
原題: IO
2017年 アメリカ
監督: ジョナサン・ヘルパート
出演:
マーガレット・クアリー:サム・ウォルデン
アンソニー・マッキー:マイカ
ダニー・ヒューストン:ヘンリー・ウォルデン博士
<Netflix解説>
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滅びゆく地球に残り、生存へのわずかな希望を模索し続ける若き女性科学者。だが宇宙行きシャトルの発射場へと急ぐ男と出会ったことで、その決意が揺らぎ始める。「Death Note/デスノート」のマーガレット・クアリー主演。共演に「オルタード・カーボン」のアンソニー・マッキー。
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地球が何らかの原因で人類が生存困難になるというSF物語は、『インターステラー』等よくあるパターンだと思うが、この映画もそんな未来の地球の物語。ここでは環境汚染が原因であり、もはや人類は生存不可能となった地球を捨て、木星の衛星イオ軌道上のコロニーに脱出している。しかし、そんな地球上にも残存者がわずかにおり、これはそんな残存者を描く映画である。
科学者である父の研究を引き継いだ娘のサムは、父の死後も1人で暮らしながら実験を続けている。汚染地区に入る時は、防護服に身を包み、まだ生存している微生物等を採取したりしている。研究所は汚染地区から離れた山頂にあるが、ここからまだ地球に残る人々に向けて、父の言葉を無線で定期的に発信している。そしてその寂しさをイオにいる恋人のイーロンと通信することで紛らわせている。
イーロンはサムに最後の地球脱出船に乗ってイオに来るよう求めてくる。しかし、脱出船の打ち上げ予定地に行くには十分な酸素がない。半ば諦めていたサムのところに、マイカという男が気球に乗って父であるヘンリー・ウォルデン博士に会いに来る。サムは一緒に気球に乗って最後の脱出船に向かおうとするが、イオにいる人類も安住の地を求め未知の新世界へ探査船を派遣することが決まり、イーロンはそれに選抜されたと伝えてくる。出発すれば10年は戻れない。さらに悪天候で研究施設が破壊され、サムは絶望的になる。
気がつけば映画の登場人物はサムとマイカが中心で、回想シーンでサムの父ウォルデン博士が登場するのみ。場面も廃墟の街中と山頂の研究所が主なところで、SFと言っても宇宙空間はごくわずかしか描かれない。設定からしても当然の背景であるが、何となく「低予算」という感じが漂う。大気汚染は目に見えるものではなく、火をつけて炎の色で見分けている。違い紫色は大気が汚染されている証である。
サムはついに地球を離れる決意を固め、マイカとともに発射場を目指すことになるが、すんなりとはいかない。タイトルは映画の中でも出てくる木星の衛星イオの意味かと思っていたが、実は廃墟となった街で、かつてサムが訪れたかった美術館に展示されている絵画のことらしい。コレッジョという画家の「イオ(ユピテルの愛の物語)」という絵画がそれだとのこと。絵を見つめるサムの心に由来したものは何だったのだろう。
果たしてこの映画はハッピーエンドなのだろうか。希望を感じさせるようなラストであるが、よくよく考えてみるとどうなのだろうかと考えてしまう。それにしても、こういう未来は迎えてほしくないと改めて思わせてくれる映画である・・・
評価:★★☆☆☆