2018年08月31日

【サクラダリセット前篇】My Cinema File 1970

サクラダリセット前篇.jpg

2017年 日本
監督: 深川栄洋
出演: 
野村周平:浅井ケイ
黒島結菜:春埼美空
平祐奈:相麻菫
健太郎:中野智樹
玉城ティナ:村瀬陽香
恒松祐里:岡絵里
岡本玲:宇川紗々音
岩井拳士朗:坂上央介
矢野優花:皆実未来
奥仲麻琴:若き日の魔女
吉沢悠:津島信太郎
丸山智己:加賀谷
中島亜梨沙:索引さん
大石吾朗:佐々野宏幸
加賀まりこ:魔女

<シネマトゥデイ>
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「いなくなれ、群青」などの河野裕の小説を2部作で実写化した青春ミステリーの前編。特殊な力を誇る者たちが暮らす咲良田市を舞台に、同市の命運を左右する事態に直面した高校生たちの姿を追う。メガホンを取るのは『神様のカルテ』シリーズなどの深川栄洋。『森山中教習所』などの野村周平、テレビドラマ「時をかける少女」などの黒島結菜、『案山子とラケット 〜亜季と珠子の夏休み〜』などの平祐奈らが出演。イマジネーション豊かな世界観に注目。
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奇妙なタイトルの映画であるが、それはこの物語の舞台である架空の地方都市・咲良田からきている。そしてこの町にはそれぞれ独自の特殊な能力を持つ者が多く住んでいる。その能力には、「咲良田を出ると能力の存在を忘れる(つまり使えなくなる)」という共通点がある。咲良田には「管理局」があり、能力者を管理している。なかなか面白い前提条件の映画である。

主人公は高校生の浅井ケイ。ケイの能力は「記憶保持」。見聞きしたことを覚えて忘れないという誠に羨ましい能力の持ち主である。ケイと行動を共にしている春埼美空は、「リセット」という時間を最大3日分巻き戻す能力を持っている。時間を「セーブ」すればそれ以前には戻れなくなり、春埼はケイの合図でリセットとセーブの能力を発動できるようになっている。

そんなリセットの能力は、9月17日の朝に発動される。自転車で登校途中の同級生が車に轢かれてしまうのである。ケイは春埼にただちにリセットを宣言する。すると、世界の時間は前回セーブした2日前の昼休みに戻る。誠に便利なこのリセットには特徴があって、それはリセットを発動すると、みんなその間の記憶はなくなってしまうというもの。リセットを行なった春埼自身も記憶がセーブした時点のものに戻ってしまう。その間の記憶を保持できるのはケイのみなのである。ケイは、2日後の朝の事故に備え、「自由自在に声を届ける能力」を持つ智樹に頼み事故を回避させる。各人の能力やその使い道など、物語の世界を掴むにはなかなかのイントロである。

ある日、管理局に呼び出されたケイは、そこでケイが子供の頃、「魔女」と名乗って電話をかけてきたことがある老女と会う。魔女は「未来を読む」能力を持っているがゆえに、管理局の管理下にある。魔女はケイに自分が10日後に死ぬと告げる。一緒に管理局に行った春埼は、魔女と会った帰りに赤い目を持つ岡絵里に出会い、リセットの能力を奪われる。絵里は対象を消す能力を持つ村瀬陽香と一緒で、ケイも春埼が能力を奪われるのを防げない。2人は能力を返す条件として、管理局の建物の見取り図を書けと要求する・・・

様々な能力者が登場する展開は、何となく『X-メン』(My Cinema File 1745)を彷彿とさせる。この映画は『X-メン』(My Cinema File 1745)ほど闘争的ではなく、むしろマイルドではあるが、普通の人間にはない力を使うというところは同じようにユニークである。主人公も高校生ということで、全般的にほんわかとした雰囲気を感じてしまう。
 
