2018年11月30日

【タイム・チェイサー】My Cinema File 2011

タイム・チェイサー.jpg


原題: I'll Follow You Down
2013年 カナダ
監督: リッチー・メタ
出演: 
ハーレイ・ジョエル・オスメント: エロル
ジリアン・アンダーソン: マリカ
ルーファス・シーウェル: ゲイブ
ビクター・ガーバー: サル


<映画.com>
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『シックス・センス』の名子役ハーレイ・ジョエル・オスメントが主演を務め、行方不明になった父と再会するべくタイムトラベルに挑む科学者役を演じたSFサスペンス。幼い息子エロルや愛する妻と暮らす物理学者ゲイブが、突如として謎の失踪を遂げた。数年後、成長して科学者となった息子エロルは、父にまつわる衝撃的な事実を発見し、家族の絆を取り戻すべく奔走する。主人公の父親役を『リンカーン 秘密の書』 『ヘラクレス』のルーファス・シーウェル、母親役を「X-ファイル」シリーズのジリアン・アンダーソンが演じた。2015年1〜2月、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で開催の「未体験ゾーンの映画たち 2015」上映作品。
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 ガブリエル・ホワイトは、その日ごく普通に出張に出掛けて行く。空港で見送るのは、妻マリカと息子エロル。ガブリエルは、カナダの大学に勤めるマリカの父サルの下を訪れ、自らの研究室に荷物を置き、そして忽然と姿を消してしまう。それから12年の歳月が流れる・・・

 ガブリエルの失踪が原因でマリカは心を病み、エロルは母を支えながら、祖父サルが教鞭を取る大学に進学。エロルは極めて成績優秀。そんなエロルに対し、父ガブリエルの研究資料を読み解いたサルから、ある日父の失踪の真実を聞かされる。それは、カブリエルは1946年にタイムトラベルし、何らかのトラブルによって戻れなくなったのだろうということ。エロルの優秀さを見込んだサルは、ガブリエルを連れ戻すために、タイムトラベルに必要なワームホール研究の手伝いを頼む。

 一方、自分がエロルの負担になっている事を知ってしまったマリカは自殺してしまう。ショックを受けたエロルは、サルの研究に協力し、過去に向かった父を連れ戻して母が自殺しない幸せな未来を得ようとする。調べていくうちに、やがて父と思しき人物が1946年に殺害されている新聞記事を発見する。サルが見込んだ通り、優秀さをいかんなく発揮したエロルは研究を完成させる。そしてエロルは、父を追って過去へと向かう・・・

 よくあるタイムトラベルモノ。タイムマシンを完成させた父ガブリエルは、1946年に飛ぶ。その目的はアインシュタインに会うためという夢のある話である。しかし、何があったのかガブリエルは戻ってこない。その彼を成長した息子が追うという内容は、よくありがちなタイムパラドックスに引っ掛かりまくりのものであるが、それをいちいち挙げるのは無粋というものである。それはそれとして楽しみたい。

 興味深かったのは、成長したエロルが1946年に飛び、父と再会するところ。父の立場からすると、タイムトラベルしてすぐにそこで成長した息子と会うわけであるから驚くだろう。そんな想像をしながら観てみるのが良いかもしれない。父親は父親で考えがあって行動しているわけで、いきなり成長した息子が現れてその考えを変えさせようとするのは無理がある。それをわかっていたのか、エロルが取った“行動”には驚かされた。そしてそんなエロルの身を挺した行動が導くラスト。

 『シックス・センス』(My Cinema File 1057)では実に印象的で、主演のブルース・ウィリスよりも存在感があった感があるハーレイ・ジョエル・オスメントも既に普通の青年(というよりどこかおっさん臭い)。残念ながらもうあまりインパクトが感じられない。このまま消えていきそうな気配を感じてしまう。それがそのまま映画の印象になっている気がする。

