2018年06月30日

【テラフォーマーズ】My Cinema File 1940

テラフォーマーズ.jpg

2016年 日本
監督: 三池崇史
出演: 
伊藤英明:小町小吉
武井咲秋:田奈々緒
山下智久:武藤仁
山田孝之:蛭間一郎
小栗旬:本多晃
ケイン・コスギ:ゴッド・リー
菊地凛子:森木明日香
加藤雅也:堂島啓介
小池栄子:大張美奈
篠田麻里子:大迫空衣
滝藤賢一:手塚俊治
太田莉菜:連城マリア
福島リラ:榊原

<映画.com>
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火星で人型に進化したゴキブリ「テラフォーマー」と人類の壮絶な戦いを描いた大ヒットコミックを、鬼才・三池崇史監督のメガホンにより実写映画化。主演を「悪の教典」でも三池監督とタッグを組んだ伊藤英明が務め、武井咲、山下智久、山田孝之、小栗旬ら豪華キャストが集った。2599年、人口増加による貧富の差が激しくなる日本では、新たな居住地開拓のために「火星地球化(テラフォーミング)計画」が始まっていた。しかし、火星の気温を上げるためにコケとともに放たれたゴキブリが異常進化してしまう。そのゴキブリたちを駆除するため、15人の日本人が火星に送り込まれるが……。
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近未来の日本。人類は人口増加に悩み、火星への移住計画を立てている。そのためには、火星を人類にとって住みやすい環境に変えるべく、テラフォーミングが行われる。そのために利用されたのが生命力の優れたゴキブリ。これが奏功し、火星は人類が生存できるレベルまでテラフォーミングが成功する。時に西暦2597年、東京で物語は始まる。

警察に追われる男女が、逃げ切れずに逮捕される。男は小町小吉、女は秋田奈々緒。殺人罪の容疑がかかる2人に本多博士がある提案をする。「火星での虫駆除」という仕事に対し、罪の免除と多額の報酬が提示される。いかにも胡散臭いオファーであるが(こういうオファーは得てして断るのが正解だと本能的に感じる)、奈々緒がサインしてしまい小吉もしぶしぶ承諾する。2人は「適合者」と判定されており、火星に行くために特別な手術が必要と言われ、彼らは手術を受ける。

こうして小吉と奈々緒はじめ、15名の人間が選ばれて宇宙船で火星へと向かう。彼らが受けた特別な手術とは、「バグズ手術」という昆虫のDNAを体内に埋め込むもの。首に「昆虫細胞活性剤」を打つことで、5〜6分の間その個々の昆虫の能力を最大限に引き出すことができるというもの。15人の乗組員は、その使用方法をインプットすると火星へと着陸する。

火星に着陸すると、すぐにマーズレッドPROという害虫駆除剤を発射して散布する。その成果を確かめるべく、船外に出る乗組員。ところが、あたりにゴキブリの死骸はなく、代わりに小吉と奈々緒は人間サイズの二足歩行の生き物と出会う。2人が戸惑っていると、その生物は素早く動き、一瞬で奈々緒の首の骨を折ってしまう。呆気にとられる小吉。宇宙船に戻ると、他にも犠牲者が出ている。そこで本多博士より、謎の生物が火星で独自の進化を遂げたゴキブリだとわかる。

なぜ初めから説明しないのか、なぜもっと本格的な軍隊組織を送り込まないのか、原作は漫画だというが、映画ではそのあたりの説明が省かれている。進化したゴキブリは「テラフォーマー」と呼ばれ、15人が受けたのはテラフォーマーと戦う手術。それもミイデラゴミムシとかサバクトビバッタとか、ネムリユスリカとか昆虫博士でもない限り誰も知らないような昆虫(唯一主人公の小吉のオオスズメバチだけがわかった)。

こうして、各人の特技を生かしながら、テラフォーマーとの戦いが繰り広げられる。なんとなく「仮面ライダー」を見ているような気分になってくる。目的は害虫駆除なのであるが、相手はとにかく数に勝っている。15人ではたとえオオスズメバチが最強で孤軍奮闘しても埒が明かない。数こそは最強の武器といった感じである。送り込まれた者も、みんな脛にキズ持つ者たちで、連係プレーも限られている。この計画、端から破綻している。首謀者の本多博士もどこか異色のキャラであり、それなりに専門分野はあるのかもしれないが、政略的思考は苦手のようである。

