2018年04月30日

【パトリオット・ウォー ナチス戦車部隊に挑んだ28人】My Cinema File 1912

パトリオット・ウォー.jpg

原題: Dvadtsat vosem panfilovtsev
2016年 ロシア
監督: キム・ドラジニン/アンドレイ・シャロパ
出演: 
アレクサンダー・ウスチュゴフ
ヤコブ・クシャビスキー
アザマト・ニグマノフ
オレグ・フョドロフ
アレクセイ・モロゾフ
アントン・クズネトソフ:

<映画.com>
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第2次世界大戦中、ナチスドイツの戦車部隊にわずか28人で立ち向かったロシア兵たちの死闘を描いたロシア製戦争アクション。ロシア国民で知らない者はいないと言われる有名なエピソード「パンフィロフの28人」を、ロシア文化省による後援とクラウドファンディングを受けて映画化した。1941年、ナチスドイツがロシアに侵攻。同年11月、モスクワは大軍に包囲されつつあった。首都郊外のボロコラムスクを守備していたパンフィロフ将軍率いる第4中隊は、ドイツ軍の装甲師団から猛攻撃を受けて壊滅状態に陥ってしまう。絶望的な状況の中、生き残ったわずか28人の兵士たちは、モスクワを守る最後の砦として戦うことを決意する。新宿シネマカリテの特集企画「カリコレ2017/カリテ・ファンタスティック!シネマコレクション2017」(17年7月15日〜8月18日)上映作品。
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 時に1941年、独ソ戦が開戦され、ナチスドイツは「バルバロッサ作戦」を実行し、怒涛の勢いでソ連領内に侵攻する。モスクワまであとがない状況で、首都郊外のヴォロコラムスクにはパンフィロフ将軍指揮下の第4中隊が展開している。第4中隊は塹壕を張り巡らせて迎え撃つ体制を取っているが、その装備は心許ない。敵戦車に対しては、手製の火炎瓶を用意。何と木型で戦車を作っての訓練には、傍で見るからに頼りない。そしてドイツ軍が到達する。

 ドイツ軍は戦車を主体として攻め入る。守るソ連軍も塹壕を利用し、速射砲と対戦者ライフルで対抗する。最初の攻撃に対し、戦車4輌を破壊し、何とかこれを撃退する。しかし、部隊は壊滅寸前に追い込まれ、生き残ったソ連軍兵士も残りわずか28名となっている。後方部隊に増援を要請するも、ソ連軍に余裕はなく、増援要請はあえなく却下される。そしてドイツ軍の二度目の攻撃が始まる。

 強力な砲撃を加え、これで塹壕にこもっているソ連軍にも損傷が出る。続いて航空支援を受け戦車部隊が殺到する。迎え撃つソ連軍は、変わらず速射砲と対戦車ライフルとで迎え撃つ。近づいてきた戦車に対しては、手榴弾の束を投げつけ、火炎瓶で炎上させる。双方とも肉弾相打つ戦いが展開される。ソ連軍にあるのは、「後退する場所はどこにもない。俺たちがモスクワを守る最後の砦だ」という指揮官の言葉のみ。

 興味深いのは、これが実話であるということ。事実に勝る説得力はないが、まさにその通り。映画だから多少のフィクションは入っているのだろうが、結果的にドイツ軍を撃退したのは間違いない。どこまで史実に忠実に再現されているのかはわからないが、映画で描かれているソ連軍の戦い方は、まさに肉弾戦である。ノモンハンでは逆に日本軍にこれをやられ、戦車も次々に火炎瓶の餌食になったそうであるが、もしかしたらノモンハンの教訓を生かしたのかもしれないなどと想像してしまう。

 結果的にモスクワ攻防戦は、ソ連が守り抜いて終わる。映画ではドイツ軍の将校が戦況を見守り、退却を命ずる。しかし、守っていたソ連軍にもう余力はなく、ドイツ軍はあと一押しで突破できていたが、こういうケースはビジネスでもよくありがちだと思う。相手の手の内がわからないので仕方ないが、ドイツ軍にももう少し根性があったらと思わされる。宇宙戦艦ヤマトで、デスラー総統が、「我々も苦しいが敵もまた苦しい。勝利はこの苦しみを耐え抜いた方に訪れる」という言葉を吐いていたが、その言葉が脳裏を過った。

 この映画はクラウドファンディングで製作されたのだと言う。ロシア人にとって、第2次世界大戦は、大祖国戦争として誇り高いものがあるのだろう。そういう要素はあるとしても、ロシア人でなくても映画として単純に面白い(ドイツ人にとっては面白くないだろう)。それによくよく見ると、兵士たちは人種がバラバラである。そこまで意識したのかどうかわからないが、白人ばかりでないところも(各地から寄せ集めてきた感がある)史実に即しているのかもしれない。

