2019年07月31日

【アイ・アム・マザー】My Cinema File 2108

アイ・アム・マザー.jpg


原題: I Am Mother
2019年 オーストリア
監督: グラント・スプートア
出演: 
ヒラリー・スワンク:女性
ローズ・バーン:母親の声
クララ・ルガアード:娘

<映画.com>
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文明崩壊後の地球を舞台に、ドロイドの母親に育てられた少女の運命を描いたSFドラマ。人類の絶滅後、無人の再増殖施設内で誕生した少女。母親代わりのドロイドのもとで高度な教育を受けながら健やかに成長した彼女は、外の世界は汚染されていると教えられ、施設から出ることを固く禁じられていた。ある日、施設の外から助けを求める声が聞こえてくる。少女が慌ててエアロックを開けると、負傷した女性が倒れ込んでくる。その女性との出会いをきっかけに、少女がこれまで信じてきた世界が揺らぎ始める。負傷した女性役に「ミリオンダラー・ベイビー」のヒラリー・スワンク。「ピーターラビット」のローズ・バーンが母ドロイドの声を演じる。Netflixで2019年6月7日から配信。
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 文明が崩壊したあとの地球を描いた映画というのは、『マッドマックス』シリーズを筆頭に数多創られている。しかし、「人類が絶滅したあと」という前提の映画は珍しいかもしれない。なぜなら人類が絶滅してしまったら物語はあり得ないからである。ところが、この映画では人類の絶滅後から物語が始まる。ある施設で1体のロボットが稼働する。ロボットは人間の胎児を冷凍培養した装置から取り出し、それを球体型の装置に入れる。その装置はいわば「子宮」であり、その中で胎児は成長する。やがて「出産」の時を迎え、ロボットは子供を装置から取り上げると母親のように腕に抱く。

 生れたのは少女。ロボットの「マザー」は、文字通り「母親」として少女を育てる。他にも冷凍培養した胎児はいるが、少女1人しか育てない理由として「母親にも訓練が必要だから」と少女に語る。冒頭のシーンでは「人類滅亡から0日」と表示されているが、少女が美しく成長し誕生日を間近にしている頃になると、その表示は「13,867日後」を示している。単純計算で38年くらい経過しているが、少女はどう見てもティーン。その理由は後に判明する。
 
 少女はたった一人。友達もいないが、必要な知識はマザーから学んでいる。「4人を犠牲にするか、それとも4人を救うために1人の犠牲を認めるか」なんてまるでマイケル・サンデル教授の授業のような講義を受けている。ある夜、施設内のブレーカーが落ち、エアダクトのファンが停止すると少女は外から入ってきたネズミを見つけ捕まえる。ブレーカーを復旧し、ネズミの事をマザーに伝えると、外の世界は汚染されていると言い「母」はネズミを焼却処分する。少女は常々、外の世界は汚染されていて生存不可能だと言い聞かされていたが、ネズミの出現により外の世界に興味を抱く。

 外の世界への好奇心が強くなった少女は、ある夜、マザーが「充電」中に外の世界へと繋がる二重のエアロックの1つ目を解除し外を観察する。すると、怪我をした女性が現れ、助けを求めてくる。自分以外に人間がいることに困惑しながらも少女は彼女を迎え入れる。エアロックの解除に気がついたマザーが駆け付けるも、少女は咄嗟に女性を匿う。しかし、女性はマザーに敵意を示し破壊しようとする。女性の生きる外の世界では人類はロボットである「ドーザー」に攻撃され続けていて、彼女はマザーのことも信用できなかったのである。

 自分の住み慣れた世界とまったく異なる外の世界と接した時、人は誰でも戸惑う。黒船来航時の江戸の人々もそうだったのかもしれない。何が真実なのか。これまで信じてきた前提条件が疑わしくなる。外の世界で人類を攻撃するロボットと少女を育てるロボット。なかなか興味深いストーリーである。同じ人間である女性を信じるべきか、育ての親のロボットを信じるべきか。外の世界にはさらに女性の仲間たちがいると言う。外の世界への誘惑に対し、マザーは施設の中で少女に新しい家族を増やすことを認める。

