2018年09月29日

【聲の形】My Cinema File 1986

聲の形.jpg

2016年 日本
監督: 山田尚子
出演: 
入野自由:石田将也
早見沙織:西宮硝子
悠木碧:西宮結弦
小野賢章:永束友宏
金子有希:植野直花
石川由依:佐原みよこ
潘めぐみ:川井みき
豊永利行:真柴智

<シネマトゥデイ>
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元ガキ大将の主人公と聴覚障害があるヒロインの切ない青春を描いた大今良時のコミックを基に、『けいおん』シリーズなどの山田尚子監督が手掛けたアニメーション。主人公の少年が転校生の少女とのある出来事を機に孤立していく小学生時代、そして高校生になった彼らの再会を映し出す。アニメーション制作を京都アニメーション、脚本を『ガールズ&パンツァー』シリーズなどの吉田玲子が担当。ボイスキャストには入野自由と早見沙織らが名を連ねる。
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 ここのところ増えている(気がする)アニメ映画。これはこれで日本映画の特徴として良いと思う。原作はコミックのようである。

 主人公は、ガキ大将である小学校6年生の石田将也。いつも悪ガキ仲間とつるんでいる。ある日、クラスに聴覚障害を抱える転校生の少女、西宮硝子が転校してくる。硝子は、耳が聴こえないため筆談用ノートを使っているが、小学生の間ではなかなか円滑なコミュニケーションを図るがうまくいかず、やがていじめへと発展していく。

 硝子の筆談ノートを学校の池に投げ込んだり、高額な補聴器を破損させたりするに至り、先生が介入。その結果、将也はいじめの主犯格とされる。さらにこれをきっかけに、将也はクラスで孤立し、一転していじめられる対象となってしまう。学校側からの連絡を受けた将也の母親は、硝子の母親へ謝罪し、高額な補聴器代を弁償する。そして硝子は、クラスになじめないまま別の学校に転校してしまい、将也は他人不信と硝子に対する罪の意識を抱えることになる・・・

 それから5年後。将也は高校3年生となっている。人間不信と自己嫌悪はずっと続いたままであり、周囲からも孤立し続けている。そして、硝子に一言、小学生時代に伝えられなかった謝罪をしてから自殺しようと決意する。将也は、硝子の通うろう学校に出掛け、硝子と再会する。この日のコミュニケーションに備え覚えた手話で硝子と会話し、持っていた小学生の時の筆談ノートを返すとともに、とっさに「友だちになってくれ」と口走ってしまう・・・

 なんとなく恋愛映画かと思っていたが、どうもそのようでいてそうではない。小学校時代の苦い思い出を共有する二人が、高校生になって再会し、そして定期的に会うようになる。けれどそれが恋愛関係へと進む気配はない。しかし、二人を中心とする人の輪は次第に広がっていく。まず将也は硝子の妹、結絃と仲良くなる。また、学校では、絡まれていた所を助けてやった縁からクラスの永束と仲良くなる。

 また将也は、かつて硝子と仲良くしたためクラスで孤立し不登校となってしまった小学校のクラスメイトの佐原みよこを硝子に引き合わせる。さらに偶然街で鉢合わせした植野直花とも再会することになる。こうして友達の輪が広がっていくのである。観ていて感心したのは、聴覚障害者の声。聴覚障害者は話せないわけではないが、耳が聞こえないため正しく発音ができない。「好き」を「月」と勘違いされてしまったりするのだが、そのあたりのやり取りは真に迫っている。
 
 人間不信の将也はクラスメイトの顔が隠されているように表現されるが、1人また1人とそれがはがれ、人の顔が現れてくる。これは将也の再生の物語でもある。究極的には恋愛感情が現れてくるが、恋愛映画というよりも友情や個人の再生といった趣がある。しかし下手な恋愛映画よりも恋愛映画らしいとも言える。逆にそれが新鮮に感じられる。親の関与も適度にあって、高校生らしい青春物語が心地良い。

 人は誰でも人生順風満帆というわけではない。誰でも躓いてしまったりすることはある。そんな躓いてしまった将也と硝子の再生の物語。ゆるやかに心の襞を撫でてくれる物語を楽しみたい映画である・・・