 前篇・後篇に分かれた構成は、後篇ではどんな展開になるのかという楽しみも残してくれる。写真を写した場所で破くとその写真の世界に入れる能力とか、能力そのものをコピーしてしまう能力とか、「あんなこと、こんなこと、できたらいいな」の世界が面白い。それぞれの能力を組み合わせてとうとう死者すらこの世に蘇らせてしまう。蘇った相馬菫が後篇のキーになりそうな感じである。
 
 前篇だけで判断をするのは適切ではないのかもしれないが、十分後篇を楽しみにさせてくれたという役割は果たしている。後篇が楽しみな一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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2018年08月28日

【湯を沸かすほどの熱い愛】My Cinema File 1969

湯を沸かすほどの熱い愛.jpg

2016年 日本
監督: 中野量太
出演: 
宮沢りえ:幸野双葉
杉咲花:幸野安澄
オダギリジョー:幸野一浩
松坂桃李:向井拓海
伊東蒼:片瀬鮎子
篠原ゆき子:酒巻君江
駿河太郎:滝本

<映画.com>
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宮沢りえの『紙の月』以来となる映画主演作で、自主映画「チチを撮りに」で注目された中野量太監督の商業映画デビュー作。持ち前の明るさと強さで娘を育てている双葉が、突然の余命宣告を受けてしまう。双葉は残酷な現実を受け入れ、1年前に突然家出した夫を連れ帰り休業中の銭湯を再開させることや、気が優しすぎる娘を独り立ちさせることなど、4つの「絶対にやっておくべきこと」を実行していく。会う人すべてを包みこむ優しさと強さを持つ双葉役を宮沢が、娘の安澄役を杉咲花が演じる。失踪した夫役のオダギリジョーのほか、松坂桃李、篠原ゆき子、駿河太郎らが脇を固める。
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主人公の双葉は、夫とともに銭湯を営んでいたが、その夫が突然失踪してしまい休業を余儀なくされる。やむなくパン屋の店員として働きながら一人娘の安澄と暮らしている。そんなある日、職場で倒れた双葉。病院で精密検査を受けると、無情にも末期ガンとの診断。残された時間は2〜3カ月。誰もいない銭湯で1人泣きぬれる姿が胸を打つ。

娘の安澄は高校生だが、実は級友たちから陰湿なイジメを受けている。ある日は制服を絵の具で汚され、別の日はとうとう制服を隠されてしまう。親としては誠に切ない思いがするが、双葉は敢えて安澄に厳しくし、家から追い立て学校へと送り出す。見ていて「自殺でもされたら」と心配になるが、安澄は何とかイジメから自力で抜け出す。

次に双葉は探偵を雇い、蒸発した夫の行方を捜す。意外にも夫の一浩は隣町に住んでおり、これを連れ戻す。驚いたことに、家に帰ってきた一浩には連れ子の鮎子がいた。鮎子の母親もやっぱり鮎子を残して姿を消していた。一浩が戻ったことで、銭湯を再開する。鮎子はまだ小学生。出ていった母親を慕う気持ちは深く残っており、家族はどこかギクシャクしているが、双葉は明るく振舞いまとめていく。

そして、双葉は夫に留守番をさせて2人の娘たちと旅に出る。静岡方面をドライブし、毎年贈られてきているタカアシガニを食べるという旅を娘たちは純粋に楽しむ。しかし、あるドライブインで、双葉は突然店員の聾唖女性を平手打ちする。何事かと思うも、次の場面で双葉が安澄に話した内容は、なかなか衝撃的であった。そう言えば、学校帰りの安澄が、手話ができることを描くシーンが出てきたが、その意味がわかってじんわりと目頭が熱くなる。

さらに道の駅で出会ったヒッチハイクの青年拓海に生き方を諭し、双葉は周りを取り巻く人たちに大きな影響を与えていく。しかし、その間にもガンは双葉の体を蝕んでいく。双葉自身、自らの実母もまた蒸発した過去を持っていて、親しくなった探偵から居場所を教えられて会いに行く。そんなエピソードを散りばめながら、物語は進んでいく。