 結局のところ、ひたすら異生物たちとのバトルが繰り広げられる。『エイリアン』(My Cinema File 49)の日本版と言えなくもない。しかし、原作が漫画だからかどうかわからないが、どうも内容は漫画チックで『エイリアン』(My Cinema File 49)のような迫力も緊迫感も伝わってこない。それこそ子供向けのヒーロー番組を観ているような感覚である。何がどう悪いのかは何とも言えないが、要因の一つは間の抜けたテラフォーマーの顔であることは間違いないだろう。どう見てもギャグにしか見えない。

 出演陣はけっこう豪華なのであるが、出来栄えは残念としか言いようがない。原作は大ヒット漫画らしいが、映画化はチープに終わってしまったというところだろう。一度原作も見てみたいと思うのが精一杯の映画である・・・
 
 
評価:★★☆☆☆









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2018年06月29日

【シェイプ・オブ・ウォーター】My Cinema File 1939

シェイプ・オブ・ウォーター.jpg

原題: The Shape of Water
2016年 アメリカ
監督: ギレルモ・デル・トロ
出演: 
サリー・ホーキンス:イライザ
マイケル・シャノン:ストリックランド
リチャード・ジェンキンス:ジャイルズ
ダグ・ジョーンズ:不思議な生きもの
マイケル・スタールバーグ:ホフステトラー博士
オクタビア・スペンサー:ゼルダ

<映画.com>
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『パンズ・ラビリンス』のギレルモ・デル・トロが監督・脚本・製作を手がけ、2017年・第74回ベネチア国際映画祭の金獅子賞、第90回アカデミー賞の作品賞ほか4部門を受賞したファンタジーラブストーリー。1962年、冷戦下のアメリカ。政府の極秘研究所で清掃員として働く女性イライザは、研究所内に密かに運び込まれた不思議な生き物を目撃する。イライザはアマゾンで神のように崇拝されていたという“彼”にすっかり心を奪われ、こっそり会いに行くように。幼少期のトラウマで声が出せないイライザだったが、“彼”とのコミュニケーションに言葉は不要で、2人は少しずつ心を通わせていく。そんな矢先、イライザは“彼”が実験の犠牲になることを知る。『ブルージャスミン』のサリー・ホーキンスがイライザ役で主演を務め、イライザを支える友人役に『ドリーム』のオクタビア・スペンサーと『扉をたたく人』のリチャード・ジェンキンス、イライザと“彼”を追い詰める軍人ストリックランド役に『マン・オブ・スティール』のマイケル・シャノン。アカデミー賞では同年最多の全13部門にノミネートされ、作品、監督、美術、音楽の4部門を受賞した。
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 アカデミー賞を受賞した映画となると、やはり観ておきたいと思うもの。これは2018年のアカデミー賞受賞作品として楽しみにしていた映画である。
 物語の舞台は1962年のアメリカ。何が原因かははっきりと説明されていないが、主人公のイライザはろうあ者ではないが、話すことができない。なぜかソファで寝ていて、目を覚ますとシャワーを浴び、食事をして隣室のジャイルズの部屋を覗いたあと出勤するという毎日を送っている。

 勤め先は政府機関で、そこでは清掃員として働いている。同僚のゼルダはいつもなにくれとなくイライザの手助けをしてくれている。その仕事はなぜか夜の間。したがって、昼夜逆転の生活となっている。そんなある日、勤務先にホフステトラー博士が赴任してくる。それとともに運び込まれた謎のタンク。イライザはそのタンクに興味を持つ。

 イライザとゼルダがトイレ掃除をしていると、ストリックランドという男が入ってくる。非常に不遜な態度を取る男で、イライザとゼルダの前で小用を済ませるが、なんと手を添えない。そのストリックランドが、そのしばらく後、事故で指を失う。あたり一面が血だらけとなった中で、清掃のため普段立入りができない実験室に入ったイライザは、そこで運び込まれたタンクの中身が実は「半魚人」だとわかる。

