるが、気がつけば自分が大幅に若返っているのがわかり混乱する。

こうしてなんと、セツは20歳の自分に戻ってしまうが、打ち明けられる相手がいるわけでもなく、家に帰れるわけでもない。やむなく、それまでケチケチ蓄えた貯金を下ろすと身の回りのものを整える。そうして次郎の銭湯で湯船に浸かるが、そのままのぼせて倒れてしまい、ひょんなことから大鳥節子と名乗って次郎の家で居候生活を始める・・・

大まかなストーリーは韓国版と同じ。ミュージシャンを目指す孫に頼まれ、一緒にバンドに加わる。そして孫の音楽を否定すると、思いっきり昭和レトロな懐かしの歌謡曲を披露する。そしてこれがまた様になっている。特に「見上げてごらん夜の星を」はなかなかの圧巻。韓国版では味わえない昭和レトロの歌の味わいは、リメイク版ならではと言える。(もっとも音響にはちょっとモノ申したい気分であったが・・・)

奇想天外なストーリーもコメディタッチなので気軽に楽しめる。しかし、背景に描かれる人間ドラマはなかなか深い味わいがある。雑誌の編集長をやっているというセツの自慢の娘の幸恵は、おばさん扱いで閑職へと異動させられている。孫の翼は、バンドのメインボーカルが就活で抜け、人生の岐路に立っている。そして偏屈に思われていたセツも、女手一つで病弱な娘を抱え、なりふり構わぬ苦労をして生きてきたという過去がある。そうしたもろもろの思いが最後に現れ、涙腺を緩ませる・・・

韓国版は韓国版で良かったと思うが、主人公が歌う懐メロはやはり馴染んだ昭和のメドレーの方が深い味わいがある。メインとなる「見上げてごらん夜の星を」は、今聞いてもいい曲だと思う。そして主人公の息子を娘に変えたことで、子育ての苦労を同じ母の立場から見ることで、最後の母娘のしみじみとした会話につながっている。まさにリメイクならではだと思う。この映画に目を付けた人は隻眼だと言える。

オリジナルとは別に、むしろオリジナル以上にじっくりと味わえるリメイク映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2017年09月29日

【13時間 ベンガジの秘密の兵士】My Cinema File 1801

13時間 ベンガジの秘密の兵士.jpg

原題: 13 Hours: The Secret Soldiers of Benghazi
2016年 アメリカ
監督: マイケル・ベイ
出演: 
ジョン・クラシンスキー:ジャック・シルバ
ジェームズ・バッジ・デール:タイロン・ウッズ
デビッド・デンマン:デイブ・ベントン
マックス・マーティーニ:マーク・ガイスト
パブロ・シュレイバー:クリス・パラント
ドミニク・フムザ:ジョン・タイジェン
トビー・スティブンス:グレン・ドハティ
ソナ・ジラーニ:アレクシア・バルリエ
ボブ:デイビット・コスタビル
アマル:ペイマン・モアディー
クリストファー・スティーブンス大使:マット・レツシャー

<映画.com>
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『トランスフォーマー』シリーズなどのヒットメーカー、マイケル・ベイ監督が、2012年にリビアで発生したイスラム過激派によるアメリカ領事館襲撃事件を映画化したアクションドラマ。事件を取材したジャーナリストのミッチェル・ザッコフによるノンフィクションをもとに、支援を絶たれた6人のCIA警備兵が繰り広げる13時間の激闘を臨場感たっぷりに描き出す。12年9月11日、リビアの港湾都市ベンガジにあるアメリカ領事館が、イスラム過激派の武装集団に占拠された。領事館のほど近くにあるCIAの拠点アネックスは救援要請を傍受するが、アネックスの存在自体が極秘であるため手を出すことができない。アネックスに派遣されていた軍事組織GRSの6人の警備兵たちも待機命令を受けるが、領事館を取り巻く状況が緊迫していくのを見過ごすことができず、任意で救援活動に乗り出す。出演は『プロミスト・ランド』のジョン・クラシンスキー、『ザ・ウォーク』のジェームズ・バッジ・デール。
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リビアでは、カダフィ政権が倒れて以来、あまりその動向について知ることはないのであるが、これは2012年に起こった実際の事件を映画化したもの。実際の事件ということで、個人的にも興味深いところである。

