2018年10月31日

【アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男】My Cinema File 1997

アイヒマンを追え! ナチスがもっとも畏れた男.jpg

原題: Der Staat gegen Fritz Bauer
2015年 ドイツ
監督: ラース・クラウメ
出演: 
ブルクハルト・クラウスナー:フリッツ・バウアー
ロナルト・ツェアフェルト:カール・アンガーマン
セバスチャン・ブロムベルグ:ウルリヒ・クライトラー
イェルク・シュットアウフ:パウル・ゲプハルト
リリト・シュタンゲンベルク:ヴィクトリア
ローラ・トンケ:シュット嬢
ゲッツ・シューベルト:ゲオルク=アウグスト・ツィン
コルネリア・グレーシェル:シャルロッテ・アンガーマン

<シネマトゥデイ>
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数百万人のユダヤ人を強制収容所に送ったナチス戦犯アドルフ・アイヒマンを、1960年に潜伏先で拘束するまでの極秘作戦の裏側に迫る実録サスペンス。イスラエルの諜報機関モサドによる拘束作戦を成功に導いた検事長フリッツ・バウアーに焦点を絞り、彼がいかにしてアイヒマンの消息をつかみ、追い詰めたかを描く。主演は『ヒトラー暗殺、13分の誤算』などのブルクハルト・クラウスナー、共演には『東ベルリンから来た女』などのロナルト・ツェアフェルトらが名を連ねる。
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 時は1950年代後半の西ドイツ・フランクフルト。経済復興が進む一方、戦争の記憶が風化しようとしていく中、検事長のフリッツ・バウアーはナチス戦犯の告発に執念を燃やしている。そんなある日、彼のもとに、逃亡中のナチスの大物戦犯アドルフ・アイヒマンがアルゼンチンに潜伏しているという重大な情報を記した手紙が届く。

 物語はタイトル(邦題)にもある通り主人公のバウアー検事がアイヒマン逮捕に向けて奮闘していく様を描いていくのであるが、それと並行して部下のアンガーマンとの関わりもサイドストーリーとして描かれる。このアンガーマンであるが、実はゲイ。当時の西ドイツではゲイは犯罪であり、バレれば職を失うだけではなく、罪に問われることになる。さらにバウアー自身もゲイであり、その危うさが物語にスリリングさを加えている。

 アイヒマン逮捕に向けて一丸となって物語が進むかと言えばそうではなく、実はドイツ国内にはナチス残党が巣食っていて、バウアーとアンガーマンはその妨害と圧力にさらされ、孤立無援の苦闘を強いられる。そのあたりも複雑な事情が絡んでいて、ナチス戦犯が逮捕されると、場合によっては自らの過去も曝され逮捕されかねないわけで、脛にキズ持つ政府高官たちはバウアーの動きを戦々恐々と見つめているわけである。

 そんな状況下、バウアーは奇策を考える。それは、アイヒマンの情報をモサドに提供するというもの。このあたりは、史実だとしたら意外である。しかしその行為は、国家反逆罪に問われかねない危険な行動。それでもアイヒマン逮捕に執念を燃やすバウアーは、そのリスクを厭わずモサドへの接触を図る。国内のナチス残党にバレないようにわざわざフランス経由でエルサレムに飛ぶ念の入り様。ここで、何で国家反逆罪にあたるのかよくわからず、ちょっと引っ掛かってしまう。
 
 一方、部下のアンガーマンは、あるゲイ行為を裁く裁判で被告の男に罰金刑を求刑する。これはバウアーのアドバイスによって、判例から引っ張ってきたのであるが、ここで裁判官が激怒して結局懲役刑となる。これも無茶苦茶な展開で、当時はこんなことが許されたのだろうかと疑問に思う。当時のドイツの法体系はよくわからない。そしてこの求刑姿勢を感謝され、被告の「恋人」から店に遊びに来いと誘われる。
 