 普通であれば気味悪がるところだろうが、イライザはなぜかその半魚人に親近感を持つ。何気なく半魚人にゆで卵を渡し、手話で話し掛ける。この時から、イライザは密かに半魚人との交流をはかるようになってゆく。時代は米ソ冷戦下。アメリカはこのアマゾンの奥地で神として現地人の崇拝を受けていた半魚人を研究対象としている。ホフステトラーは人間に代わる宇宙飛行士としてロケットに乗せようと提案している。それに対し、ストリックランドは、生体解剖を主張する。

 ストリックランドの計画を知ったイライザは、半魚人との交流が進んでいたこともあり、これを逃がそうとする。一方、実はソ連のスパイであるホフステトラーも、科学者としての興味からか解剖には反対で、密かにイライザと半魚人の交流を観察している。イライザは、ジャイルズに半魚人を逃す手伝いをしてくれるように頼みこむ・・・

 不思議なタイトルとともに、興味を持っていた映画であるが、こういう映画だとは思ってもみなかったところ。こういう異生物との交流というストーリーには、何となくパターンがあって、異生物に何らかの危機が迫って、それに対して非力な主人公が周りの助けを借りて異生物を逃がすというものである。古くは『E・T』がそうであるし、最近では『ピートと秘密の友達』(My Cinema File 1786)がそうであった。今回の主人公は少年ではないものの、「非力な」という意味では同じである。

 半魚人の脅威となるストリックランドは、どこか異常性を秘めている。トイレで手を添えずに用を足すという些細なところにもそれは現れているし、夫婦関係もまた然り。半魚人に指を食いちぎられ、それを手術によってつなぎとめるものの、術後の経過が思わしくなく、指が変色して臭いを発していく。その表情の異常性が映画に深みを持たせているのは確かである。それにしても、E・Tやドラゴンはどこか愛らしさを残していたが、ここに登場する半魚人はどうにもグロテスク。イマイチ共感性に乏しかったと感じたのは私個人の感性であろうか。

 ストーリー的になぜ現代でなく、1960年代だったのかはよくわからない。しかし、米ソの冷戦下という状況、政府機関でありながら黒人差別が露骨に残り(映画『ドリーム』(My Cinema File 1865)で描かれていたのと同様である)、男尊女卑の傾向(ゼルダの夫は亭主関白振りを発揮している)があり、映画の背景としては現代よりも物語に厚みが出せたのかもしれないと思ってもみる。
 
 そして何とも言えない味わいのエンディング。その後、イライザがどうなったのか、続きを想像してみたくなる映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2018年06月26日

【GONIN】My Cinema File 1938

GONIN.jpg

1995年 日本
監督: 石井隆
出演: 
佐藤浩市:万代樹木彦
本木雅弘:三屋純一
根津甚八:氷頭要
竹中直人:荻原昌平
椎名桔平:ジミー
永島敏行:大越康正
鶴見辰吾:久松茂
北野武:京谷一郎
木村一八:柴田一馬
室田日出男:式根
横山めぐみ:ナミィー
永島暎子:早紀
川上麻衣子:「ピンキー」のホステス

<シネマトゥデイ>
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暴力団の金庫から現金強奪を企てた5人の男たちの顛末を描いたバイオレンス・アクション。バブル崩壊により暴力団・大越組に多額の借金を抱えてしまったディスコのオーナー万代。彼はさまざまな出会いにより知り合った4人の男たちと共に、大越組事務所からの現金強奪を実行する。しかし、それも些細なミスから大越組に知れ、彼らは命を狙われることになる……。
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最近続編が製作され、それによって存在を知ったこの映画、実は1995年製作だというが、まったく記憶にない。出演陣からして観ても損はないだろうと鑑賞に至る。
主人公は、ディスコのオーナー・万代。バブル崩壊で売り上げも低迷する中、多額の借金を抱えていて、しかもどういう経緯かその借金の相手が暴力団大越組。普通、もうこうなると事業の崩壊は免れない。

ある夜、万代は新宿のバッティングセンターで、サラリーマン風の男・萩原に執拗にからまれ、反対に殴りつける。萩原は倒れて泣き出す。聞けばリストラで会社を解雇されたものの、それを家族には言えず、職を求めて街をうろうろしていたのである。萩原を車に乗せて店に帰った万代を待っていたのは、大越組組員による嫌がらせ。暴れる組員をナイフで刺したのは美貌の青年、三屋。

