2017年10月29日

【ホーキング】My Cinema File 1815

ホーキング.jpg

原題: Hawking
2004年 アメリカ
監督: フィリップ・マーティン
出演: 
ベネディクト・カンバーバッチ:スティーブン・ホーキング
リサ・ディロン:ジェーン・ワイルド
マイケル・ブランドン:アーノ・ペンジアス
ピーター・ファース:フレッド・ホイル教授
トム・ホジキンス:ロバート・ウッドロウ・ウィルソン
アダム・ゴドリー:フランク・ホーキング
フィービー・ニコルズ:イゾベル・ホーキング
トム・ウォード:ロジャー・ペンローズ

<映画.com>
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人気ドラマ「SHERLOCK」のベネディクト・カンバーバッチが、天才物理学者ホーキング博士の若き日々を演じたイギリス製テレビ映画。1963年。ケンブリッジ大学院で理論物理学を学ぶ21歳の青年スティーブン・ホーキングは、自分の好奇心を満たしてくれる宇宙の研究や、恋心を寄せる女性ジェーンの存在に充実した日々を送っていた。ところがある日、スティーブンの身に突如として悲劇がふりかかる。脳の命令が筋肉に伝わらない難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し、余命2年を宣告されてしまったのだ。両親の支えで大学院に戻ったスティーブンは、日を追うごとに身体の自由を失っていく恐怖に耐えながら、研究に没頭していく。
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かの有名なホーキング博士の物語。ドラマは1978年のストックホルムから始まる。ノーベル物理学賞受賞式の前日にインタビューを受けるロバート・ウィルソンとアーノ・ペンジアス。ホーキングについて聞かれた彼らは、「知らない」と答える。この何気ないインタビューは、ホーキングのドラマと並行して進んでいくが、初めはその意味がよくわからない。

そして時は遡り、1963年。テレビを観ているのはスティーヴン・ホーキング。テレビの中では天文学者のフレッド・ホイル教授が理論を語っている。それは宇宙は普遍で変わらないという定常宇宙理論。その日はスティーヴンの21回目の誕生日。そこに1人の女性ジェーンが訪ねてくる。パーティ半ばで庭に出て星空を見上げるスティーヴンとジェーン。星を眺めながらスティーヴンが語るのは物理学や自分の持論。不器用な性格がよくわかる。ところが、寝転がっていたスティーヴンは立てなくなってしまう・・・

スティーヴンは病院で検査を受けるが、なかなか原因がわからない。ジェーンはスティーブンの両親と連絡を取りながら、彼の身を案じている。一方でアーノとロバートのインタビューが続く。2人は銀河のかなたからくるノイズを観測していたことを語る。録音テープから流れる音は、素人からすれば単なる雑音にしか聞こえない。インタビューは、アーノのナチスによる迫害を受けた出自へと脱線しながら続き、そしてノイズの正体である熱が何なのかを調べたことを語る・・・

スティーブンの病気はやがてALSだと判明する。徐々に動かなくなる体。ケンブリッジに戻り、自身の研究テーマを探し求める日々。この頃はまだホイル教授の定常宇宙論が主流で、教授はビッグバン理論を否定している。しかし、ペンローズ教授らとの議論を経て、スティーブンはこの考えに疑問を持ち、そして時間の逆行というヒントからビッグバン理論に辿りつく。これらよってスティーブンは、奨学金を得て研究を続けることになる・・・

もともとホーキング博士に興味を持っていたことから、ちょっと古いテレビドラマを観たのだが、これが意外と満足度の高いものだった。背景に流れる音楽も良いし、体が動かなくなっていくスティーブンだが、それにもかかわらず彼と結婚しようとするジェーンとの物語もドラマの横串としていい。そして絶妙なのが、15年を経て並行して描かれる2つのドラマがかみ合う瞬間。2人のノーベル賞学者(しかもホーキングを知らないと語っている)のインタビューがなぜ描かれていたのか。これはちょっとした感動であった。

正直言って、ホーキング博士のことを少し知りたいと思って観た映画だったが、ストーリー展開というか構成というかその巧みさと音楽とが相まって、予想以上に面白かったドラマである。こういうサプライズは心地よい。それにしても、ホーキング博士という人物は、つくづく天才なんだと思わされる。天文物理学も難しいが、面白そうだと改めて思う。少し本でも読んでみようかという気持ちにさせられたドラマである・・・


