2018年12月31日

【遊星からの物体X ファーストコンタクト】My Cinema File 2024

遊星からの物体X ファーストコンタクト.jpg

原題: The Thing
2011年 アメリカ
監督: マティス・バン・ヘイニンゲン・Jr.
出演: 
メアリー・エリザベス・ウィンステッド:ケイト・ロイド
ジョエル・エドガートン: サム・カーター
アドウェール・アキノエ=アグバエ: デレク・ジェイムソン
ウルリッヒ・トムセン: サンダー・ハルヴァーソン博士
トロンド・エスペン・サイム: エドヴァルド・ウォルナー
エリック・クリスチャン・オルセン: アダム・フィンチ

<シネマトゥデイ>
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『ハロウィン』などの鬼才ジョン・カーペンターが1982年に放った傑作SFホラー『遊星からの物体X』の前日譚。氷魂の中に閉じ込められた宇宙生命体を発見した、ノルウェー南極観測隊が体験する未曽有の恐怖をスリリングに活写していく。監督を務めるのは、CM業界出身の新鋭マシーズ・ヴァン・ヘイニンゲン・Jr。『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』のメアリー・エリザベス・ウィンステッドが、宇宙生命体の脅威に挑んでいく考古生物学者を快演する。生命体に同化されておぞましい変ぼうを遂げていく人体を作り上げたVFXも見ものだ。
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ヒットした映画の続編が創られることは珍しいことではないが、30年も経ってからとなるとどうだろう。元の映画は、ジョン・カーペンター監督の名作名高い作品であるが、この映画はその前日譚を描いたもの。『遊星からの物体X』(My Cinema File 2002)では、冒頭で逃げる犬を追ってヘリが南極のアメリカ基地に着陸するところから始まっていた。追って来たのはノルウェー隊。一体、何があったのか。冒頭での謎に答えてくれるのがこの映画というわけである。

1982年、南極大陸でノルウェー観測隊が何かの電波を追っている。そして偶然氷の下にある巨大な人造物を発見する。同時に正体不明の氷漬けの生物の遺骸も回収する。そんな事をツユとも知らない古生物学者のケイト・ロイドは、アメリカ人とノルウェー人で構成された国際探査チームに招集され、南極を訪れる。目的は明かされぬまま南極基地に到着するが、着いた早々案内されたのは、発見された巨大な宇宙船と運び込まれた地球外生命体の遺骸であった。

興奮に沸き立つノルウェー隊。氷漬けの地球外生命体は基地に搬入され、調査されることになる。しかしその夜、突然生命体(=The Thing、「物体」)は氷を破砕して基地外に逃走する。「物体」はノルウェー隊が飼っていた犬を殺害し、さらに捜索にあたっていた隊員の1人を襲う。襲われた1人は犠牲になるが、「物体」は駆け付けた隊員たちによって倉庫ごと焼却される。ケイトは、焼却された「物体」を解剖するが、その細胞がまだ生きていることや、襲った隊員を体内で取り込んでその姿に擬態するという生態を知る。この時、死んだ隊員の骨折した骨に埋められていた金属プレートが、「物体」の体内から発見され、「物体」は有機細胞ではないものについては、同化・複製できないことがわかる。

物語は当然、ここで終わらない。ケイトはシャワールームで大量の血痕と共に歯の詰物の破片を発見する。その時、具合の悪くなった隊員を搬送するヘリが飛び立ったところであったが、当の隊員が「物体」へと変化し、ヘリは墜落する。慌てた観測隊の隊員たちは基地から避難しようとするが、ケイトはすでに隊員の誰かに『物体』が擬態している可能性を指摘し、冷静に「隔離」を主張する。こうして、アメリカ隊を襲った恐怖と同じ恐怖をノルウェー隊が味わうことになる。

それにしても似たような異星人に体を乗っ取られるパニックものでも、『エイリアン』(My Cinema File 49)は顔面に異生命体が張り付くことによって襲われたことがわかったが、この映画ではそれがわからない。そこがこの映画のエイリアンの恐ろしいところだろう。前作では、(乗っ取りを)見分けるために血液検査を実施していたが、ここでは口を開けて虫歯の治療痕を確認するという実にシンプルな方法。ただし、この方法では、健常者(虫歯のないもの)も疑いの対象になってしまうという欠点がある。