借金苦に喘ぐ万代は密かに大越組の金庫に眠っている大金を強奪することを目論み、仲間を探している。まずは三屋がそれに加わる。翌日、万代は借金返済の期限延長を交渉するために大越組へ行くと、そこへ組員の金髪の青年・ジミーが、女の借金のことで幹部ともめる場面に遭遇する。ジミーは、タイ人の売春婦ナミィーのヒモだった。その夜、ジミーを探しに行ったバーで、万代は用心棒をしている刑務所帰りの元刑事・氷頭に出会う。

こうして万代は、事務所の内部に詳しいジミーと氷頭を仲間に引き込むが、打ち合わせを行っているところへ萩原が現れ、なかば強引に仲間入りすることになる。タイトルはこの五人を意味している。周到な準備が奏功し、五人は大金を手に入れる。しかし、物事はそううまくいくものではない。金庫にあったパスポートを目にした萩原は、それがジミーの恋人ナミィーのものであると気付き、咄嗟に持ち出す。大越組もバカではないからこれに気付き、ジミーを疑う。

ヤクザは人権など気にしない。ジミーとナミィーを拉致すると、拷問の挙句、五人の犯行であることを突き止める。さらに、大越組には総長が雇った殺し屋の京谷と柴田も加わり、五人を追うことになる。ここで殺し屋として登場するのが北野武。妾の子として育ったという京谷には、理性や人間性というものが欠けている。次々と五人の行く末に現れては、一人また一人と手にかけて行く・・・

主演の佐藤浩市も今はあまり拝見しない根津甚八もみんな若い。一見、情けないサラリーマンの萩原も実は心に闇を抱えていて、大金を手にして帰宅する自宅の様子はなかなかのもの。レストランで別れた妻子と食事していた氷頭や故郷の飯田へ身を隠そうとする万代たちを、どこでどう居場所をつかんだのか京谷たちが襲う。北野武のバイオレンスが炸裂する。

登場人物たちの運命を考えると、続編はどうなるのだろうと思ってしまうが、おそらく関連性はあまりないものになると思われる。なぜ、この映画に気づかなかったのかはわからないが、遅ればせながら観られたのは良かったと思う。ずいぶん時間の空いた続編だから、記憶が新しいうちに観ることができるだろう。相変わらずの北野武の存在感。キラリと光るモノを感じさせてくれる一作である・・・


評価:★★☆☆☆







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2018年06月23日

【マイティ・ソー バトルロイヤル】My Cinema File 1937

マイティ・ソー バトルロイヤル.jpg

原題: Thor: Ragnarok
2017年 アメリカ
監督: タイカ・ワイティティ
出演: 
クリス・ヘムズワース:ソー
マーク・ラファロ:ブルース・バナー/ハルク
トム・ヒドルストン:ロキ
ケイト・ブランシェット:ヘラ
テッサ・トンプソン:ヴァルキリー
アンソニー・ホプキンス:オーディン
イドリス・エルバ:ヘイムダル
ジェフ・ゴールドブラム:グランドマスター
カール・アーバン:スカージ
浅野忠信:ホーガン
ベネディクト・カンバーバッチ:ドクター・ストレンジ
タイカ・ワイティティ:コーグ

<シネマトゥデイ>
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『アベンジャーズ』の一員であるソーを、クリス・ヘムズワースが演じたアクションシリーズの第3弾。ソーのハンマーを破壊するほどの力を持つ敵が登場し、宇宙の果ての星でとらわれの身となったソーが戦う姿を活写する。クリスやロキ役のトム・ヒドルストンに加え、ヘラ役で『ブルージャスミン』などのケイト・ブランシェットが出演。『シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア』などのタイカ・ワイティティが監督を務める。
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 各ヒーローがアベンジャーズとして一緒に戦ったり、ソロで活躍したりと絡み合うマーベルのスーパーヒーローシリーズ。今回はマイティ・ソーがソロで活躍するシリーズ第3弾である。