評価:★★☆☆☆








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2017年10月28日

【海賊とよばれた男】My Cinema File 1814

海賊とよばれた男.jpg
 
2016年 日本
監督: 山崎貴
出演: 
岡田准一:国岡鐡造
吉岡秀隆:東雲忠司
染谷将太:長谷部喜雄
鈴木亮平:武知甲太郎
野間口徹:柏井耕一
ピエール瀧:藤本壮平
綾瀬はるか:ユキ
堤真一:盛田辰郎
近藤正臣:木田章太郎
國村隼:鳥川卓巳
小林薫:甲賀治作

<シネマトゥデイ>
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第10回本屋大賞を受賞した百田尚樹のベストセラー小説を、『永遠の0』の監督&主演コンビ、山崎貴と岡田准一のタッグで実写映画化。明治から昭和にかけて数々の困難を乗り越え石油事業に尽力した男の生きざまを、戦後の復興、そして世界の市場を牛耳る石油会社との闘いを軸に描く。日本人の誇りを胸に、周囲の仲間との絆を重んじた主人公・国岡鐡造の青年期から老年期までを、主演の岡田が一人でこなす。共演は吉岡秀隆、鈴木亮平、綾瀬はるか、堤真一ら豪華俳優陣がそろう。
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百田尚樹のベストセラーの映画化作品は何作か出ているが、これは原作も面白かったので期待半分、されど長編をうまく映画の時間内に収められるのかという不安半分で観ることにした映画。結果的にはほぼ文句なく原作の味が出ていて良かったと思う。

時に1945年、B29の空襲によって東京は焦土と化していく。夜間戦闘機が迎撃にあたるも、搭乗員の人数に対し、燃料がなく2機しか上がれない。そして2機とも圧倒的な防御力をそなえたB29の前にあえなく撃墜されていく。終戦後、奇跡的に焼け残った「国岡館」。集まった社員は、事業も崩壊した国岡館を解雇される不安に怯える中、店主の国岡鐵三は力強く再興を宣言する。

されど、国内に国岡館が扱える石油はなく、しかも海外に散らばっている社員が続々と帰国する中、前途は果てしなく暗い。反対する役員を宥め鐵三はまずは、石統(石油統制配給会社)に出かけていく。そこで石油を回してもらうように頼むも、総裁の鳥川はそれまでの恨みから、むべもなくこれを拒絶する。疲れ切って帰宅する鐵三を無邪気に迎える子供たち。そして鐵三は、若き日のことを回想する・・・

1922年、27歳の若き日の鐵三は、石炭全盛時代に一早く石油に目をつけ機械油の代理店「国岡商店」を営んでいる。しかし、営業先では袖の下ばかり要求され、それを良しとしない鐵三は相手にされずに商売は苦戦し、資金も底をつき始める。小説では丁寧に描かれていた出資者の木田章太郎との関係も描かれてはいるが、実にあっさりしていて何となく小説を読んでいない人に伝わるだろうかと思ってみたりする。こんな形で、終戦直後と若き日とが交互に描かれていく。

鐵三はとにかく行動力の人物。目の前には次から次へと障害物が横たわる。それを創意工夫で乗り越えていく様はとにかく痛快である。サラリーマンの視点から見れば、かなりヒントになりそうなエピソード満載である。終戦直後もまったく仕事のない中、とにかく「社員の首は切らない」という信念だけで困難を乗り越えていく。普通ならリストラ、廃業も無理からぬところである。そうして次のチャンスを掴み取って行く・・・

映画ならではの場面は、石油輸入再開の条件としてGHQに提示された海軍の備蓄石油の汲み上げだろう。タンクの底にたまった石油は、泥と雨が混じり、ポンプでもくみ上げられない代物。それを何と人力で汲み上げる。小説ではイメージできなかったタンク内の様子が映画では見事に雰囲気が伝わってくる。クライマックスの日昇丸のエピソードも、同じ決断ができる人が果たしてどれだけいるだろうかというもの。映画の制限かカットされたエピソードもあったが、小説を読んで胸が熱くなった思いを再び感じられるものである。

映画を観ていて、改めて小説も思い起こされる。長編だが、映画だけ観るのはやはり片手落ちだろう。映画を観て少しでも心を動かされたところがあれば、小説に挑戦すべきかと思う。つい最近、モデルとなった出光石油は、創業家と現経営陣とが昭和シェルとの提携を巡って対立していたが、映画を観れば創業家の思いもよくわかるというもの。経営のセオリー等「筋論」もわかるが、映画を観れば別の感情も湧いてくる。

映画を観て思うのは、日本にもこういう時代があり、こういう人物がいたのだということ。賢い人物はたくさんいると思うが、熱い人物はどれほどいるだろうかとふと思う。こういう人物がこれからもまだ出てくるのであれば、日本もまだまだだと思う。時を置いてまた小説も読み直してみたいと思わされる一作である・・・