 内容的には、『遊星からの物体X』(My Cinema File 2002)で展開されたようなエイリアンとの死闘が描かれていく。変わっているところとしては、逃げたエイリアンを追って宇宙船の中に戦いの場を移していくところだろうか。ただ、やっぱりゲテモノ怪物にしか見えないエイリアンが、地球よりもはるかに進んだ高度なテクノロジーの持ち主には見えないという強烈な違和感だけは残ってしまう。

 エイリアンの前に次々に倒れるノルウェー隊。そして基地で生き残った隊員が、犬が逃げていくのを見かける。危機感を覚えた隊員がヘリに乗って犬を追いかけ、空から狙撃する。これが『遊星からの物体X』(My Cinema File 2002)の冒頭のシーンへとつながっていく。一方で、宇宙船での死闘を制したケイトがその後どうなったのかは描かれない。これはこれでまた次への伏線になるのか、あるいは『遊星からの物体X』(My Cinema File 2002)でも最後に残った2人のような運命なのかもしれない。

 その先をたっぷりと観る者に想像させて物語は終わる。終わった後に思うに、やはり前作を観てからこの映画を観た方がいいということ。見比べてみると、終わった後にいろいろと想像の翼を広げてみたくなる映画である・・・


評価:★★☆☆☆









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2018年12月30日

【タクシードライバー】My Cinema File 2023

タクシードライバー.jpg


原題: Taxi Driver
1976年 日本
監督: マーティン・スコセッシ
脚本: ポール・シュレイダー
出演: 
ロバート・デ・ニーロ: トラヴィス・ビックル
シビル・シェパード: ベッツィー
ピーター・ボイル: ウィザード
ジョディ・フォスター: アイリス
アルバート・ブルックス:トム
ハーベイ・カイテル:スポーツ
レナード・ハリス: パランタイン上院議員

<allcinema ONLINE>
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ニューヨークの夜を走るひとりのタクシードライバーを主人公に、現代都市に潜む狂気と混乱を描き出した傑作。ベトナム帰りの青年トラヴィス・ビックルは夜の街をタクシーで流しながら、世界の不浄さに苛立ちを感じていた。大統領候補の選挙事務所に勤めるベッツィと親しくなるトラヴィスだったが、彼女をポルノ映画館に誘ったことで絶交されてしまう。やがて、闇ルートから銃を手に入れたトラヴィスは自己鍛錬を始めるが、そんな彼の胸中にひとつの計画が沸き上がる……。
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 舞台はニューヨーク。主人公のベトナム帰還兵であるトラヴィスは不眠症に悩まされている。それもあって彼はタクシーの運転手に応募する。そして皆が行きたがらないような高級地区だろうと黒人街だろうと行くことにする。治安の悪い地域にタクシーが行かないなどというのも、(当時の)ニューヨークらしい。

 ある日、トラヴィスは1人の女性を見掛け、一目惚れしてしまう。女性の名はベッツィ。次期大統領候補チャールズ・パランタイン上院議員の選挙事務所で働いている。初めは遠巻きに眺めているだけだったが(ベッツィもそれに気付いている)、なんとトラヴィスは選挙事務所に乗り込んでいく。そしてベッツィをカフェに誘い出すことに成功する。なかなかの度胸だと感心する。自分にはちょっと真似できない。
 
 トラヴィスはそこでベッツィを映画に誘う。デートの王道であるが、男はやはり行動力なのかもしれない。ベッツィとの約束までの間、トラヴィスがイースト・ヴィレッジを走らせていると、少女の娼婦がタクシーの中に逃げ込んでくる。彼女はアイリス。ポン引きのスポーツに追われていたのだが、あえなくスポーツに捕まり、連れ去られていく。トラヴィスはただ黙って見つめているだけ。これが後々の伏線になる。

 そしてベッツィとのデートの日の夜。トラヴィスが彼女を連れて行ったのはなんとポルノ映画。これも自分にはできない。というより、初デートでポルノ映画に連れて行ける男はあまりいないだろう。ベッツィは驚くも一旦は一緒に入る。ここもアメリカ人ならではだろう。しかしやはり途中で憤慨し、その場を立ち去ってしまう。さすがにトラヴィスは謝罪するが、ベッツィは相手にしない。それも当然だろう。これに対して逆ギレしたトラヴィスは、選挙事務所に押し入り、彼女に罵詈雑言を浴びせてしまう・・・
 