評価:★★★☆☆






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2018年09月28日

【ブラインド】My Cinema File 1985

ブラインド.jpg

原題: Blind
2011年 韓国
監督: アン・サンフン
出演: 
キム・ハヌル: スア
ユ・スンホ: ギソプ
チョ・ヒボン: チョ刑事
ヤン・ヨンジョ

<シネマトゥデイ>
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『きみはペット』や『7級公務員』などのキム・ハヌルが新境地を開拓し、視覚障害者を熱演した緊迫感あふれるスリラー。警察に協力を申し出たひき逃げ事件の証言者である目の不自由なヒロインと不良青年が、犯人に命を狙われる様子を活写する。共演は『おばあちゃんの家』などで子役として名をはせたユ・スンホ。目が見えないからこそ、ほかの感覚が敏感な主人公が果敢に犯人に挑む姿にエールを送りたくなる。
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 目が見えないということは、日常の生活を含めて不自由な事である。それゆえに「目が見えない」という不自由を映画の題材にしたものも多い。古くは勝慎太郎の『座頭市』があったし、それを香取慎吾が演じた『座頭市THE LAST』(My Cinema File 924)があった。また、すべての人々が一斉に視力を失うという『ブラインドネス』(My Cinema File 521)もあった。いずれも目が見えないということはなんてハンディになるのだろうと思わされるものである。

 この映画の主人公スアもまた盲目である。もっとも初めからではなく、孤児院で育ち警察大学に通うまでは健常者であったが、ダンスクラブに入り浸る弟を強引に連れ戻そうとする途中で交通事故を起こし、弟はその場で事故死し自身は視力を失ってしまうという悲劇に見舞われる。それから3年後、視覚障碍者となったスアは、ある晩タクシーに乗っている時、車が何かと衝突する感触を覚える。

 運転手は犬を轢いたと主張するが、何かがおかしいと感じたスア。実は女性を轢いており、運転手は被害者をトランクに入れてしまう。そして問いかけるスアをその場に残して逃走してしまう。警察官であるスアは、当然の義務として警察に通報するが、警察は本腰を入れようとしない。視覚障害者からの「目撃情報」に重きを置いていないのである。

 しかしやがてそのひき逃げ事件と、ちょうど世間を恐怖に陥れていた女子大生失踪事件に何らかの関連があることが判明し、公開捜査が開始される。事故についてはチョ刑事が担当を任される。チョ刑事はスアへの聴取に乗り気ではなかったが、目が不自由な分、それ以外の感覚に優れたスアの証言に俄然興味を示す。そこへ、ひき逃げ事件の別の目撃者ギソプが現れる。

 座頭市もそうであったが、目が見えないのにもかかわらず、スアは健常者が気がつかないことに気がつく面白さがある。もちろん、目が見えないハンディもある。ひき逃げ事件の犯人であり、女子大生誘拐事件の犯人は、「目撃者」であるギソプとスアを亡き者にしようと襲い来る。すぐ近くに犯人がいてもスアにはわからない。「目撃者」であるギソプが、スマホの映像を見ながらスアに逃げ方を指示するシーンなどは、現代的で面白い。

 盲目でしかも女性となると、犯人に対し圧倒的に無力である。どう逃げ、しかし一方で警察官でもあり、どう捕まえるか。追いかけられた建物の中で、電気を消してしまうというのも盲目のハンディを覆す方法。意外に手強い犯人に追われ、ハラハラドキドキのスリリングな展開もまた良し。
 
韓国版座頭市というほどではないが、主人公の「か弱い強さ」を感じさせてくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2018年09月24日

【ゲット・アウト】My Cinema File 1984

ゲット・アウト.jpg

原題: Get Out
2017年 アメリカ
監督: ジョーダン・ピール
出演: 
ダニエル・カルーヤ:クリス・ワシントン
アリソン・ウィリアムズ:ローズ・アーミテージ
リル・レル・ハウリー:ロッド・ウィリアムス
ブラッドリー・ウィットフォード:ディーン・アーミテージ
ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ:ジェレミー・アーミテージ
キャサリン・キーナー:ミッシー・アーミテージ
スティーブン・ルート:ジム・ハドソン
ベッティ・ガブリエル:ジョージナ
マーカス・ヘンダーソン:ウォルター
キース・スタンフィールド:アンドリュー・ローガン・キング