 戦争映画が観たい気分の時にはいいかもしれない映画である・・・


評価:★★☆☆☆









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2018年04月29日

【トゥモロー・ランド】My Cinema File 1911

トゥモロー・ランド.jpg

原題: Tomorrowland
2015年 アメリカ
監督: ブラッド・バード
出演: 
ジョージ・クルーニー:フランク・ウォーカー
ヒュー・ローリー:デビッド・ニックス
ブリット・ロバートソン:ケイシー・ニュートン
ラフィー・キャシディ:アテナ
トーマス・ロビンソン:若き日のフランク
ティム・マッグロウ:エディ・ニュートン
キャスリン・ハーン:ウルスラ
キーガン=マイケル・キー:ヒューゴー

<Movie Walker解説>
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ディズニーランドにある“トゥモローランド”が、ウォルト・ディズニーの夢を隠すカモフラージュだったら?というアイデアに基づくミステリー・アドベンチャー。17歳の少女と、“トゥモローランド”の存在を知る男が人類の未来を懸けた冒険に挑む。監督は『ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル』のブラッド・バード。
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1964年、ニューヨークで万国博覧会が開催される。その一画に設けられた発明コンテスト♂場に、少年フランク・ウォーカーは自分の発明品を持ち込む。それは空を飛ぶためのジェットパック。しかし、審査員はつれなく却下する。飛べるならまだしも、自宅での実験では上空ではなく、とうもろこし畑を突っ切って終わっていたのである。肩を落とすフランクであるが、審査員の娘アテナがフランクにあるバッジを渡し、ついてくるようにと言い残す。アテナのあとを追って、会場にあるイッツ・ア・スモール・ワールド≠フ乗り物に乗って遊覧すると、フランクは地下水路を経由して見たことのない世界に迷い込む・・・

そして現代。NASAの技術者を父に持つ17歳の少女ケイシー・ニュートンは、子供の頃から星座や宇宙に憧れている。しかし、NASAではシャトル計画を中止し、発射台の解体が始まっている。これに反発するケイシーは、密かに妨害工作をしてたが、ある夜とうとう捕まってしまう。すぐに釈放されるが、私物を返却された際、身に覚えのないバッジが紛れ込んでいる。何気なくケイシーがバッジに触れると、その瞬間、周囲が一面の麦畑に変わる。驚いたケイシーがバッジを落とすと、そこは何ら変わらない現実。どうやらバッジに触れると、一面の小麦畑が見えることがわかる。そこでは、はるかかなたに近未来的な建物が見えている。

興奮したケイシーが、バッジを手にしてその未来都市を見学する。未来のテクノロジーに溢れた乗り物が行き交い、20光年先の星へ向かう少女が家族に見送られる。実はそのバッジは、アテナがケイシーにだけに見えるようして渡したものであるが、やがてバッジは電池が切れてしまう。家に戻ったケイシーは、バッジについて検索すると、買い取りをしている店を見つけ、翌日さっそく店に行く。ところが、ケイシーの持参したバッジを見せると店主の態度が変わる。それどころか、外見はおもちゃだが強力な銃でケイシーを脅す。そのピンチにケイシーを助けたのはアテナであった・・・

実は店主夫妻はロボットで、さらにケイシーを追う謎の集団が登場する。アテナはケイシーを今や壮年となったフランクのところへ送る。フランクは、人里離れた家にこもり、あと60日程で世界が終わるという予測に悲観的になっている。フランクと話すケイシーのもとに、謎の集団が襲い来る。こうしてフランクとケイシーの未来に向けた謎の集団との死闘が始まる。いかにもディズニーらしい、それは見ていて安心な戦いである。ケイシーが見た未来都市こそトゥモローランドであり、至る所にディズニーランドが散りばめられている。

アテナがケイシーを選んだのは、明るい未来を信じる力が強かったから。「夢を諦めない」というディズニーのメッセージがまさに前面に展開される。それはそれで悪くないのであるが、難を言えば全体的にあんまり面白くないということだろうか。小学生くらいの子供が観ればまた感想が違うのかもしれないが、どうも展開が子供じみていて素直に感心できない。それは「イッツ・ア・スモールワールド」を大人が楽しめないのと同じなのかもしれない(もちろん、楽しめる人は問題ない)。