 タイムトラベルモノではあるが、細かいタイムパラドックスは気にせずに、純粋に楽しみたい映画である・・・・


評価:★★☆☆☆









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2018年11月26日

【多重人格ストリッパー フランキー&アリス】My Cinema File 2010

多重人格ストリッパー フランキー&アリス.jpg


原題: Frankie & Alice
2010年 カナダ
監督: ジェフリー・サックス
出演: 
ハル・ベリー:フランキー
ステラン・スカルスガルド:オズ
フィリシア・ラシャド:エドナ
チャンドラ・ウィルソン:マキシン
ロザリン・コールマン
ジョアンヌ・バロン
ブライアン・マーキンソン:ドクター・バックマン

<シネマトゥデイ>
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黒人ストリッパーでありながら人種差別主義の白人女性の人格を持つ解離性同一性障害の女性を、『チョコレート』や『X-MEN』シリーズなどのハル・ベリーが演じるヒューマンドラマ。舞台は1970年代のアメリカ、実在した女性をモデルに、解離性同一性障害を克服しようと苦しみながらトラウマに向き合った女性の姿を描く。メガホンを取るのは、『アレックス・ライダー』などのジェフリー・サックス。ヒロインを診断し、協力するサイコセラピストを、『奇跡の海』、『マイティ・ソー』シリーズなどのステラン・スカルスガルドが演じる。プロデューサーも兼ねるハルの熱演に魅了される。
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 一昔前に流行った感のある多重人格を扱った映画。物語の舞台は1970年代初期のアメリカ。主人公のフランキーはストリッパー。黒人女性ながらそのルックスとセクシーなダンスで人気を集めている。仕事が終わればフランキーは、仲間たちと夜遊びに繰り出す。ある晩、バーで出会った男と一夜限りの関係をかわそうとするが、フランキーは突然抵抗し、その場を逃げ出す。しかし、錯乱状態となって病院に運ばれる。
 
 運ばれた先で彼女を担当することになったのは、サイコセラピストのオズ。本来は臨床医でないのであるが、やむなく担当することになったもの。彼女の症状は、誰もがドラッグのせいだと思っていた中、オズは彼女に興味を持ち、本格的な診察に取り組むことになる。やがて、オズによってフランキーの症状が明らかになる。彼女の中には、アリスという人種差別主義の白人女性の人格が存在していたのである。これが、タイトル(原題)の由来。

 これまでも『24人のビリー・ミリガン』など多重人格を扱ったものがあったが、個人的にはこの手のものが好きだということもあって観たわけである。実際に自分で患者を観たことがないので何とも言えないが、ホントなのかと思ってしまう。しかし、人格が変わると脈拍や利き腕まで変わるというから、これは普通ではできないことだからやっぱり本当なのだろう。

 フランキーも時折、記憶をなくすという自覚症状はあるものの、その間の記憶がないので何があったのかはよくわからない。ある時、家主から小切手が不渡りになったと文句を言われ、そんなはずはないと言い返す。しかし、違和感を覚えて家探しをすると絶対に買うはずのない高額なドレスがドレッサーに入っている。実際に我が身に起こったらかなり動揺するだろう。

 裏の人格であるアリスがお騒がせの張本人。かつてある金持ちの屋敷でメイドをしていたフランキーは、やがてその家の御曹司と恋仲になる。しかし、身分の差からそれは許される恋ではなく、2人は手に手を取って駆け落ちする。しかし、その道中、事故を起こして御曹司は亡き人となる。事故車の中でフランキーは呆然としている。2人の間にはやがて子供が生まれる予定であり、2人で名前を考えていたのである。女の子だったらアリスにしようと・・・

 こうしてフランキーの過去とオズによる治療が描かれていく。しかしながら、ドラマとしてはもう少し踏み込んでほしかったと思わざるをえない。何かイマイチ、インパクトが弱いのである。せっかく、ハル・ベリーが主演していて(だから観る気になったとも言える)、それなりに興味のあるテーマだっただけに、消化不良感が残った感じである。さらに例によって邦題も酷い。フランキーがたまたま「ストリッパー」であったというだけで、映画の内容にはまったく関係ない。ただ単に、「ストリッパー」と入れた方が変な期待をして観る人がいるだろうという浅知恵が透けて見える。

 ハル・ベリーの熱演は良かったが、その他のインパクトが弱い映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2018年11月25日