主人公は、元傭兵のジャック・ジルバ。かつての仲間のタイロン・ウッズに誘いを受け、リビアのベンガジにやって来るところから物語は始まる。家計が苦しいという事情もあって、妻と二人の幼い娘を残し、後ろ髪を引かれる思いで危険な地に稼ぐためにやって来たのである。さっそく途中で道路封鎖に遭い、武装勢力と銃を突きつけ合う緊迫した場面に出くわす。稼ぐためとはいえ、幼い子持ちにはなかなか辛い環境である。

着いたところは、CIAの極秘拠点。ジャックは、ロンを始めとする軍事組織GRSのメンバーとして雇われたのである。その時点でのリビアは、カダフィ政権が崩壊した後の混乱の中で、軍の武器が民間に流れ、様々な勢力が存在する中で混沌とした状況になっている。そんなリビアのベンガジでCIAは極秘裏に活動し、アメリカ領事館も近くに位置していた。そこに、在リビア大使が訪れることになる。

ただでさえ危険なベンガジで、さらに防備の手薄な領事館は危険だと警鐘を鳴らすGRSのメンバー。しかし、大使は警告を振り切り、わずかな護衛とともに領事館に滞在する。そして運命の9月11日がやってくる。それはアメリカにとっては悪夢だが、反米勢力にとっては象徴的な日。そしてその夜、危惧された通りアメリカ領事館は武装勢力に襲撃される。雇っていた現地人の護衛はあっという間に離散。領事館に立てこもる大使とそのSPから、救援の依頼が届くも責任者はGRSに対して待機を命じる。

ここに至るまでに、CIAとGRSとの間には不協和音がある。CIAの責任者は、“キン肉マン”のGRSを下に見ている意識がある。さらに加えてCIAの施設は秘密であり、GRSが救援に出動すれば、その存在がばれるだけでなく自分たちも襲撃されるリスクが生じてくる。考え方によっては、「見殺しやむなし」という判断もあり得るわけである。しかし、GRSのメンバーたちは、大使たちを見殺しにすることはできないと判断し、救出に向かう。だが時は既に遅く、大使たちは護衛とともに籠城していた建物ごと火を放たれてしまっていた。

銃撃と火炎瓶攻撃で穴だらけになった車で逃げのびてきた一行。カダフィが使用していた防弾特別車が役に立った次第であるが、武装勢力が襲撃してくるのは時間の問題で、施設は緊張に包まれる。地元の協力部隊はいるものの、真に頼れるのはGRSの6名。戦闘経験のない20数名のCIAスタッフとともに、固唾を飲んで「その瞬間」を待つ一行。こうして13時間の長い夜が過ぎていく・・・

『ローン・サバイバー』(My Cinema File 1404)でも描かれていたが、米軍兵士は少数でも装備ではるかに上回り、「多勢に無勢」をものともしない。銃撃アクションはこの映画の一つの見どころであるが、数で勝る敵を圧倒する様は見ていてスカッとする。事実という強い裏付けもあってそんなバカなという気も起きない。ところが、武装勢力もそれに対抗し迫撃砲まで導入してくる。そうすると、最強米軍(正確には“軍”ではないのだが)も被害は免れない。ついにGRSに犠牲者が出てしまう・・・

敵地で大勢の敵に取り囲まれて襲撃されるというパターンは、『ブラックホーク・ダウン』(My Cinema File 1083)とも相通じるものがある。全世界に展開している米軍の宿命なのかもしれない。映画は、ガンファイトのエンターテイメント的な要素もあるが、独裁政権の打倒が必ずしも好結果を意味するものでもない事実を描き出す。

ラストではGRSによって撃ち倒された武装勢力のメンバーの遺体の周りで、家族が泣き崩れるシーンが出てくる。当然のことながら、彼らにもまた家族がいて人生があったわけである。こういう一面的でない描き方には好感が持てる。楽しめるとともに、ちょっと考えさせられる映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2017年09月24日

