
2017年 日本
監督: 深川栄洋
出演:
野村周平:浅井ケイ
黒島結菜:春埼美空
平祐奈:相麻菫
健太郎:中野智樹
玉城ティナ:村瀬陽香
恒松祐里:岡絵里
岡本玲:宇川紗々音
岩井拳士朗:坂上央介
矢野優花:皆実未来
奥仲麻琴:若き日の魔女
吉沢悠:津島信太郎
丸山智己:加賀谷
中島亜梨沙:索引さん
大石吾朗:佐々野宏幸
加賀まりこ:魔女
<シネマトゥデイ>
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「いなくなれ、群青」などの河野裕の小説を2部作で実写化した青春ミステリーの前編。特殊な力を誇る者たちが暮らす咲良田市を舞台に、同市の命運を左右する事態に直面した高校生たちの姿を追う。メガホンを取るのは『神様のカルテ』シリーズなどの深川栄洋。『森山中教習所』などの野村周平、テレビドラマ「時をかける少女」などの黒島結菜、『案山子とラケット 〜亜季と珠子の夏休み〜』などの平祐奈らが出演。イマジネーション豊かな世界観に注目。
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奇妙なタイトルの映画であるが、それはこの物語の舞台である架空の地方都市・咲良田からきている。そしてこの町にはそれぞれ独自の特殊な能力を持つ者が多く住んでいる。その能力には、「咲良田を出ると能力の存在を忘れる(つまり使えなくなる)」という共通点がある。咲良田には「管理局」があり、能力者を管理している。なかなか面白い前提条件の映画である。
主人公は高校生の浅井ケイ。ケイの能力は「記憶保持」。見聞きしたことを覚えて忘れないという誠に羨ましい能力の持ち主である。ケイと行動を共にしている春埼美空は、「リセット」という時間を最大3日分巻き戻す能力を持っている。時間を「セーブ」すればそれ以前には戻れなくなり、春埼はケイの合図でリセットとセーブの能力を発動できるようになっている。
そんなリセットの能力は、9月17日の朝に発動される。自転車で登校途中の同級生が車に轢かれてしまうのである。ケイは春埼にただちにリセットを宣言する。すると、世界の時間は前回セーブした2日前の昼休みに戻る。誠に便利なこのリセットには特徴があって、それはリセットを発動すると、みんなその間の記憶はなくなってしまうというもの。リセットを行なった春埼自身も記憶がセーブした時点のものに戻ってしまう。その間の記憶を保持できるのはケイのみなのである。ケイは、2日後の朝の事故に備え、「自由自在に声を届ける能力」を持つ智樹に頼み事故を回避させる。各人の能力やその使い道など、物語の世界を掴むにはなかなかのイントロである。
ある日、管理局に呼び出されたケイは、そこでケイが子供の頃、「魔女」と名乗って電話をかけてきたことがある老女と会う。魔女は「未来を読む」能力を持っているがゆえに、管理局の管理下にある。魔女はケイに自分が10日後に死ぬと告げる。一緒に管理局に行った春埼は、魔女と会った帰りに赤い目を持つ岡絵里に出会い、リセットの能力を奪われる。絵里は対象を消す能力を持つ村瀬陽香と一緒で、ケイも春埼が能力を奪われるのを防げない。2人は能力を返す条件として、管理局の建物の見取り図を書けと要求する・・・
様々な能力者が登場する展開は、何となく『X-メン』(My Cinema File 1745)を彷彿とさせる。この映画は『X-メン』(My Cinema File 1745)ほど闘争的ではなく、むしろマイルドではあるが、普通の人間にはない力を使うというところは同じようにユニークである。主人公も高校生ということで、全般的にほんわかとした雰囲気を感じてしまう。
前篇・後篇に分かれた構成は、後篇ではどんな展開になるのかという楽しみも残してくれる。写真を写した場所で破くとその写真の世界に入れる能力とか、能力そのものをコピーしてしまう能力とか、「あんなこと、こんなこと、できたらいいな」の世界が面白い。それぞれの能力を組み合わせてとうとう死者すらこの世に蘇らせてしまう。蘇った相馬菫が後篇のキーになりそうな感じである。
前篇だけで判断をするのは適切ではないのかもしれないが、十分後篇を楽しみにさせてくれたという役割は果たしている。後篇が楽しみな一作である・・・
評価:★★☆☆☆