こういう映画は、実に日本的だと思う。アクション映画ではなかなかハリウッドや韓国映画に抵抗できないが、この手のじんわりと心に響く人情モノは得意なのかもしれない。とは言え、最後の最後まで非常にいい展開であったのに、ラストはどうもなぁというのが正直な感想。はっきりとは説明されていなかったが、もしも描かれていた通りなら、「それってどうなの?」と問いたくなる。普通に葬儀を済ませれば十分だと思うし、普通でないならもう少し説明が欲しかったところである。

この後、この家族がどんな風に生きていくのか。続きを想像してみたくなった映画である・・・


評価:★★☆☆☆






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2018年08月25日

【レッド・スパロー】My Cinema File 1968

レッド・スパロー.jpg

原題: Red Sparrow
2018年 アメリカ
監督: フランシス・ローレンス
出演: 
ジェニファー・ローレンス:ドミニカ・エゴロワ
ジョエル・エドガートン:ネイト・ナッシュ
マティアス・スーナールツ:ワーニャ・エゴロフ
シャーロット・ランプリング:監督官
メアリー=ルイーズ・パーカー:ステファニー・ブーシェ
ジェレミー・アイアンズ:コルチノイ

<シネマトゥデイ>
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元CIAエージェントの作家、ジェイソン・マシューズの小説が原作のスパイアクション。バレリーナからスパイになった美女が、CIA捜査官への接近を命じられたのを機に思わぬ事態に陥る。監督は『ハンガー・ゲーム』シリーズなどのフランシス・ローレンス。『世界にひとつのプレイブック』などのジェニファー・ローレンス、『ラビング 愛という名前のふたり』などのジョエル・エドガートン、『君と歩く世界』などのマティアス・スーナールツらが出演する。
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主人公はロシアのボリショイバレー団のバレリーナ、ドミニカ。トップの位置を維持してきた彼女であるが、ある公演でパートナーと接触ミスにより左足を骨折してしまう。緊急手術を終え、病院のベッドで目を覚ましたドミニカは、怪我をした足を見てバレリーナとしての道を断念せざるを得ない事態であることを悟り、絶望的な気持ちになる。さらに事態はそれにとどまらず、バレリーナとしてのキャリアの断念は、自らの生活と住居、そして母の医療費の補助がなくなることをも意味している。

退院した彼女のもとにやってきたのは叔父のエゴロフ。エゴロフは国家情報局の幹部であり、ドミニカの身を案じるとともに彼女の骨折事故の真実について語る。それはパートナーが恋人を引き上げるためにわざとドミニカを怪我させたというもの。そしてドミニカは2人の密会現場を押さえると怒りのまま2人を撲殺する。事件は叔父の力添えでもみ消されるが、叔父は彼女へスパイとしての道を示す。

女スパイというと、最近は数多製作されている女性アクションモノの一環かと思ったが、ここではノーアクションの普通のスパイ。しかも「女」としての武器を使うことを辞さないというもの。これが通称WスパローWと称されるロシアのスパイであり、だから「レッド・スパロー」なのである。ただし、出演陣はハリウッド俳優でセリフもすべて英語。ロシアというのは、設定上だけである。トム・クランシーの「レッドオクトーバーを追え」みたいなものであろう。

ノーアクションであるゆえに、武器となるのは相手の心理を読み取り、相手の欲望を満たす術。それはまさに国家の娼婦になる為の訓練そのものである。シャーロット・ランプリング演じる冷徹な監督官から、講義中に平気で「脱げ」とか「男の相手をしろ」とか言われてしまう。送り込んだ叔父も叔父であるが、それは最後にしっぺ返しがあったりする。そして母の生活もあって後がないドミニカは、他の訓練生とは異なる形で才能を見せつけていく。

