
原題: Jeune et Jolie
2013年 フランス
監督: フランソワ・オゾン
出演:
マリーヌ・バクト:イザベル
ジェラルディン・ペラス:シルヴィ
フレデリック・ピエロ:パトリック
ファンタン・ラバ:ヴィクトル
ヨハン・レイセン:ジョルジュ
シャーロット・ランプリング:アリス
<シネマトゥデイ>
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『スイミング・プール』などのフランソワ・オゾン監督が、少女から大人へと変化を遂げる17歳の女子高生の心理とセクシュアリティーをあぶり出す青春ドラマ。不特定多数の男と性交を重ねる名門高校に通う美しい女子高生。ある事件をきっかけにその問題行動が発覚、行動の裏にある少女でも大人でもない17歳の女性の揺れ動く気持ちを描き出す。主演は、モデル出身のマリーヌ・ヴァクト。『輝ける女たち』などのジェラルディーヌ・ペラスや『まぼろし』などのシャーロット・ランプリングが共演。オゾン監督らしい繊細で鋭い心理描写に心を揺さぶられる。
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主人公は17歳の高校生イザベル。医師の母シルヴィと再婚相手のパトリック、弟のヴィクトルとリゾート地に来ている。イザベルは密かにドイツ人青年フェリックスと付き合っている。そしてある晩、誘われるままに両親に内緒で家を出てパーティーに参加する。その流れで海辺に行くとそのまま初体験を済ます。近くにラブホテルなどがあろうはずもないが、それでも星空の下で初体験というのにフランスの若者は抵抗がないのだろうかと思ってみる。
そんな間柄なのにイザベルは翌日、フェリックスに素っ気なく、17歳の誕生パーティーにも招かない。やがてバカンスが終わり、一家は帰る時を迎えるが、イザベルはフェリックスに何も言わないまま家路に着く。なんでそんな態度なのだろうかと訝しく思うが、映画を観ていくとその理由は次第にわかってくる。
イザベルはある日、大人びた格好でホテルへと向かう。母親の服を借りての姿であるが、服装に覆われた若さが雰囲気によく出ている。部屋に入っていくと、出迎えたのは初老の男。イザベルは、自ら「レア」と偽名を名乗るとそのまま関係を結び、金を受け取る。そして次のシーンではまた別の男を相手にする。どうやらネットを使って売春をしているようである。相場は300〜500ユーロ。高校生であることを考えてもいい値段である。
事が終われば自分の私服に着替えて何食わぬ顔で帰宅する。もらったお金は密かにクローゼットに隠した財布にしまう。やがて常連客が出てくる。その一人は最初に相手をした初老の紳士。ある日、いつものようにホテルの同じ部屋に入ると、イザベルは洗面所でバイアグラを見つける。それはそうだろうと思う。行為は(映画だからだろうが)いたって穏やかなもの。しかし、その時、男はイザベルの下で心臓発作を起こす。イザベルもどうしてよいかわからず、そのまま部屋を後にする。
なぜ、イザベルは若くて美人で、その気になれば彼氏など簡単に作れるであろうに売春を繰り返すのか。映画ではそれははっきり語られない。両親も揃っていて、父親は再婚相手ではあるが、特に関係が悪いということもない。稼いだお金もただしまっておくだけで、金目的という感じもしない。それが思春期ゆえの心の動きなのであろうか。やがて初老の紳士の死について調べていた警察が、防犯カメラの映像を元にイザベルの身元を割り出す。そしてその事実が家族の知るところとなる・・・
娘が売春をしているとわかれば、親としてはショックであろう。「何の不満があって」と嘆きたくなるのもわかるが、イザベル自身もわからないのかもしれない。それにしてもフランス人はあけすけだ。やがてイザベルも普通に同級生と付き合うようになるが、自分の部屋に相手を泊めても親公認。朝、父親が起こしに行くと、部屋から喘ぎ声が聞こえ、父親が遠慮するというシーンが出てくる。日本人の感覚ではなかなかわかりにくい。そしてベッドでは同級生は当然下手だし、物足りない。女は怖いなと思わされる。
そして再び禁止されていた携帯にSIMカードを入れると、何件もの着信履歴が一気に表示される。揺れ動く思春期の女の子の行動をまともに理解しようとしても無理なのかもしれない。それにしても、この主演女優はなかなかの美形である。観ているだけでも満足できる。映画は特にこれといった盛り上がりがあるわけではないが、静かに訴えかけてくるものはある。
映画の雰囲気をうまく醸し出し、なかなかいい邦題だと思わせてくれる映画である・・・
評価:★★☆☆☆