 自分の知らない世界に対する好奇心は、人間ならではこそかもしれない。女性と共に外の世界に行くことを望むようになる少女。それを阻止しようとするマザー。その意図は何なのか。外の世界に広がる真実は何なのか。クライマックスに向かって明らかになる「真実」はなかなかのもの。ロボットが巧なのか、それを設計した人類の英知なのか。考えてみれば、登場人物はヒラリー・スワンクと少女のみ(+ロボットのマザー)という映画。

 果たして少女は第二のミトコンドリアイブになるのか。何だか深く考えさせられてしまった映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2019年07月27日

【鋼の錬金術師】My Cinema File 2107

鋼の錬金術師.jpg

2017年 日本
監督: 曽利文彦
原作: 荒川弘
出演: 
山田涼介:エドワード・エルリック
水石亜飛夢:アルフォンス・エルリック(声)
本田翼:ウィンリィ・ロックベル
ディーン・フジオ:カロイ・マスタング
蓮佛美沙子:リザ・ホークアイ
佐藤隆太:マース・ヒューズ
小日向文世:ハクロ将軍
大泉洋:ショウ・タッカー
夏菜:マリア・ロス
原田夏希:グレイシア・ヒューズ
松雪泰子:ラスト
本郷奏多:エンヴィ
内山信二:グラトニー
國村隼:ドクター・マルコー
石丸謙二郎:コーネロ

<シネマトゥデイ>
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荒川弘の大ヒットコミックを、『暗殺教室』シリーズなどの山田涼介主演、『ピンポン』などの曽利文彦監督で実写映画化。亡き母をよみがえらせようと“人体錬成”という錬金術におけるタブーを犯したことから体の一部を失い、やがて錬金術師となった主人公が弟と一緒に失ったものを取り戻す旅を繰り広げる。共演は、『アオハライド』などの本田翼や、ディーン・フジオカ、松雪泰子ら。イタリアでの大掛かりなロケや、曽利監督によるビジュアルに期待。
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日本映画ではよくあるが、この映画も漫画の実写映画版らしい。原作漫画は読んだことはおろか、その存在すら知らなかったというのが正直なところである。物語の主人公は、いずこともわからぬ草原の中の一軒家に住む幼いエドとアルのエルリック兄弟。ともに錬金術の心得がある。ある時、優しい母が突然亡くなり二人きりになってしまう。母に会いたい一心で、母親を蘇らせるために兄弟は禁止されていた人体錬成の術に手を出してしまう。その結果、突然の異常現象が起こり、兄弟はそれに巻き込まれてしまう・・・

数年後。成長した兄エドは赤い指輪をした男を追っている。指輪の力で巨大な石の柱や獣を出して攻撃する。エドも軽い身のこなしで追い詰めるが、やがて軍が現れて対決は終わる。実はエドは国家錬金術師。右腕と左足が機械であり、それゆえに「鋼の錬金術師」と呼ばれている。弟のアルは大きな鎧の姿(一見、鉄人28号的である)をしている。そして破壊された街を錬金術で直していく。彼らと行動を共にするのは幼なじみのウィンリィ。義手義足の機械技師として兄弟を支えている。どうやらこの映画では、「錬金術」=「魔術」のようなものらしい。

さらに登場するのは軍関係者。マスタング大佐、その同期のヒューズ中佐そしてハクロ将軍。実はエドも軍も“賢者の石”を探している。何やら『ハリー・ポッターと賢者の石』を彷彿させられる。実は幼い頃に行った禁忌の錬金術の結果、エドは左足と右腕と失い、弟アルは連れ去られそうなところをかろうじて魂だけを取り戻し、そこにあった鎧に定着させていたのである。賢者の石こそが弟の体を取り戻せるようである。

この映画の錬金術は、魔法のように無から有を作り出すものではなく、有から有への「等価交換」が原則のよう。エドはアルの身体を取り戻すための情報を求めて、将軍から紹介されたキメラ(合成獣)の権威タッカーの家を訪れる。妻が出ていってしまい、タッカーの家には、娘と大きな白い犬がいる。タッカーは今年結果を残さないと軍公認の錬金術師の資格が剥奪されてしまうと焦っている様子。これがあとからある事件になる。