考えてみれば、せっかくジョージ・クルーニーが出演しているのだが、この内容はちょっと残念の一言である。されど映画を観た感想は人それぞれ。観る人によっては十分に面白いだろう。何より安心して観ていられるし・・・ディズニーランドの「トゥモローランド」が楽しめる人には、楽しいかもしれない映画である・・・


評価:★★☆☆☆





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2018年04月28日

【EMMA/エマ 人工警察官】My Cinema File 1910

EMMA/エマ 人工警察官.jpg

原題: EMMA
2016年 フランス
監督: アルフレッド・ロット
出演: 
パトリック・リドレモン:フレッド
ソレーヌ・エベール:エマ
スリマン・イェフサー
サブリナ・セブク
バネッサ・ラール
ソフィー・ロドリゲス

<KINENOTE解説>
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驚異的な能力を備えたアンドロイドの活躍を描くSFサスペンス。フランス警察の警部・フレッドが率いる捜査チームに、新人のエマが配属される。エマの的確な分析力と並外れた身体能力は周囲の人間を驚かせるが、フレッドはエマの人間性に疑念を抱く。
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フランス警察に勤務する警部のフレッドはベテランの刑事。ある日、彼が率いる捜査チームに新人の研修生エマが配属される。エマは容姿端麗であり、刑事には似つかわしくない。そして間もなく事件が発生する。林の中で若い女性の遺体が発見されたのであるが、現場に着く早々、エマは被害者の刺された回数と死因、そして何より被害者が妊娠していることを指摘し、フレッドらを驚かせる。

フレッドは美人のエマに恋人の話を振るが、エマの答えは「仕事が趣味」と言うそっけないもの。さらにフレッドは、エマとの会話の端々に人間性が欠如している傾向を掴み取る。そして疑念を抱いたフレッドは、エマについて独自に調べていく。旧知の警察学校の仲間から、エマはすでに事故で死亡していると知らされる。驚いたフレッドは、エマを連れてきた上司に直接真偽を正す。

秘密を隠しきれないと判断したのか、上司はあっさりとフレッドを極秘施設に連れて行く。そこで、エマは内務省の極秘プロジェクトで作られたアンドロイドだと説明される。「人工警察官」という聞きなれないタイトルに、なんだと思っていたらそういうことらしい。いわばフランス版『ロボコップ』(My Cinema File 1400)といったところだろうか。ただし、ロボコップと違うのは、頭脳がAIだということ。ロボコップはそれだと危険と判断し、人間の脳を使ったが、フランスはOKらしい。

こうして捜査に加わったエマは、さすがに優秀さを見せつける。あらゆるデータがインプットされており、必要に応じて瞬時に取り出せる。血液分析もその場でやってしまう。後半は医学部生の殺人事件を捜査するのであるが、薬物に関する知識も豊富で、人間にはとても真似できない。凶悪犯に向かって行くのはともかく、こうした地道な事件の捜査なら優秀な刑事になりそうである。

刑事としては優秀でも、映画としては必ずしもそうとは言い切れない。なにせ、映画としては地味である。人工警察官といっても起こる事件は痴話喧嘩のもつれの殺人事件とか、医学部生同士の愛憎のもつれであったりととにかく地味。『ロボコップ』(My Cinema File 1400)のような凶悪犯罪対策とは違うので、ドンパチの類は一切ない。「人間よりもAIの方が捜査上は有利でしょ」と言いたいがための映画のようである。

それでも一応、身体能力も人間を上回っている。なにせ時速60キロで走れるし、15種類の格闘技をマスターしているのである。ひったくり犯なんてあっという間に追いついて息も切らせず涼しい顔をして組み伏せる。救命措置だって的確でバッチリだし、とにかくこんな警官がいたら理想的だと思う。重火器を振り回す組織犯罪対策なんて必要なければ、ロボコップよりもはるかに重宝されるだろう。ロボコップよりも美人警官の方が現場のモチベーションも上がるに違いない。

「人工警察官」というネーミングもよくよく考えてみれば、なかなかのセンスである。時代逆行的な邦題がすべてを表している気がする。B級映画に分類するのは惜しい気がする映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2018年04月27日

【ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密】My Cinema File 1909

ワンダー・ウーマンとマーストン教授の秘密.jpg

原題: Professor Marston and the Wonder Women
2017年 アメリカ
監督: アンジェラ・ロビンソン
出演: 
ルーク・エバンス:ウィリアム・モールトン・マーストン
レベッカ・ホール:エリザベス・ホロウェイ・マーストン
ベラ・ヒースコート:オリーヴ・バーン
モニカ・ジョルダーノ:メアリー
JJ・フィールド:チャールズ・ギエット
オリヴァー・プラット:マックス・ゲインズ
コニー・ブリットン:ジョゼット・フランク