そして当然のことながら、実戦にと駆り出される。与えられた任務は、CIAのナザニエルに接近しロシア側に長年潜伏しているスパイの名前を探り出すこと。それはロシア情報部の上層部に潜伏していると疑われていたのである。CIAも接近してきたドミニカの正体を疑う。ここから狐とタヌキの化かし合い。観ている方もどうなるのか先が読めない。これはなかなかのストーリー展開。

主演はジェニファー・ローレンスで、これだけでも観る価値はあると思う。エロティックなシーンが満載であるが、ジェニファー・ローレンスの裸体には、見ても落ち着いてストーリーを追えるというメリットがある。何よりも二転三転する心理戦のストーリー展開は秀逸である。アクションはなくてもスリリングな展開に十分楽しませてもらえる。考えてみれば、こういうスパイ映画こそが現実的な本来のスパイ映画なのかもしれない。

今度は本家ロシアのスパイ映画も観てみたいと思わされるハリウッドの「レッド映画」である・・・


評価:★★★☆☆








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2018年08月24日

【沈黙の粛清】My Cinema File 1967

沈黙の粛清.jpg

原題: Code of Honor
2016年 アメリカ
監督: マイケル・ウィニック
出演: 
スティーブン・セガール:ロバート・サイクス
クレイグ・シェイファー:ウィリアム・ポーター
ルイス・マンディロア:ジェームズ・ピーターソン
ヘレナ・マットソン:ケリー・グリーン
グリフ・ファースト:ジェリー・サイモン
ジェームズ・ルッソ:ヴィンセント・ロマノ

<Movie Walker解説>
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スティーヴン・セガール主演のアクション映画。家族をギャングに殺された米軍特殊部隊出身のサイクスは、復讐と自らの正義のため街の悪党たちを次々と血祭りに上げていく。部下を殺されたマフィアのボス、ロマノは組織を総動員してサイクスの抹殺を指示する。監督・脚本は、「ガンズ・アンド・ギャンブラー」のマイケル・ウィニック。出演は、「リバー・ランズ・スルー・イット」のクレイグ・シェイファー、『ジャンゴ 繋がれざる者』のジェームズ・ルッソ、「パラノーマル・インシデント」のルイス・マンディロア、『ターミネーター 新起動/ジェニシス』のグリフ・ファースト、「セブン・サイコパス」のヘレナ・マットソン。
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 個人的に「ハリウッドの寅さん」と称しているスティーブン・セガールの「沈黙」シリーズ。誰がつけたか、いまやすっかり「沈黙」シリーズとなっているが、もちろん原題は別々で本家はシリーズなどと思っていないだろう。だが、金太郎飴的な内容と言う意味では一まとめにしても問題はないであろう。

 沈黙シリーズの主人公は大抵「元軍人」か「元CIA」であるが、今回は「元軍人」。スティーブン・セガール演じる元軍人のロバート・サイクスは、冒頭ある塔の上で狙撃用ライフルを構えている。やがて、集まってきたのはギャングと思しき男たち。そしてそこで麻薬取引が行われる。その様子を見守っていたサイクスは、タイミングを見計らい次々とギャングたちを狙撃していく・・・

 翌日、警察やマスコミが現場に駆けつける中、担当巡査ジェームズは狙撃現場を探し当てると、そこには既にFBIの捜査官ポーターがいる。ポーターは、犯人をサイクスだと断じ、協力を申し出る。次にサイクスが現れたのは、先のギャングの親玉が経営するストリップ劇場。ここでも麻薬取引が行われている。店から出たサイクスがリモコンのスイッチを押すと、ストリップ劇場に残してきたカバンの中の爆弾が爆発し、店は多くのギャングとともに吹き飛ぶ。
 
