
原題: Trash
2014年 イギリス/ブラジル
監督: スティーヴン・ダルドリー
出演:
リックソン・テベス:ラファエル
エデュアルド・ルイス:ガルド
ガブリエル・ウェインスタイン:ラット
マーティン・シーン:ジュリアード神父
ルーニー・マーラ:オリヴィア
バグネル・モーラ:ジョゼ・アンジェロ
セルトン・メロ:フェデリコ
<シネマトゥデイ>
********************************************************************************************************
ゴミ山に暮らす3人の貧しい少年が、ある財布を拾ったことから絶望の街に奇跡を呼び起こしていくドラマ。監督は『リトル・ダンサー』『愛を読むひと』などのスティーヴン・ダルドリー、脚本を『ラブ・アクチュアリー』などロマコメの名手リチャード・カーティスが手掛ける。過酷な環境でたくましく生きる少年たちには、オーディションで選び出された無名の少年たちを起用し、名優マーティン・シーン、『ドラゴン・タトゥーの女』などのルーニー・マーラが脇を固める。
********************************************************************************************************
以前、『シティ・オブ・ゴッド』や『シティ・オブ・メン』という映画を観て知ったブラジルの貧民街の事情。平和な我が国からは想像もつかなくて衝撃を受けたが、それ以来ブラジルを舞台にした映画に興味を持っているが、これはそんなブラジルの貧民街を舞台にした映画。
冒頭、アパートの自室で何やら秘密めいた鍵とメモを財布に入れる男。警官隊が到着すると男の部屋へと殺到する。いち早く気付いた男は逃げ出すが、追い詰められて逮捕される(そこで酷い暴行を加えられる)。しかしその直前、大事に持っていた財布を放り投げると、財布はゴミ収集車に落下しそのままいずこへと運び去られていく・・・
そんなゴミ収集車が到着するのは、いずこかにある広大なゴミの山。個人的にかつて訪れたことがあるフィリピンのスモーキーマウンテンを思い出す。ここも映画のセットというより、実際にあるのだろう。ゴミ収集車が次々とゴミを吐き出すと、近隣に住む住人たちが集まってきてゴミを漁る。これで生活をしているのだろうが、やっぱりすごい光景である。主人公の3人の少年ラファエル、ガルド、ラットもそんなゴミを漁る人々の一員。そしてラファエルは、男が捨てた財布を拾う。
実は、男は腐敗政治家の右腕であったが、ボスを裏切って裏帳簿とともに大金を盗み出していた。冒頭のメモと鍵はその隠し場所の文字通りカギとなるもの。腐敗政治家はその捜索を警察にやらせている。ここでは警察も正義の味方ではない。捕まった男も拷問の上、殺害されている。警官のフェデリコは陣頭指揮を取り、ゴミの山に集う人々に報酬を提示して財布を探させる。警察を信用しないラファエルは、わずかな報酬には目もくれず、何やら秘密めいた財布の謎を探ろうとする。
そんなゴミの山の村には、白人の牧師ジュリアードとアシスタントのオリヴィアがいる。オリヴィアは子供たちにボランティアで英語を教えている。この牧師とオリヴィアを演じるのが名優マーティン・シーンとルーニー・マーラ。なんでこの2人が出ているんだろうと思うが、他の俳優陣はすべて知らない俳優たちばかりなので、個人的にはインパクトが大きい。そんな神父とオリヴィアを巻き込んで、少年たちは財布に秘められた謎を探っていく。
それにしても社会の貧困・腐敗というものは、実に恐ろしい。ゴミを漁って生活する人々の姿はそれだけでも現代日本の我々にとっては衝撃的であるが、警察も簡単に不正になびき、人殺しも簡単にやってのける。悪徳警官フェデリコもラファエルを捕らえ、財布のありかを吐かせようと平気でいたぶり、あまつさえ殺害を指示する有様。少年たちも当然警察を信用しないし、大人に脅されるのは日常である中で、なんとか立ち回っている。ストーリーとは別に、そうした社会の様子が観ていて重くのしかかる。
そんな中で、ラファエルたちは財布に秘められた謎を一つ一つ解いていく。それはある意味推理モノ的な面白さもある。刑務所に住むじいさんに会うためオリヴィアに頼むなんて子供らしからぬ芸当を見せたりする。最後は明るいラストが待っていて、実に爽快である。そこに至る軽妙な展開と重い社会背景などが相まって、期待通りの満足感を得られた映画である・・・
評価:★★☆☆☆