<映画.com>
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DCコミックスの最強ヒロイン『ワンダーウーマン』の生みの親で、嘘発見器を発明した心理学者でもあるウィリアム・モールトン・マーストンの人生を、『美女と野獣』のルーク・エバンス主演で映画化した伝記ドラマ。1920年代。心理学の教授ウィリアムは授業を受けていた学生オリーブに惹かれ、彼女を助手にする。一緒に研究する妻エリザベスはオリーブに嫌悪感を示すが、共に過ごすうちにエリザベスもまたオリーブに惹かれていく。嘘発見器の発明を目指し研究に没頭する3人だったが、やがてそのスキャンダラスな関係が校内で噂となり、大学を追い出されてしまう。3人で共同生活を送る中で、ウィリアムは2人の進歩的な女性に感化され、新たなヒロイン『ワンダーウーマン』を考案する。エリザベス役を『アイアンマン3』のレベッカ・ホール、オリーブ役を「ネオン・デーモン」のベラ・ヒースコートがそれぞれ演じた。
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ここのところ『ワンダーウーマン』(My Cinema File 1838)が続けて映画になっているので、てっきり続編かと思ってしまったが、これは『ワンダーウーマン』(My Cinema File 1838)の原作者の物語。いわば自伝である。これはちょっと意外だったが、なぜ原作者にスポットライトが当たったかと言うと、それはドラマになるに十分だからに他ならない。

時に1928年、ウィリアム・マーストンはハーバード大学で心理学の教鞭を取っている。妻のエリザベスも同様に研究をしているが、まだ世の中は男性社会であり、エリザベスは自分の論文が認められないことに鬱憤をためている。そんな中、マーストン夫妻は、講義を受けていた女子学生オリーヴ・バーンを助手に採用する。エリザベスは、オリーヴにいきなり「夫と寝るな」と告げ、これにオリーヴは少なからずショックを受ける。

夫妻は心理学の研究の一環として嘘発見器の開発やDISC理論の研究をしており、オリーヴも研究の発展に大いに貢献し、やがて嘘発見器は完成する。そして一緒に仕事をしているうちに、3人はどんどん親密な関係になっていく。ウィリアムとオリーヴは男女の関係になり、さらにエリザベスとオリーヴもレズビアンの関係となる。やがてその関係は大学内でも噂になり、それが問題となってマーストン夫妻は教授職を失ってしまう。まぁそれはそうだろうと思う。

さらにオリーヴの妊娠が判明し、彼女はマーストン夫妻と同居することになる。失職したウィリアムは作家となるが、一家の生計を支えたのは秘書として働くエリザベスであった。ある日、ウィリアムは偶然立ち寄った画廊に展示されていた作品に衝撃を受ける。そのフェティッシュ・アートがウィリアムのDISC理論を実証するようなものだったからである。それをポルノと批判するエリザベスであったが、のめり込むウィリアムはオリーヴにその衣装を着させるが、それこそ後にワンダーウーマンのコスチュームそのものであった。そしてウィリアムは、アマゾーンをモデルにしたヒロインを主人公にした漫画を執筆し始める・・・

その漫画『ワンダーウーマン』は大ベストセラーとなるが、その内容はSMもどきのきわどいもので、作品に対する批判が起こり、ウィリアムも事情聴取を受ける羽目になる。
映画はこの事情聴取と3人の関係の始まりからを並行して描いていく。それにしても男1人と女2人の3人関係はなんとも言えない。男からしたらハーレムだろうが、世間的には大変だっただろう。いつの時代でも時代の先端を行く者は強い批判に晒されるものである。

それにしても、『ワンダーウーマン』にはこんな物語があったとは、全く知りもしなかった。ウィリアム自身は1947年に癌で他界してしまうが、エリザベスとオリーヴはその後、2人仲良く暮らしたという。実写化された『ワンダーウーマン』(My Cinema File 1838)を観たら一体どんな感想を持っただろうか。

それにしても本業だったはずの心理学では職を失い、嘘発見器も特許を取らずに金銭的な成功とは無縁で、真面目な本は売れず、最終的にはコミックで有名になる。人生ってわからないものだと、改めて思う。まさに「小説よりも奇なり」の自伝映画である・・・


評価:★★☆☆☆






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2018年04月24日

【禁じられた遊び】My Cinema File 1908

禁じられた遊び.jpg

原題: Jeux interdits
1952年 フランス
監督: ルネ・クレマン
出演: 
ブリジット・フォッセー:ポーレット
ジョルジュ・プージュリー:ミシェル・ドレ
リュシアン・ユベール:ミシェルの父
シュザンヌ・クールタル:ミシェルの母
ジャック・マラン:ジョルジュ・ドレ(ミシェルの兄)
ローレンス・バディ:ベルテ・ドレ(ミシェルの姉)