 こうして、次々とギャングたちを葬っていくサイクス。どうやら、ギャングの抗争に巻き込まれて妻子を殺され、ならばとこの世からギャングたちを一層しようと考えて実行しているようである。そしてサイクスの元部下であり、それゆえにサイクスをよく知るFBIのポーターがサイクスを追う。その過程でポーターはギャングたちとも衝突する。さすがサイクスの元部下であるだけあってポーターも次々と鮮やかにギャングたちを倒していく。

 スティーブン・セガールと言えば、『刑事ニコ/法の死角』の鮮烈なアクションが今なお強烈なイメージとして残っているが、最近はデブデブに太って「動かないアクション」がトレードマークになってしまっている(個人的にそう思っているわけである)。今回もライフルでの狙撃が主で、アクションと言えばナイフを使って手先でダンスのような動きをするだけ。それでアクションスターなのだから大したものである。

 晩年のジャイアント馬場もタッグマッチで試合に出ることが大半であったが、タッグマッチだとコーナーで待機していて、パートナーが動き回って最後だけ十六問キックをすれば良かった。スティーブン・セガールも今や別の人物に「動くアクション」を担当させることが多いが、なかなかいいやり方だと思う。そして私のように、昔のイメージを求めて観てはタメ息をつく者を増やしているわけである。

 ストーリーもどれも似たようなものであるが、今回の映画はその呆気にとられるラストが斬新と言えば斬新。思わず絶句、である。動くアクションもできなくなり、途中で撮影を続けるのが嫌になったのではと思わせるようなラスト。もう新たな「沈黙」シリーズを観るくらいなら、『刑事ニコ/法の死角』を繰り返し観た方が精神衛生上はいいかもしれないという気がしている。

 観る者も「沈黙」してしまうシリーズの一作である・・・


評価:★☆☆☆☆








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2018年08月18日

【フィフス・ウェイブ】My Cinema File 1966

フィフス・ウェイブ.jpg

原題: The 5th Wave
2016年 アメリカ
監督: J・ブレイクソン
出演: 
クロエ・グレース・モレッツ:キャシー
ニック・ロビンソン: ベン・パリッシュ / ゾンビ
ロン・リビングストン: オリヴァー・サリヴァン
マギー・シフ: リサ・サリヴァン
アレックス・ロー: エヴァン・ウォーカー
マイカ・モンロー: リンガー
ザカリー・アーサー: サム・サリヴァン
リーブ・シュレイバー : ヴォーシュ大佐

<映画.com>
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『キック・アス』「キャリー」の人気女優クロエ・グレース・モレッツが、地球外生命体の攻撃により人類が滅亡の危機に瀕した世界で、見えない敵と戦う孤独なヒロインを演じたSFミステリー。「アザーズ」と呼ばれる地球外知的生命体による4度の攻撃で、人類の99%が死滅した地球。生き残った女子高生キャシーは、離れ離れになった弟を救うため、さらわれた子どもたちが集められている基地へ向かう。アザーズはすでに人間に姿を変えて社会に紛れ込んでおり、誰が敵で誰が味方かもわからない。そんな状況のなか、旅の途中で出会ったある男性に助けられながら、キャシーは基地を目指すが……。『アリス・クリードの失踪』で注目されたJ・ブレイクソン監督がメガホンをとり、『スパイダーマン』シリーズのトビー・マグワイアがプロデューサーとして携わっている。
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 『キック・アス』(My Cinema File 836)の鮮烈な印象がいまだ強く残っているクロエ・グレース・モレッツ主演のSF映画ということで、迷わず観ることにした映画。本人は悪くはないと思うのであるが、やはりストーリーに無理があると凡作にならざるを得ない。そんな見本になってしまったような映画である。
 