【エスケイプ・フロム・トゥモロー】My Cinema File 1800

エスケイプ・フロム・トゥモロー.jpg

原題: Escape from Tomorrow
2013年 アメリカ
監督: ランディ・ムーア
出演: 
ロイ・アブラムソン:ジム
エレナ・シューバー:エミリー
ケイトリン・ロドリゲス:サラ
ダニエル・サファディ:ソフィー
アネット・マヘンドリュ:イザベル

<シネマトゥデイ>
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世界的に著名なアメリカのテーマパーク、ディズニーランドなどの敷地で無許可で撮影を敢行したという異色作。仕事をクビになったさえない中年男が家族と一緒に訪れたテーマパークで遭遇する、現実と妄想の入り交じるシュールな体験を活写。悪夢的な内容や、夢と魔法のファンタジックワールドを、グロテスクな光景として映した世界観が衝撃的。
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休暇で家族と共にディズニーランドのホテルに宿泊している主人公のジム。朝からバルコニーで電話をしているが、それは会社からの解雇通知。日本では考えられないが、せっかくの家族との休暇がとんでもないものになってしまう。さらに息子にはいたずらで締め出されてしまう始末。解雇の話を妻に言えるタイミングではなく、ジムは思いを堪えて家族とともにディズニーランドへと向かう。

男ならジムの気持ちは痛いほど想像できる。ホテルとパークを結ぶモノレールの乗り場で、ジムは咳き込んでいる者が妙に多いことに気付く。乗り込んだモノレールの車内では、フランス人の若い二人組の女性に妙に意識を奪われる。パークの中では、記念撮影をしたり、アトラクションに乗ったりと楽しい一時を過ごす。しかし、イッツ・ア・スモールワールドでは、周りの人形や家族がグロテスクに映るという気分に襲われる。

子供達もそれぞれ好みが違い、妻と娘、ジムと息子の二組に分かれることになる。子供向けの空いているアトラクションを乗り繋いで楽しむ妻と娘。一方、ジムと息子は人気アトラクション「バズ・ライトイヤー」で長蛇の列に並ぶ。しかし、順番が来た直前、機械の故障でアトラクションに乗れなくなってしまう。

息子と共に落胆したジムだが、そこにモノレールで見た2人のフランス人女性が通り掛かる。なぜか女性を追い駆けて行くジム。息子が嫌がるのもおかまいなし。妻からの電話も無視して、彼女たちと同じアトラクションに乗り続ける。挙句に、まだ小さくて無理なスターツアーズを無理強いすると、息子は体調を崩して吐いてしまう。妻になじられたジムは、今度は娘と2人で他のアトラクションへと向かう・・・

冒頭から画面はモノクロ。それはともかくとして、これは一体なんの映画なのかと訝しみながら観ていく。それは結局、最後までわからない。イッツ・ア・スモールワールドで人形の顔がグロテスクに変化したり、息子の目が黒くなったり、フランス人女性をストーカーのごとく追い掛けたり、咳をする人たちが妙に多かったり、ジムが椅子に拘束されたりと何かを暗示するかのようなシーンが次々に出てくるのだが、それが一体なんなのかわからない。

ジムの身に最後に起こったことに何か関係があるのか。ジムの妄想だったのか現実だったのか。創り手はもう少し観る者の立場になって創ってもらいたいと思わずにはいられない。とはいえ、所詮素人にピカソの絵が理解できないのと同様、立派な芸術作品は素人には理解不能ということなのかもしれない。素直に観ると全く面白くない映画である・・・

こういう映画が理解できるといいなぁと思う反面、別に理解できなくてもいいとも思う。映画は観きれないほどたくさんあるし、素人でもわかりやすい映画だけ観て楽しめばいいとも思う。いずれにせよ、自分目線で「つまらない」と断言したい映画である・・・


評価:★☆☆☆☆








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2017年09月22日

【ブライド・ウエポン】My Cinema File 1799

ブライド・ウエポン.jpg

原題: In the Blood
2014年 アメリカ
監督: ジョン・ストックウェル
出演: 
ジーナ・カラーノ:エバ
カム・ジガンデイ:デレク・グラント
イスマエル・クルーズ・コルドバ:マニー
ルイス・ガスマン:ラモン・ガルシア警部
トリート・ウィリアムズ:ロバート・グラント
アマウリー・ノラスコ:シルビオ・ルーゴ
スティーブン・ラング:ケイシー
ダニー・トレホ:ビッグ・ビス