評価:★★★☆☆







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2017年10月27日

【キング・アーサー】My Cinema File 1813

キング・アーサー.jpg

原題: King Arthur: Legend of the Sword
2017年 アメリカ
監督: ガイ・リッチー
出演: 
チャーリー・ハナム:アーサー
ジュード・ロウ:ヴォーティガン
アストリッド・ベルジェ=フリスベ:メイジ(魔術師)
ジャイモン・フンスー:ベディヴィア
エイダン・ギレン:ビル
エリック・バナ:ユーサー王
デビッド・ベッカム:トリガー

<映画.com>
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『シャーロック・ホームズ』 『コードネーム U.N.C.L.E.』のガイ・リッチー監督が、中世から語り継がれているアーサー王伝説をモチーフに手がけたソードアクションエンタテインメント。王の子でありながら路地裏のスラムで育った貧しい青年アーサーが、伝説の聖剣エクスカリバーを手にし、救世主として語り継がれる存在へと成長していく姿を描いた。主人公アーサーに『パシフィック・リム』のチャーリー・ハナムが扮し、アーサーの親の敵でもあり、魔術を駆使する非道で凶悪な暴君ヴォーティガンをジュード・ロウが演じる。そのほか、『パイレーツ・オブ・カリビアン 生命の泉』のアストリッド・ベルジェ=フリスベ、「トロイ」『ミュンヘン』のエリック・バナらが共演。
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アーサー王物語は、円卓の騎士とともにこれまでにも様々なところで目にしてきたメジャーな物語である。映画でもその昔、『エクスカリバー』という映画を観た記憶がある。岩に刺さって誰も引き抜けなかった聖剣をアーサー王が引き抜くというエピソードも有名である。そんなアーサー王物語の新しいストーリーである。

冒頭で登場するのは、アーサーの父王であるイングランド王ユーサー。魔術師モルドレッドの軍団がキャメロット城を襲うも、聖剣エクスカリバーを手に単身相手の陣中に乗り込み、これを成敗する。されど、野望を抱いて魔物に魂を売った弟ヴォーティガンの反乱に遭い、王妃もろとも殺されてしまう。その時、かろうじて幼い息子アーサーを小舟で逃がす。

小舟はロンディニウムに流れ着き、アーサーは娼婦たちに拾われて売春宿で育てられる。そこでアーサーは自らの素性を知ることもなく成長する。一方、キャメロット城では川の水位が突如として下がり、川底から岩に刺さった聖剣エクスカリバーが現れる。驚愕したヴォーティガンは城の地下の魔物に会うと、「真の王が目覚めようとしている」と告げられ、彼はユーサーの息子を探すように家臣に命じる。

そして国王軍に捕まったアーサーは、キャメロット城に連行される。そこでは集められた男たちがエクスカリバーを引き抜くように命ぜられ、次々と試みるも誰もなしえない。しかし、アーサーは剣に手をかけると、それまで誰も引き抜けなかったエクスカリバーを引き抜いてしまう。しかし、剣が持つ力に圧倒され、アーサーは気を失ってしまう。アーサーを捕らえたヴォーティガンは、すぐに大衆の前でアーサーを処刑するように命じる。

実際のアーサー王物語がどんなものかは知らないが、中世と言えば剣と魔法と冒険の時代。幼い王子が成長して父王の敵を討つというストーリーも王道である。ヴォーティガンという強敵に、魔術師メイジと父王に仕えていた部下と共に成長した仲間たちと民を不幸にする強敵を倒すために立ち上がる・・・たびたびピンチに陥るが、仲間たちの助けがあり、最後は見事に目的を達成する。

安心して見ていられるストーリー。今は映像の迫力もある。しかし、主人公を演じたチャーリー・ハナムが何となくイメージと違う気がしてならなかった。一方、ジュード・ロウは何をやってもサマになるといった感じがした。もともと悪役的な雰囲気もあるだけによけいにそう感じたのかもしれない。その他はほとんど知らない役者さんだったが、それもまた良しと感じたところである。

それ以外は特に可もなくといった映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2017年10月22日

【ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密】My Cinema File 1812

ナイト ミュージアム/エジプト王の秘密.jpg

原題: Night at the Museum: Secret of the Tomb
2015年 アメリカ
監督: ショーン・レヴィ
出演: 
ベン・スティラー: ラリー・デリー
ロビン・ウィリアムズ: セオドア・ルーズベルト
オーウェン・ウィルソン: ジェデダイア・スミス
スティーヴ・クーガン: オクタヴィウス
ラミ・マレック: アクメンラー
アクメンラー:アッティラ・ザ・フン
ベン・キングズレー:マレンカレ
ヒュー・ジャックマン:本人