 雷神ソーは宇宙を旅し、巨人スルトに囚われているところから物語は始まる。スルトはソーの故郷アスガルドを滅ぼさんとし、アスガルドの最後に関する預言ラグナロク(これが原題)を語る。しかしソーはこれを気にすることもなく、スルトを撃退しアスガルドへと帰還する。しかしビフレストの番人はスカージに変わり、ロキの像が立てられ、ラグナロクが始まろうとしているのにのんきにオーディンは芝居見物をしている。様子がおかしいことに気付いたソーは、死んだはずのロキが生きていてオーディンに扮していることを暴く。

 肝心のオーディンは実は地球にいる。訪ね当てたところにいたのは、ドクター・ストレンジ。ソロのシリーズでも仲間はいろいろと登場するのである。ストレンジの力でオーディンの元を訪ねるソーとロキ。再会したオーディンであるが、自身の寿命が来たことを告げると、静かに消えていく。しかし、その前にソーには死を司る女神ヘラという姉がいること伝える。オーディンは邪悪なヘラに手を焼き、ずっと異次元へと追放・幽閉していたが、自分が死ねば彼女が解き放たれてしまうと告げる。そしてオーディンが消えた後、解き放たれたヘラが現れる。その力は、ソーが投げつけたハンマーをも破壊するほどのものである。

 圧倒的な力を発揮するヘラは、ソーとロキを次元の彼方へと吹き飛ばす。そしてアスガルドに降り立つと、地下に封じられていたオオカミの怪物や死んだ兵士を蘇らせ、たちまちアスガルドを支配下に収める。辛うじて忠臣ヘイムダルがビフレストの剣を持ち出して隠し、さらに生き残りの兵士たちと共に民を保護し、秘密の場所へと身を隠す。しかし、圧倒的な力を持つヘラは、その場所を探り当てて迫りくる。ビフレストの剣を奪われれば、ヘラはそれで全宇宙へ移動可能となり、その支配を広めることになる。

 一方、辺境の惑星サカールへと流されたソーは、そこでヴァルキリーという女賞金稼ぎによって捕らえられ、サカールの統治者グランドマスターにグラディエーターとして売られてしまう。先にサカールへと流れ着いていたロキはグランドマスターにうまく取り入っているが、ソーの力にはならない。『アベンジャーズ』(My Cinema File 1185)では強敵だったロキもすっかり道化役の雰囲気がある。ソーはグランドマスターの主催するバトルロイヤルに出場させられるが、そこでチャンピオンとして君臨していたのは、なんとハルクであった・・・

 ソーのソロと言っても、アベンジャーズのメンバーが登場する。冒頭でドクター・ストレンジが出てくるが、これはあいさつ程度。しかし辺境の惑星で再会したハルクは、ともにここでヘラと戦う同士となる。ちなみに、トニー・スタークは衣装だけ登場する。こういうソロのシリーズと集合モノのアベンジャーズとを交互に絡ませるのは、なかなかうまいものだと思わされる。アベンジャーズだとどうしても各々の扱いは短くなるから、こうして単体で光るのも良いと思う。

 こうして物語は、ハルクの力を借りてソーがヘラを倒す過程を描いていく。最強のハンマーはあっさり壊されてしまうが、ソーは自身も気付かずにいた自分自身の秘められ力を発揮していく。ハルクのパワーは相変わらず。しかし、今回はどういうわけかブルース・バナー博士へと戻らない。ボソッボソッとソーと話をするハルクが、今回は一味違う姿を見せてくれる。

 こうしたヒーローモノは、敵が強ければ強いほど面白さが増していく。今回その敵に回るのは、何とソーの姉であるヘラ。ソーと同じ血が流れているからだろうし、長姉でもあるからだろうか、その力はソーをも上回っていて、さすがのソーも苦戦する。そればかりか、ヘラの攻撃でソーは父オーディンと同じように右目を失う。ハンマーと右目を失うという、ヒーローとしてはどうやったら勝てるのかと思われてしまうし、ストーリー的には面白い展開である。

 圧倒的な力でヒーローが敵に勝つというのもいいかもしれないが、良き仲間と共に強大な敵に立ち向かうというのも良いと思う。今回は、ソーはハルクとヴァルキリーの力を借りて、ちょっと意外な方法でヘラを撃ち倒す。ラストはまた次の展開への布石となるので、エンドクレジットの途中で観るのをやめてはいけないのは常の通り。