 そんなトラヴィスは、自らのあり方に疑問を思ったのだろうか。娼婦として働かされているアイリスの姿を再び見掛けたこともあり、何かを決意する。銃の密売人からマグナムやワルサー、軍用のナイフなどの武器を買い、射撃訓練やトレーニングに取り組み始める。そしてその成果は、ある夜、食料品店で買い物をしている時に遭遇した強盗を射殺することで現れる。

 世の中の底辺で生きるトラヴィスや娼婦のアイリスのことなど誰も気にしないであろう。突然モヒカン刈りにし、銃やナイフを仕込んでパランタイン大統領候補の演説集会に向かうトラヴィス。そのあとの行動は何と考えればいいのだろう。トラヴィスの一見、理にかなわない行動を見ていて感じるのは、そこに損得勘定はなく、ただ、自らの存在感を自分自身で感じたかったのかもしれないということ。ラストで駆け付けた警官に見せた仕草が何とも言えない。
 
 この映画を最初に観たのはもう随分昔のこと。久しぶりに観たらやはりストーリーはほとんど忘れていた。ただ、腕に銃を仕込んでいて、ラストの一連の騒動を何となく覚えていた程度である。ただ、それでも覚えているだけ、印象深いシーンである。
 若き日のロバート・デ・ニーロの代表的な作品として、心に残っている映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2018年12月29日

【カメラを止めるな!】My Cinema File 2022

カメラを止めるな!.jpg

2017年 日本
監督: 上田慎一郎
出演: 
濱津隆之:日暮隆之
真魚:日暮真央
しゅはまはるみ:日暮晴美
長屋和彰:神谷和明
細井学:細田学
市原洋:山ノ内洋
山崎俊太郎:山越俊助
大澤真一郎:古沢真一郎
竹原芳子:笹原芳子

<映画.com>
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映画専門学校「ENBUゼミナール」のワークショップ「シネマプロジェクト」の第7弾として製作された作品で、前半と後半で大きく赴きが異なる異色の構成や緻密な脚本、30分以上に及ぶ長回しなど、さまざまな挑戦に満ちた野心作。「37分ワンシーンワンカットのゾンビサバイバル映画」を撮った人々の姿を描く。監督はオムニバス映画「4/猫 ねこぶんのよん」などに参加してきた上田慎一郎。とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画の撮影をしていたが、そこへ本物のゾンビが襲来。ディレクターの日暮は大喜びで撮影を続けるが、撮影隊の面々は次々とゾンビ化していき……。2017年11月に「シネマプロジェクト」第7弾作品の「きみはなにも悪くないよ」とともに劇場で上映されて好評を博し、18年6月に単独で劇場公開。当初は都内2館の上映だったが口コミで評判が広まり、同年8月からアスミック・エースが共同配給につき全国で拡大公開。200万人を超える観客動員を記録する異例の大ヒットとなった。
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 2018年に予想外の大ヒットとなり、「シネマトゥデイが選ぶ映画ベスト20」では堂々の4位に選ばれ、私の映画好きの友人が絶賛していたことから観てみることにしたこの映画。そうでなければ、絶対観ていなかった映画である。
 
 物語はどこかの山奥の廃墟で始まる。女が泣きながら男に訴えかけるが、ゾンビ化した男の耳には届かない。そしてそのまま女は追い詰められゾンビ男に噛まれてしまう・・・そこに響く「カット!」の声。そこは映画の撮影現場。女優の演技に不満のある監督が激怒する。険悪になる雰囲気。監督は止めに入る男優にもキレる。そのまま休憩にはいるが、やがてその廃墟はかつて旧日本軍が死者を生き返らせる人体実験を行っていた施設だという噂話となる。
 