 アンガーマンは葛藤するものの、結局その店に行く。中に入れば、そこは怪しげな官能の世界。一見、普通のナイトクラブであるが、そこで歌っているのは、裁判にかけられていた(結局懲役刑になって服役している)男の「恋人」。もちろん、男である。そしてそこは「そういう店」。のちにアンガーマンはそのことをバウアーに相談する。「もう行くな」というのがバウアーの返答。「一度だけなら『知らなかった』で済ませられる」というのももっとも。しかし、アンガーマンはその誘惑に勝てない。
 
 このエピソードがどういう意味を持つのかは不明。アイヒマン逮捕のシーンは、昔何かの映画で見たのと同じであったが、逮捕から裁判までは実にあっさりとしたもの。バウアー検事はドイツ国内で裁判にかけることを意図していたが、結局それは実現できず、イスラエルでの裁判となったのは史実の通り。何度も見たことがある裁判の陰にこんな事実があったのかと興味深い。
 
 アイヒマン逮捕に執念を燃やすバウワーと思わぬところで足をすくわれたアンガーマン。この絡みをどう解釈するかは観る人次第であるが、まぁ一つの嗜好としてはいいかもしれない。エンターテイメントと知られざる史実の物語として、楽しめる映画である・・・


評価:★★☆☆☆






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2018年10月26日

【天使にショパンの歌声を】My Cinema File 1996

天使にショパンの歌声を.jpg

原題: La passion d'Augustine
2015年 カナダ
監督: レア・プール
出演: 
セリーヌ・ボニアー:マザー・オーギュスティーヌ
ライサンダー・メナード:アリス・シャンパーニュ
ディアーヌ・ラバリー:シスター・リーズ
バレリー・ブレイズ:シスター・クロード
ピエレット・ロビタイ:ユシスター・オネジム
エリザベス・ギャニオン:スザンヌ・ゴーティエ

<シネマトゥデイ>
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近代化の進む1960年代のカナダを舞台に、音楽の名門である寄宿学校の女性たちが廃校の危機を音楽の力で乗り切ろうとするさまを描くヒューマンドラマ。採算の合わない学校を閉鎖しようとする経営側に抵抗し、教師や生徒たちが伝統と歴史に立ち向かう姿を映し出す。監督は、『天国の青い蝶』などのレア・プール。主演は『アサインメント』などに出演しているセリーヌ・ボニアー。劇中に流れるショパンをはじめとする数々の名曲と、学校を守ろうと奮闘する女性たちの姿に感動を覚える。
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 物語の舞台となるのは、カナダのケベックにある寄宿学校。修道院によって経営されるこの女子学校では、校長オーギュスティーヌが音楽教育に力を入れており、その道の名門校として、前回のピアノコンクールでは念願の銀メダルを獲得している。しかし、一方で財政困難から存続の危機に直面している。その背景には、近代化を推し進める政府が、公立学校を増加させていて、転校する生徒が相次いでいるという事情がある。

 そうした事情から、修道院の総長は採算の合わない女子学校を閉鎖することを計画。そんな折、新しいピアノの購入や音楽会のチケット代などの出費がかさんでいるオーギュスティーヌの学校がそのやり玉にあがる。そのオーギュスティーヌの下に、ある日妹が姪にあたるアリスを連れてやって来る。アリスの父親は、音楽家だが放浪癖があって養育の当てにならず、妹は娘アリスをオーギュスティーヌの学校に預け、音楽教師として働きたいとのこと。

 そのアリスであるが、ピアニストとしての才能は素晴らしいが、頑なに心を固く閉ざしている。そしてさっそく校内で問題を起こすアリス。一方でオーギュスティーヌは、修道院の総長から音楽教育を止めて生徒を良妻賢母として育成していく教育の実施を強いられる。それに対し、オーギュスティーヌは総長に抵抗し、音楽教育の成果を披露するイベントを開いて世論に訴えかけていく方法を選択する。

 アリスは友人と共に寄宿学校を無断外出し、町にあるクラブで踊っている。教育問題のドラマでは、必ずと言っていいくらい問題児が登場する。問題児と言ってもアリスの程度は、(修道院の基準では大問題かもしれないが)かわいいレベルである。そして、アリスは、本番ではその天性の素晴らしい演奏を披露し、イベントは大成功を収める。

