
原題: Kidnapping Freddy Heineken
2015年 ベルギー・イギリス・オランダ
監督: ダニエル・アルフレッドソン
出演:
アンソニー・ホプキンス:フレディ・ハイネケン
ジム・スタージェス:コル・ヴァン・ハウト
サム・ワーシントン:ヴィレム・ホーレーダー
ライアン・クワンテン:ヤン・“カット”・ブラート
マーク・ファン・イーウェン:フランス・“スパイクス”・メイヤー
トーマス・コックレル:マーティン・“ブレイクス”・エルカンプス
ジェミマ・ウェスト:ソーニャ
<映画.com>
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有名ビール企業ハイネケンの経営者が誘拐された実在の事件を映画化したクライムサスペンス。エミー賞受賞ジャーナリスト、ピーター・R・デ・ブリーズのベストセラーをもとに、誘拐犯と被害者双方の視点から謎多き事件の真相に迫る。1983年、オランダの都市アムステルダムでハイネケンの会長フレディ・ハイネケンが誘拐された。警察は巨大組織による犯行を疑うが、真犯人は犯罪経験すらない幼なじみの若者5人組だった。犯人たちは莫大な身代金を要求し、計画は順調に進んでいるかに見えた。ところが、人質であるハイネケンの傲慢な態度に振り回されるようになり、次第に追い詰められていく。名優アンソニー・ホプキンスが、素人誘拐犯たちを翻弄する老獪な大富豪役を存在感たっぷりに怪演。誘拐犯一味に「アクロス・ザ・ユニバース」のジム・スタージェス、『アバター』のサム・ワーシントン。
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こういう事件が実際にあったことなど全く知らなかったが、これは事実に基づいた映画。主人公のコル、ヴィレム、カット、スパイクス、ブレイクスは、5人で会社を経営している。しかし、事業が思わしくなく、資金繰りに窮する。銀行に融資を頼みにいくが、こういう時に銀行の返事は色良いものではない。担保に入れられる建物を有していたが、そこは不法滞在者の溜まり場となっていて、担保価値をみてくれない。思い余って自分たちで不法滞在者を追い出そうしたが、自力救済は法の禁じるところでもあり、5人は警察に逮捕されてしまう。
釈放されたコルが家に帰ると、妻から妊娠を知らされる。喜びの反面、男として稼がねばならない責任が一層重くなる。ある日、妻と実家に帰ったコルは、父がかつて仕えていたハイネケン氏について誇らしげに語るのを聞く。父親は自分を解雇したハイネケン氏と撮った写真を今でもリビングに大切に飾っている。コルはそれが気に入らない。そして5人で集まった時、窮地を脱するための計画をみんなに話す。それこそが、ハイネケン氏の誘拐計画であった。
犯罪に走る人間には2通りあって、短絡的に犯行に及ぶ者と用意周到に準備するタイプである。5人は後者。しかし、綿密な計画を立てるにも資金が必要とわかる。そこで5人は銀行を襲う事にする。白昼堂々の犯行にも関わらず、現金輸送車を襲撃して現金を奪う。すぐにパトカーが現れカーチェイスとなり、銃撃戦となるも、なんと1人も犠牲者を出さずに逃げ切ることに成功する。この金で事業を立て直せなかったのだろうかと1人ブツブツ言いながら続きを追う。
そして誘拐計画の準備に着手する5人。ターゲットは、ハイネケン氏のみならず運転手まで含める。そして2人分の偽装した防音完備の監禁部屋まで作る。そこまでやったからこそか、このハイネケン氏誘拐計画は見事に成功する。ここまでは実に見事である。いつも不思議に思うのだが、これだけうまくやれる力があるのなら、その知恵をなぜ事業に使わなかったのだろう。きっとうまくいったと思うのだが・・・
そして物事は予想通りには運ばないもの。すぐに手に入れられると思った身代金は、なかなか支払われる様子がなく、5人の間には不安から不協和音が流れ始める。やはりそれまで犯罪に手を染めることなく生きてきた者ゆえに、悪になりきれないのだろう。犯罪をチームで行うなら、まず何よりも信頼できる仲間かどうかが重要。そして次に精神力だろう。捕まるかもしれないという不安と恐怖をどう克服していくか。
映画では、ハイネケン氏の老獪さも出ていた。やはり大企業の経営者ゆえに、不安に駆られた犯罪初心者では対人力が違う。それが実際にはどう影響したのか興味深いところである。どうせなら、どうして犯人逮捕に至ったのか詳しく描いて欲しかったと思うが、そこが残念なところ。そして身代金の一部は、結局回収できなかったというから、その行方も興味深い。それにしても、結局みんな逮捕され、犯罪は割に合わないと証明されることになる。もう少し徹底していたら、あるいは逃げきれたのかもしれない。
やはり真面目に生きのが一番だと改めて思わせてくれる実話映画である・・・
評価:★★☆☆☆