 その時、外でタバコを吸っていた助監督がうめき声に振り返るとそこにカメラマンの男が血まみれの顔面蒼白で立っている。驚く助監督。カメラマンは急に助監督の顔にゲロを吐きかけると、あっけにとられた助監督に襲い掛かる。ちぎれた助監督の腕が飛んでくる。まさか本物とは思わない出演者たちが気がつくと、ゾンビ化した者たちが襲い掛かってくる。泣き叫ぶ女優に監督は狂喜乱舞して撮影に入る。「撮影は続ける!カメラは止めない!」と怒鳴る監督。それはまるで、乗組員たちの安全より未知の生命体を持ち帰ることを選択したノストロモ号の船内のようである。やがて監督も殺され、1人生き残った女優をカメラは遠景で写し映画は終わる・・・
 
 そして唐突に場面は1か月前に戻る。前評判が良かったためか、この時点で拍子抜けする。この下手なB級映画よりもレベルの低いゾンビ映画が何で高評価だったのだろうと。場面が変わると、そこはテレビ局の会議室。冒頭の撮影シーンで監督をしていたのは日暮。そこでプロデューサーからゾンビもの専門チャンネルを作るのにあたり、記念すべき第一回放送でゾンビ映画の撮影クルーが本物のゾンビに襲われるというドラマを作ることを告げられる。そして「30分間生中継で、ワンカメラで全編ワンカット」という条件を示される。
 
 なぜ日暮にそんな依頼が来たかと言うと、それはあまりにも常識外れの条件であり、日暮も最初は冗談だと思うほど。他にも依頼していたが、すべて断られた後。そこでお鉢が回って来たわけであるが、仕事が欲しい日暮に断る選択肢はない。ドラマのタイトルは「ONE CUT OF THE DEAD」。日暮の妻晴美は元女優だが、今は現場を離れている。よく見れば冒頭で映画のスタッフをしていた女性。さらに娘の真央はVシネマのADをしているが、真央はこだわりが強い性格で、現場でもそのこだわりからもめ事を起こしクビになっていたりする。
 
 そんな日暮たちの撮影チームが打ち合わせ等の準備を経て撮影の日を迎えるわけである。前半が廃墟でのゾンビ映画、後半がそこに至る経緯とゾンビ映画の舞台裏という構成になっている。何が大ヒットの要因なのかと思うに、それはストーリーの妙だと思う。ゾンビ映画にしてはレベルが低いが、その舞台裏を知ればなるほどと思う。それを含めて全体を振り返ってみると、見事に前半のゾンビ映画が生きてくる。一つ一つの何気ないシーンが実に計算されたかのようにピタリとはまってくる。普通に見ていたら面白くもないセリフが、舞台裏を知ると突然輝いてくるのである。
 
 この映画を何の先入観もなく見ていたら、たぶんもっと驚いたと思う。ただ、事前にあまりにも絶賛の声を聞き、期待値を上げ過ぎられたところがある。その高い期待値に適応するほど面白いかと言えば、残念ながらそこまでには至らなかった。それが正直な感想。この映画を観て、「どこが面白いのだろう」と疑問に思う人もいるはずである。2018年にはこれまで170本超の映画を観てきたが、この映画は私個人のベスト10はおろか、ベスト20にも入らないだろう。面白いとは思うが、大絶賛するほどではなく、「普通に面白い」映画だと思う。
 
 それにしてもやはり細部に至るまでよく考えられていると思う。コメディタッチで素直に笑えるところと、ストーリーの妙で唸らされるところがブレンドされ、映画自体はとても楽しめる。観終わったよりも、しばらくしてから振り返った時に、じわじわと面白さがわかってくる。それにしても、評判が高いからこそ絶対観るはずもなかった映画を観たわけであるが、評判の高さが災いして観終ったあとに気持ちが下がってしまったのは事実。そこが実に難しいところである。ただ、今後はこういう映画を先入観なく観られるようにしていきたいとは思う。
 
 それにしても、つくづく思うが、アイディアが勝利した面白い映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2018年12月28日

【追憶】My Cinema File 2021

追憶.jpg
 
2017年 日本
監督: 降旗康男
出演: 
岡田准一:四方篤
小栗旬:田所啓太
柄本佑:川端悟
長澤まさみ:四方美那子
木村文乃:田所真理
安藤サクラ:仁科涼子
吉岡秀隆:山形光男

