
原題: 11 A.M.
2013年 韓国
監督: キム・ヒョンシク
出演:
チョン・ジェヨン:ウソク
チェ・ダニエル:ジワン
キム・オクビン:ヨンウン
<映画.com>
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タイムトラベルに成功した科学者たちが、予測不能な事態に陥る様を描いた韓国製SFサスペンス。物理学者のウソクはタイムマシンの研究をしているが、一向に成果をあげられず、スポンサーからプロジェクト中止を言い渡される。なんとか研究を続けるため、仲間の制止を振り切り自らタイムトラベルを決行したウソクは、24時間後の翌日午前11時の世界にたどり着き、タイムトラベルに成功する。しかし、たった24時間しかたっていないはずの研究所は廃墟と化し、研究仲間たちもいなくなっていた。そこで何者かに襲われたウソクは元の時間に戻り、未来から持ち帰った防犯カメラの映像を確認する。するとそこには、仲間の研究者たちが次々と殺されていく恐ろしい様が映し出されていた。
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韓国映画はその国民性と相反して非常に面白い。だから嫌韓感情とは別に観ることにしているが、これもそんな一作。
ロシアの企業をスポンサーに海底の原子力炉内でタイムマシンの研究に従事する研究者たちがいる。しかし、思うような成果が得られず、ロシアのスポンサー企業は契約打ち切りを示唆してくる。焦りもあったメンバーのウソクは、現時点で可能な「24時間後へのタイム・スリップ」の実験を実施する。
マシンに乗るのはウソクとヨンウン。実はその前にジワンがウソクに同行を志願するが、「危険を冒させたくない」とこれを拒絶する。それまで実験のリーダーだったウソクの実にリーダーらしい一言。それなのにいきなりヒロインのヨンウンを同行させるのでズッコケる。「危険な実験に女性を同行させるのか!」と一人ツッコミを入れるが、当然ウソクの耳には届かない。かくして2人は「24時間後の世界」へと旅立つ。
マシンは24時間後の世界に15分滞在して元の世界に戻る設定。残るスタッフは同時に休暇に入る予定で、24時間後の施設には誰もいないはず。タイム・トラベルの証拠資料を取り出して戻る単純な実験であった。ところが、24時間後の研究施設は荒廃していて、とても24時間後とは思えない。さらにウソクは何者かに襲われて首を絞められる。辛うじて撃退してマシンに戻るも、マシンの中にヨンウンの姿はなく、締まりゆく扉の外に呆然と佇むヨンウンがいる・・・
未来から現在に戻ったウソクは、慌てて未来でコピーしてきた監視カメラの映像をスタッフたちと見る。「これから何が起こるか」がそこには記録されているはず。しかし、大半のカメラはウイルスに感染していて再現不能になっている。辛うじて再現できた一部の映像には、研究所内で爆発が起こり、スタッフの一人が炎に包まれる姿が映されている・・・
冒頭からツッコミを入れつつも、早くもストーリーに引き込まれる。タイム・スリップと言ってもまだ技術は半ばで、行くことができるのは「24時間後の世界」のみ。この中途半端さがストーリーを面白くしている。わずか24時間の間で一体何が起こるのか。リミットは24時間後の午前11時(これが原題)。スタッフの死を目撃したウソクは、起こるべき未来を変えようと決意する。
未来へ行ったウソクが、混乱の中機転を利かせて監視カメラをコピーして持って帰ってきたのは正解だった。しかし、これがウイルスのために断片的にしか再現できないのは、観る者にとっては面白いが、当事者にとっては大変。ある時間に火災が発生するのはわかるが、場所と原因はわからない。果たして未来は都合よく変えられるのか。変えられたとしたら、そこで生じるであろうタイム・パラドックスをどう説明するのか。しかも深海にある原子炉施設の中なので外部の救助はあてにできない・・・
いつの間にか映画の世界に引き込まれている。
物語は焦るウソクをよそに、自分勝手な行動を取るスタッフの行動とが相まって、見事に24時間後の世界に向かって進んでいく。「なるようにしかならない」のが運命なのか、未来は己の力で引き寄せられるのか。興味深い展開が時間の経過を忘れさせる。果たしてこの研究は成果として残ったのであろうか。ラストでそれまでぼやかされていた経緯が明らかになるが、それもまた丁寧で良しとしたい。
またしてもポイントを稼いでくれた韓国映画である・・・
評価:★★★☆☆