<シネマトゥデイ>
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夜になると博物館の展示物が動き出す『ナイトミュージアム』シリーズ最終章。展示物に命を吹き込むエジプト王の石板の魔力が消えかかる危機を回避すべく、アメリカ自然史博物館からロンドンの大英博物館へ乗り込んだ夜警のラリーと仲間たちが大騒動を繰り広げる。主演のベン・スティラー、ロビン・ウィリアムズ、オーウェン・ウィルソンらおなじみの顔ぶれに加え、オスカー俳優のベン・キングズレー、テレビドラマ「ダウントン・アビー」シリーズなどのダン・スティーヴンスらが新たに登場。
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『ナイトミュージアム』(My Cinema File 261)『ナイトミュージアム2』(My Cinema File 677)と続いたシリーズの最終回。夜になったら展示物が動き出すというまるで童謡のようなストーリーが気に入っていたが、続けて観てきているので最後までというところである。

物語は1930年代エジプトに遡る。父が率いる発掘現場に同行していた少年がうっかり穴に落ちる。そこはアクメンラーとその両親の眠る王墓で、そこにあった魔法の石版もともに発見される。発掘隊が運び出そうとすると、現地民が「墓を荒らすと死が訪れる」と反対するが、運び出しは強行される。そして、アクメンラーと石版は自然史博物館へ、両親は大英博物館へ納められる。

時は現代、自然史博物館では魔法の石版の吹き込む命で展示されている面々が、訪れた人々を楽しませている。警備員のラリーは、「特殊効果担当」としてパーティーに立ち会っているが、なぜかテディを始めとする展示物たちが暴走を始めてしまう。頭を抱えるラリーにアクメンラーが魔法の石版が謎の腐食を始めていることを伝える。どうすればいいのか戸惑うラリーに、アメンクラーは石版を作った父王に聞くしかないと告げる。その父王は大英博物館に納められている。

そこでラリーは、館長を半ば脅し原因究明のためアクメンラーと石版を大英博物館へ持ち込む許可をもらう。息子のニッキーも連れてロンドンへと赴くラリー。大英博物館では警備員の目をかいくぐり、中へと入りこむ。アメンクラーの他になぜかテディ、ミニチュアコンビ、アッティラなどおなじみのメンバーに加えて新しく展示にくわえられたネアンデルタール人のラーまで搬入用の箱に忍び込んでいる始末。

こうして今回は大英博物館が舞台となる。新たに登場するのは三銃士のランスロット(ほかにも恐竜やら大蛇やらガルーダやら)。石版によって命を吹き込まれ、大英博物館では一行が父王を探す珍道中。途中トリケラトプスに襲われるが、館内を滅茶苦茶にして大丈夫なんだろうかと思わなくもない。実際に行ったことはないが、いつか行ってみたくなる。その時にはもう一度この映画を観るのもいいかもしれない。

出演者はいつものメンバーに加え、父王として登場するのはベン・キングスレーだし、ランスロットが乱入する舞台に出演しているのはヒュー・ジャックマンだし、大物俳優がチョイ役で出てくるのも遊び心を感じさせる。こういう映画はあまり深く考えずに観たいものだが、ストーリー以外のこうした遊びもまた良しである。それにしてもロビン・ウィリアムズのこれが遺作だと言うのも寂しい限りである。

ストーリーは単純すぎて、大げさなイントロからすると肩透かしなのであるが、まぁこういう映画はこれでいいのだと思う。肩ひじ張らずに楽しみたい映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2017年10月21日

【スノーデン】My Cinema File 1811

スノーデン.jpg

原題: Snowden
2016年 アメリカ
監督: オリバー・ストーン
出演: 
ジョセフ・ゴードン=レビット:エドワード・スノーデン
シャイリーン・ウッドリー:リンゼイ・ミルズ
メリッサ・レオ:ローラ・ポイトラス
ザッカリー・クイント:グレン・グリーンウォルド
トム・ウィルキンソン:イーウェン・マカスキル
スコット・イーストウッド:トレバー・ジェイムズ
リス・エバンス:コービン・オブライアン
ニコラス・ケイジ:ハンク・フォレスター