<シネマトゥデイ>
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『駅 STATION』『鉄道員(ぽっぽや)』などの降旗康男監督と撮影の木村大作がタッグを組み、『永遠の0』などの岡田准一が主演を務めたミステリードラマ。主人公の刑事が殺害現場で遺体となった幼なじみと対面し、共通の旧友が容疑者として浮上、事件の真相と3人の男の封印された過去が次第に明かされる。主人公の旧友に小栗旬と柄本佑、ほかに長澤まさみ、木村文乃らが共演。友人の死をめぐって現在と過去が交錯する展開と重厚なドラマが堪能できる。
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1992年の能登半島。親に捨てられたり虐待を受けたりしていた子供3人(四方篤、田所啓太、川端悟)が、軽食喫茶「ゆきわりそう」を営む仁科涼子の元に身を寄せている。おそらく自身も孤独で、似たような境遇の子供達を放っておけなかったのであろう。そんな涼子に密かに想いを寄せる山形光男。何もなければ小さな幸せを築けていたのであろう。

ところが、涼子にはやくざのヒモ貴船がいる。貴船は度々涼子の元を訪れては、体と金を奪っていく。自分たちのささやかな幸せと涼子を守るため、意を決した篤と啓太、悟は共謀して貴船を殺害する。涼子は3人を庇い、自ら罪を被って服役する。それ以来、3人は離れ離れになり、それから25年の歳月が流れる。

篤は、富山県警の刑事となっているが、幼い頃に自分を捨てた母からは金を無心され、子供を流産で失ったことで妻とも別居生活を送っている。そんなある日、篤は富山市内のラーメン屋で偶然にも悟と再会を果たし、夜遅くまで酒を酌み交わす。悟は東京のガラス店に婿養子に入り、今では経営者となっているが、経営は非常に苦しく、金策に困って輪島で土建屋を営む啓太から金を借りるために富山に来ていたのである。啓太は会社経営も順調で、妻は出産を控え、さらにかつての「ゆきわりそう」の跡地に新居を建てようとしている。

悟と別れた翌日、刺殺された悟の死体が発見される。篤は、悟が友人であり、前夜に一緒に酒を飲んだ事実を隠し捜査にあたる。悟の自宅を捜索した篤は、そこで「あんどの家」なる介護施設の封筒を発見する。そして悟が金を借りに行くと語っていた啓太の元へと向かう。さらに「あんどの家」に向かい、そこで車椅子姿の老いた涼子が山形に付き添われている姿を目の当たりにする。涼子は刑期を終えて山形と結婚していたが、交通事故に遭った影響で半身不随と重度の記憶障害を患っていた。

何やら濃厚なドラマ。少年時代に犯した殺人。冷静に考えれば、殺された相手はヤクザであり、殺したのは年端もいかぬ未成年。状況からも情状酌量の余地は大だったと思うが、子供達をかばった涼子は服役し、3人はバラバラとなる。再会を果たしたのも束の間、悟が殺されてしまう。殺したのは幼馴染の啓太なのか。観ている方もそんな疑いの目でドラマを観ていく。

当然、警察も啓太を容疑者としてマークするが、3人の関係は知らない。真犯人を追いつつ、3人と涼子の過去が描かれていく。そして明らかになる意外な関係、そして真相。世の中にはやはり人でなしはいるもので、殺されたヤクザもしかり、そして篤の母もしかり。篤の母は、まだ多分小学生くらいの篤を置いて男の元へと走る。追いすがる篤を振り切って車に乗り込む神経はいかがかと思わされる。こうした人物の行動を見ていると胸糞が悪くなる。それに引き換え、彼らを引き取る涼子の優しさ。

日本映画らしい濃厚なドラマ。ストーリーの意外性もあり、成長した3人の姿がしみじみと心に残る。味わい深い映画である・・・


評価:★★☆☆☆








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2018年12月27日

【スタンドオフ】My Cinema File 2020

スタンドオフ.jpg

原題: Standoff
2016年 カナダ
監督: アダム・アレカ
出演: 
トーマス・ジェーン:カーター・グリーン
ローレンス・フィッシュバーン:殺し屋
エラ・バレンティン:イザベル/バード
ジョアンナ・ダグラス:マーラ