<シネマトゥデイ>
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アメリカ女子総合格闘技界のスターで、『エージェント・マロリー』の主演を務めたジーナ・カラーノが陰謀に立ち向かうヒロインを演じるアクション。新婚旅行中に何者かに連れ去られた夫を救うべく、残された妻が犯罪組織を相手に立ち向かうさまを活写する。メガホンを取るのは、『イントゥ・ザ・ブルー』『ネイビーシールズ:チーム6』などのジョン・ストックウェル。『マチェーテ』シリーズなどのダニー・トレホほか個性豊かな俳優陣が共演。屈強な男たちに立ち向かうジーナの、スピーディーかつパワフルなアクションに目がくぎ付けになる。
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エバとデレクは恋に落ち、めでたくゴールイン。デレクは成功者の父を持ち裕福な家庭に育っていたが、エバは父の男手一つで育てられている。その父が過激な人で、娘には格闘技術を叩き込んでいるという筋書き。デレクの父は、そんなエバを快く思っていない。そうしたイントロを経て、2人はハネムーンでカリブ海のリゾート、ドミニカ共和国を訪れる。

このエバを演じるのは、『エージェント・マロリー』(My Cinema File 1180)のジーナ・カラーノ。現地の危なげな店に踊りに行くと、『マチェーテ』(My Cinema File 1551)のダニー・トレホに絡まれる。ところがエバはただの女ではない。たちまち周りを巻き込んでの大乱闘。飛び付き腕ひしぎなどを鮮やかに披露してくれる。まずはご挨拶といった感じの乱闘アクションである。

ここまでは、まぁ予想内の展開なのであるが、期待していたジーナ・カラーノにどうも違和感を抱く。『エージェント・マロリー』(My Cinema File 1180)の時より明らかに太っていて、それゆえに夫に甘えてみせても可愛気がない。『エイリアン2』(My Cinema File 1790)の海兵隊のバスクエスもそうだったが、男勝りが過ぎると男にしなだれかかっても様にならないのである。

さてそれはともかく、現地でお調子者のマニーに声をかけられた2人は、マニーの勧めるケーブルのアクティビティーに参加する。エバは怖がって辞退するが(これも肉体派のエバが怖がっても様にならない)、デレクは挑戦。ところが途中でロープが切れ、デレクは落下してしまう。エバは慌ててデレクの元に駆けつけるが、デレクは足を骨折する重傷。救急車が到着するも、なぜかエバは乗せてもらえない。やむなくバイクで追走するが、着いた病院にデレクは運び込まれていなかった・・・

勝手わからぬ外国で、重症の夫は行方不明。エバは街中の病院を探し、地元警察にも相談するが、デレクは見つからない。それどころか、地元のガルシア警部や慌てて駆けつけてきたデレクの家族からは、保険金殺人を疑われる始末。孤立無援のエバは、マニーを見つけ出すと力づくで脅し、捜索に協力させる。やがて、意外な事件の真相がわかってくる・・・

全編にわたってジーナ・カラーノが大活躍する。地元の警察すらエバの邪魔をするどころか口封じをしようとする始末。そんな相手をジーナ・カラーノがちぎっては投げで叩きのめしていく。それにしても太ってしまったジーナにはお色気を感じない。女優の格闘アクションは、ミラ・ジョヴォヴィッチやアンジョリなどが第一人者であるが、皆スマート美人である。ジーナは、格闘技術は一流なのかもしれないが、映画というビジュアルな世界で太ってしまったのは致命傷である(まぁ個人の好みの話ではあるが・・・)。

次回作までには、ぜひダイエットをお願いしたいと思わずにはいられない映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2017年09月18日

【鰻の男】My Cinema File 1798

鰻の男.jpg

原題: Made in China
2014年 韓国
監督: キム・ドンフ
製作総指揮・脚本:キム・ギドク
出演: 
パク・ギウン: チェン
ハン・チェア: ミ
イム・ファヨン