エドはウィンリィとともに賢者の石の手掛かりを求めてドクター・マルコーを探し行く。しかしようやく会えたマルコーは、突然襲ってきたホムンクルス(人造人間)ラストの鋭い爪の攻撃で殺されてしまう。死の間際にドクター・マルコーは「第5研究所」という言葉を遺す。こうして敵味方が入り乱れながら兄弟は賢者の石へと近づいていく。ところが、探し当てた賢者の石はとんでもないシロモノだとわかる。

物語の世界観に慣れるのに少々時間がかかる。錬金術と魔法の違いを理解し、敵味方を整理しながらストーリーを追う。いろいろな物語が次々と創られる中、何があってもいいとは思うが、一般的に「錬金術」は「科学実験」のイメージがあり、どうも魔法のように繰り広げるのは違和感を禁じえない。「等価交換」という考え方だけは何とか面白い制約条件だと理解できるが、登場人物たちがみんな日本名ではない理由や、舞台となっているF所がどこなのかわからないというストレスはある。まぁ楽しめると言えば楽しめる映画である。

時間の短い映画の世界という制約を離れ、原作を読めば物語の背景がもっとよくわかるのかもしれない。そういう意味で、原作漫画にもちょっと興味を持った映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2019年07月26日

【わたしは、ダニエル・ブレイク】My Cinema File 2106

わたしは、ダニエル・ブレイク.jpg

原題: I, Daniel Blake
2016年 イギリス・フランス・ベルギー
監督: ケン・ローチ
出演: 
デイブ・ジョーンズ:ダニエル・ブレイク
ヘイリー・スクワイアーズ:ケイティ
ディラン・フィリップ・マキアナン:ディラン
ブリアナ・シャン:デイジー
ケイト・ラッター:アン
シャロン・パーシー:シェイラ
ケマ・シカウズウェ:チャイナ

<シネマトゥデイ>
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『麦の穂をゆらす風』などのパルムドールの常連ケン・ローチ監督がメガホンを取り、社会の片隅で必死に生きようとする男の奮闘に迫る人間ドラマ。病気で働けなくなった主人公が煩雑な制度に振り回されながらも、人との結び付きを通して前進しようとする姿を描く。コメディアンとして活動しているデイヴ・ジョーンズらが出演。ローチ監督にパルムドールをもたらした力強い物語に震える。
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 イギリスのニューカッスルに住む59歳のダニエル・ブレイクは、大工として働き続けてきたが、心臓発作を起こしてから働くことを医者から止められている。やむなく雇用支援手当を受けているが、その継続の審査の電話を冒頭で受けている。電話の相手は「医療専門家」と称するが、マニュアル通りの順序でダニエルの病状と関係ない質問を続け、ダニエルをイラつかせる。

 ダニエル自身は、仕事を再開したいと望んでいるが、医者の診察結果は芳しくない。場合によっては手術の必要性も告げられている。それにもかかわらず、雇用手当の継続審査結果は「就労可能」。このままでは、手当は中止となることからダニエルは電話をかけるが、混雑していてつながらない。日本でも「〇番を押してください」という無機質な音声にイラつかされるが、イギリスのそれはもっと酷い。ようやくつながっても要領を得ない。

 求職者手当の申請をしなければならないことになったダニエルは職業安定所を訪れるが、そこで二人の子供を連れた若い母親のケイティと出会う。ケイティもまた約束の時間に遅刻したせいで給付金を受けられないばかりか減額処分になる違反審査にかけられると言われる。引っ越したばかりで道に迷ったと釈明しても受け入れられない。お役所的な対応にダニエルは一緒に抗議するが、到底受け入れられるものではなく、彼らは追い出されてしまう。

 これを機に、ダニエルとケイティと二人の子供デイジー、ディランとの交流が始まる。シングルマザーのケイティも生活はカツカツ。見かねたダニエルがアパートの修繕をしたり子供たちの面倒を見たりする。そしてお金がないので電気が使えない。ダニエルは帰り際に電気代をそっと置いて帰る。ケイティは清掃の仕事を探し、その間、ダニエルはデイジーとディランの面倒をみる。ケイティはお礼にダニエルに夕食を出すが、自分は外で食べたと偽って果物で空腹を満たす。そんなつつましやかな関係が静かに築かれていく。
 
 観ていて何とも腹立たしくなるのは、イギリスの公的サービス。実際のそれはどうなのかはわからないが、ダニエルのイラつきは観ているこちらの方まで伝わってくる。ドクターストップがかかっているにも関わらず、雇用支援手当の担当者は就労可と判断する。抗議の電話はなかなかつながらない。求職者申請はオンラインでしなければならず、パソコンを使わないダニエルは困り果ててしまう。職業安定所でただ一人親切にしてくれる職員アンが手助けようとすると、上司に注意される有様である。その背景にはもしかしたら厳しい予算制限があったりするのかもしれないが、とにかく酷い対応である。

 求職者手当を受けるには求職活動をしなければならない。ダニエルは病気で働けないのにもかかわらず、手当を受け取るために形式的に求職活動をする。ケイティの一家は食料品や日用品が支給されるフードバンクに行く。フードバンクの前には長い行列ができている。こんな描写にも心が痛む。ダニエルの履歴書を見て採用したいという電話が来ても、そもそも病気で働けないのだから断らざるを得ず、相手を怒らせてしまう。そうまでして求職活動をしても、結局、求職活動記録がないので手当はもらえない。追いつめられたダニエルは家財道具をほとんど売り払って凌ぐ。

 追い詰められたケイティは、ついにスーパーで万引きをする。同情した支配人は見逃してくれるが、帰りがけに話し掛けてきた警備員から売春を持ち掛けられる。それに気がついたダニエルはケイティを諭すが、解決策はない。これでもかと追い詰められていくダニエルとケイティ。職業安定所の対応にキレたダニエルは、建物の壁に「私、ダニエル・ブレイクは…」と自らの主張を大書する。これがタイトルの所以。現代版「レ・ミゼラブル」とでも言えそうなストーリーが展開される。

 物語はただ職業安定所やイギリスの雇用関係の福祉政策を批判するだけのものではないように思える。そうした制度の裏側にも、もしかしたらやむにやまれぬ事情があるのかもしれない。しかし、そんな制度の中で苦闘するダニエルとケイティの姿は、心に迫るものがある。ダニエルやケイティたちが幸せになるには、いったいどうしたら良かったのだろうか。葬儀でさえも、貧困層は午前9時からの時間帯を選ぶ。それが一番安いからである。

 他人事ではなく、映画の中だけのフィクションではなく、ふと我が事として考えてみたくなった映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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2019年07月20日

【いぬやしき】My Cinema File 2105

いぬやしき.jpg

2018年 日本
監督: 佐藤信介
出演: 
木梨憲武:犬屋敷壱郎
佐藤健:獅子神皓
本郷奏多:安堂直行
二階堂ふみ:渡辺しおん
三吉彩花:犬屋敷麻理
福崎那由他:犬屋敷剛史
濱田マリ:犬屋敷万理江
斉藤由貴:獅子神優子
伊勢谷友介:萩原刑事

<シネマトゥデイ>
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映画にもなった「GANTZ」などで知られる奥浩哉の人気漫画を、『GANTZ』シリーズなどの佐藤信介監督が実写映画化。突然の事故をきっかけに、超人的な能力を得た初老のサラリーマンと高校生が、それぞれの目的で強大な力を行使するさまを描く。自分の力を人助けのために生かす主人公を木梨憲武、同じ能力を手に入れるも悪用する大量殺人鬼を、『るろうに剣心』シリーズなどの佐藤健が熱演。本郷奏多、二階堂ふみ、伊勢谷友介らが脇を固める。
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ある郊外に犬屋敷家が一家で引っ越してくる。隣の豪邸に比べ、冴えない一軒家に子供たちは不満気。1人一家の主、犬屋敷壱郎だけが満足気である。犬屋敷壱郎は、その風貌通りの冴えないサラリーマン。会社では上司に連日怒られ、家庭でも妻からは疎まれ、子供たちからも疎外されている。ようやく購入した一戸建てに喜ぶ間もなく、病院で末期ガンと診断される。余命3か月。ここに至っても家族にガンのことを打ち明けるタイミングが見つからない。

そんなある晩、拾った犬を飼う事を反対され、捨てに行った公園で犬屋敷はその場に偶然居合わせた高校生の獅子神皓とともに突然光の球に飲み込まれる。原因は何やら宇宙人によるものらしき雰囲気がある。気がつけば公園で寝ていて朝を迎えた犬屋敷は家に帰って家族とともに朝食を取る。ところが、体に異変を感じた犬屋敷。何と腕が変化し、食べたばかりの味噌汁を吐き出す。おまけに体がそのまま機械になってしまっている。どうやら、前夜の光の球が原因らしい。

変化は体だけにとどまらず、道端で死にかけていた鳩に触れたところ、鳩は元気になって飛び去って行く。さらに病院に行った犬屋敷は、現代医療では打つ手のなくなった意識不明の少年に触れて治癒させてしまう。思いもかけず人助けの力に目覚めた犬屋敷はその力を使って人助けを始める。一方、犬屋敷と同じく機械の身体となった獅子神は、離婚した母と2人暮らし。イジメを受けて引きこもりとなっていた幼馴染・安堂直行の家を訪ね再び登校するよう説得する。

獅子神も犬屋敷同様、「能力」を身に着けているが、犬屋敷の能力とはちょっと異なる。それは生き物を殺傷する能力。指ピストルで「バン!」とやると、何と実際に相手を撃ててしまう。最初は鳩だったが、母親と別れた父親が幸せな家庭を築いていることに何となく不満を覚えた獅子神は、何と何の関係もない他人の家に入って行き、親娘3人を射殺する。そしてこれ以降、無差別殺人を繰り返すようになる。

実は獅子神の得た能力も犬屋敷の得た能力もまったく同じもの。獅子神の母も末期がんの宣告を受けるが、獅子神が母を優しく抱きしめるとその能力で完治させてしまう。しかし、かたや人を助けることに使い、かたや人を殺めることにその能力を使う。それにしても指鉄砲は実に無敵の武器である。何せ実弾は発射されないから証拠は残らない。武器も発見されないし、警察に見つかっても逮捕されにくいだろう。しかし、そうはうまくいくものではなく、やがて獅子神の犯行が世間に明るみに出てしまう・・・

人間の能力を超えた力を身に着けた2人が、その能力をまったく正反対の方向に使い始める。獅子神の犯行が明るみに出ると、母親は世間の批判に曝される。その心労から死を選ぶ母。せっかくガンが完治したのに何という皮肉。さらに特殊部隊の突入で匿ってくれていた同級生しおんと彼女の祖母が銃撃の巻き添えを食ってしまう。ここに至り、獅子神は日本全体に対して殺戮を行なうと宣言する・・・

ストーリーはそんな獅子神と、それを止めるべく奔走する犬屋敷との戦いとなる。しがないサラリーマンであった犬屋敷が人知れず奮闘する。主人公を演じるのはとんねるずの木梨憲武。しがないサラリーマン振りが実に板についている。それに対し、獅子神を演じるのは『るろうに剣心』の佐藤健。好対照な2人の共演も観ていて面白い。原作は漫画なのだというが、うまく実写化されているのではないかと思う。

一見、突拍子もないストーリーなのであるが、いつの間にか物語の世界に引き込まれていた。原作も一度読んでみたいと思わされる。映画では描かれていなかったが、その後の犬屋敷親娘の関係がどうなったのか。幸せな好転を想像してみたくなった映画である・・・


評価:★★★☆☆







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2019年07月19日

【スクランブル】My Cinema File 2104

スクランブル.jpg

原題: Overdrive
2017年 フランス
監督: アントニオ・ネグレ
出演: 
スコット・イーストウッド:アンドリュー・フォスター
フレディ・ソープ:ギャレット・フォスター
アナ・デ・アルマス:ステファニー
ガイア・ワイス:デビン

<映画.com>
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クリント・イーストウッドの息子で、『ワイルド・スピード ICE BREAK』 『スーサイド・スクワッド』などで注目を集めるスコット・イーストウッドが主演を務めたクライムアクション。誰も思いつかない手口を使い、いかに美しく、そして完璧に車を盗むかをモットーにする高級クラシックカー専門の強盗団・フォスター兄弟。彼らの今回のターゲットはオークション会場から搬出された世界に2台しかない37年型ブガッティ。しかし、その作戦は失敗に終わり、落札したマフィアのモリエールによって、兄弟は囚われの身となってしまう。命が助かる条件として提示されたのが、モリエールと敵対するマフィアが所有する62年型フェラーリを1週間以内に盗むことだった。フォスター兄弟は一流ハッカー、天才スリ、爆弾オタクたちを従え、「走る芸術品」と称される3800万ドルの62年型フェラーリ250GTO強奪ミッションに挑む。監督は「トランジット」のアントニオ・ネグレ。『96時間』のピエール・モレル監督がプロデュースを務める。
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フランス・マルセイユ。あるオークション会場で、1台の車が注目を集める。それは世界に2台しか存在しない超高級車「37年型ブガッティ」。競り合いの結果、この車を落札したのは黒人の男。会場ではスマホ片手に競り合いをしており、電話の向こうに大金持ちの雇主がいることを伺わせる。落札されたブガッティはすぐに搬送されるが、それを狙うのはアンドリューとギャレットの兄弟。見事な連係プレーでブガッティを盗み出すことに成功する。

しかし、盗み出したブガッティをクライアントへ届けるが、落札したのがマフィアのモリエールだと知ると、クライアントは受け取りを拒絶する。そこへモリエールの部下たちが乱入し、フォスター兄弟もろとも捉えられてしまう。自分が落札したブガッティを盗まれたことに怒り心頭のモリエールだが、殺されそうな雰囲気にアンドリューは提案をする。モリエールとマルセイユの覇権を争っているマフィアのクレンプが所有する62年型フェラーリ250GTOを盗み出すというもの。モリエールは1週間の猶予を与えて兄弟を解放する。

マフィアを相手にしては逃げるわけにもいかず、兄弟は仲間を集め始める。アンドリューの恋人で天才ハッカーでもあるステファニー、天才スリ師のデビン、爆弾オタクや天才ドライバーなど。モリエールから監視役として兄弟に合流したローランの伝手でクレンプ邸の視察も行い、計画を練り上げる。そんな兄弟に対し、モリエールはステファニーを誘拐、監禁し人質とする。犯罪の匂いを嗅ぎつけたインターポールも登場し、困難な高級車奪取作戦が始まる・・・

イケイケの2人組が(ここでは兄弟だが、相棒だったりそのパターンはいろいろである。たとえば『マイアミ・バイス』)、互いに対立しながらも目的に向けてコンビネーションを発揮して活躍するというのはよくあるパターンである。ここで登場するのは、高級車の盗難を得意とする兄弟。車の事は詳しくないが、それでもカーマニア垂涎の高級車というのはよくわかる。そんな高級車が続々と登場するのもこの映画の見どころかもしれない。ストーリーは二転三転し、先を読ませない展開なのであるが、どうも奇をてらいすぎた感がある。あまりにも都合よく展開し過ぎて興ざめしてしまうのである。

まるでジェットコースターに乗っているような映画とでも評することができるだろうか。イケイケ2人組が、ピンチなどどこ吹く風で都合よく乗り越えていく。あとにはバカみたいな面をした悪役が地団駄を踏む(あるいは海の藻屑と消える)というパターン。特にインパクトがあるというわけではなく、たぶん1年くらいしたら観たことすら忘れてしまうであろう。
まぁ、ちょっとした暇つぶしにはなる映画である・・・


評価:★★☆☆☆







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