【追憶の森】My Cinema File 2009

追憶の森.jpg


原題: The Sea of Trees
2015年 アメリカ
監督: ガス・バン・サント
出演: 
マシュー・マコノヒー:アーサー・ブレナン
渡辺謙:ナカムラ・タクミ
ナオミ・ワッツ:ジョーン・ブレナン

<シネマトゥデイ>
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『ミルク』などのガス・ヴァン・サント監督が、「The Black List 2013」(製作前の優秀脚本)に選出された脚本を映画化。死に場所を求めて青木ヶ原樹海にやって来たアメリカ人男性が、自殺を思いとどまり樹海からの脱出を試みる日本人男性と出会ったことで、人生を見つめ直すさまを描く。『ダラス・バイヤーズクラブ』などのオスカー俳優マシュー・マコノヒーと、『インセプション』などで国際的に活躍する渡辺謙が初めて共演を果たし、『インポッシブル』などのナオミ・ワッツも出演。
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 日本を舞台にしたハリウッド映画というのも珍しい気がする。しかもマシュー・マコノヒーと渡辺謙、ナオミ・ワッツの共演という贅沢な映画である。
 大学教授のアーサー・ブレナンは、世界の自殺名所をサイトで検索し、トップに輝いた青木ヶ原の樹海へ向かうべく、飛行機に乗り込む。目的が目的なだけに手荷物もわずかである。そしてタクシーで青木ヶ原の樹海に降り立つ。

 この物語の時代設定がいつなのかよくわからないが、アーサーの乗っていたタクシーは昔懐かしいクラウン。意味ありげに樹海の入り口に放置されている車も同じような古いタイプであり、時代設定がちょっと気になる。樹海へと足を踏み入れるアーサー。やがて立入禁止の表示をかいくぐって行く。途中、放置された遺体がところどころに散在する。ホントなのかと疑問が脳裏を過る。

 アーサーは、ここと定めると睡眠薬を取り出す。するとそこに1人の日本人がふらつきながらさ迷い歩いてくる。助けを求めるその男にアーサーは水を与え、駐車場に通じる道まで連れていくが、戻るはずの道は途切れわからなくなってしまう。2人で道を探してさ迷うことになるが、男はナカムラと名乗る。ナカムラは勤めていた会社で左遷され、それを苦に樹海にやって来たのである。

 アーサーは、最愛の妻を失い、生きる目的を失ってこの地にやって来たのであるが、そんな事情が徐々に明らかになっていく。樹海の中を歩くうちに、様々な出来事が重なる。アーサーは足を滑らせて崖の下に転落して怪我を負い、ドイツ人の遺体を発見し、寒さ対策に衣服を借りる。突然の雷雨に流され、白骨死体が眠るテントに辿りつく。その間、ナカムラはアーサーに家族の話をする。妻子の名前は「キイロ」と「フユ」だと告げるが、日本人的には違和感のある名前である。

 物語は、ほとんどを森の中で進んでいく。原題が“The Sea of Trees”となっているのも頷ける。また、内容を鑑みれば邦題もなかなかである。途中、岩の上に咲く一輪の花を見つけ、ナカムラは「霊があの世に行く時に花が咲くと言われている」などと語る。それがラストで何かを暗示させる。アーサーにとって、ナカムラとの出会いは何を意味していたのだろう。2人の別れは唐突でもある。日本人らしくない妻子の名前、残された花の存在。いろいろと想像してみるのもいいかもしれない。

 静かに流れ、静かに流れ去っていった感じの映画である・・・


評価:★★☆☆☆






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2018年11月24日

【ジェーン・ドウの解剖】My Cinema File 2008

ジェーン・ドウの解剖.jpg

原題: The Autopsy of Jane Doe
2016年 イギリス
監督: アンドレ・ウーブレダル
出演: 
エミール・ハーシュオー:スティン・ティルデン
ブライアン・コックス:トミー・ティルデン
オフィリア・ラビボンド:エマ
マイケル・マケルハットン:保安官
オルウェン・ケリー:ジェーン・ドウ