<シネマトゥデイ>
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『嘆きのピエタ』など次々に問題作を放ち続けてきたキム・ギドクが脚本と製作総指揮を務め、中国産ウナギを題材に韓国社会の抱える闇をあぶり出す社会派ドラマ。品質検査で韓国への輸出が禁止されてしまった中国産ウナギの安全性を証明するため、韓国に密入国した男を待ち受ける運命を描く。メガホンを取るのは、『レッド・ファミリー』のプロデューサーのキム・ドンフ。『シークレット・ミッション』などの俳優パク・ギウンが主演を務める。
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冒頭、海上を進む怪しげな船。それは中国から韓国へ違法入国を図ろうとする者たちを乗せた船。長い期間ろくな食べ物も与えられない劣悪な環境で、さらにその中の男が唯一の女性を暴行しようとする。それを止めに入ったのは、主人公のチェン。韓国へ違法入国しようとする目的は皆金を稼ぐことだが、チェンの目的は鰻の検査。父が経営する養殖場から出荷した鰻に水銀が含まれていることが判明し、養殖場は打撃を受け父も倒れてしまったという。その汚名をそそぐため、韓国へ行こうとしているのである。

中国から船での韓国への違法入国は、『哀しき獣』(My Cinema File 1037)『海にかかる霧』(My Cinema File 1684)でも描かれており、日本ではなかなかわからない問題ではあるが、こうして映画で描かれるということは、現実にはかなり多いのだろうと推察される。映画は世相を映す鏡でもある。

チェンと行動をともにしていた男は、韓国へ出稼ぎに出た妻が男を作って逃げてしまったという。その復讐のために韓国へ行こうとしている。これもまさに『哀しき獣』(My Cinema File 1037)と同じである。しかし、国境での入国に失敗し男は射殺されてしまう。死の間際、男はチェンに復讐を委託し銃を託す。

言葉の通じない韓国で、チェンは辞書を片手に水産試験場へ鰻を持ち込む。しかし、そこでは相手にされず門前払い。何日も門前で粘るが、警察官がやってきたりアクシデントがあったりして、持ってきた3匹の鰻のうち2匹が死んでしまう。そんな中、検査官のミに狙いを定めたチェンは、銃をチラつかせながらも必死の訴えでついに検査にこぎつける。しかし、結果は残酷なクロ判定。検査結果は非情にも高い水銀の値を示す。

並行して描かれるのは、中国製品に対する韓国人の拒絶反応。(日本でもそうだが)ちょっとお金に余裕のある人たちは、徹底して「メイド・イン・チャイナ」を毛嫌いする。その現実にショックを受けるチェン。しかし、なぜかミには受け入れられ、いつの間にか男女の関係となり一緒に暮らし始める。

このミであるが、経緯は定かではないが、食品検査でクロとなり廃棄処分となるはずの鰻の横流しに加担している。何のことはない、毛嫌いして避けているはずの中国産の汚染鰻をそれと知らずに庶民は飲食店で食べさせられている訳である。この廃棄処分品の横流しは、日本でもCoCo壱番屋のカツの流出事件と同じであるが、いずこでも悪い奴は同じようなことをして儲けようとしているということであろう。

悪いのは汚染食品を作る側か、それともそれと知りつつ流通させる側か。チェンの養殖場はどうやら真面目にやっていたようであるが、近くの工場から垂れ流された廃液で、鰻が汚染されてしまったということらしい。鰻ばかりでなく、汚染はチェン自身の体にも及んでいる。チェンの実家は真面目に鰻の養殖をしているようであるが、近くの工場がそれを無茶苦茶にしているわけである。

この映画は、@中国の環境汚染A廃棄食品の横流しB中国から韓国への違法入国等の問題を絡み合わせて描いている。なかなかどうしてストーリーだけではない奥深さを秘めている。そこにあるのは、我が身のみを顧みて他人を顧みない姿にほかならない。「中国だから」、「韓国だから」と決して言い切れないところが怖いところでもある。

中国人チェンと韓国人ミの言葉の通じない同士の不思議な関係。なんでいきなり氏素性もわからない言葉もわからない男を受け入れたのかと思うが、そこにはミの贖罪意識もあったのかもしれない。深い問題を孕みつつ進んでいくストーリー。「お隣の国の問題」で終わらせたいと思う映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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