<シネマトゥデイ>
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『TINA ティナ』や『マトリックス』シリーズなどのローレンス・フィッシュバーンら出演のアクションサスペンス。暗殺現場を目撃したことで殺し屋から命を狙われる少女を、元軍人の男が守り抜く姿が描かれる。メガホンを取るのは、『セル』などの脚本も手掛けているアダム・アレッカ。『ミスト』などのトーマス・ジェーン、テレビシリーズ「REIGN/クイーン・メアリー」などのエラ・バレンティンらが出演。少女と元軍人のドラマに引き込まれる。
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イザベルは、ロジャーに連れられて両親の墓参りにくる。イザベルの両親は交通事故で亡くなっていて、父親からもらったカメラを肌身離さず持ち歩いている。そのカメラで撮影していると、その間だけ安心できるのである。墓地では、葬式が行われている。イザベルが何気なくその様子を見ていると、突然現れた黒いマスクをかぶった男に神父と参列者の夫婦が射殺される。おどろいたイザベルは、咄嗟にマスクを取った男の顔を撮影する。

男は射殺した神父と夫婦の遺体を墓穴に入れると、土をかぶせる。そこへロジャーがイザベルを探しにやってくる。イザベルはロジャーに警告しようとするが、同じように射殺されてしまう。同時に、イザベルの存在もわかってしまい、男はイザベルの方に向かう。必死に逃げたイザベルは、カーターの家に駆け込む。追ってきた男の銃撃により、カーターは右足を撃たれるが、元軍人のカーターは猟銃で応戦し、男もまた脇腹を負傷する。互いに手負いとなったカーターと男は2階と1階で対峙する・・・

ともに負傷したカーターも男もとりあえず傷口を消毒し、止血する。男はイザベルとカーターを始末したいが、カーターは猟銃ながら武器を持っていて、さらに1階にあった写真から元軍人とわかり、安易に動けない。一方、カーターの家の電話はとっくに不通になっていて、しかも携帯は1階に置いてあって外部に助けを呼べない。あたりに民家もない孤立状態。タイトルの“Standoff”には、「離れて立った状態、孤立、こう着状態」という意味があるそうだが、まさにそんな状態である。

こうなると、心理戦でもある。先に動いた方が負けか。男は、目的は少女だけだとカーターを懐柔しようと試みるも、カーターは応じない。カーターにはかつて我が子を自分の不注意で死なせてしまった過去があり、イザベルを守ることに贖罪意識を持っているのかもしれない。カーターは2階にある電球を集めてきてそれを割ると、階段から破片をばらまく。なかなかの知恵である。しかし、実はカーターの猟銃には弾は1発しか残っていない。

もしも自分が男の立場だとしたらどうするだろうと考えてみたら、「火をつける」と思い付く。しかし、イザベルからあらましを聞いたカーターは、男を写したフィルムをビンに入れてビニールで包み、トイレのタンクに入れる。これを男に伝え、屋敷が火事で燃えた場合もフィルムが残ることで放火を未然に防ぐ。なるほどと思うが、これによって事態はさらに泥仕合の様相を呈する。

途中、若い警官が墓場に複数の車が放置されたままなのを不審に思い、さらに銃声を聞きつけてカーターの家にやってくる。カーターにしたら絶好のチャンスだったが、これもあえなく潰えてしまう。あまり多くを期待していなかったが、意外に物語に引き込まれて行く。こういうこう着状態に陥った場合、先に動いた方が負けという気がするが、ともに負傷していて、出血もどうやら止まっておらず、持久戦は困難。

どうなることかと思っていたら、男が最後に取った手段は実に絶妙。カーターは絶体絶命となるが、そこで取った起死回生の一策。ラストの展開は、思わず息を飲むもの。カーターにとっては、思わぬ不運な出来事であったが、振り返ってみると、これによってその後の人生が好転していったように思える。心に傷を追っていたイザベルもまた精神安定剤の役割を果たしていたカメラを手放せることになったようである。

この映画、ローレンス・フィッシュバーンが出ているから意識もしなかったが、実はカナダ映画。しかしながら、ストーリーの妙というべきだろうが、なかなか物語に引き込まれる内容である。意外な拾い物をしたような気分にさせてくれる映画である・・・


評価:★★★☆☆







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