 寄宿学校の存続問題、アリスの問題行動、音楽イベントの成否等々相まって、物語はなんとなく予定調和的に収束されていく。オーギュスティーヌにも過去があり、アリスと母親にもそれぞれの事情がある。そういうドラマがやっぱり見所。それに加え、アリスが弾くショパンの「別れの曲」をはじめとした劇中で奏でられる名曲もまた良し。

 あまり期待していなかったものの、背景に流れるクラッシックの名曲とともに、ゆったり味わえる一作である・・・


評価:★★☆☆☆








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2018年10月21日

【レイルロード・タイガー】My Cinema File 1995

レイルロード・タイガー.jpg

原題: 鉄道飛虎
英題: Railroad Tigers
2016年 中国
監督: ディン・シェン
出演: 
ジャッキー・チェン:マー・ユェン
ホアン・ズータオ:ダーハイ
ワン・カイ:ファン・チュアン
ワン・ダールー:ダーグォー
ジェイシー・チェン:ルイ
サン・ピン:ダークイ
ン・ウィンラン:シャオフー
シュイ・ファン:チン
池内博之:ケン・ヤマグチ

<映画.com>
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アジアを代表するアクション俳優ジャッキー・チェンが、『ポリス・ストーリー レジェンド』のディン・シェン監督と再タッグを組んだアクションコメディ。第2次世界大戦下の中国。鉄道による日本軍への物資支援を阻止するべく、一般市民によるゲリラ隊「レイルロード・タイガース」が結成された。リーダーのマー・ユェンは、仲間たちと共に列車の爆破計画に乗り出すが……。爆破計画を妨害する日本人指揮官役に『イップ・マン 序章』でも海外映画に出演経験のある池内博之が抜擢され、ジャッキーと1対1のアクションシーンを繰り広げる。レイルロード・ダイガースのメンバー役に、人気K-POPグループ「EXO」の元メンバーであるホアン・ズータオ。
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 ジャッキー・チェン主演のアクションコメディ。ジャッキー・チェンと言えば、「アクションコメディ」であり、まさにその真骨頂とも言うべき映画である。
 時は1941年の中国。日中戦争の最中であり、その日本軍支配地域が舞台となっている。冒頭、郊外を走る列車内。多くの中国人乗客とともに完全武装した日本軍が警備を兼ねて乗り込んでいる。その列車を襲撃したのが、変装して乗り込んでいたマー率いるゲリラ部隊。通称“レイルロード・タイガース”。

 ドタバタはあるものの、まんまと貨物を奪い去る。奪ったものといっても、その中身は食料。時代と言えば時代である。日本軍を率いるヤマグチに見咎められ、殴られたりはするものの、マーはその正体を知られずに過ごす。日本軍の目を盗み、たくみに食料を奪うという程度であれば、ドラマも面白みがない。

 ところがある日、日本軍に追われ負傷した八路軍の兵士がマーの家に逃げ込んでくる。これを匿うマーとその家族。ヤマグチに見つかれば命はない。何とか日本軍の目をごまかすも、任務に燃える兵士は味方の部隊に戻ろうとする。その必死な様子から手を貸すことにしたマー。しかし、結局は兵士を救うことができず、逆にマーは日本軍に大きなダメージを与えるための鉄道橋の爆破を託される。

 “レイルロード・タイガース”という勇ましい名前を名乗っていても、所詮マーとその一味はゲリラに過ぎない。それが、日本兵が堅固に守る警戒厳重な拠点を簡単に爆破できるものではない。部下と共に、まずは爆薬を盗み出そうと、日本軍の倉庫に忍び込む・・・