 予告通り、また次も楽しみにしたいと思うマーベル作品である・・・
 

評価:★★★☆☆









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2018年06月22日

【ディーパンの闘い】My Cinema File 1936

ディーパンの闘い.jpg

原題: Dheepan
2015年 フランス
監督: ジャック・オーディアール
出演: 
アントニーターサン・ジェスターサン:ディーパン
カレアスワリ・スリニバサン:ヤリニ
カラウタヤニ・ビナシタンビ:イラヤル
バンサン・ロティエ:ブラヒム

<シネマトゥデイ>
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『預言者』などのフランスの鬼才、ジャック・オーディアール監督がメガホンを取って放つヒューマンドラマ。内戦中のスリランカからフランスにたどり着いた他人同士の3人が、偽装家族として見知らぬ土地で新しい第一歩を踏み出す姿を丁寧に描く。スリランカ内戦の元兵士で、現在は作家のアントニーターサン・ジェスターサンが圧倒的な存在感で主人公を熱演。守るべき家族のために戦う男の無私の愛に胸が詰まる。
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スリランカで内戦があったなんてまったく知らなかった身にとって、この映画はちょっとした教養を提供してくれる。冒頭、仲間の死体をまとめて荼毘に付す男。自動小銃を片手に炎を見つめる。そして難民キャンプで片っ端から子供を探す女。自分の子供を探しているのではなく、親と生き別れた(あるいは死別した)孤児を探している。そして9歳になる少女を見つけると、女はキャンプの事務官のところへと出向く。そしてそこで自動小銃の男と共にパスポートを渡される。それはどこかの死んだ家族のパスポート。男と女と少女はその場でパスポートの名義にあわせた家族となる。

男は元兵士のディーパン。女はヤリニ。少女はイラヤルで、3人は家族として船に乗りスリランカを逃れる。行く先はフランス。入国管理局では、同胞の通訳の助言で政府軍に拘束されて拷問されたことにし、ディーパンらは入国を認められる。そしてあるアパートに住み込みの管理人として職を得て3人は居を構える。

ディーパンは言葉がわからないものの、なんとか教えられた仕事をこなす。イラヤルは学校へ行くことになり、まずはフランス語を学ぶ特別クラスに編入される。イラヤルは嫌がってディーパンに泣きつく。おそらく両親と死別し、たった一人見知らぬ2人と見知らぬ国に来て、幼い心ははちきれそうだったのかもしれない。ディーパンは優しく諭すが、ヤリニはどこか冷たい。というのも、ヤリニはイギリスに親戚がいるため、自分はそこに行きたいと思っているのである。

 ようやく戦火を逃れてきた3人であるが、もともと愛情で結びついた家族ではない。イギリスに行きたがっているヤリニは、まず3人の不協和音の元となる。ディーパンの管理人としての収入だけでは厳しく、ヤリニも世話人のユスフの紹介で、同じアパートに住む老人の世話をすることになる。一方、そのアパートはディーパンたちが入るくらいだからもともと低所得層向けなのであろう、住人の質もよくない。よからぬ男たちがあちこちにたむろしている。

そんな環境下だから、敷地内で発砲事件が起こり、ヤリニはますますイギリスへ行きたくなる。ディーパンとの距離は、縮まるようでいて距離がある。ヤリニが世話をする老人の息子は、実はアパート内のギャングのボスのよう。何かとヤリニには親切に振舞うが、やはりギャングはギャング。せっかく内戦を逃れてきたのに、また別の暴力の世界に巻き込まれる。まさにタイトルにある「ディーパンの戦い」になるのである。

束の間の平穏もディーパンとヤリニとイラヤルには難しいのか。ディーパンとヤリニ、ヤリニとイラヤル、それぞれの関係も微妙な空気を残しつつ関係が改善されていく。つくづく、我が国の平和な環境のありがたさを認識しつつ、ディーパンたちの幸福を願ってしまう。それでも、とうとう事件が起こる。疑似家族ではあったものの、ディーパンはその家族に責任を果たそうとする。それが観ていて救いとなる。

全般的に物静かな映画であるが、それ故に訴えかけてくるものがある。カンヌ映画祭でパルム・ドールを獲得したのももっともだと思わされる。ハリウッドの大作もいいが、こういう映画も折に触れて観るのもまた良しである。ラストでディーパンが手に入れたのは本当の家族。しみじみとした味わいのある映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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