<シネマトゥデイ>
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名匠オリヴァー・ストーン監督が、アメリカ政府による国際的な個人情報監視の事実を暴き世界を震撼させた「スノーデン事件」の全貌に迫る人間ドラマ。CIAおよびNSA(アメリカ国家安全保障局)職員だったエドワード・スノーデン氏がキャリアや恋人との幸せな人生を捨て、重大な告発を決意するまでの過程を描く。スノーデン氏をジョセフ・ゴードン=レヴィット、その恋人をシャイリーン・ウッドリーが演じるほか、オスカー女優メリッサ・レオ、ザカリー・クイント、トム・ウィルキンソンらが脇を固める。
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「スノーデン事件」と言えば、まだ記憶にも新しい。「元CIA職員が機密情報を漏洩してロシアに亡命した」という程度の認識であったが、詳細に興味もあって映画を観ることにした次第。

物語は2013年、香港のとあるホテルにてドキュメンタリー作家ローラ・ポイトラスとイギリスのガーディアン紙の記者グレン・グリーンウォルドとがある人物と待ち合わせすべく、周囲に目を配っているところから始まる。そしてその前に現れたのがエドワード・スノーデン。ルービックキューブを持っているが、これがちょっとした象徴的なアイテムとしてこの映画では描かれる。

スノーデンは2人をあらかじめ手配していた部屋に招き入れると、2人の携帯を預りレンジに入れる。録画はカメラでできると説明するも、今から思えばアメリカの情報機関による盗聴を防ぎたかったのかもしれない。そして、スノーデンが2人を呼び寄せた目的は、これまでスノーデンが体験し得た、アメリカ政府、NSA、CIAの情報機密の暴露。それはアメリカの情報収集が全世界をターゲットにしたものであることに疑問符を抱いてのことからであった。

そして物語は遡り、スノーデンが軍隊に志願したところに戻る。特殊部隊を志願するも、もともと「肉体系」ではなかったようで、過酷な訓練に足が悲鳴を上げ怪我を負ってしまい、除隊を余儀なくされる。「別の形で国家に尽くせ」という慰めが、アメリカらしさを感じさせる。そしてスノーデンはCIAの採用試験に臨み、合格する。

そこで持ち前の天才的な頭脳とプログラミング能力の才能を発揮し、指導教官コービンに一目置かれる存在となり、さらにハンク・フォレスター教官とも親しくなる。トップクラスの成績を誇るスノーデンは、ジュネーブにあるアメリカの国際代表部に派遣される。そして現地でスノーデンが目の当たりにしたのは、一般市民のメール、チャット、SNSからあらゆる情報を収集するNSAの極秘検索システムの存在。

表向きテロ活動を防ぐためと称するも、情報収集は明らかに必要な範囲をはるかに越え、スノーデンは疑問に思うようになる。CIAを辞職し、今度はNSAの契約社員として日本へ異動するが、ここでも表向きはサイバーテロの防衛技術の指導だが、裏では日本政府や企業の盗聴やハッキングを行う。そして万が一日本が同盟国でなくなった時に備えて、インフラに破壊システムを組み込む。あくまで映画であるから真偽はわからないが(たぶん本当のような気がする)、我々日本人にとっては衝撃的な内容である。

スノーデンはなぜ国家機密を暴露したのか。映画では、「こんなことまでしていいのか」という疑問を国民に公開し、みんながどう思うか判断を委ねるためと語られる。アメリカは9.11で大きな衝撃を受け、軍事力での侵攻なら防げるが、テロ防止の難しさをつくづく実感したのだと思う。勢い、それを予防するためには、あらゆる事前の情報収集が必要だという理屈は良くわかるが、「それにしても」という気持ちは確かにある。

NSAの技術者が得意気に対象者のPCにアクセスし、着替えの様子を画面に表示する様子を見ていたスノーデン。その記憶は自分のベッドで恋人と睦まじく寝ている時に脳裏をよぎる。「これも見られているのではないか」と疑心暗鬼になる様子は、大暴露に至った心情をよく伝えてくれる。果たして正義のためにはどこまで許されるのかを考えるにはいいかもしれない。

監督はオリバー・ストーン。もともとアメリカ政府に手厳しい映画(『プラトーン』(My Cinema File 1439)『ブッシュ』(My Cinema File 540))や本(『オリバー・ストーンが語るもうひとつのアメリカ史』)を世に問う傾向があり、この映画を撮ったのも十分理解できる。内容的にも、またエンターテイメントとしても十分満足できるものである。

あくまで映画であり、一部は史実と違う所や描かれていないところがある様であるが、事件そのものを理解するには十分ではないかと思う。こういうのも映画の良さとして理解したい一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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