 ここからが、ジャッキー・チェンの真骨頂発揮場面。コミカルな動きによって面白おかしくドラマを盛り立てていく。倉庫内で上へ下へ、列車を襲撃しては屋根から車内へ、ヤマグチも自ら体を張って右往左往する。見方によってはバカバカしいが、まったくもってリラックスして観ていられるのはいつものごとし。こういう映画は、やっぱり気軽に観られるところが一番の魅力である。

 それにしても元気なジャッキー・チェン。いつまでもその雄姿を見せていただきたいと思う映画である・・・


評価:★★☆☆☆






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2018年10月19日

【アナザー プラネット】My Cinema File 1994

アナザー プラネット.jpg

原題: Another Earth
2011年 アメリカ
監督: マイク・ケイヒル
出演: 
ブリット・マーリング:ローダ
ウィリアム・メイポーザー:ジョン
ロビン・ロード・テイラー:ジェフリー
クマール・パラーナ

<allcinema ONLINE解説>
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ポール・メゼイ製作総指揮、マイク・ケイヒル監督の“もう一つの世界”をめぐるSFストーリー。“贖罪”というテーマを絡ませたドラマチックな展開が話題を呼び、2011年サンダンス映画祭で審査員特別賞を受賞した。ローダはある夜、不思議な惑星が空にあるのを目撃。気を取られるあまりに衝突事故を起こしてしまい、妊婦と子どもが亡くなってしまう。4年の刑期を経て出所したローダは、清掃会社のスタッフとして被害者の夫ジョンの家へ定期的に通うことになった。だが例の不思議な惑星が、同じ人間が存在する“もう一つの地球”であることを知ってしまい…
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 主人公のローダは、MITに合格した才女。人生まさしく順風満帆であったが、あるパーティーの帰り道、飲酒運転で事故を起こしてしまう。時に地球にそっくりの惑星が現れたというラジオニュースを耳にし、ふと空を見上げた瞬間のわき見運転であった。事故の相手は親子3人が乗った車。車に乗っていた妊娠中の母親とまだ幼い息子が犠牲となる。ローダは逮捕され、収監される。

 時は流れ、4年後、ローダは刑務所を出所する。ローダを温かく迎える家族。家路につくと空には地球に似た星が上空に浮かんでいる。それは地形もその中の町の様子まで地球と同じであるという摩訶不思議な惑星。そんな世間の関心と、家族の歓迎とに関わらず、ローダは明るい気分にはなれない。華々しいキャリアは過去のものであり、ローダは職探しをし、あえて人との関わりが少ない仕事として母校の清掃の職に就く。

 事故に対し、罪の意識を持つローダは、ある日、事故現場に向かう。すると、現場におもちゃを供える男性を見かける。事故について調べると、被害者のうち父親のジョンだけが助かっていたことを知る。ジョンは著名な音楽家であったが、事故以後、無気力な生活を送っていたのである。その様子を覗き見たローダは、雪原に服を脱いで横たわり自殺を試みる。しかし、気がつけば病院のベッドの上。ならばと目にした第2の地球へ行くためのオーディションに申し込みをする。応募の作文に、自分のような犯罪者こそ帰れぬリスクを考えれば最適だと綴る。

 世間から隠れるようにして距離を置いていたローダだが、ある時再びジョンの自宅を訪ねる。しかし、事故のことは打ち明けられず、ハウスキーパーの無料サービスだと身分を偽る。失意のジョンはアルコール依存症であり、ローダは荒れ放題の家の中をもくもくと片付けていく。そしてこの日からローダはジョンの家に定期的に掃除しに行くことになる。費用として受け取った小切手は換金せずに破り捨てていく。こうしてローダとジョンの静かな交流が始まる。

 事故を起点に共に傷心のローダとジョンの交流が続く一方で、テレビでは突然現れた第2の地球が話題を独占する。通信の結果、第2の地球はそこに住んでいる人も含めてまったく同じだと判明する。これがどうストーリーと直結するのか。SF映画なのにSF映画という感じがしない。地球に惑星が接近する中、何気ない地上のドラマが展開されるというストーリーは、何となく『メランコリア』(My Cinema File 830)と同じ雰囲気を醸し出す。一体、物語はどういう結末へつながるのだろうと漠然と思いつつストーリーを追う。異変に対してあまりにも日常的なドラマが続いて行く。

