
原題: Kvinden i buret
2013年 デンマーク
監督: ミケル・ノルガード
出演:
ニコライ・リー・カース:カール・マーク
ファレス・ファレス:アサド
ソニア・リクター:ミレーデ・ルンゴー
ミケル・ボー・フォルスガード:ウフェ
ソーレン・ピルマーク:カールの上司
トロールス・リュービュー:ハーディ
<映画.com>
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世界的に人気を集めるユッシ・エーズラ・オールスン原作のミステリー小説「特捜部Q」シリーズの第1作「檻の中の女」を、本国デンマークで映画化。『ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女』のニコライ・アーセルが脚本を手がけた。コペンハーゲン警察殺人課の刑事カールは、新設されたばかりの未解決事件班「特捜部Q」に左遷させられてしまう。捜査終了と判断された事件の資料を整理するだけの仕事にやる気を見出せないカールだったが、資料の中から5年前に世間を騒がせた美人議員失踪事件の捜査ファイルを発見し、その捜査結果に違和感を抱く。助手アサドと共に調査に乗り出したカールは、やがて議員がまだ生きている可能性にたどり着く。主人公カール役を『天使と悪魔』のニコライ・リー・カース、助手アサド役を『ゼロ・ダーク・サーティ』のファレス・ファレス、失踪した議員役を「しあわせな孤独」のソニア・リクターが演じた。2015年1〜2月、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で開催の「未体験ゾーンの映画たち 2015」上映作品。
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デンマーク映画というと、日本ではあまり馴染みがないものの、時折観る機会に恵まれる。日本にいてそうなのだから、たぶん現地ではかなり製作されているのではないかという気がする。そんなデンマークのミステリー映画である。
主人公は、コペンハーゲン警察署殺人課の刑事カール・マーク。仕事熱心であることは間違いないが、時に自身の思いの強さからのめり込んでいく傾向がある。冒頭ではいきなりの張り込み現場で、応援を待とうという同僚の声を無視し、カールは現場に踏み込む。しかし、待ち受けていた者に銃撃され、自らも負傷するが、同僚の1人は死亡、もう1人は半身不随の重症を負ってしまう。
3ヶ月後、傷が癒えて署に戻ったカールだが、現場を外されてしまう。異動先は新設部署である“特捜部Q”。そこでは、20年分の未解決事件の書類を整理し再検証するというミッションを与えられる。はっきり言って左遷である。“特捜部Q”は左遷場所にふさわしく、署内の地下にある物置のような部屋。そしてアラブ系の男アサドが、部下として配属される。アサドもどういう経歴かはわからないが、前職は2年間倉庫でスタンプ押しをしていたというもの。カールと違ってアサドは前向きスタンス。
やる気など起こりようのない状況だが、カールはアサドが壁に貼りまくった資料のうち、「ミレーデ失踪事件」の資料に目が留まる。それは5年前、人気の女性議員ミレーデ・ルンゴーが突然乗っていたフェリーから失踪したというもので、手掛かりがない中、「自殺」とされていたもの。しかし、自殺の現場に自閉症の弟を連れて行くのは不自然だとカールは考える。
興味を持ったカールは、刑事魂に火が付き、資料の読み込みに入る。そして一緒にいた弟のウフェが、カフェでレインコートの男と歩いていたと言う証言が無視された事に気づく。実はミレーデは、何者かによってフェリーから拉致されており、以後なにやら堅固な部屋に監禁されていたのである。さらにその部屋は加圧室になっていて、不気味な声の男が気圧を上げ、「1年後に会おう」と言ったきり放置される。食事は与えられるものの、ミレーデは誰も知らない中で、孤独に監禁生活に入る。
こうしてカールは、アサドとともに誰も見向きもしない事件の捜査を密かに開始する。わずかな手掛かりからわずかな手掛かりへ。カールとアサドは地道に捜査を続けていく。しかし、経費の請求や問い合わせからそれが上司の知るところとなり、上司からは制止される。左遷男には大人しくさせておこうと考えた上司にとっては、煩わしいことこの上ない。しかし、もともとの暴走男がそんな制止に従うはずもない。一方で、何者かによるミレーデの監禁は続いている。その目的は不明。
事前の情報を何も知らずに観始めたものの、いつの間にかストーリーに引き込まれていく。上司の妨害にもめげずに事件を追うカール。そのままではおそらく迷宮入りするだけだった事件が、次第に明らかになってくる面白さ。誰が何の目的でという謎解きもあって、いつの間にか引き込まれていく。何となくラストのカールの言動から今後も“特捜部Q”が続いていきそうだと思ったら、原作はシリーズ化されているという。この映画もシリーズ化されたなら、観るのも面白そうだと思う。
「檻の中の女」というタイトルだけがどうも引っ掛かるが、それ以外は大満足な一作である・・・
評価:★★☆☆☆