<映画.com>
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『パラノーマル・アクティビティ』 『インシディアス』 『ヴィジット』など人気ホラー作品を手がけるジェイソン・ブラムが製作し、アメリカのお笑いコンビ「キー&ピール」のジョーダン・ピールが初メガホンをとったホラー。低予算ながら全米で大ヒットを記録し、第90回アカデミー賞では作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞の4部門にノミネートされ、脚本賞を受賞した。アフリカ系アメリカ人の写真家クリスは、白人の彼女ローズの実家へ招待される。過剰なまでの歓迎を受けたクリスは、ローズの実家に黒人の使用人がいることに妙な違和感を覚えていた。その翌日、亡くなったローズの祖父を讃えるパーティに出席したクリスは、参加者がなぜか白人ばかりで気が滅入っていた。そんな中、黒人の若者を発見したクリスは思わず彼にカメラを向ける。しかし、フラッシュがたかれたのと同時に若者は鼻から血を流し、態度を急変させて「出て行け!」とクリスに襲いかかってくる。
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 クリス・ワシントンは黒人であるが、白人のブロンド美人ローズと付き合っている。クリスとローズは、ローズの実家に行く準備をしているが、クリスは自分が黒人であることから実家へ行くことに戸惑いを感じている。おそらく、娘の連れてきた恋人が黒人であることを知った両親の反応が心配だったのであろう。さらにローズはクリスが黒人であることを両親に伝えていないと知って余計に心配するのである。

 そんなクリスの心配に対し、ローズは意に介さない。「両親は人種を気にするような人たちではない」と。そしてローズの実家へ向かう道中、2人の乗る車は鹿に衝突する。事故現場にやって来た警官は一通り事情を確認したあと、運転していなかったクリスに免許証の提示を求める。もしもクリスが白人であったなら、たぶん免許証の提示は求められなかったであろう。クリスはもう慣れた様子で素直に従おうとするが、これに敏感に反応したのはローズ。警官に猛抗議し、これを撤回させる。

 ローズの実家に到着した2人は、クリスの心配をよそにローズの両親から温かい歓迎を受ける。父ディーンの案内で家を回ったクリスは、甲斐甲斐しく働く黒人のジョージナとウォルターに挨拶する。豪邸に働く2人の黒人の姿に何となくかつての奴隷を連想させるものがある。クリスはミッシーから「禁煙のために催眠療法を受けなさい」と言われるが、クリスはこれを丁重に断わる。あとから思い返すと意味深なシーンだったが、この映画はそういう意味深なシーンが多いと観終わってから気付く。

 ローズの実家では奇妙な雰囲気が溢れている。その日の夜、クリスが一服するために家の外に出ると、ウォルターが家の周りを全力疾走している。ジョージナは窓を凝視している。2人の奇行に恐怖を感じたクリスは母ミッシーの部屋に駆け込んだが、そこで彼は半強制的に催眠療法を受けさせられる。催眠によって、クリスは母親が亡くなった夜を思い出す。いつまでも帰らぬ母親を待つ幼き日のクリス。しかし、その頃母は車に撥ねられ瀕死の状態であった。そしてクリスはその知らせを聞いてもショックのあまり動けず、何もできなかったのである。

 こうしてクリスはローズの実家で奇妙な時間を過ごすのであるが、やはり同じ黒人同士ということもあってウォルターやジョージナと話したがるが、どうみても2人の様子はどこかが変。一体何があるのだろうと観ている方はおっかなびっくりの気分。そうして翌日開かれたパーティーの招待客はみな高齢の白人。そしてみんな黒人差別の感情は持っていない様子。このパーティーの出席者のおかしな様子も映画を観終えてみれば納得できる。

 ローズの実家であるアーミテージ家のおかしな様子もやがて理由がわかってくると、なんとも恐ろし気な企てが潜んでいたのだとわかる。そして様々に張り巡らされた伏線。父ディーンがクリスに家の中を紹介する時、ローズの祖父が陸上選手だったという紹介がありるが、これもあとでつながってくる。あまり期待せずに観た映画であるが、意外に引き込まれてしまっていた。
 
 「ゲット・アウト」というタイトルも実に秀逸。なかなか楽しませてくれるスリラー映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2018年09月23日

【ソウォン/願い】My Cinema File 1983

ソウォン/願い.jpg

原題: 소원
2013年 韓国
監督: イ・ジュンイク
出演: 
ソル・ギョング:ドンフン
オム・ジウォン:ミヒ
イ・レ:ソウォン
キム・ヘスク:ひまわりセンター心理療法士
キム・サンホ:ヨンソクの父
ラ・ミラン:ヨンソクの母

<シネマトゥデイ>
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2008年に韓国で発生した幼女暴行事件とその裁判結果を軸に、『王の男』などのイ・ジュニク監督が放つ感動作。悲惨な事件を前に途方に暮れる被害者家族の慟哭と復活への道のりを、温かいまなざしでしっかりと描く。苦悩する父母を『ザ・スパイ シークレット・ライズ』などのソル・ギョングと『映画館の恋』などのオム・ジウォンが熱演。娘役の新星イ・レのけなげな芝居が光る、家族の絆を再確認させる物語に涙がこぼれる。
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 ソウォンは、文房具屋を営む母親と工場勤務の父親との3人家族で暮らす小学生。どこにでもいる平凡な女の子である。ある雨の日、母親は送って行けず、ソウォンは一人ですぐ近くの小学校にいつものように登校する。そこに現れたのは、いかにも無職で酒に酔っていますという感じの浮浪者風の男。男はソウォンを近くの倉庫に連れ込むと暴行を加える。両親に気を使ったソウォンは、瀕死になりながらも自分で警察に連絡する。娘を持つ父親ならば、見たくはないシーンである。

 警察から連絡をもらった父親はすぐに病院に駆け付ける。知人から「学校に警察が来てる」と連絡をもらった母は胸騒ぎもあって病院に駆けつける。そこにはひどい有様のソウォンが横たわっている。狂乱する母親。父は医師から、人工肛門を付けなくてはならないと告げられる。人工肛門とは腹部に腸から排出口をつけるものであり、大人も当然だが子供にとってはショックが大きいだろう。

 ソウォンは一命を取り留めるも、病院代は容赦なく家計を襲い、さらに最悪なことに事件を嗅ぎつけたマスコミが容赦なく取材攻勢にかかる。いずこの国でもマスコミにはモラルもましてや思いやりの欠片すらあったものではない。多数の目に触れる一般病棟から個室へと逃げるように移されるソウォン。マスコミから逃れるため父はソウォンを抱きかかえ逃げるように病室に戻るが、人工肛門から溢れ出る排泄物がパジャマやシーツを汚してしまう。父は、必死にあふれる汚物を拭こうとするが、その行為がソウォンに事件を思いおこさせ、ソウォンは父親を含む男性恐怖症に陥ってしまう。

 観ていて感情移入させられてしまう内容でもあるが、一方でいろいろと考えさせられてしまう。幸いなことに犯人は逮捕されるが、今度はその犯人が飲酒による心神喪失をぬけぬけと主張する。そして何よりも大事な子供のけがの回復と心のケア。奥さんの経営していた文具店も開店休業状態であり、父親は妊娠が判明した妻と男性恐怖症のソウォンとを支え、生活費も稼がなければならない。

 そんな中で、救われる思いがするのは、周囲の人たちの温かさだろう。父親の勤務先の社長やその奥さんの好意。娘に近寄れない父親が、苦肉の策で娘の好きなキャラクターの着ぐるみを借りて娘と接するが、レンタル費用が馬鹿にならない。しかしレンタル会社の担当者から(おそらく事情を察したのであろう)「型落ち商品だから無料でいい」という申し出を受ける。思わずじんわりときてしまう。

 犯人に対する怒り。マスコミに対するそれとは異なる種類の怒り。自分がソウォンの父親だったらという想像はしたくないが、ソウォンの父親が務める会社の社長の立場だったり、検察官の立場だったりしたらどうするだろうかとか、自然と考えてしまう。そして裁判の結果にはやりきれなさが残る。

 映画には実際に起こった事件がベースになっているというから、さらに痛ましく思う。隣国の事とは言え、我が国でもいつ起こっても不思議ではない。こうしたニュースに接するたびに、人権もいいけど刑法の厳罰化を望む気持ちが強くなる。そうした中で、近所の人達の行動やソウォンの友だちには、心温かくなるものを感じさせる。
 アクションだけでなく、こういう映画でも存在感を表す韓国映画である・・・


評価:★★★☆☆








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2018年09月22日

【DESTINY 鎌倉ものがたり】My Cinema File 1982

DESTINY 鎌倉ものがたり.jpg

2017年 日本
監督: 山崎貴
出演: 
堺雅人:一色正和
高畑充希:一色亜紀子
堤真一:本田
安藤サクラ:死神
田中泯:貧乏神
中村玉緒:キン
市川実日子:本田里子
ムロツヨシ:ヒロシ
要潤:稲荷刑事
大倉孝二:川原刑事
神戸浩:恐山刑事
國村隼:大仏署長
古田新太:天頭鬼(声)
鶴田真由:一色絵美子
薬師丸ひろ子:女将
吉行和子:瀬戸優子
橋爪功:優子の旦那
三浦友和:甲滝五四朗

<シネマトゥデイ>
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西岸良平による人気漫画「鎌倉ものがたり」を、西岸が原作者である『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズなどの山崎貴監督が実写映画化。人間だけでなく幽霊や魔物も住むという設定の鎌倉を舞台に、心霊捜査にも詳しいミステリー作家が新婚の愛妻と一緒に、怪事件を解決していくさまを描く。和装に身を包み多趣味なミステリー作家を堺雅人、年の離れた妻を高畑充希が演じる。そのほか堤真一、安藤サクラ、田中泯、國村隼、薬師丸ひろ子、三浦友和、中村玉緒らが出演。
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時代背景ははっきりとはわからないが、昭和30〜40年代頃の雰囲気を漂わせた鎌倉が舞台。新婚旅行から正和と亜紀子の夫婦が帰ってくるところから物語は始まる。夫の正和は作家。妻の亜紀子とは、亜紀子が出版社に勤めていて正和の担当になったことが馴れ初めのようである。帰宅して門をくぐった2人の前を何かが通り過ぎる。妻の亜紀子は目を点にして「今のなに?」と尋ねると、正和は「河童だろう」と平然と答える。亜希子だけでなく観ているこちらの方も面食らうが、これはそういう映画なのである。
 
仲睦まじく始まった新婚生活。2人が並んで家路についていると、なにやら夜店が出ている。興味をもった亜紀子が正和を引っ張って見に行く。すると、正和は顔見知りの夫人と会話を交わすが、亜希子が誰かと尋ねると既に亡くなった近所の方だと答える。よく見れば夜店の主たちはみな奇怪な姿形をした妖怪のよう。その中の1件で買ったものを食べた正和はなんと幽体離脱してしまう。そんなあれこれが、古き良き時代背景と相まって何の違和感もなく見えてしまう。

2人の家にはいつの間にか貧乏神が取りついている。正和は迷惑だからとすぐに追い出そうとするが、おっとりした性格の亜紀子は意外にも優しくもてなす。これが後で意外な形で2人を救うことになる。「あなたとなら貧乏でもいいよ」という亜紀子の良妻振りはうらやましくて泣けてくる。やがて貧乏神は次の家にと出ていくが、亜紀子には自分の茶碗を残していく。

そんな亜紀子は、ある日正和に対する急な仕事の依頼の電話を受ける。喜んで正和を行きつけの居酒屋“静”まで迎えに行こうとするが、途中で魔物に転ばされてしまう。この時なんと亜紀子も幽体離脱してしまうが、気がついた時にはもう体が見当たらない。そうこうするうちに、死神が現れ亜紀子を黄泉の国に連れて行こうとする。亜希子は、はじめこそ抵抗するが、霊体が実体化するためのエネルギーを正和の残りの寿命から得ていることを知ると、亜紀子は黄泉の国へ行くことを決意する。

黄泉の国へ行くには海岸から出る江ノ電(の車体)に乗っていくというのが、鎌倉を舞台にした映画らしいところ。担当の死神から亜紀子は本来の寿命ではないので、体さえ見つかれば戻れる可能性があると聞かされ、正和は行方不明になっている亜紀子の体を探し回る。捜索には鎌倉署の心霊捜査課に協力を仰ぐというところも面白い。こうして正和は、亜紀子を連れ帰るために黄泉の国に向かう江ノ電(の車体)に乗り込む・・・

こういう物語は、あれこれ考えずに「そういうもの」として観るのがいい。家の前を河童が通り過ぎて行ったり、怪しげな妖怪たちが夜店を出していたり。鎌倉だったらそうあっても不思議はないと思えてしまう。時代背景も昭和というのがいいのかもしれない。『ALWAYS 三丁目の夕日』(My Cinema File 103)もそうであったが、昭和30年代あたりはすっかり独特の雰囲気を持ってしまっている。かろじて昭和30年代の生まれとしては、感慨深いものがある。

さり気なく出てくる登場人物たちも愛嬌があるし、死神ですら挨拶してしまいたくなる雰囲気がある。どうやら原作漫画があるらしいので、これは是非読んでみようと思う。シリーズ化しても良いと思うし、リラックスして楽しめる映画である・・・


評価:★★★☆☆








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