 もしも、今の地球とそっくりな地球が突然現れ、しかもそこに自分とまったく同じ自分がそこにいると知ったら・・・なかなか夢のある筋書きかもしれない。そんな状況に置かれたら、ちょっとそこにいる自分自身と会ってみたい気がする。加害者と被害者という立場の違いはあるが、ともに事故で人生を狂わされてしまった2人。そして地球とそっくりな第2の地球。物語の結末は予想していなかった形で現れる。それは2人にとっていい結末だったのだろうか。
 思わずそうであったことを願いたくなった映画である・・・


評価:★★☆☆☆






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2018年10月13日

【OSIRIS/オシリス】My Cinema File 1993

OSIRIS/オシリス.jpg

原題: Science Fiction Volume One: The Osiris Child
2016年 オーストラリア
監督: シェーン・アビス
出演: 
ケラン・ラッツ:サイ
ダニエル・マクファーソン:ケイン
ルーク・フォード
イザベル・ルーカス
テムエラ・モリソン
リチャード・グリフィス

<シネマトゥデイ>
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植民地計画が進む惑星を舞台にしたSFスリラー。人類を滅亡させるウイルスから娘を救おうとする男の姿を描く。メガホンを取るのは『シャドウ・ワールド』などのシェーン・アビス。アビス監督の『INFINI/インフィニ』にも出演したダニエル・マクファーソン、『トワイライト』シリーズなどのケラン・ラッツらが出演している。
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 地球から遠く離れた惑星オシリス。人類はこの惑星を植民地化する計画を進めている。その労働力となっているのは、囚人。ここには刑務所が設置され、収監されている囚人たちが使役に当てられている。宇宙船フローティアは、オシリスの上空に浮かび、オシリスの管理に当たっている。主人公のケイン中尉は、ちょうど地球から娘インディが遊びにきていて、束の間の再会を楽しんでいる。

 そんなある日、地上から反乱を起こした囚人たちが脱走したとの連絡が入る。その上、人類を破滅させるウィルスを所持しているとのことで、上官は惑星上の破壊を決断する。地上に娘を残しているケインは、上官の命令に反して地上へと向かう。しかし、それを阻止しようとした味方と空戦の結果、とある地上に不時着してしまう。そこで出会ったのは、刑務所から脱走してきた囚人のサイ。ケインはインディの救助を条件に、ケインが利用できるシェルターに避難することを条件に2人で首都を目指す・・・

 SFというのは、ある程度「設定条件」と「映像」で良し悪しが決まると思う。最近では「映像」はあまり問題にはならない(例外もあるが・・・)が、この映画でも上空に浮かぶ宇宙船は実に幻想的で美しい。「設定条件」についてはどうもイマイチである。地上にある刑務所では、独裁的な所長のもと、囚人たちが作業に当てられているわけであるが、逆らうと怪物にされてしまうのである。何とも言えない・・・

 囚人のサイは、最果ての刑務所に送られてくるほどの凶悪犯かというとそれほどでもない。妻子を酔っ払い運転で死なせた男を殺したのである。情状酌量の余地もありそうな犯罪であるが、この程度で遠島となるとは、よほど「労働力」を欲している世界なのかもしれない。そして刑務所の外は荒れ果てた世界で、それはまるで『マッドマックス』(My Cinema File 1583)の世界である。

 襲い来る怪物たちを退け、そして逃げつつシェルターへと向かうケインとサイとインディ、そして途中で出会った恋人同士の2人。未来世界なのに移動手段は現代でもおんぼろに分類されるようなバス。そしてラストはヒネリのきいた意外な結末。手放しで面白いと褒めたたえられるほどではないが、小粒の割には意外と面白かったと言える。
 その後、どうなったのだろう。物語の行く末がちょっと気になった一作である・・・


評価:★★☆☆☆






posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | SF/近未来ドラマ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする