
2004年 日本
監督: 土井裕泰
原作: 市川拓司
出演:
竹内結子:秋穂澪
中村獅童:秋穂巧
武井証:秋穂佑司
浅利陽介:高校時代の巧
平岡祐太:現代の佑司
大塚千弘:高校時代の澪
市川実日子:永瀬みどり
中村嘉葎雄:萩原
小日向文世:野口
YOU:浜中晶子
<シネマトゥデイ>
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死んだはずの妻と再会し、奇妙な共同生活を送るという同名小説の映画化。監督は「ビューティフルライフ」や「GOOD LUCK!!」など数々のヒットドラマをてがけた土井裕泰。主演にはドラマや映画で引っ張りだこの竹内結子が初の母親役に挑み、その夫を歌舞伎界の革命児こと中村獅童が扮する。シンプルでまっすぐな家族愛に目頭が熱くなること必見の感動作。
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かつて原作小説を読んで非常に心打たれた作品。映画も既に観ているが、もう一度観てみたいと思い何年かぶりで鑑賞。二度目はかなり原作小説の影響も排除されて、最初に観た時とは微妙に印象が異なる。こういう映画の楽しみ方もいいと思う。
秋穂巧は妻の澪を亡くし、息子の佑司と2人で暮らしている。冒頭、佑司の18回目の誕生日にケーキ屋の主人が誕生日用のケーキを届けに来る。このシーンはあとで理由がわかる。そして物語は12年前に戻る。
父親の巧は司法書士事務所で働いているが、持病があって仕事や生活の諸々に支障が生じている。母親の澪を亡くし、巧は不慣れな子育てに悪戦苦闘。佑司も子供ながらそんな父親を気遣っている。
そして梅雨の季節が訪れる。ある日、巧と佑司は佑司のお気に入りの場所である森の廃工場にやってくる。無邪気に探し物をする佑司とそれを見つめる巧。すると、そんな2人の前に突然、死んだはずの澪が姿を現す。生前、「雨の季節に戻ってくる」と謎の言葉を残し、絵本まで残していた澪が予言通りに現れ、巧と佑司は戸惑うものの再会を喜ぶ。しかし、当の澪には記憶がない。
取りあえず澪を家に連れ帰った巧は、澪に自分たちのことを伝える。記憶を失っている澪だが、他に行く場所もなく、秋穂家での暮らしを始める。散らかった部屋の掃除をし、料理を作る。止まっていた時間が再び動き始める秋穂家。そんな生活を喜びつつ、巧は澪に自分達の出会いについて話し始める。それによって観ている者も2人の出会いからの経緯を知ることになる。
ともに恋愛については奥手な2人。何もないまま高校を卒業し、巧は地元の大学、澪は東京の大学と離れ離れになってしまう。それでも澪を忘れられない巧は、卒業の時に貸したペンを口実に澪と会う。じれったくて、イライラしてしまうようなもどかしい2人。それでも勇気を振り絞った巧が澪をコーヒーに誘い、何とか気持ちを通じ合わせる。そして手紙を送り合うようになる。まだ、スマホもガラケーですらない時代である。
そんな微笑ましい2人であるが、巧が発病し、それを気にした巧は澪に一方的に別れを告げる。物語はそんな2人の出会いからの日々と、突然雨の季節に現れてからの日々とを交差して進んでいく。死んだはずの妻が戻ってきたものの、それは「雨の季節」が終わるまでとされている。そして記憶を亡くした澪は、自分自身のかつての日記を見つける・・・
別れを告げた巧がどうしてまた澪と付き合い、そして結婚に至ったのか。そこには物語の鍵が隠されている。何事にも不器用な巧とそれをどこまでも優しく包む澪。そして物語は意外な展開を見せていく。原作小説を読んだ時は、ラストに明かされるタイトルの由来に大いに心打たれたのであるが、それが映画でもよく再現されている。小説とは若干異なっているが、それは小説と映画という表現方法が異なる以上、ある程度仕方のない違い。
初めてこの映画を観た時は、たぶん小説のイメージが強すぎて少々物足りない気がしたのを覚えている。しかし、時を経てもう一度観てみると、また違ったイメージがある。素直にストーリーに感動できるのである。改めて観てみると、良い映画だなぁと思う。そこには個人的に大ファンである竹内結子の影響もなくはない。何もなくとも、こういう夫婦になりたかったなぁと己の現状と比べてしまう。
現実的にはありえないストーリーではあるが、こんな出来事があっても良いなとも思う。観終わってかつて原作を読んだ時と同じように心振るわされるのは、外見とか打算とかではなく本質的なところでの愛情を描いているからだと思う。こんな風に夫婦になれたらと思わずにはいられない。原作小説もいいが、映画も映画なりの良さがある。あらためてそう思わされる映画である・・・
評価:★★★☆☆