 冒頭、リュックを背負ったクロエ・グレース・モリッツ演じる少女キャシーが銃を手に、森を走って逃げている。車道に出てコンビニに入るも、あたりは荒廃していてゾンビが蔓延した世界かと錯覚させられるような風景。無人の店に入り、わずかに残っていた食料を確保するキャシー。すると店の奥の方から助けを求める声が聞こえてくる。恐る恐る様子を見に行くキャシー。そこには1人の男が銃を構えている。男は銃を置くも、左手は服の下に隠れている。男は「左手を動かすと内臓が飛び出す」と言うが、その手を離そうとした瞬間、光るものが見えキャシーは反射的に男を射殺する・・・
 
 なかなかいい掴みであると思う。そして物語は少し時計を戻す。まだ世界が平和な日常を謳歌していた時、キャシーはごく平凡な女子高校生。両親とまだ幼い弟・サムとの仲も良い。学校では親友の少女リズと行動を共にし、アメフト部で活躍する同級生ベン・パリッシュに好意を抱いている。そんなある日、巨大な飛行物体がキャシーたちが住むオハイオ州の上空など各地に現れる。最初の10日間は何事も起こらなかったが、10日後、突然停電が起こり、同時に携帯も使えなくなり、車は衝突し飛行機が墜落するという混乱が生じる。これは「アザーズ」と名付けられた地球外生命体の最初の攻撃(第1波)であった。
 
 続いて第2波として『地震』が起きる。これにより海岸部の大都市には巨大な津波が押し寄せる。第3波は、毒性が強められた鳥インフルエンザが世界各地で猛威を振るう。感染者は隔離され、キャシーも親友・リズと会えなくなる。そして看護師として働いていたキャシーの母もやがてウイルスに感染し命を落とす。キャシーの家族は母を葬ると難民キャンプに身を寄せる。大勢が避難生活を送る難民キャンプに、やがて軍が保護と称してやってくる。
 
 軍を指揮するのは、ヴォージュ大佐。大佐は、人々を基地へと移送するため、まずは子どもたちだけをスクールバスに乗せる。キャシーと弟・サムは一緒にスクールバスに乗るが、サムが熊のぬいぐるみを忘れ、キャシーがテントへ取りに戻る間にバスは出発してしまう。一方、食堂に集められた大人たちは、ヴォージュ大佐の説明を聞く。それによると、アザーズはとうとう地上に降りて、人間に寄生してこれを操る力を手に入れたとのこと。これが攻撃の第4波。そして大混乱に陥いる中、銃撃戦が起こり、大人たちは全員殺されてしまう・・・
 
 4波にわたる攻撃で、人類は絶滅の寸前となる。そしてとどめを刺すのは第5波(5th Wave)。これがタイトルの由来。たった一人取り残されたキャシーは、地図を片手に森を抜けて弟が連れていかれた基地へと向かう。これが冒頭のシーンとなる。しかし、弟を探し当てる旅もそう簡単ではない。さらに圧倒的な力を持っている宇宙人=アザーズを倒すのは相当な大逆転力がいる。果たして残り時間で映画は見事ハッピーエンドで終わるのかと思っていたら、やっぱり終わらなかった。
 
 キャシーが戦う相手は宇宙人ではなく、ヴォージュ大佐率いる陸軍部隊。アザーズと呼ばれる宇宙人は宇宙船と軽飛行物体のみで姿は現さず。幼い弟を助ける勇敢なお姉ちゃんだが、いくらクロエ・グレース・モリッツが孤軍奮闘しようと、いくら相手のヴォージュ大佐が『ウルヴァリン:X−MEN ZERO』(My Cinema File 699)で凄みのあったリーブ・シュレイバーだろうと、凡庸なストーリーには勝てない。To be continuedにしたかったのかもしれないが、尻切れトンボのエンディングにはガッカリ感漂う・・・

 大物の名前が散見される映画ではあるが、凡庸な内容に肩透かしを食ってしまった。続編がつくられたとしても、観る勇気はない。クロエ・グレース・モリッツ主演の残念な一作である・・・


評価:★★☆☆☆











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