
原題: Hawking
2004年 アメリカ
監督: フィリップ・マーティン
出演:
ベネディクト・カンバーバッチ:スティーブン・ホーキング
リサ・ディロン:ジェーン・ワイルド
マイケル・ブランドン:アーノ・ペンジアス
ピーター・ファース:フレッド・ホイル教授
トム・ホジキンス:ロバート・ウッドロウ・ウィルソン
アダム・ゴドリー:フランク・ホーキング
フィービー・ニコルズ:イゾベル・ホーキング
トム・ウォード:ロジャー・ペンローズ
<映画.com>
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人気ドラマ「SHERLOCK」のベネディクト・カンバーバッチが、天才物理学者ホーキング博士の若き日々を演じたイギリス製テレビ映画。1963年。ケンブリッジ大学院で理論物理学を学ぶ21歳の青年スティーブン・ホーキングは、自分の好奇心を満たしてくれる宇宙の研究や、恋心を寄せる女性ジェーンの存在に充実した日々を送っていた。ところがある日、スティーブンの身に突如として悲劇がふりかかる。脳の命令が筋肉に伝わらない難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を発症し、余命2年を宣告されてしまったのだ。両親の支えで大学院に戻ったスティーブンは、日を追うごとに身体の自由を失っていく恐怖に耐えながら、研究に没頭していく。
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かの有名なホーキング博士の物語。ドラマは1978年のストックホルムから始まる。ノーベル物理学賞受賞式の前日にインタビューを受けるロバート・ウィルソンとアーノ・ペンジアス。ホーキングについて聞かれた彼らは、「知らない」と答える。この何気ないインタビューは、ホーキングのドラマと並行して進んでいくが、初めはその意味がよくわからない。
そして時は遡り、1963年。テレビを観ているのはスティーヴン・ホーキング。テレビの中では天文学者のフレッド・ホイル教授が理論を語っている。それは宇宙は普遍で変わらないという定常宇宙理論。その日はスティーヴンの21回目の誕生日。そこに1人の女性ジェーンが訪ねてくる。パーティ半ばで庭に出て星空を見上げるスティーヴンとジェーン。星を眺めながらスティーヴンが語るのは物理学や自分の持論。不器用な性格がよくわかる。ところが、寝転がっていたスティーヴンは立てなくなってしまう・・・
スティーヴンは病院で検査を受けるが、なかなか原因がわからない。ジェーンはスティーブンの両親と連絡を取りながら、彼の身を案じている。一方でアーノとロバートのインタビューが続く。2人は銀河のかなたからくるノイズを観測していたことを語る。録音テープから流れる音は、素人からすれば単なる雑音にしか聞こえない。インタビューは、アーノのナチスによる迫害を受けた出自へと脱線しながら続き、そしてノイズの正体である熱が何なのかを調べたことを語る・・・
スティーブンの病気はやがてALSだと判明する。徐々に動かなくなる体。ケンブリッジに戻り、自身の研究テーマを探し求める日々。この頃はまだホイル教授の定常宇宙論が主流で、教授はビッグバン理論を否定している。しかし、ペンローズ教授らとの議論を経て、スティーブンはこの考えに疑問を持ち、そして時間の逆行というヒントからビッグバン理論に辿りつく。これらよってスティーブンは、奨学金を得て研究を続けることになる・・・
もともとホーキング博士に興味を持っていたことから、ちょっと古いテレビドラマを観たのだが、これが意外と満足度の高いものだった。背景に流れる音楽も良いし、体が動かなくなっていくスティーブンだが、それにもかかわらず彼と結婚しようとするジェーンとの物語もドラマの横串としていい。そして絶妙なのが、15年を経て並行して描かれる2つのドラマがかみ合う瞬間。2人のノーベル賞学者(しかもホーキングを知らないと語っている)のインタビューがなぜ描かれていたのか。これはちょっとした感動であった。
正直言って、ホーキング博士のことを少し知りたいと思って観た映画だったが、ストーリー展開というか構成というかその巧みさと音楽とが相まって、予想以上に面白かったドラマである。こういうサプライズは心地よい。それにしても、ホーキング博士という人物は、つくづく天才なんだと思わされる。天文物理学も難しいが、面白そうだと改めて思う。少し本でも読んでみようかという気持ちにさせられたドラマである・・・
評価:★★☆☆☆