<シネマトゥデイ>
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身元不明の女性の検死を行うことになった検死官の親子が、解剖を進めるうちに怪奇現象に襲われるホラー。遺体安置所での逃げ場のない恐怖をリアルな解剖シーンと共に描き、トロント国際映画祭など世界各地の映画祭で高い評価を得た。監督は、『トロール・ハンター』などのアンドレ・ウーヴレダル。検死官の親子を『ボーン』シリーズなどのブライアン・コックスと、『イントゥ・ザ・ワイルド』などのエミール・ハーシュが演じる。
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 バージニア州の田舎町。警察が事件現場の現場検証をしているところから映画は始まる。それは一家全員が惨殺されるという残忍な事件。そして無残な死体とは別に家屋の地下から全裸の身元不明女性の遺体が発見される。発見された遺体は、地域のベテラン検死官トミーの下へと運ばれる。日本とは大きく異なるが、そこはトミーの自宅であり、遺体安置所兼火葬場でもある。
 
 トミーは、息子オースティンとともにそこで暮らし、検視をしている。オースティンは、ガールフレンドと出掛ける間際に保安官からこの緊急の検死依頼を受け、父親1人に任せるに忍びなく、検視を手伝うことになる。親孝行であるが、これがオースティンとガールフレンドの運命を決める。タイトルの「ジェーン・ドウ」とは、身元不明の(女性の)遺体の通称。遺体には見た目にはどこにも外傷がなく、死因は不明。かくしてトミーとオースティンは、検視解剖に取り掛かる。

 検視を始めるとすぐにトミーは異常に気がつく。一見、傷ひとつないように見えたが、両手足首が骨折しており、舌は抜かれている。そしてメスを入れると血が流れ出す。通常、検視に運ばれてくる遺体は時間も経過していることもあって血が流れるということはないのである。そして胸を切り開くと、肺は常識では考えられないほど黒く焦げ上がっている・・・

 異常な遺体に2人の緊張感は高まるが、やがて外の天候も嵐の襲来で荒れ始め、突然停電となる。2人は地下室内に閉じ込められるが、トミーはオースティンの提案を拒否して検視を続ける。プロとして奇怪な遺体の死因を調べて解明したいと思ったのであろう。実は、この映画の予備知識ゼロで臨んだため、どんなジャンルの映画かわからずに観ていたのであるが、途中まではサスペンスかと思っていたら、ホラー展開へと進んでいく。

 検死解剖が進むに連れ、おかしな現象が続出する。通気口に挟まって瀕死状態の猫を見つけると、オースティンは安楽死の処置をして火葬にする。検死室には遺体が何体も安置してあるが、いつの間にか閉めていたはずの扉が開いている。さらには暗闇の中、安置していた遺体の足につけていた鈴が鳴り響く。恐怖心を抱いたオースティンは、逃げ出そうとするも、嵐で倒れた木が邪魔になって扉が開かず、エレベーターも停電で使用できない。事務所にある電話を使って保安官ジェルに助けを求めるが、嵐の影響かほとんど声が聞き取れない・・・

 ここに至って、この映画はどうやらホラーだとわかってくる。相手は死体。しかし、その本当の正体はわからない。なかなかこれまでになかったタイプのストーリー展開。ただ、胃の中から出てきた布や皮膚の裏の模様など、もうちょっと説明して欲しかったと個人的には思うところ。相手の正体を悟った父親トミーが遺体に懇願するもラストの結末はなかなかのレ・ミゼラブル。

 「山椒は小粒でも・・・」を地で行ったような、小粒だが、ピリリと恐怖を感じさせてくれる映画である・・・


評価:★★☆☆☆






posted by HH at 00:00| 東京 ☁| Comment(0) | ホラー・オカルト・悪魔 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2018年11月23日

【エリート・スクワッド 〜ブラジル特殊部隊BOPE〜】My Cinema File 2007

エリート・スクワッド ブラジル特殊部隊BOPE.jpg


原題: Tropa de Elite 2 - O Inimigo Agora E Outro
2010年 ブラジル
監督: ジョゼ・パヂーリャ
出演: 
バグネル・モーラ: ナシメント
アンドレ・ハミロ: マチアス
イランヂール・サントス:フラガ
ペドロ・バン・エウド: ラファエル
マリア・ヒベイロ: ロザーヌ