<映画.com>
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「ガラスの城」のルネ・クレマンが監督した一九五二年作品。戦争孤児になった一少女と農家の少年の純心な交情を描くフランソワ・ボワイエの原作小説を、「肉体の悪魔(1947)」のコンビ、ジャン・オーランシュとピエール・ボスト、それにクレマンが共同で脚色した。台詞はオーランシュ、ボスト、原作者ボワイエの三人。撮影は「ドイツ零年」のロベール・ジュイヤール、音楽はナルシソ・イープスの担当。出演者はクレマンが見出したブリジット・フォッセーとジョルジュ・プージュリーの二人の子役を中心に、リュシアン・ユベール、スザンヌ・クールタル、ジャック・マラン、ローレンス・バディら無名の人たち。なお、この作品は五二年のヴェニス映画祭のグラン・プリとアカデミー外国映画賞を受賞した。
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 世界的な名作としてこの映画は有名であり、自分もかつて1度観たことがあるが、もう詳細は忘れてしまった。温故知新でもう一度観てみたいと思っていた映画。いつ観たのかなんて忘れてしまったが、時を経て観てみるとまた違った印象を持つものなのかもしれない。

 1940年6月、ドイツ軍から逃げるため街道を進む群衆。その中のある夫婦が、幼い少女ポーレットを連れている。そこに戦闘機による機銃掃射があり、なんと両親と連れていた犬は犠牲になってしまう。まだ幼くてよく事態を理解できないポーレットは、愛犬の死体を抱きながら川沿いの道を1人歩いて行く。そこではぐれた牛を追いかけてきた農家の少年ミシェルと出会う。ミシェルはポーレットを家に連れて帰る。

 ミシェルの家は貧しい農家。戦争もどこか遠い世界の話で、日々の暮らしに精一杯。貧しいながらもポーレットの身の上に同情し、温かく迎え入れるミシェルの家族。ポーレットは死というものがまだよく分からず、神への信仰や祈り方も知らない。そんなポーレットにミシェルは死んだ愛犬の墓を作ることを教え、無人の水車小屋に埋葬する。愛犬がひとりぼっちでかわいそうだと思ったポーレットは、もっとたくさんのお墓を作ってやりたいと言い出す。

 こうしてミシェルは、モグラやヒヨコなど様々な動物の死体を集めて、次々に墓を作っていく。そして墓標として十字架が必要になるが、うまく作れない。そこで2人は馬車から飾りの十字架を盗む。十字架は一つでは足りず、ミシェルは教会にある美しい十字架や墓場からも多くの十字架を盗みだして自分たちの墓地へと運ぶ。当然、こんなことは許されることではなく、ミシェルは教会の十字架を持ち出そうとして神父に見つかって怒られたりする。これが「禁じられた遊び」ということだろう。

 映画はこうして幼い2人が墓を作る話を中心に進んでいく。その間、ミシェルの兄が馬に蹴られた怪我が元で死んでしまい、仲の悪い隣人の息子が戦場から脱走してきて帰宅し、何とミシェルの姉と恋仲になってしまう。当然両家の父親がそれを許すはずもない。加えて兄の墓から十字架がなくなっているのを知ったミシェルの父は、犯人を隣人と勘違いし大喧嘩となったりする出来事が描かれていく。そんな中、ミシェルの家に警官が訪ねて来て、戦災孤児のポーレットを孤児院に入れると告げる・・・

 映像はモノクロで、それがまた今にして観ればいい味わいを出している。バックに流れるギターの名曲も物悲しい。子供は家の手伝いは当たり前で、何かというと殴られる。娯楽も遊びも少ない中で、2人の子供が墓づくりに楽しみを見出していく。戦争という大人の事情で親と死別したものの、その悲しみもよくわからないポーレットがミシェルと2人で何日かを過ごす。観る人の心を揺さぶる内容だからこそ、名画の誉れを得たのであろう。

 盗んだ十字架のありかを殴られても白状しなかったミシェルが、ポーレットのためにはあっさりそれを教える。子供ながらのその心がいじらしい。それに加えて、ラストシーンのポーレットの演技力には関心してしまう。単に幼い2人の子供が愛らしいというだけでなく、いろいろと考えさせられるところがある。ラストのその後も思わず想像してしまう。ポーレットは幸せになれたのだろうか。そんなことを考えさせられる映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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