<映画.com>
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ブラジル軍警察の特殊部隊BOPEと麻薬組織の戦いをリアルに描き、ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した社会派アクション「エリート・スクワッド」の続編。南米一の犯罪多発都市リオ・デ・ジャネイロ。軍警察のエリート特殊部隊BOPEの隊長ナシメントは、刑務所暴動事件での失態を受けて保安局へと異動させられる。タンキ地区の警察署から盗まれた銃の行方を追うナシメントは、同地区のギャングがその銃を持っているとの情報を入手。そこでナシメントは、かつての部下マチアスと共にタンキ地区の一掃に乗りだすが……。前作に続き、「バス174」のジョゼ・パジーリャ監督が手がけた。
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 普段ブラジル映画はあまり観ないこともあって、この映画の前作にあたる「エリート・スクワッド」は観ていない。それどころか、本作を観終ってから実は続編だったと知った有様である。その続編は刑務所から始まる。そこに収監されている麻薬密売グループは、娑婆と同様に刑務所内でも縄張りを築いている。

 娑婆で敵対するグループは、街中だけでなく刑務所内でも抗争をしているのであるが、とあるグループが騒動を起こし他のグループの人間を襲撃する。刑務所内なのに銃を手に入れて乱射するわけであるが、実際のブラジルの刑務所も同様なら世も末である。この事態に主人公である特殊警察作戦大隊(BOPE)の隊長ナシメントが鎮圧にあたる。ところがそこに人権擁護派の活動家フラガが仲裁に入る。

 実はフラガは、ナシメントの別れた妻や子供と暮らしており、ナシメントにとっては面白くない存在。私生活でも仕事の上でもナシメントとフラガは対立関係にあるのである。仲裁を買って出たフラガであるが、銃を持った暴徒は興奮状態。ナシメントの部下マチアスはこの状況を冷静に捕らえ、隙をついてリーダーを射殺し、BOPEはフラガの目の前で騒動を武力で鎮圧する。当然、フラガもこの事態を声高に非難する。

 ナシメントは責任を取らされ異動になるが、なにせ暴徒は社会から憎まれる存在でもあり、ナシメントの行為は市民から賞賛される。こうなると上層部もナシメントを無碍にもできず、その結果、ナシメントは公安セクションの責任者に昇格する。一方、暴徒を射殺したマチアスはBOPEから除籍され、警察内の書類整理係へ左遷される。これに対し、怒りを爆発させたマチアスは、新聞記者を使って内部告発し、結果として有罪となり収監される。

 ギャングが勢力を減退させた一方で、ギャングからの賄賂も減った警官たちは、自分たちで街を支配することを思いつく。政治家もこれに加わり、巨大な悪の組織(以下:「システム」)へと変貌を遂げていく。公安で盗聴を担当していたナシメントは、偶然「システム」の存在を知るところとなる。「システム」は、さらにBOPE隊員に復帰したマチアスと真相暴露を図る新聞記者を殺害し、フラガの暗殺まで企てる。フラガと同居しているナシメントの息子ラファエルまで銃撃され、ナシメント自身も解任に追い込まれる・・・

 こうしてナシメントはフラガと手を組み、「システム」との最後の戦いに挑むことになるというストーリー。ブラジル発のバイオレンス映画は、映像の迫力というよりもあまりにもリアル過ぎるところに背筋が寒くなる感がある。『シティ・オブ・メン』(My Cinema File 417)などと同様、この映画で描かれる腐敗には絶望的な気分に落とされる。刑務所内でも平気で銃がやり取りされ、秩序もギャングによるものしかない。

 さらに、街ではギャングに成り代わって警察が裏社会を牛耳る。なにせ公権力なだけに、「普通のギャング」など太刀打ちできない。正義感に燃えたマチアスに降りかかる災難など防ぎようがない。子供が日常生活の中で銃の恐怖にさらされたり、頼りになるはずの警察が悪に染まっていたり、そんな絶望感が漂うところがブラジル版バイオレンスの真骨頂であると思う。

 この映画は続編と言っても、言われなければ気がつかない。現に何の違和感もなく観終えるまで気がつかなかったほどである。今度前後するが、前作を観てみようかと思わされる一作である・・・


評価:★★☆☆☆







posted by HH at 00:00| 東京 ☀| Comment(0) | その他の国の映画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする